地下の駐車場や飛行機の格納庫に泡消火設備を置くとき、天井に配管を通す固定式にするか、人がホースを持って使う移動式で済ませるかは、設計の早い段階で決めなければなりません。
その線引きについて、消防庁は都道府県や消防本部からの疑問に、質疑応答の形で答えてきました。
この記事では、昭和48年から昭和56年までの質疑応答から五つを選び、現行の条文と照らして読みます。
開口部や植樹帯があっても移動式でよいのか、順に確かめます。
泡消火設備は、移動式のほうが安く済みそうなんですが。
そこが質疑応答で何度も問われた点です。
五つの質疑応答を、順に見ていきます。
回答は、今の条文とどうつながっているんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 移動式の泡消火設備は、昭和48年の回答で常時人がおり、かつ煙が著しく充満しない場所に限るとされ、固定式には場所の制限がありません
- 排煙上有効な開口部が床面積の15パーセント程度あっても、地下駐車場は移動式が認められないと答えられました
- 公園の下の半地下駐車場は、植樹帯や芝を設けても煙が著しく充満するおそれのある場所として移動式は不適当とされました
- 小型飛行機の格納庫は、北面と南面の扉が容易に開放できるなら移動式を認めてよいとされ、面積の大小は判断に関係しません
- フォームヘッドの泡消火設備には、送水口を附置させることは適当でないとされ、放射した水の散水分布が消火に有効とは限らないからです
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目次
泡消火設備の移動式は、どんな場所なら選べるのか

昭和48年に、熊本県が固定式と移動式の使い分けを問い合わせました。
そこで、泡消火設備の固定式、移動式の使用区分についてご教示願います。
(昭和48年4月21日 消防予第63号 予防課長から熊本県あて回答)
現行の規則第18条第4項第1号は、火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは、固定式のものとすることと定めています。固定式の泡放出口は、令第15条第1号と規則第18条第1項の基準で設けます。
一方の移動式は、令第15条第2号が、防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離を15メートル以下と定めています。人がホースを引き出して放射する設備なので、その人が近づいて操作できる場所でなければ成り立ちません。
回答が示した「常時人がおり」「少なくとも2方向が開放されている」という具体的な目安は、現行の条文には書かれていません。条文が求める線引きの中身と、この回答から読み取れます。
移動式は、人がいて煙もこもらない場所だけなんですね。
はい。
固定式なら場所の制限はありません。
排煙上有効な開口部がある地下駐車場は、移動式でよいのか

昭和50年の質疑応答は、開口部の割合まで挙げて問うています。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
問が引いた規則第18条第4項第1号は、現行でも同じ番号で残っています。地下駐車場等は、一般に煙が著しく充満するおそれのある場所に当たるという前提のうえで、開口部があれば移動式にできるかが問われました。
回答は理由を書いていません。ただ、常時開放の部分が床面積の15パーセント、手動開放でも20パーセントという割合があっても、煙が著しく充満しない場所とは扱われなかった、という読み方になります。
設計では、開口部を設けたことだけを理由に移動式へ切り替えることはできません。固定式で計画することを先に決め、そのうえで所轄の消防機関に確かめます。
開口部があっても固定式なんですね。
そうです。
地下駐車場は原則として固定式で考えます。
公園の下の半地下駐車場は、植樹帯があれば移動式で足りるのか

昭和55年に福岡県が、その場合に移動式が認められるかを問い合わせました。
1 植樹帯に接した開口部(別図参照)があり、周囲に芝を4メートル張り、残り1メートルに植樹させることで、「火災のとき著しく煙が充満するおそれがないもの」として取り扱うことができるか。認められるならば、移動式泡消火設備を認めて支障ないか。また、駐車装置側面図にある如く、車両が二階となり排煙に支障があるとして、固定式消火設備を設置させるべきか。あるいは、外部に接した駐車室に移動式、中央駐車室には固定式消火設備を設置させるべきか。
2 固定式消火設備を設置しなければならないとされた場合には泡消火設備を予定しておりますが、この場合、非常電源は自家発電設備、蓄電池設備、非常電源専用受電設備のいずれでも良いか。
自走式機械二段式駐車場、鉄筋コンクリート造1階建、面積3,273.74平方メートル、収容台数196台。
2 お見込みのとおり。
(昭和55年3月27日 消防予第49号 消防庁予防救急課長から福岡県民生部長あて回答)
問に添えられた開口部の計算書には、開口部の合計が442.932平方メートルで、床面積の30分の1にあたる109.1平方メートルを上回ると書かれていました。それでも、周囲に芝と植樹帯を設けた程度では、煙が著しく充満するおそれのない場所とは認められなかったことになります。
答2の非常電源は、現行では規則第18条第4項第13号が、規則第12条第1項第4号の例によると定めています。選べるのは、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備です。ただし、特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のものは、非常電源専用受電設備を除く自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備から選びます。
植樹帯や芝があっても、移動式は不適当なんですね。
はい。
周囲の景観ではなく、煙が充満するかどうかで決まります。
小型飛行機の格納庫は、扉を開けられれば移動式でよいのか

