物流倉庫や店舗の裏手には、トラックが荷物を積みおろしするトラックバース(荷捌き場)があります。
駐車場の部分が一定の広さを超えると、泡消火設備などの特殊な消火設備や、自動火災報知設備が必要になります。
そのとき、トラックバースを駐車場の広さに数えるかどうかで、結論が変わることがあります。
堺市消防局の審査基準は、トラックバースの扱いと「すべての車両が同時に屋外に出ることができる構造」の意味を、床面積の数え方の項目に書いています。
この記事では、国の政令と堺市の基準を分けて読み、どの条文に結びつくのかを順番にたどります。
堺市で倉庫を計画していて、建物の中にトラックバースがあります。
ここも駐車場の広さに入るのですか。
堺市の基準では、トラックバースは駐車の部分の床面積に入れるのが原則です。
ただし、駐車に使わせない措置があれば外れます。
横一列に並ぶ車庫は対象外と聞いたことがありますが、本当ですか。
国の政令には「すべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く」という書き方があります。
堺市はその意味も書いていますので、順番に見ていきましょう。
- 国の政令は、駐車の部分の床面積が地階・2階以上で200平方メートル、1階で500平方メートル、屋上で300平方メートル以上の階に、泡消火設備などを求めています
- 堺市の審査基準は、政令第13条・第21条と堺市火災予防条例第67条・第71条に出てくる駐車の部分の床面積を、同じ数え方でそろえています
- トラックバースは床面積に入れるのが原則で、「駐車禁止」の標識(短辺30センチメートル以上、長辺60センチメートル以上)を立てるなど駐車に使わせない措置があれば入れません
- 「すべての車両が同時に屋外に出ることができる構造」は、横に1列に並ぶ車庫のような形をいい、2列に並ぶものも同じ扱いにしてよいとされています
- 出入口にシャッターがある車庫は、横1列でも同時に出られないものとして扱います。大阪市と東大阪市の公開資料には同じ趣旨の記載が見当たりません
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目次
国の基準では駐車場がどの広さから特別な消火設備や感知器の対象になるのか

消防法施行令第13条は、駐車の用に供される部分に、泡消火設備などのいずれかを求めています。
一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの
基準は建物全体ではなく、階ごとの駐車の部分の床面積で判断します。
自動火災報知設備にも、同じ書き方の号があります。
堺市は、火災予防条例で国の基準に上乗せをしています。
| 根拠 | 対象 | 求められる設備 |
|---|---|---|
| 政令第13条第1項 | 駐車の部分の床面積が地階・2階以上で200平方メートル以上、1階で500平方メートル以上、屋上で300平方メートル以上の階 | 水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末のいずれか |
| 政令第21条第1項第13号 | 地階・2階以上で駐車の部分が200平方メートル以上の階 | 自動火災報知設備 |
| 堺市火災予防条例第67条第1項 | (13)項イで延べ700平方メートル以上、吹抜けを共有する2以上の階の駐車の部分の合計200平方メートル以上、屋上の駐車の部分200平方メートル以上 | 水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末のいずれか |
| 堺市火災予防条例第71条第1項第2号 | 屋上を自動車駐車場に使うもの(地階を除く階数が2以下で200平方メートル未満のものを除く) | 連結送水管 |
どちらも、駐車の部分の床面積をどう数えるかで結論が動きます。
同じ駐車場でも、数え方しだいで設備が要るかどうかが変わるのですね。
はい、そこで堺市は床面積の数え方を審査基準にまとめています。
次はトラックバースの扱いを見ます。
堺市ではトラックバースを駐車場の床面積に入れるのか

その1(2)エが、駐車の部分の床面積の数え方です。冒頭で、どの条文に使うのかを書いています。
たどる順番は次のとおりです。
- 出発点は、政令第13条第1項・第21条第1項と、堺市火災予防条例第67条第1項・第71条第1項の駐車の部分の面積の基準です
- 堺市の審査基準1(2)エの柱書が、その4つの条文の言葉を「駐車の用に供される部分等」にまとめます
- (ア)で、駐車する部分、車路、歩行者用の通路を合計します。上下の階に通じる上部が開いた傾斜路などは入れません
- (カ)で、トラックバースも合計に入れると決めています。ただし駐車に使わせない措置があれば入れません
- 合計した面積を、もとの政令や条例の200平方メートルや500平方メートルなどの基準に当てはめます
堺市は、ここも駐車の部分として床面積に入れるのを原則にしています。
外せるのは、「駐車禁止」の標識を立てるなど、駐車に使わせないための措置がとられている場合です。
標識の大きさは、短辺30センチメートル以上、長辺60センチメートル以上と書かれています。
「設置する等」とあるので、標識以外の措置で足りるかどうかは、所轄の消防署で確かめるのが確実です。 仮の数字で考えてみます。
2階にトラックバース150平方メートルと、車路でつながる駐車場80平方メートルがある場合です。
| 数え方 | 2階の駐車の部分の床面積 | 政令第13条・第21条の200平方メートル |
|---|---|---|
| トラックバースを入れる(原則) | 150+80=230平方メートル | 以上になる |
| 駐車禁止の措置でトラックバースを外す | 80平方メートル | 未満 |
耐火構造の壁で区画し、区画の間を車両が通れない場合に限り、区画ごとの床面積で判断します。
分散した駐車場の数え方は、津市の整備工場と駐車場の床面積の記事でも堺市と比べています。
標識を立てるだけで、面積の数え方が変わることがあるのですね。
はい、ただし実際に駐車に使っていないことが前提です。
次は「同時に屋外に出られる構造」を見ます。
すべての車両が同時に屋外に出られる構造とはどんな車庫か

