鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」には、駐車場などの泡消火設備や粉末消火設備を移動式にできる場所を決めた節があります。
国の施行規則は、火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所には固定式を設けると定めるだけで、その場所の中身は書いていません。
鈴鹿市はそれを屋上・高架下・開口部の割合などの7つの類型で示しています。
この記事では鈴鹿市の基準を施行規則から順にたどり、埼玉県央広域・四日市市・津市・大阪市・堺市の決め方と比べます。
鈴鹿市で2階建ての自走式駐車場を計画していて、泡消火設備が要る広さです。
壁の少ない造りなので、ホースで使う移動式にできないでしょうか。
鈴鹿市の基準では、外周部の常に開いている開口部が床面積の15%以上あるなどの類型に当たれば、移動式を選べます。
当たるかどうかは開口の測り方で決まります。
ほかの市でも同じ15%で判断するのでしょうか。
実は割合も測り方も本部ごとに違い、20%や10分の1で見る市もあります。
まず国の決まりから順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第18条第4項第1号は、火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所の泡消火設備を固定式とすると定めていて、それ以外の場所なら移動式も選べます
- 鈴鹿市は「煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所」を、屋上・高架下・常時開放の開口部が床面積の15%以上の部分など7つの類型で示しています
- 開口部は偏在しないこと、隣地境界線から0.5m以上離すこと、防火区画ごとに判断することなどの共通事項があり、同じ階で固定式と移動式は原則として混ぜません
- 埼玉県央広域は鈴鹿市とほぼ同じ類型に加えて、手動や遠隔操作ですぐ開けられる開口部の類型も持っています
- 割合の物差しは四日市市が壁の見付面積の20%、大阪市と堺市が床面積の10分の1、津市は割合でなく長辺の一面の開放で決めるなど、本部ごとに違います
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目次
駐車場の泡消火設備はどんなときに移動式を選べるのか

どちらを選べるかは、消防法施行規則が場所で決めています。
一 火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは、固定式のものとすること。
(略)
三 移動式の泡消火設備に用いる泡消火薬剤は、低発泡のものに限ること。
第19条第6項(抜粋)
五 火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所に設置すること。
消防法施行令第13条第1項の表は、駐車の用に供される部分の床面積が地階・2階以上で200㎡以上、1階で500㎡以上、屋上部分で300㎡以上などのとき、泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末のいずれかの消火設備を求めています。
このうち泡消火設備は、規則第18条第4項第1号で、火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所には固定式と決まっています。
裏を返すとそれ以外の場所なら、ホース接続口を各部分から水平距離15m以下に置く移動式(施行令第15条第2号)も選べます。
移動式の不活性ガス消火設備は規則第19条第6項第5号が同じ趣旨を定め、ハロゲン化物(第20条第5項)と粉末(第21条第5項)もこの号の例によります。
ただ、どんな場所が「煙が著しく充満するおそれのある場所」に当たるかは、施行令にも規則にも書かれていません。
屋根のない屋上なら、煙はこもらない気がします。
そのとおりで、鈴鹿市の基準でも屋上部分が最初に挙がっています。
次は鈴鹿市が挙げる類型を見ます。
鈴鹿市はどんな場所なら移動式にしてよいとしているのか

泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の移動式に共通の節です。
省令第18条第4項第1号に規定する「火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所」以外の場所及び第19条第6項第5号(第20条第5項及び第21条第5項)に規定する「火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所」とは、防護対象物となる部分が、次に掲げるものをいう。
1 火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所
⑴ 屋上部分
⑵ 高架工作物(略)の下で、防護対象物となる部分に周壁がなく、柱のみである部分又は周囲の鉄柵のみで囲まれている部分
⑶ 防護対象物となる部分における外周部の開口部が、常時外気に直接開放されており、かつ、排煙上有効な開放部分の合計面積が、防護対象物の床面積の15%以上ある部分
⑴〜⑶に続けて、次の4つが並んでいます。
7つとも記号の付かない項目で、鈴鹿市の凡例では法令基準の扱いです。
- ⑷ 長辺の一辺の全面が常時開放で、他の一辺もその壁面の2分の1以上が常時開放の部分(4層5段以上の自走式駐車場を除く)
- ⑸ 外周の四辺とも上部0.5m以上が常時開放の部分(同じく除く)
- ⑹ 自走式駐車場の天井の開口(エキスパンドメタルなどの部分を含む)の合計が床面積の15%以上の部分(同じく除く)
- ⑺ 多段式の自走式駐車場で、各階の外周の開口が床面積の5%以上かつ外周長さ×0.5m以上あり、車室の各部分から30m以内に12㎡以上の有効開口があり、移動式の設置場所から直通階段まで65m以内のもの
自分の駐車場がどれに当たるかは、立面図で開口の位置と大きさを拾って当てはめるのが第一歩です。
長い辺が全部開いていれば、割合を計算しなくてもよい類型もあるのですね。
はい、⑷と⑸は開き方の形で決まります。
次は開口の数え方の共通事項です。
鈴鹿市は開口部の数え方にどんな条件を付けているのか

