四日市市消防本部の「四日市市消防同意事務審査基準」には、非常コンセントの設置位置について2つの項目があります。
1つは位置を連結送水管の放水口の項目から借りる書き方で、もう1つはメゾネット型のように共用廊下が1階おきにしかない共同住宅の扱いです。
国の施行令は11階以上の階ごとに非常コンセントを置くと決めていて、廊下の無い階をどうするかは書いていません。
この記事では四日市市の基準を施行令から順にたどり、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市・大阪市・東大阪市・堺市の書き方と比べます。
四日市市で15階建てのマンションを計画していて、上のほうはメゾネット住戸です。
共用廊下は1階おきなのですが、非常コンセントは全部の階に要るのでしょうか。
四日市市の基準は、廊下のある階の非常コンセントまで歩行距離50m以下になるよう置く形を示しています。
廊下の無い階には置かずに、歩いて測る考え方です。
ほかの市でも同じ扱いになるのでしょうか。
考え方はよく似ていますが、測る起点や特例としての書き方が本部ごとに違います。
まず国の決まりから順に見ていきましょう。
- 消防法施行令第29条の2は、11階以上の階ごとに、その階の各部分から水平距離50m以下で、階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーなどに非常コンセントを設けると決めています
- 四日市市は設置位置を連結送水管の放水口の項目から借りており、借り先の「階段等から5m以内」「各階の同一位置」は下線の付いた行政指導です
- 共用廊下や住戸の出入口が2階層・3階層ごとにしかない特殊な階層では、その階の各部分から廊下階の非常コンセントまで歩行距離50m以下となるよう設ける形を示しています
- 鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市は四日市市とほぼ同じ書き方で、大阪市と東大阪市は令第32条を適用する特例基準として書いています
- 津市の非常コンセントの節には特殊な階層の項目が見当たらず、乗降ロビーが2以上ある階はそれぞれに設けるという独自の項目があります
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目次
非常コンセントは国の基準でどこに置くことになっているのか

設置する建物と置く位置は、消防法施行令第29条の2が決めています。
非常コンセント設備は、次に掲げる防火対象物に設置するものとする。
一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が十一以上のもの
(略)
2 (略)
一 非常コンセントは、次に掲げる防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一の非常コンセントまでの水平距離がそれぞれに定める距離以下となるように、かつ、階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所で消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。
イ 前項第一号に掲げる建築物の十一階以上の階 五十メートル
11階以上の各階で、その階のどこからでも水平距離50m以内に1つ以上の非常コンセントがあるように置きます。
場所は階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーなど、消防隊が上の階へ上がってきてすぐに使える位置です。
床から1m以上1.5m以下の高さに埋込式の保護箱で設けることは、消防法施行規則第31条の2第1号・第2号が決めています。
ただ、共用廊下が1階おきにしかないメゾネット型の共同住宅で、廊下の無い階にどう置くかは施行令にも規則にも書かれていません。
廊下の無い階にも、無理に置かないといけないのでしょうか。
そこを各消防本部の審査基準が補っています。
次は四日市市の書き方を見ます。
四日市市は非常コンセントの位置をどこから借りているのか

まずその準用の流れを確かめます。
(1)非常コンセント設備の設置位置は、連結送水管の基準3(3)及び(4)によること。
(3)放水口は、階段(屋外階段が設けられる場合は、努めて当該階段とする。)、非常用エレベーターの乗降口、ロビーその他これらに類する場所に設けること。ただし、直接外気に開放された廊下等に設ける場合で、消防隊の使用に支障がないと認められる場合は、階段等から5m以内の場所することができる。
(4)放水口は、原則として各階の同一位置とするように設けること。
番号でたどると、①第21 1(1)が②第20 連結送水管 3(3)・(4)を指し、③そこで階段や非常用エレベーターの乗降口の近く、開放廊下なら階段等から5m以内、各階の同一位置という条件が決まります。
借り先の3(3)と(4)は、ページ画像で見ると全文に下線が引かれています。
四日市市の基準は総則で、本市の行政指導であることが明白な部分に下線を付けると書いているので、借りてきた位置の条件は行政指導として求められていることになります。
放水口と非常コンセントがそろっていれば消防隊は1か所でホースと電源の両方を使えるので、図面では2つの位置を重ねて確かめるのが近道です。
非常コンセントの項目そのものには下線が無いのに、借り先には下線があるのですね。
はい、だから借り先の項目まで開いて読む必要があります。
次はメゾネット型の扱いです。
四日市市はメゾネット型の共同住宅をどう扱っているのか