ただ、政令の条文には、どんな形がこれに当たるのかまでは書かれていません。
堺市は、同じ1(2)エの中に、その意味を書いています。
堺市は、2列に並んで収容されるものも同じ扱いにしてよいとしています。
ただし、どの並び方を「2列」とみるかの図は、この項目には示されていません。
計画の段階で、並び方を図面にして所轄の消防署に確かめるとよいでしょう。 堺市の審査基準の凡例では、この(カ)と(キ)には印がありません。
印のない項目は、法令の基準とその解釈として位置づけられています。
横一列の車庫なら、面積が大きくても対象から外れるのですか。
政令の括弧書きではその構造の階は面積の基準から外れます。
ただし、シャッターの有無で扱いが変わります。
シャッターを付けた車庫やトラックバースはどう扱われるのか

横に1列に並んでいても、シャッターがあれば同時に出ることができないものとして扱います。
シャッターを閉めた状態では、車がすぐには外へ出られないからと考えられます。
| 車庫の形 | 堺市の(キ)での扱い |
|---|---|
| 横に1列に並び、出入口にシャッターがない | 同時に屋外に出ることができる構造 |
| 2列に並んで収容される | 同時に屋外に出ることができるものとしてよい |
| 横に1列に並ぶが、出入口にシャッターがある | 同時に出ることができないもの |
まず、トラックバースを駐車の部分に入れるかを(カ)で決めます。
次に、その階が同時に屋外に出ることができる構造の階に当たるかを(キ)で確かめます。
トラックバースの出入口にシャッターを付ける計画なら、(キ)で外れる道は使えないことになります。 なお、政令は「構造の階」で外すので、階の中にほかの駐車場がある場合は、その階全体の形で判断することになります。
堺市条例第67条の(1)は「構造のもの」と書かれており、対象の単位の書き方が政令と違う点にも気をつけます。
シャッターを付けるかどうかで、必要な設備が変わり得るのですね。
はい、設計の早い段階で決めておくのが大切です。
最後に、大阪市と東大阪市の資料と比べます。
堺市と大阪市と東大阪市で駐車場の面積の数え方はどう違うのか

| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 駐車の部分の床面積の数え方 | 審査基準 第2章 第1節 第4 1(2)エにまとめて記載 | 公開の運用基準に同じ趣旨の項目が見当たらない | 公開6資料に記載なし |
| トラックバース | 原則として算入。駐車禁止の措置があれば算入しない | 記載が見当たらない | 公開6資料に記載なし |
| 同時に屋外に出られる構造 | 横1列のほか2列も可、シャッター付きは不可 | 記載が見当たらない | 公開6資料に記載なし |
| 火災予防条例の(13)項イの面積の基準 | 第67条第1項(1)で延べ700平方メートル以上 | 本記事では比べていない | 本記事では比べていない |
東大阪市が公開している運用基準は、消火器具、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯、連結送水管、非常コンセントの6つで、その中にも同じ趣旨の記載はありません。
そのため、大阪市や東大阪市では、国の政令の文言をもとに所轄の消防署と協議することになると考えられます。 堺市で確かめるときの順番を、最後に整理します。
- 計画している階ごとに、駐車する部分、車路、歩行者用の通路の床面積を出します
- トラックバースがあれば、駐車禁止の措置をとるかどうかを決め、とらないなら合計に入れます
- 同じ階の駐車の部分が分かれていれば、耐火構造の壁と車両の通行の有無で、合算するかを決めます
- その階の車庫が横1列や2列で、出入口にシャッターがないかを確かめます
- 政令第13条・第21条と堺市火災予防条例第67条・第71条の基準に当てはめ、図面を持って所轄の消防署で確認します
大阪府内の3市でも、書いてある資料に差があるのですね。
はい、堺市は数え方をまとめて書いているのが特徴です。
他の市では、所轄の消防署で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
トラックバースの使い方とシャッターの有無を、図面で先に決めます。
階ごとの駐車の面積も計算して持っていきます!
数え方を整理しておけば、消防署との協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第4 床面積、階及び高さの取扱い 1(2)エ(ア)(イ)(カ)(キ)、第5章 火災予防条例審査基準 第67条・第71条 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準(消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第13条第1項、第21条第1項第13号
- 特定駐車場における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成26年総務省令第23号)第2条第1号
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





