地階を除く階数が11以上の建物には、消防隊が使う非常コンセント設備が必要です。
ところが実際には、上のほうの階がとても小さい建物や、屋上に塔屋が載っているだけの建物もあります。
大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、11階以上の部分が200平方メートル以下の建物と、11階以上が塔屋だけの建物について、非常コンセント設備を設置しないことができる特例を書いています。
この記事では、国の政令と大阪市の運用を分けて読み、特例がどの条文につながっているのかを順番にたどります。
東大阪市と堺市の基準とも比べます。
大阪市で12階建てのビルを計画しています。
11階と12階は小さな部屋だけなのですが、非常コンセントは要りますか。
大阪市の運用基準には、11階以上の部分の床面積の合計が200平方メートル以下なら設置しないことができる特例があります。
まず国の基準から確かめましょう。
屋上にエレベーターの機械室が載っているだけでも、11階建てになるのですか。
塔屋が階数に入るかどうかは、建物の階数の数え方で決まります。
大阪市には塔屋だけの場合の特例もあるので、順番に見ていきます。
- 国の政令は、地階を除く階数が11以上の建築物に非常コンセント設備を求め、11階以上の階に設けるよう定めています
- 大阪市の運用基準は、消防法施行令第32条を適用する特例として、非常コンセント設備を設置しないことができる場合を書いています
- 11階以上の部分の床面積の合計が200平方メートル以下の防火対象物は、設置しないことができるとされています
- 11階以上の部分を昇降機塔などにしか使わず、電動機等以外の可燃物を収容も使用もしない防火対象物も同じ扱いです
- 東大阪市と堺市の公開資料には、この2つの特例と同じ項目は見当たりません。どの市でも計画の段階で所轄の消防署に確かめます
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目次
国の基準では非常コンセント設備はどんな建物に必要なのか

非常コンセント設備は、消防隊が照明や資機材の電源に使う設備です。
消防法施行令第29条の2第1項は、設置が必要な防火対象物を次のように定めています。
一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が十一以上のもの
二 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
11階以上の部分がどれだけ小さくても、地階を除く階数が11以上なら、この号に当たります。
そのうえで、第2項第1号が、どの階に設けるのかを決めています。
つまり、11階以上の各階に、各部分から水平距離50メートル以内となるように設けるのが国の基準です。
建物の階数の数え方は、消防法施行令には書かれていません。
堺市の審査基準は、階数の算定を建築基準法施行令第2条第1項第8号によるとしています。
塔屋がそれより大きい場合は、階数に入ることになります。
設置義務の全体像は非常コンセント設備の設置義務を全国向けに解説した記事で取り上げています。
上の階がどれだけ小さくても、11階建てなら国の基準では対象になるのですね。
はい、政令の条文には面積で外す書き方がありません。
そこで大阪市の運用基準を見ていきます。
大阪市では11階以上の部分が200平方メートル以下ならどう扱うのか

その第3が特例基準で、冒頭にどの条文を使うのかを書いています。
(1) 11階以上の部分の床面積の合計が200平方メートル以下であるもの
- 出発点は、消防法施行令第29条の2第1項第1号の「地階を除く階数が十一以上」です
- 階数は建物全体で数えるので、上の階が小さくても11階建てなら設置義務の対象になります
- 大阪市の運用基準 第5章 第4節 第3の柱書が、消防法施行令第32条を適用すると書いています
- 第3の2(1)が、11階以上の部分の床面積の合計200平方メートル以下を条件に、設置しないことができるとしています
- 令第32条の判断は消防長又は消防署長が行うので、計画の段階で所轄の消防署と協議します
| 11階の床面積 | 12階の床面積 | 11階以上の合計 | 大阪市の第3の2(1) |
|---|---|---|---|
| 120平方メートル | 60平方メートル | 180平方メートル | 200平方メートル以下に当たる |
| 150平方メートル | 100平方メートル | 250平方メートル | 当たらない |
大阪市の凡例では、この特例基準のように印のない項目は「法令基準」です。
消防庁予防課長通知等で示された法令解釈基準を含むとされ、◆の行政指導基準とは区別されています。
上の2つの階が合わせて200平方メートル以下なら、省ける可能性があるのですね。
はい、ただし令第32条の判断は所轄の消防長や消防署長が行います。
次は塔屋だけの建物を見ます。
11階以上が塔屋だけの建物はどう扱われるのか

