鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」には、動力消防ポンプ設備のホースが有効に放水できる長さを数字で示した項目があります。
消防法施行令はホースの長さを、水源から一定の範囲の各部分に有効に放水できる長さとするだけで、ホースの先から水がどこまで飛ぶかは書いていません。
埼玉県央広域はポンプの級によって概ね15mか概ね7mを足すと決め、さらに実放水して訓練できる自衛消防隊を設置の条件にしています。
この記事では埼玉県央広域の基準を施行令から順にたどり、鈴鹿市・四日市市・津市・大阪市・堺市の決め方と比べます。
鴻巣市で平屋の大きな倉庫を建てる計画があり、屋外消火栓の代わりに動力消防ポンプ設備を置けないか考えています。
ポンプとホースをそろえれば済むのでしょうか。
施行令はポンプの級ごとに水源から届かせる範囲を決めていて、埼玉県央広域はホースの先から飛ぶ距離の数え方まで決めています。
扱う人の条件もあります。
ほかの市でも同じ数え方なのでしょうか。
足す距離も扱う人の条件も本部ごとに違い、設置を勧めていないと書く市もあります。
まず国の決まりから順に見ていきましょう。
- 施行令第20条は水源から届かせる範囲をポンプの規格放水量で分け、0.5㎥毎分以上なら100m、0.4㎥毎分未満なら25mとしています
- 埼玉県央広域は有効に放水できる長さを、ホースの長さにB-2級以上で概ね15m、B-3級以下で概ね7mを足して数えます
- 堺市は放水距離の実測値を足し、津市は20mホース5本以上と本数で示しています
- 屋外消火栓の代わりにするなら規格放水量0.4㎥毎分以上が要り、級別の表ではB-3級以上に当たります
- 埼玉県央広域は実放水して訓練できる自衛消防隊を求め、四日市市は熟練した自衛消防隊の常駐を指導し、鈴鹿市は設置を推奨していません
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目次
動力消防ポンプ設備はポンプの級で届かせる範囲が変わるのか

施行令第20条は、ポンプが出せる水の量で水源を置く間隔とホースの長さを決めています。
一 動力消防ポンプ設備の水源は、防火対象物の各部分から一の水源までの水平距離が、当該動力消防ポンプの規格放水量が〇・五立方メートル毎分以上のものにあつては百メートル以下、〇・四立方メートル毎分以上〇・五立方メートル毎分未満のものにあつては四十メートル以下、〇・四立方メートル毎分未満のものにあつては二十五メートル以下となるように設けること。
二 動力消防ポンプ設備の消防用ホースの長さは、当該動力消防ポンプ設備の水源からの水平距離が(略)の範囲内の当該防火対象物の各部分に有効に放水することができる長さとすること。
規格放水量は「動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令」第21条の別表で、ポンプの級別ごとに決まっています。
| ポンプの級別 | 規格放水圧力 | 規格放水量 | 水源から届かせる範囲(施行令第20条第4項) |
|---|---|---|---|
| A-1級 | 0.85MPa | 2.8㎥毎分以上 | 100m以下 |
| A-2級 | 0.85MPa | 2.0㎥毎分以上 | 100m以下 |
| B-1級 | 0.85MPa | 1.5㎥毎分以上 | 100m以下 |
| B-2級 | 0.7MPa | 1.0㎥毎分以上 | 100m以下 |
| B-3級 | 0.55MPa | 0.5㎥毎分以上 | 100m以下 |
| C-1級 | 0.5MPa | 0.35㎥毎分以上 | 25m以下 |
| C-2級 | 0.4MPa | 0.2㎥毎分以上 | 25m以下 |
別表にはD-1級・D-2級もありますが、施行令第20条第3項が規格放水量0.2㎥毎分以上を求めているので、D級は設置基準を満たしません。
水源から25mと100mでは、同じ建物でも置く水源の数が大きく変わります。
まずは使う予定のポンプの級を仕様書で確かめ、配置図に水源からの範囲を描くところから始めます。
級が1つ違うだけで、届かせる範囲が4倍も変わるのですね。
B-3級とC-1級の境目で、100mと25mに分かれます。
次は埼玉県央広域が決めたホースの数え方を見ます。
有効に放水できる長さはホースの長さに何メートル足せるのか

