1階に小さな店舗が入るマンションは珍しくありません。
マンションの消防用設備等は、条件を満たすと特定共同住宅等として、共同住宅用スプリンクラー設備などに置き換えられます。
ただ、店舗が入ると「そもそも特定共同住宅等に当たるのか」が問題になります。
この記事では、堺市消防局の審査基準が示す判定の順番を、国の省令と通知までたどって解説します。
堺市で1階に小さな店舗があるマンションを管理しています。
上の階の一室をグループホームに貸す話も出ています。
堺市の審査基準には、店舗とグループホームが両方ある場合の項目があります。
面積の条件がいくつか出てきます。
面積しだいで、マンションの扱いが変わるのですか。
はい、特定共同住宅等に当たるかどうかが変わります。
順番に見ていきましょう。
- 特定共同住宅等に当たる建物は、国の40号省令(平成17年総務省令第40号)第2条第1号が決めています
- 堺市の審査基準は、令8区画で分けた建物・150平方メートル以内ごとに区画した従属部分・渡り廊下で別棟とされる棟も含めるとしています
- 小さな店舗が従属部分になる目安は、主な用途が延べ面積の90%以上で、ほかの用途が300平方メートル未満です
- グループホームなどの住戸利用施設を加えて、店舗との合計が延べ面積の10%を超えるか300平方メートル以上になると、40号省令の要件から外れます
- それでも5つの条件をすべて満たせば、令第32条で40号省令の設備を認めてよいとされています(国の通知を取り込んだ◆の項目)
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目次
堺市の審査基準は特定共同住宅等の範囲をどう広げているのか

正式名は「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」で、40号省令と呼ばれます。
対象になる建物は、第2条第1号で次のように限られています。
(略)
の用途以外の用途に供される部分が存せず、かつ、同表(五)項イ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供する各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分で独立して当該用途に供されることができるものをいう。以下同じ。)の床面積がいずれも百平方メートル以下であって、同表(五)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が、当該防火対象物の延べ面積の二分の一以上のものに限る。)であって、火災の発生又は延焼のおそれが少ないものとして、その位置、構造及び設備について消防庁長官が定める基準に適合するものをいう。
店舗の用途が入った建物は、そのままでは対象に入りません。
制度の全体像は、特定共同住宅等の基本を解説した記事で確かめられます。 堺市消防局の審査基準は、この対象に次のものも含まれるとしています。
ア 令8区画により他の用途に供される部分と区画された40 号省令第2 条第1 号に規定する特定共同住宅等以外の用途に供される部分が存しないもの。
ウ 第2章 第1節 第6 政令第8 条等に規定する区画等の取扱い2.(1)の規定により消防用設備等の設置単位とされる棟で、40 号省令第2 条第1 号に規定する特定共同住宅等以外の用途に供される部分が存しないもの。
一 開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
ウは、堺市の審査基準の「区画等の取扱い」2(1)の渡り廊下の基準に合う渡り廊下でつながった別の棟のことです。
審査基準の図では、マンションと物販店舗が渡り廊下でつながった例が示されています。
令8区画の考え方は、40号省令の適用範囲を扱った記事でも解説しています。
店舗との間を区画すれば、住宅の側だけで考えられるのですね。
はい、それが令8区画の考え方です。
次は区画しない小さな店舗を見ます。
1階の小さな店舗はどんなときに共同住宅の一部として扱われるのか

国の消防法施行令第1条の2第2項の後段が、その考え方を定めています。
(略)
が当該防火対象物の延べ面積の90%以上であり、かつ、当該主用途部分以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が300 ㎡未満である場合における当該独立した用途に供される部分(政令別表第1(2)項ニ、(5)項イ、(6)項イ(1)から(3)まで若しくはロに掲げる防火対象物又は同表(6)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)の用途に供される部分を除く。)
括弧書きのとおり、(6)項ロのグループホームなどは主な用途に含められません。
この点が、後で住戸利用施設を加えるときに効いてきます。 特定共同住宅等の審査基準は、この目安で共同住宅とみなされた店舗などを「従属部分」と呼び、区画を求めています。
- 国の令第1条の2第2項後段が、従属的な部分はほかの用途に含めるとしています。
- 堺市の審査基準 第2章 第1節 第2 1(2)イが、主な用途が90%以上・ほかの用途が300平方メートル未満という目安を置いています。
- この目安で共同住宅((5)項ロ)とみなされた店舗などを、特定共同住宅等の審査基準は従属部分と呼んでいます。
- 従属部分を150平方メートル以内ごとに区画していれば、40号省令第2条第1号の対象に含まれるものとされています。
◆は消防庁の通知等を参考にした指導基準で、①は平成17年8月12日 消防予第188号(40号省令の運用通知)です。
店舗が小さくても、区画は必要なのですね。
堺市では150平方メートル以内ごとの区画を求めています。
次はグループホームが入る場合です。
上の階の一室をグループホームにすると何が変わるのか

