店舗や事業所の駐車場に、電気自動車の急速充電設備を置くところが増えています。
屋外に置くとき、大阪市の火災予防条例は建物から3メートル以上離すことを原則にしています。
ただ、敷地が狭いと3メートルを取れないこともあります。
この記事では、大阪市消防局の運用基準が示す「離さなくてよい場合」を、国の省令から順にたどって解説します。
大阪市で店舗の駐車場に急速充電器を置く計画があります。
建物の壁ぎわしか空いていません。
大阪市では、出力が50キロワットを超えるものは原則3メートル離します。
ただし、離さなくてよい場合がいくつかあります。
充電器の造りや、壁の造りで変わるのですか。
はい、充電器の筐体と、向かい合う外壁の両方で決まります。
順番に見ていきましょう。
- 屋外の急速充電設備を建物から3メートル以上離す決まりは、国の対象火気省令第16条第4号を受けた大阪市火災予防条例第12条の2第1項第1号にあります
- 全出力50キロワット以下のもの、分離型の充電ポストは、この距離の決まりから外れます
- 大阪市の運用基準は、距離が要らなくなる「延焼を防止するための措置」を筐体の厚さ・漏電遮断器・内蔵可燃物・蓄電池なし・太陽光なしの5つで示しています
- 「外壁に面するもの」の扱いは、変電設備の取扱い(第2.6)を準用して、3メートル以内の外壁か塀で判断します
- 堺市の審査基準も同じ5つの数値を示していますが、外壁の開口部と衝突防止の例の書き方が大阪市と違います
▼

目次
大阪市の条例は屋外の急速充電設備にどんな距離を求めているのか

国は、消防法施行令第5条を受けた総務省令(対象火気省令)で、条例に入れる基準を決めています。
屋外の距離については、第16条第4号が次のように定めています。
(略)
ニ 急速充電設備のうち、消防長又は消防署長が認める延焼を防止するための措置が講じられているもの
ホ 急速充電設備のうち分離型のものにあっては、充電ポスト
ア 不燃材料で造り、又は覆われた外壁で開口部のないものに面するもの
イ 分離型のものにあつては、充電ポスト
出力ごとに整理すると、次のとおりです。
| 全出力 | 条例上の扱い | 屋外で建物から3メートル |
|---|---|---|
| 20キロワット以下 | 急速充電設備に当たらない | 第12条の2の対象外 |
| 20キロワット超〜50キロワット以下 | 急速充電設備 | 要らない(ほかの号は守る) |
| 50キロワット超 | 急速充電設備 | 原則として要る |
20キロワットの線の経緯は、急速充電設備の対象出力を解説した記事で確かめられます。
うちの計画は90キロワットなので、原則3メートルなのですね。
はい、50キロワットを超えるので原則どおりです。
次は「延焼を防止するための措置」を見ます。
消防長が認める延焼を防止するための措置とは何か

そこで、各地の消防本部が自分の基準で中身を示しています。
大阪市消防局の運用基準は、次の5つにすべて当てはまるものとしています。
ア 筐体は、不燃の金属材料で厚さがステンレス鋼板で2.0ミリメートル以上、又は鋼板で2.3ミリメートル以上であること
イ 安全装置(漏電遮断器)が設置されていること
ウ 筐体の体積1立方メートルに対する内蔵可燃物量(電装基板等の可燃物の量)が約122キログラム以下であること
エ 蓄電池が内蔵されていないこと
オ 太陽光発電設備が接続されていないこと
| 条件 | 中身 | 確かめる資料 |
|---|---|---|
| ア | 筐体がステンレス2.0ミリメートル以上か鋼板2.3ミリメートル以上 | メーカーの仕様書 |
| イ | 漏電遮断器が付いている | 仕様書・単線結線図 |
| ウ | 内蔵可燃物が筐体1立方メートルあたり約122キログラム以下 | メーカーへの照会 |
| エ | 蓄電池を内蔵していない | 仕様書 |
| オ | 太陽光発電設備につないでいない | 敷地の配線計画 |
その充電器は、建物から3メートル離さなくても第1号に反しないことになります。
なお、2.0ミリメートル・2.3ミリメートル・122キログラムの数値の出どころは運用基準に書かれていないので、この記事では大阪市の運用基準の値として紹介しています。
蓄電池を内蔵した充電器だと、この方法は使えないのですね。
はい、エの条件に当たらなくなります。
その場合は外壁の扱いを検討します。
外壁に面するときはなぜ変電設備の取扱いを借りるのか