類型に当てはめる前に、その開口部が数えられるかをここで確かめます。
⑴ 防護対象物となる部分における外周部の排煙上有効な開口部について
排煙上有効な開口部は、著しく偏在せず(開口部が一面のみにある場合、階高のおおむね2分の1より下方のみの開口部である場合等)、防火対象物の関係者が、安全に初期消火活動ができず、又は安全に避難できないおそれのないものであること。(略)
⑵ 一の階に、複数の防護区画が存する場合は、固定式の消火設備と移動式の消火設備を併存しないこと。(略)ただし、次のいずれかに掲げる場合は、この限りでない。
開口部は常時外気に直接開放されていること、隣地境界線や同じ敷地の他の建物から0.5m以上離すことが条件で、自走式駐車場は高さ1.5m以上の防火壁も要ります(1m以上離せば不要、5層6段以上は2m以上離し、3m以上で不要)。
防火区画がある場合は区画ごとに判断し、割合の分母になる床面積は水平投影面積で数えます。
同じ階に固定式と移動式を混ぜないのが原則で、外気に開いたスロープ部に移動式を置く場合や、移動式の区画から直接屋外か直通階段へ出られる場合などが例外です。
粉末消火設備の場合も、①規則第21条第5項→②第19条第6項第5号の例による→③鈴鹿市 第4章第7 5⑴→④この第3章第11、と番号でたどると同じ節に戻ってきます。
つまり、壁の下のほうだけ開いている駐車場は、割合が足りても数えにくいのですね。
そうです、階高の半分より下だけの開口は偏在の例に挙がっています。
次はほかの本部と比べます。
ほかの消防本部は移動式にできる開口をどう決めているのか

割合の分母や数字が本部ごとに違うのが目立ちます。
(ウ)外気に面する外壁開口部が常時開放された構造の場所で、かつ、当該開口部の合計面積(階高のおおむね1/2より上方で算定する。ただし、天井面がある場合は天井高とする。)が見付面積の合計の20%以上となるもの。(開口部が著しく偏在する場合を除く。)
(エ)屋根(これに相当するものを含む)に直接外気に開放された開口部を有する場所で、かつ、当該開口部の合計面積が当該場所の床面積の10%以上となるもの。(開口部が著しく偏在する場合を除く。)
鈴鹿市と埼玉県央広域は外周の開口を床面積の15%で見ますが、四日市市は壁の見付面積の20%、大阪市は床面積の10分の1、堺市は自走式車庫以外の駐車部分で床面積の10分の1と2面以上の開放を求めています。
津市は割合を使わず、壁面線の長辺が30m以下なら長辺の一面、30mを超えれば長辺を含む二面を開放開口部にする形で決めています。
埼玉県央広域は鈴鹿市の7類型と同じ中身に加え、地上階で区画の外から手動や遠隔操作ですぐ開けられる開口が床面積の20%以上ある部分などの⑻と、電気設備や多量の火気を使う部分の⑼を持っています。
大阪市も常時開放だけでなく、遠隔操作や煙感知器の作動で一斉に開く開口を数えられるとしています(電源が要るものは非常電源が必要で、この項目は◆の行政指導です)。
| 消防本部 | 箇所と記号 | 開口の割合で決める類型 | そのほかの類型 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市消防本部 | 第3章 第11 1⑴〜⑺(無印) | 外周の常時開放の開口が床面積の15%以上 | 屋上/高架下/長辺全面+他の一辺2分の1/四辺の上部0.5m/自走式の天井開口15%/多段式の自走式 |
| 埼玉県央広域消防本部 | 第3章 第11 2⑴〜⑼(無印・⑷〜⑺などに国の通知名を付記) | 鈴鹿市と同じ15%。⑻は区画の外から手動・遠隔ですぐ開けられる開口が床面積の20%以上(有効な排煙装置か越屋根があれば15%以上) | 鈴鹿市と同じ⑴〜⑺+⑼電気設備・多量の火気を使う部分 |
| 四日市市消防本部 | 第4 泡消火設備 6(1)ア(下線なし) | 常時開放の外壁開口が見付面積の20%以上/屋根の開口が床面積の10%以上/1階で外部から容易に開けられる開口が見付壁面積の25%以上 | 屋上駐車場/高架下/総合的に認められる場所/多段式は国の通知による |
| 津市消防本部 | 5-5 泡消火設備 10⑶(凡例の記号なし) | 割合は使わない。長辺30m以下は長辺の一面、30m超は長辺を含む二面を開放(各部分から30m以内)、又は天井中央の開口 | 手すり・はり・隣地との距離の条件付き |
| 大阪市消防局 | 第1章 第7節 第3 1(1)〜(6)((3)のみ◆) | 排煙上有効な開口が床面積の10分の1以上(遠隔操作・煙感知器連動の一斉開放も可) | 屋上駐車場その他完全に開放/道路の高架下等/1層2段・2層3段・3層4段・多段式の自走式 |
| 堺市消防局 | 第3章 第1節 第6 Ⅱ 3(1)ア〜エ(イ◆・ウ★) | 自走式車庫以外の駐車部分は、2面以上が外気に開放+排煙上有効な開口が10分の1以上(★) | 完全開放の屋上/多段式/1層2段〜3層4段(長辺全面+2分の1・四辺上部50cm・天井開口15%) |
| 消防本部 | 開口の高さの数え方 | 隣地などとの距離 | 常時開放以外の開口 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 階高のおおむね2分の1より下方のみの開口は偏在の例 | 0.5m以上(自走式は防火壁、5層6段以上は2m以上) | 数えない(常時外気に直接開放に限る) |
| 埼玉県央広域 | 鈴鹿市と同じ | 鈴鹿市と同じ | ⑴〜⑺は常時開放。⑻⑼で手動・遠隔ですぐ開けられる開口を数える類型あり |
| 四日市市 | 階高のおおむね2分の1より上方で算定(天井があれば天井高)。500mm未満のはりは無視 | 6(1)には記載なし | (オ)1階は外部から容易に開けられる開口を数える |
| 津市 | 開口の上端は床から2m以上、手すりの上端は1.2m以下、50cm以上下がったはり・垂れ壁を設けない | 隣地等まで1m以上(式で求めた開放面積を他の面で確保すれば0.6m) | 数えない(常時開放に限る) |
| 大阪市 | 階高の2分の1以上かつ床から1.8m以上の位置 | 隣地境界線などとの間隔が有効高さより小さいときは間隔を有効高さとして算定 | 遠隔操作・煙感知器連動で一斉に開くものも可(◆) |
| 堺市 | 側面は階高の2分の1以上の部分(小梁・たれ壁まで)、上部の開口は全体を算入(★) | 側面の開口は幅1m以上の通路などの空地に面すること(★) | 「外気に開放」と書き、遠隔開放の扱いは書いていない |
東大阪市の泡消火設備の基準は今回は確認していないので比べていません。
同じ駐車場でも、市が変われば移動式にできるかどうかが変わりそうですね。
はい、とくに割合の分母が床面積か壁の面積かで結果が変わります。
建てる市の基準で計算し直しましょう。
駐車場を移動式で計画するときは何から確かめればよいのか