廊下が1階おきにしかない共同住宅を名指しした項目です。
(2)特殊な階層(共同住宅等で共用廊下部分又は住戸等の出入口が、2階層又は3階層ごとに設けられているもの等)で、非常コンセントを階ごとに設けることが適当でないと認められるものにあっては、当該階の各部分から、(1)の部分に設ける非常コンセントまでの距離を歩行距離50m以下となるように設けること。
メゾネット型の住戸は、玄関のある階から住戸の中の階段で上や下の階へ行く造りなので、廊下の無い階に非常コンセントを置いても消防隊がそこへ近づく道がありません。
そこで(2)は、廊下の無い階の各部分から、廊下階に(1)の位置で置いた非常コンセントまで歩行距離50m以下になるよう設けることとしています。
国の基準が「水平距離」で測るのに対し、この項目は壁や階段を回り込んだ実際の道のりである歩行距離で測る点が違います。
(2)にはページ画像でも下線が無く、令第32条という言葉も書かれていないので、特例の手続きが要るかどうかは計画の段階で所轄に確かめておくと確実です。
つまり、上の階の一番奥の部屋から廊下階の非常コンセントまで歩いて50mに収まればよいのですね。
そうです、住戸の中の階段も道のりに入れて図面で測ります。
次はほかの消防本部と並べてみます。
ほかの消防本部はメゾネットの非常コンセントをどう定めているのか

なかでも大阪市は、令第32条の特例基準としてはっきり書いています。
スキップフロア型又はメゾネット型共同住宅の共同住宅の住戸その他の2以上の階数を有する1の住戸について、非常コンセントを次により設置する場合は、令第29条の2第2項第1号の規定によらないことができる。
(1)廊下階の階段室、非常用エレベーターの乗降ロビー、その他これらに類する場所で消防隊が有効に活用できる位置に設けること
(2)当該防火対象物の11階以上の階の各部分から1の非常コンセントまでの歩行距離が50メートル以下であること
違うのは、どこから測るかの書き方と、令第32条の特例として書くかどうかです。
四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市は「当該階の各部分から」と書き、大阪市と東大阪市は「11階以上の(階の)各部分から」と書いて令第32条を適用する特例基準の中に置いています。
置く場所も、鈴鹿市と埼玉県央広域は直通階段から5m以内の開放部分など、東大阪市はエレベーターの乗降ロビーと書くなど、少しずつ違います。
津市の非常コンセントの節には特殊な階層の項目が見当たらず、代わりに乗降ロビーが2以上ある階はそれぞれに設けるという項目があります。
| 消防本部 | 箇所と記号 | 廊下の無い階の扱い | 非常コンセントを置く場所 |
|---|---|---|---|
| 四日市市消防本部 | 第21 1(2)(下線なし)/位置は第20 3(3)(4)を準用(下線=行政指導) | 当該階の各部分から(1)の非常コンセントまで歩行距離50m以下 | 階段・非常用エレベーターの乗降口・ロビー等。開放廊下なら階段等から5m以内。原則として各階の同一位置 |
| 鈴鹿市消防本部 | 第4章 第21 2⑵イ(無印)/アは第20 2⑶オを準用(●法令+指導) | 当該階の各部分からアの位置の非常コンセントまで歩行距離50m以下 | 特別避難階段のバルコニー・付室又は外気に有効に開放された部分で、直通階段から5m以内 |
| 埼玉県央広域消防本部 | 第4章 第21 2⑵イ(無印)/ア(●法令+指導) | 当該階の各部分から前アの非常コンセントまで歩行距離50m以下 | 鈴鹿市と同じく、直通階段から5m以内のバルコニー・付室・開放部分 |
| 津市消防本部 | 5-22 1(凡例の記号なし) | 項目なし | 階段室等の出入口から容易に視認できる5m以内で、原則として放水口と同一位置。乗降ロビーが2以上ある階はそれぞれに設ける |
| 大阪市消防局 | 第5章 第4節 第3 特例基準 3(令第32条) | 11階以上の階の各部分から歩行距離50m以下 | 廊下階の階段室・非常用エレベーターの乗降ロビー等 |
| 東大阪市消防局 | Ⅱ 細目 8 特例基準(令第32条) | 11階以上の各部分から歩行距離50m以下 | エレベーターの乗降ロビー |
| 堺市消防局 | 第23 Ⅱ 細目 1(2)(★市独自の指導) | 当該階の各部分から(1)の非常コンセントまで歩行距離50m以下 | 階段室・非常用エレベーターの乗降ロビー・階段室の付室内又はそこから5m以内 |
埼玉県央広域の第21-4図は、上の階から住戸の中の階段を下りて開放廊下の非常コンセントへ向かう道筋で歩行距離を描いています。
大阪市や東大阪市なら、令第32条の特例として扱われるのですね。
はい、2市は特例基準の中に置いています。
建物のある市の基準で、どの項目に当たるかを確かめましょう。
メゾネット型の非常コンセントを計画するときは何から確かめればよいのか