住戸利用施設が入ると建物は(16)項イになりますが、40号省令の対象から外れるわけではありません。
問題は、すでに従属部分の店舗がある建物に住戸利用施設を加えたときです。
なお、この場合において、従属部分の用途は政令別表第1(5)項ロとしてみなされるものではない。
合計が10%を超えるか300平方メートル以上になると、店舗は共同住宅とみなされなくなります。
すると「(5)項イ・ロ、(6)項ロ・ハ以外の用途がない」という第2条第1号の要件に当たらなくなるわけです。 数字の例で確かめます(共用部分の按分は省いた単純な例です)。
| 部分 | 床面積 | 延べ面積に対する割合 |
|---|---|---|
| 建物全体(延べ面積) | 2,000平方メートル | 100% |
| 1階の店舗(従属部分) | 150平方メートル | 7.5% |
| グループホーム(住戸利用施設) | 100平方メートル | 5% |
| 店舗+グループホーム | 250平方メートル | 12.5%(10%を超える) |
| 共同住宅の住戸等 | 1,750平方メートル | 87.5% |
グループホームを加えると店舗との合計が12.5%になり、10%を超えます。
この場合は、次の5つの条件で令第32条を使うことになります。
住戸利用施設のスプリンクラー設備などの扱いは、住戸利用施設と特定住戸利用施設の記事で解説しています。
100平方メートルの一室を貸すだけで、外れることがあるのですね。
はい、店舗との合計で見るのがポイントです。
ただし、認めてもらう道があります。
令第32条で40号省令の設備を認めてもらう5つの条件は何か

イ 住戸利用施設の各独立部分の床面積が、いずれも100㎡以下であること。
ウ 政令別表第1(5)項ロに掲げる用途に供される部分の床面積の合計が当該防火対象物の延べ面積の1/2以上であること。
エ 従属部分の床面積の合計が当該防火対象物の延べ面積の10%以下、かつ、300㎡未満であること。
オ 従属部分は、床面積150㎡以内ごとに位置・構造告示第3第3号に規定する基準に適合する構造で区画されていること。
| 条件 | 中身 | 例の建物 |
|---|---|---|
| ア | 40号省令と位置・構造告示に適合する(店舗は住戸とみなす) | 設計図で確かめる |
| イ | グループホームの各独立部分が100平方メートル以下 | 100平方メートルで当たる |
| ウ | 共同住宅の部分が延べ面積の2分の1以上 | 87.5%で当たる |
| エ | 店舗が延べ面積の10%以下で300平方メートル未満 | 150平方メートル・7.5%で当たる |
| オ | 店舗を150平方メートル以内ごとに告示の構造で区画 | 区画の構造を確かめる |
住戸利用施設と合わせると10%を超えていても、店舗だけで10%以下・300平方メートル未満なら当たります。
オの区画の構造は、位置・構造告示(平成17年消防庁告示第2号)第3第3号の基準です。
柱書が引いている令第32条は、国の基準によらなくてよい場合を定めた条文です。
- 店舗とグループホームの合計が10%を超えるか300平方メートル以上になり、40号省令第2条第1号の要件から外れます。
- 堺市の審査基準 Ⅱ 1(2)が、令第32条を適用する5つの条件を示しています。
- 令第32条は「消防長又は消防署長が認めるとき」の規定です。
- 5つの条件をすべて満たせば、40号省令の設備(共同住宅用スプリンクラー設備など)の設置を認めてよいとされています。
5つ全部を満たす必要があるのですね。
はい、一つでも欠ければ通常の消防用設備等で考えます。
計画の前に面積を表にしておきましょう。
堺市の項目は国の通知や大阪市とどう違うのか

堺市の審査基準の凡例は、印の意味を次のように定めています。
★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
この通知の問1は、堺市の(2)と同じ5つの要件を並べ、令第32条を適用して40号省令の設備を認めてよいかを尋ねています。
答えは次のとおりです。
この場合において、従属的な部分の用途は令別表第1(5)項ロとしてみなされるものではないため留意されたい。
審査基準に書いてあるので、堺市では協議のときにそのまま示せるのが利点です。 大阪市消防局の運用基準にも、令8区画と150平方メートルの区画の項目があります。
国の通知は全国の消防本部に向けたものなので、大阪市で同じ場面になったら所轄の消防署に通知の扱いを確かめてください。
東大阪市は、公開されている運用基準が消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント設備の6つで、特定共同住宅等の基準は含まれていません。
| 項目 | 堺市(審査基準) | 大阪市(運用基準) |
|---|---|---|
| 令8区画で分けた建物 | 含める(Ⅱ 1(1)ア) | 含める(第1 2) |
| 区画しない小さな店舗など | 従属部分を150平方メートル以内ごとに区画(Ⅱ 1(1)イ) | 住戸とみなし150平方メートル以内ごとに防火区画(第2 5) |
| 渡り廊下で別棟とされる棟 | 含める(Ⅱ 1(1)ウ) | この節には記載なし |
| 住戸利用施設を加えて10%超か300平方メートル以上 | 5つの条件で令第32条(Ⅱ 1(2)◆④) | この節には記載なし(国の通知 消防予第103号) |
堺市は国の通知を審査基準に書き込んでいるのですね。
はい、審査基準に載っているので協議の手がかりになります。
大阪市でも通知を示して相談できます。
よくある質問
まとめ
店舗とグループホームの面積を表にしてみます。
区画の構造も設計者に確かめます!
面積を先に整理しておけば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第3章 第2節 第1 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅱ 40号省令 1 適用範囲等(1)ア・イ・ウ、(2)ア〜オ、通知一覧/第2章 第1節 第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 1(2)イ/第1章 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第7節 特定共同住宅等(第1 2、第2 5) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条第1号・第1号の2
- 消防法施行令 第1条の2第2項・第8条・第32条
- 特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件(平成17年消防庁告示第2号)第3第3号
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(通知)(平成31年3月29日 消防予第103号)問1
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物が特定共同住宅等に当たるか、令第32条を適用できるかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。