移動式は人がホースを延ばして使う設備なので、置き方の決まりもあわせて見ておきます。
二 移動式の泡消火設備のホース接続口は、すべての防護対象物について、当該防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が十五メートル以下となるように設けること。
(略)
四 移動式の泡消火設備の泡放射用器具を格納する箱は、ホース接続口から三メートル以内の距離に設けること。
①駐車部分の床面積と階から施行令第13条第1項の表で泡消火設備などが要るかを確かめ、②建てる市の基準でどの類型に当てはめるかを決め、③立面図で開口の位置・高さ・隣地との距離を拾って割合を計算し、④同じ階で固定式と移動式が混ざらないか、区画や階段の位置を確かめます。
鈴鹿市の⑺のような多段式の自走式駐車場では、移動式の設置場所から直通階段まで65m以内も条件です。
津市の基準が防犯のためのフェンスは開放性の高いネットフェンスなどにするよう書いているように、後から付ける囲いも開口の扱いに関わるので、改修のときも計算し直してください。
類型に当たるか迷うときは、立面図と開口の計算表を持って、計画の早い段階で所轄の消防署に相談するのが確実です。
図面で開口の割合を計算してから、建てる市の基準と照らし合わせます。
そのとおりで、分母と高さの取り方を先に決めると計算がぶれません。
迷ったら立面図を持って所轄の予防課に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
開口の割合を計算して、図面を持って鈴鹿市消防本部に相談します!
防犯の囲いや目隠しを後から付けると開口の扱いが変わることもあるので、改修のときも確かめるのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第13条・第15条/消防法施行規則 第18条第4項・第19条第6項・第20条第5項・第21条第5項(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第1章(凡例)/第3章 第11 火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所の取り扱い 第3章第11のPDF/第4章 第7 粉末消火設備 5⑴ 第4章第7のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第11 火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所の取扱い 第11のPDF
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第4 泡消火設備 6 移動式の泡消火設備(1)設置場所 消火設備のPDF
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-5 泡消火設備 10⑶ 5-5のPDF/5-8 粉末消火設備 10 5-8のPDF
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第7節 泡消火設備(低発泡を用いるもの) 第3 移動式に関する基準 1 設置場所 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第6 泡消火設備 Ⅱ 細目 3 移動式(1) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の駐車場を移動式にできるかどうかは、所轄消防署にご確認ください。