1つめは、11階以上の部分を昇降機塔、装飾塔、物見塔などにしか使わないことです。
2つめは、電動機等以外の可燃物を収容も使用もしないことです。
エレベーターの巻上機などの電動機は置いてよく、それ以外の燃える物を持ち込まないという書き方です。 ここで、最初の見出しで見た階数の数え方とつなげて読みます。
塔屋が建築面積の8分の1以下なら階数に入らないので、そもそも11階建てになりません。
そのため、この(2)が意味を持つのは、塔屋が階数に入って11階以上になる場合だと考えられます。
原文にその説明はないため、塔屋の面積や使い方は図面で所轄の消防署に確かめてください。 同じ形の特例は、大阪市の連結送水管の節にもあります。
| 項目 | 非常コンセント設備 第3の2(2) | 連結送水管 第9の2 |
|---|---|---|
| 対象になる階 | 11階以上の部分 | 7階以上の階の部分 |
| 延べ面積の条件 | 書かれていない | 2,000平方メートル未満 |
| 塔屋に置ける物 | 電動機等以外の可燃物は収容・使用しない | 電動機以外の可燃物は収容・使用しない |
| 柱書の根拠 | 令第32条 | 令第32条又は条例第47条 |
連結送水管の特例は大阪市の連結送水管の特例を解説した記事で取り上げています。
可燃物のない展望塔で令第32条を適用し、非常コンセント設備の設置を免除して差し支えないとした国の質疑応答は、観音像の消防用設備等の質疑を解説した記事で紹介しています。
塔屋に倉庫を作って物を置くと、この特例は使えなくなるのですか。
原文は電動機等以外の可燃物を収容又は使用しないと書いています。
物を置く計画なら、この(2)には当たらないと読めます。
仮設建築物やメゾネット型の住戸はどう扱われるのか

1つは仮設建築物で、存する期間が6カ月以内なら非常コンセント設備を設置しないことができます。
この項目は設置しないことができるのではなく、非常コンセントの位置の決め方を変える特例です。
(1) 廊下階の階段室、非常用エレベーターの乗降ロビー、その他これらに類する場所で消防隊が有効に活用できる位置に設けること
(2) 当該防火対象物の11階以上の階の各部分から1の非常コンセントまでの歩行距離が50メートル以下であること
仮設建築物の特例は大阪市の仮設建築物の特例を解説した記事、メゾネット型の扱いは四日市市のメゾネット型の非常コンセントを各本部と比べた記事で詳しく比べています。
同じ特例基準でも、省けるものと置き方が変わるものがあるのですね。
はい、1と2は設置しないことができる、3は置く位置の特例です。
最後に東大阪市と堺市と比べます。
大阪市と東大阪市と堺市で非常コンセントの特例はどう違うのか

堺市の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第23 非常コンセント設備には、特例基準の項目そのものが見当たりません。
設置位置等の(2)で、共用廊下などが2〜3階層ごとの特殊な階層は歩行距離50メートル以下とする書き方をしています。
この上乗せは堺市の7階と9階の放水口を解説した記事でも触れています。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 11階以上の部分が200平方メートル以下 | 設置しないことができる(第3の2(1)) | 項目なし | 項目なし |
| 11階以上が塔屋だけ | 設置しないことができる(第3の2(2)) | 項目なし | 項目なし |
| 仮設建築物 | 6カ月以内なら設置しないことができる | 項目なし | 項目なし |
| メゾネット型など | 廊下階に設け歩行距離50メートル以下 | 乗降ロビーに設け歩行距離50メートル以下 | 特殊な階層は歩行距離50メートル以下(★) |
| 上乗せ | 本記事の範囲では見当たらない | 本記事の範囲では見当たらない | 7階と9階にも設ける(★) |
東大阪市の保護箱の数え方は東大阪市の非常コンセントの1回路10個の記事で比べています。 大阪市で確かめるときの順番を、最後に整理します。
- 屋上の塔屋を含めて、地階を除く階数が11以上になるかを確かめます
- 塔屋が建築面積の8分の1以下で階数に入らないかを、建築の図面で確かめます
- 11階以上の部分の床面積を合計し、200平方メートル以下かを確かめます
- 11階以上が塔屋だけなら、電動機等以外の可燃物を収容も使用もしない計画かを確かめます
- 令第32条の適用になるので、図面を持って所轄の消防署で確認します
大阪府内の3市でも、特例の書き方がずいぶん違うのですね。
はい、大阪市は面積と塔屋の特例を書いているのが特徴です。
他の市では、所轄の消防署で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
塔屋の面積と11階以上の床面積を、図面で先に計算します。
使い方も決めてから消防署に持っていきます!
条件を整理しておけば、消防署との協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第5章 第4節 非常コンセント設備 第3 特例基準 柱書・1・2(1)(2)・3、第5章 第3節 連結送水管 第9 特例基準 2 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「非常コンセント設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 8 特例基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第4 2 階数の算定、第2章 第2節 第3 高層建築物に係る指導指針 9(4)、第3章 第1節 第23 非常コンセント設備 Ⅱ 細目 1 設置位置等 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第29条の2、第32条
- 建築基準法施行令 第2条第1項第8号
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