運用基準は、この読み方を急速充電設備の項目では書かず、変電設備の項目を借りるとしています。
変電設備にも、同じ3メートルと外壁のただし書があります。
(1) 変電設備から3メートル以内の位置にある外壁が、不燃材料で造られているか又は覆われている場合(当該範囲内に開口部が存する場合は、はめごろし又は自動閉鎖装置付きの防火戸が設けられているものに限る。)(図12-2参照)
(2) 変電設備から3メートル以内の位置に、不燃材料で造られた防火上有効な塀を設ける場合(図12-2参照)
運用基準の図12-2は、塀を設けないときに外壁を不燃にしなければならない最小の範囲と、塀を設けるときの塀の最小の範囲を、変電設備から3メートルの円弧で示しています(急速充電設備では充電器に置き換えて見ます)。
つながりを番号順に並べると、次のとおりです。
- 消防法第9条が、火災の発生のおそれのある設備の基準を市町村条例に任せています。
- 国の対象火気省令第16条第4号が、50キロワットを超える屋外の急速充電設備を建物から3メートル以上離すとしています。
- 大阪市火災予防条例第12条の2第1項第1号が、これを取り込み、ただし書アに「開口部のない外壁に面するもの」を置いています。
- 運用基準 第12章 第3 1(1)が、距離が要らなくなる延焼を防止するための措置を5つの条件で示しています。
- 同じく1(2)が、ただし書アの読み方は変電設備の第2.6を準用するとしています。
- 第2.6は、3メートル以内の外壁を不燃にする(開口部ははめごろしか自動閉鎖の防火戸)か、3メートル以内に不燃の塀を設けるのどちらかで、ただし書に当たるとしています。
壁ぎわでも、3メートル以内の壁が不燃なら置けるのですね。
はい、ただし窓や扉の扱いに注意が要ります。
塀で守る方法もあります。
距離のほかに大阪市の運用基準は何を求めているのか

まず、充電器の周りに空けておく距離です。
| 保有距離を確保しなければならない部分 | 保有距離 |
|---|---|
| 前面及び操作を行う面 | 1.0メートル以上 |
| 点検を行う面 | 0.6メートル以上 |
| 換気口を有する面 | 0.2メートル以上 |
壁ぎわに寄せるときは、点検する面と換気口の面がどちらを向くかを先に決めておきましょう。 衝突を防ぐ措置(条例第12号)は、次のように具体化されています。
また、CHAdeMO協議会の「電気自動車用急速充電スタンド標準仕様書」1.2又は2.0に適合するものは、第1項の一部の号に適合するものとして扱えます(第3 11)。
ただし、第1号(距離)・第3号(固定)・第12号(衝突防止)・第16号・第18号(周囲)・第19号は対象外なので、設置場所で確かめる必要があります。
衝突防止の国の考え方は、衝突防止措置を解説した記事で解説しています。
仕様書に適合していても、置き方は自分で確かめるのですね。
はい、距離と車止めは設置場所の話です。
図面に書いて協議しましょう。
堺市や東大阪市の基準と比べて何が同じで何が違うのか

条例の第1号は大阪市と同じ趣旨で、延焼を防止するための措置の例も同じ5つの数値です。
ア 筐体は、不燃の金属材料で厚さがステンレス鋼板で2.0ミリメートル以上、または鋼板で2.3ミリメートル以上であること。
違いが出るのは、外壁の開口部の扱いです。
ただし堺市の解説14と第2-18-5図には、「3メートル以内」という範囲や塀を設ける方法は見当たりません。
衝突防止の例も、堺市は「ガードポール又は高さ150mm以上のアイランド」(解説6)で、大阪市は「樹脂製ポール・鉄製パイプ・車止め・縁石等」です。
| 項目 | 大阪市(運用基準 第12章 第3) | 堺市(第18条の2 解説及び運用) |
|---|---|---|
| 延焼を防止する措置の5条件 | 5つに適合するもの(1(1)) | 同じ5つを「判断基準の例」(3(1)) |
| 外壁の開口部 | はめごろしか自動閉鎖装置付きの防火戸(第2.6を準用) | はめ殺しか常時閉鎖式の防火戸(第18条解説14(2)) |
| 3メートル以内の塀 | 不燃の防火上有効な塀でもよい | 解説・図には見当たらない |
| 充電ポスト | 条例ただし書イで距離不要 | 離隔距離は不要(3(3)・図で例示) |
| 衝突防止の例 | 樹脂製ポール・鉄製パイプ・車止め・縁石等 | ガードポールか高さ150mmのアイランド |
| 周囲の保有距離 | 1.0・0.6・0.2メートルの表(10) | 第18条の2の解説には表が見当たらない |
急速充電設備は消火器具の基準で「電気設備」の一つとして名前が出るだけで、位置や距離の取扱いは含まれていません。
東大阪市で計画するときは、東大阪市消防局に火災予防条例の運用を確かめてください。
大阪市の電気設備の消火器の扱いは、大阪市のキュービクルと大型消火器の記事で解説しています。
堺市だと塀で守る方法は書かれていないのですね。
はい、書かれていない方法は事前に協議しましょう。
大阪市は塀の図まで示しています。
よくある質問
まとめ
充電器の仕様書と外壁の造りを確かめます。
保有距離も図面に書き込みます!
先に整理しておけば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第12章 電気設備 第2 変電設備 6(図12-2)、第3 急速充電設備 1(1)(2)・2・5・10・11 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第12条第2項・第12条の2第1項第1号(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第2章 堺市火災予防条例 第18条【解説及び運用】14・第18条の2【解説及び運用】3・6 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法 第9条、消防法施行令 第5条
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条第21号・第16条第4号
- 火災予防条例(例)第11条の2(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令の公布等について(通知)(令和2年8月27日 消防予第226号)
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の急速充電設備が延焼を防止する措置や外壁の扱いに当たるかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。