埼玉県央広域はこれを級ごとの数字で示しています。
2 性能
⑵ 政令第20条第4項第2号の「有効に放水できる長さ」とは、ホース長さに放水距離B-2級以上は概ね15m、B-3級以下は概ね7mを加えて消火できる長さをいう。
4 器具
⑵ 消防用ホースは、政令第20条第4項第2号の規定によるほか、設置する動力消防ポンプごとに、当該ポンプの放水口に結合できるもので、防火対象物の各部分から水源に部署した動力消防ポンプまで容易に到達できる本数以上を設けること。●
2⑵には▲も●も付いていません。
計算上は、20mのホースを4本つなぐと80mで、B-2級なら概ね95m、B-3級なら概ね87mまでを消火できる長さとして数えます。
4⑶はノズルとホースについて第8 屋外消火栓設備の6⑸⑹を準用していて、たどると平ホース(6⑹ア●)で、呼称50又は65・長さ20mのものを2本以上(6⑹イ▲)となります。
ほかの本部は、足す距離を数字で示さず、本数の書き方で決めています。
| 消防本部 | ホースの長さ・本数の決め方 | 記号 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域 | ホースの長さに放水距離(B-2級以上は概ね15m、B-3級以下は概ね7m)を足す(2⑵)。本数は各部分からポンプまで容易に到達できる本数以上(4⑵) | 2⑵は記号なし/4⑵は● |
| 堺市 | ホースを延ばした長さに、その級の放水性能で放水したときの放水距離の実測値を足す(Ⅱ4(3)) | 記号なし |
| 津市 | 有効範囲となる部分に有効に注水できる本数として20mホース5本以上(4⑵) | 凡例の記号なし |
| 鈴鹿市 | 各部分から水源に部署したポンプまで容易に到達できる本数以上(3⑵) | 記号なし |
| 四日市市 | 各部分から水源に部署したポンプまで容易に到達できる本数(3(2)) | 下線なし |
| 大阪市 | ポンプの放水口ごとに施行令第20条第4項第2号によるホースを設ける(第4 2(1)) | 記号なし |
東大阪市の運用基準には動力消防ポンプ設備の節が無く、行田市と羽生市は消防用設備等の審査基準を公開していないので、表に入れていません。
同じB-3級でも、どこまで届くと数えるかは市によって違うのですね。
堺市で計画するなら、放水距離の実測値の根拠を所轄に確かめておくと安心です。
次は屋外消火栓の代わりにするときのポンプの級です。
屋外消火栓の代わりにするにはどの級のポンプが要るのか

ただし代わりにできる階と、要るポンプの力には条件があります。
動力消防ポンプ設備は、(略)規格放水量が第一項第一号に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものにあつては〇・二立方メートル毎分以上、同項第二号に掲げる建築物に設置するものにあつては〇・四立方メートル毎分以上であるものとする。
第11条第4項(抜粋)
(略)当該設備の有効範囲内の部分(屋外消火栓設備及び動力消防ポンプ設備にあつては、一階及び二階の部分に限る。)について屋内消火栓設備を設置しないことができる。
第20条第1項第1号は屋内消火栓設備が要る建物(第11条第1項各号。第4号を除く)、第2号は屋外消火栓設備が要る建物(第19条第1項)を指します。
屋外消火栓の代わりは規格放水量0.4㎥毎分以上が要り、別表ではC-1級が0.35㎥毎分なので、満たすのはB-3級以上です。
第19条第4項は、動力消防ポンプ設備を第20条の基準で設けたとき、その有効範囲内の部分に屋外消火栓設備を設置しないことができるとしています。
屋内消火栓の代わりはC-2級から使えますが、第11条第4項で省けるのは1階と2階の部分に限られます。
| 消防本部 | 級や代わりにするときの書き方 |
|---|---|
| 埼玉県央広域 | 規格放水量は省令の別表の規格放水量以上(2⑴・記号なし)。級別の表は参考として載せ、代わりにする場合の級の指定はない |
| 津市 | 表の注で、施行令第20条第1項第1号に設けるものはC-2級以上、第2号に設けるものはB-3級以上とする(3) |
| 堺市 | 屋外消火栓設備の代わりはB-3級以上、屋内消火栓設備の代わりは建物内に容易に進入できる出入口を設ける(Ⅱ6★) |
| 鈴鹿市・四日市市・大阪市 | 級の指定の記述なし |
平屋の倉庫で屋外消火栓の代わりにするなら、軽い小型のポンプでは足りないということですね。
C級のポンプは屋外消火栓の代わりには使えません。
購入する前に仕様書で級を確かめておきましょう。
水源はどこまでを有効水量として数えるのか