昭和56年に秋田県が、その扉を開けられる格納庫に移動式を認めてよいかを問い合わせました。
1 新秋田空港に小型飛行機の格納庫(別図)を新築するに当り移動式泡消火設備の設置を認めてよいか。
2 移動式泡消火設備の設置が認められる場合の条件について
(1) 格納庫の規模(面積の大小)により限定されるか。
(2) 二方向に容易に開放できるシャッターを取り付けた場合開放されている部分とみなされるか。
2(1) 移動式泡消火設備が認められるかどうかの判断は、格納庫の規模(面積の大小)に関係なく、火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所であるかどうかによるものである。
(2) 随時容易に開放できるもので、火災のとき発生する煙を有効に排除できるものであれば開放されている部分とみなしてさしつかえない。
(昭和56年1月6日 消防予第1号 消防庁予防救急課長から秋田県民生部長あて回答)
航空機又は回転翼航空機の格納庫は、令別表第一(13)項ロに当たり、令第13条第1項の表が、泡消火設備又は粉末消火設備のいずれかの設置を求めています。
回答が示した判断の軸は、面積ではなく規則第18条第4項第1号の煙が著しく充満するおそれのある場所かどうかという一点です。北面と南面の扉が容易に開放でき、煙を有効に排除できるなら、その部分は「開放されている部分」とみなせるので、移動式が認められました。
第1の回答と並べると違いがはっきりします。地下駐車場では開口部があっても移動式が認められず、格納庫では扉を容易に開放できるという条件が付いて移動式が認められました。
格納庫は、扉が開くのが決め手なんですね。
そうです。
規模ではなく、煙を排除できるかで見ます。
泡消火設備のある地下駐車場に、送水口を付けさせてよいのか

泡消火設備に送水口を付ければ、その代わりにできるのかが、昭和50年に問われました。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
連結散水設備は、令第28条の2第1項が、地階の床面積の合計が700平方メートル以上の防火対象物に設置すると定めています。同条第3項は、送水口を附置した泡消火設備などを設置したときは、その有効範囲の部分に連結散水設備を設置しないことができるとしています。
質問は、この第3項を使って、地下駐車場の泡消火設備に送水口を付けさせる指導ができるかを問うたものです。現行の規則第18条第1項第2号は、駐車の用に供される部分にはフォームヘッドを設けると定めていて、回答が「必ずしも有効ではない」とした対象と合っています。
回答は、免除できるかどうかには触れていません。送水口の附置を前提に免除を考えるなら、所轄の消防機関と個別に協議すると読めます。
フォームヘッドでは、送水口を付けさせないんですね。
はい。
散水の分布が消火に有効とは限らないからです。
よくある質問
まとめ
回答が、条文とつながりました。
うちの建物も確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第13条・第15条・第28条の2・第32条
- 消防法施行規則第12条・第18条
- 泡消火設備の固定式と移動式の使用区分に関する質疑(昭和48年4月21日 消防予第63号 予防課長から熊本県あて回答)
- 地下駐車場等の泡消火設備に関する質疑(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 公園内の半地下式駐車場の消防設備に関する質疑(昭和55年3月27日 消防予第49号 消防庁予防救急課長から福岡県民生部長あて回答)
- 格納庫の消火設備に関する質疑(昭和56年1月6日 消防予第1号 消防庁予防救急課長から秋田県民生部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