特定共同住宅等で共同住宅用の設備に代える道もあるので、その条文も見ておきます。
ロ 非常コンセントは、十一階及び当該階から上方に数えた階数三以内ごとに、かつ、特定共同住宅等の各部分から一の非常コンセントに至る歩行距離が五十メートル以下となるように、設けること。
①11階以上で共用廊下や住戸の出入口が無い階を図面で拾い、②その階の一番奥から住戸の中の階段と廊下を通って廊下階の非常コンセントまでの歩行距離を測り、③置く場所が借り先の位置の条件(四日市市なら階段等の近く・各階の同一位置)に合うかを確かめます。
上の省令は、住戸などの主たる出入口が階段室等に面する特定共同住宅等で、通常の非常コンセント設備に代えて共同住宅用非常コンセント設備を使う場合の基準で、11階から3階以内ごと・歩行距離50m以下と決めています。
どちらの道を使うかで根拠と手続きが変わるので、四日市市なら第21 1(2)で行くのか省令の代替で行くのかを、設計の段階で所轄に示して相談するのが確実です。
すでに建っている建物でも、住戸の改装で中の階段の位置が変わると道のりも変わるので、改装の計画が出たときに測り直してください。
省令の代替を使うかどうかでも、根拠の条文が変わるのですね。
そのとおりで、根拠の条文を先に決めてから図面で測ります。
迷ったら設計図を持って所轄の予防課に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
廊下の無い階を図面に塗って、歩行距離を測ってから四日市市消防本部に相談します!
住戸の中の階段の位置で道のりが変わるので、改装のときも測り直すのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法施行令 第29条の2/消防法施行規則 第31条の2(e-Gov法令検索)
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 第5条(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」総則(凡例)/第20 連結送水管 3 放水口(3)(4)/第21 非常コンセント 1 設置位置 消火活動上必要な施設のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第20 連結送水管 2⑶オ 第4章第20のPDF/第21 非常コンセント設備 2⑵ア・イ 第4章第21のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第4章 第21 非常コンセント設備 2⑵ア・イ(第21-4図) 第21のPDF
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-22 非常コンセント設備 1 設置位置 5-22のPDF
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第4節 非常コンセント設備 第3 特例基準 3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「非常コンセント設備の設置に係る運用基準」凡例/Ⅱ 細目 1⑴・8 特例基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第23 非常コンセント設備 Ⅱ 細目 1 設置位置等 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で非常コンセントをどの階のどこに置くかは、所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