ただ地下の水槽のどこまでを数えるかは、本部の基準を読む必要があります。
三 水源は、その水量が当該動力消防ポンプを使用した場合に規格放水量で二十分間放水することができる量(その量が二十立方メートル以上となることとなる場合にあつては、二十立方メートル)以上の量となるように設けること。
四 動力消防ポンプは、(略)その他のものにあつては水源の直近の場所に常置すること。
計算すると、C-2級は0.2㎥毎分×20分で4㎥、B-3級は0.5㎥毎分×20分で10㎥、B-2級以上は20㎥に達するので上限の20㎥です。
埼玉県央広域は地盤面の高さから4.5m以内の水源を有効水量とし、ほかの消防用設備等の水源とは併用しない(▲)としています。
吸管投入孔は長辺・短辺とも0.6m以上(▲)で、その直下に直径又は一辺0.6m以上・深さ0.5m以上のサクションピットを設けます(▲)。
| 消防本部 | 地下の水源の有効水量 | ほかの設備の水源との関係 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域 | 地盤面の高さから4.5m以内(記号なし) | 併用しない▲ |
| 鈴鹿市 | 地盤面下4.5m以内の部分の水量に限る | 消防用水の節(第17 3⑶エ)を準用し、ほかの消火設備の水源とは併用してはならない |
| 四日市市 | 地盤面の高さから4.5m以内(下線なし) | 屋内消火栓設備の基準1を準用し、兼用するときは規定水源量を加算、消防用水とは併用しない(下線なし) |
| 津市 | 落差5m未満は水源の下端から0.5m以内を含めない。落差5m以上は落差4.5m以内 | 5-2屋内消火栓設備1に準じ、兼用するときは規定水源水量を加算 |
| 大阪市 | 地盤面から4.5m以内の貯水面までの水量(第2◆) | 兼用は吸水位置が固定しているもの又は自然水利など十分な水量のものに限る(第2◆) |
| 堺市 | 地盤面の高さから4.5m以内★ | 併用しない★ |
つまり、ほかの消火設備と同じ水槽を使えるかどうかも市で分かれるわけですね。
埼玉県央広域では専用の水源が前提です。
次は、誰が扱えれば認められるのかを見ます。
誰が扱えれば動力消防ポンプ設備で消火栓に代えられるのか

使える人がいるかどうかが、各本部の基準で最後の条件になっています。
5 設置条件
屋内・屋外消火栓設備に替えて動力消防ポンプ設備を設置する対象物には、当該動力消防ポンプを実放水して訓練できる自衛消防隊が組織されていること。▲
埼玉県央広域の▲は、法令の基準に行政指導を加えた項目を示す印です。
四日市市は代わりにできる建物を(12)項イ・(14)項・それらを含む(16)項に絞り、操作に熟練した自衛消防隊の常駐を求めています(第9 6・全文に下線=行政指導)。
鈴鹿市は節の冒頭で、使い方が難しく外気温などの影響を受けやすいとして設置を推奨していないと書き、定期点検とは別に日常の自主点検を記録するよう求めています(4▲)。
堺市は概要の中で、訓練で操作に習熟した従業員等が常駐できる施設に限るのが望ましいとしています。
| 消防本部 | 扱う人・体制についての書き方 |
|---|---|
| 埼玉県央広域 | 実放水して訓練できる自衛消防隊が組織されていること(5▲) |
| 四日市市 | (12)項イ・(14)項・それらを含む(16)項で、操作に熟練した自衛消防隊が常駐(第9 6・下線) |
| 鈴鹿市 | 設置を推奨していない(冒頭)。日常的な自主点検を行い記録・保存(4▲) |
| 堺市 | 訓練等で操作に習熟した従業員等が常駐できる施設に限るのが望ましい(Ⅰ概要) |
| 津市・大阪市 | 扱う人や体制の記述なし |
③水源の深さと専用か兼用かを決め、④訓練する自衛消防隊の編成と訓練の記録の残し方を消防計画に書いておきます。
扱いに迷うときは、配置図とポンプの仕様書を持って早めに所轄の消防署に相談するのが確実です。
ポンプを置くだけでなく、実際に水を出して訓練する人を決めておく必要があるのですね。
そのとおりで、訓練の日時と内容は消防計画に沿って記録しておきましょう。
配置図ができたら所轄の予防課に見てもらうと確実です。
よくある質問
まとめ
ポンプの級と訓練の体制をそろえてから、埼玉県央広域消防本部に相談します!
ホースの本数と水源の位置は配置図で一緒に確かめると話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第11条第4項・第19条第4項・第20条(e-Gov法令検索)
- 動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令 第21条・別表(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第4章 第9 動力消防ポンプ設備 2・3・4・5/第8 屋外消火栓設備 6⑸⑹ 第9のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第9 動力消防ポンプ設備(冒頭・2・3・4)/第17 消防用水 3⑶エ 第4章第9のPDF
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第9 動力消防ポンプ 2・3・6/屋内消火栓設備 1 審査基準のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-10 動力ポンプ設備 2・3・4/5-2 屋内消火栓設備 1 5-10のPDF
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第12節 動力消防ポンプ設備 第2・第4 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第11 動力消防ポンプ設備 Ⅰ・Ⅱ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で動力消防ポンプ設備を消火栓の代わりにできるかどうかは、所轄消防署にご確認ください。





