1階が店舗で上の階が家族の住まいという建物では、住宅の部分を消防法上どう扱うかで、消防用設備等の判定が変わります。
国の通知は、店舗などの部分と一般住宅の部分の床面積を比べて、一般住宅・単体の用途・複合用途のどれになるかを分ける枠組みを示しています。
埼玉県央広域消防本部(鴻巣市・桶川市・北本市)の審査基準は、この枠組みに「おおむね等しい」の目安と、住宅の面積の按分を書き足しています。
この記事では県央広域の書き方を国の条文から順にたどり、鈴鹿市・四日市市・津市・堺市の基準と比べます。
鴻巣市で1階が店舗、2階が自宅の建物を建てる予定です。
住宅の部分も消防設備の面積に入るのか、よく分かりません。
店舗と住宅のどちらが広いかで、建物全体の扱いが変わります。
県央広域の基準は、住宅の面積の振り分け方まで書いています。
隣の市に建てても、同じ数え方になるのでしょうか。
目安の数字や振り分け方は、消防本部によって違います。
順番に見比べていきましょう。
- 店舗などの部分が住宅より小さく50㎡以下なら建物全体が一般住宅、住宅より大きければ別表の防火対象物か複合用途、というのが基本の枠組みです
- 「おおむね等しい」の目安は、県央広域が差10㎡以内、鈴鹿市が10%以内、四日市市が5%以内と分かれています
- 県央広域は、二つ以上の用途と住宅が入る建物で住宅の面積を各用途に按分し、広いほうの用途の設備を住宅部分にも付けます
- 鈴鹿市は住宅の面積を按分せず、政令第9条で用途ごとに判定する設備の基準面積に算入しないと書いています
- 津市は店舗などが50㎡以下なら住宅の広さに関係なく一般住宅としつつ、民泊や福祉施設などの用途はこの扱いから外しています
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目次
店舗に住まいが付いた建物は消防法でどう扱われるのか

二つ以上の用途が入る建物は(16)項の複合用途防火対象物になり、政令第9条で用途ごとに判定する設備が出てきます。
別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、この節(第十二条第一項第三号及び第十号から第十二号まで、第二十一条第一項第三号、第七号、第十号及び第十四号、第二十一条の二第一項第五号、第二十二条第一項第六号及び第七号、第二十四条第二項第二号並びに第三項第二号及び第三号、第二十五条第一項第五号並びに第二十六条を除く。)の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす。
そのため住宅の部分がある建物は、店舗などと住宅の床面積を比べて、まず建物全体の項を決めることになります。
県央広域の審査基準は第2章 第1の8でこの比べ方を4つに分け、出典として昭和50年4月15日の消防庁通知(消防予第41号・消防安第41号)を挙げています。
ア〜エの4区分には▲や●の記号は付いていません(PDFの画像で確認)。
下の表は県央広域の第1-2表を、言葉を補って並べ直したものです。
| 区分 | 床面積の関係 | 建物全体の扱い |
|---|---|---|
| ア | 別表の用途の部分が住宅より小さく、かつ50㎡以下 | 一般住宅 |
| イ | 別表の用途の部分が住宅より大きい | 政令別表対象物(用途が二つ以上なら複合用途防火対象物) |
| ウ | 別表の用途の部分が住宅より小さく、かつ50㎡を超える | 政令別表対象物と一般住宅の複合用途防火対象物 |
| エ | 別表の用途の部分と住宅がおおむね等しい(差が10㎡以内) | 政令別表対象物と一般住宅の複合用途防火対象物 |
違いが出るのは、エの「おおむね等しい」の目安と、イで用途が二つ以上あるときの住宅の面積の扱いです。
うちの建物は店舗のほうが少し広いので、イの単体の店舗になりそうです。
差が小さいとエに入るかもしれません。
その目安が本部ごとに違うので、次で比べます。
住宅と店舗がおおむね等しいとは何平方メートルの差までなのか

その目安を、県央広域・鈴鹿市・四日市市は数字で書き、津市と堺市は数字を置いていません。
エ 政令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計とおおむね等しい場合(床面積の差が10㎡以内)は、当該防火対象物は政令別表対象物と一般住宅の複合用途防火対象物に該当するものであること。
⑷ 政令別表対象物用途部分の床面積の合計が一般住宅用途部分の床面積の合計と概ね等しい場合(当該用途面積部分の差が10%以内の場合をいう。)は、当該防火対象物は政令別表対象物と一般住宅の複合用途防火対象物として取り扱う。
四日市市は第1章 第2の(16)項の欄で「5%以内の違い」と書き、この場合も複合用途防火対象物に当たるとしています(下線などの行政指導の印は無いことを画像で確認)。
鈴鹿市と四日市市は、割合を何で割るのかまでは書いていません。
下の表は、住宅200㎡の建物で店舗の広さを変えたときの当てはめです(割合はどちらの面積で割っても結論が変わらない例を選びました)。
| 店舗の部分 | 差 | 県央広域(10㎡以内) | 鈴鹿市(10%以内) | 四日市市(5%以内) |
|---|---|---|---|---|
| 208㎡ | 8㎡(約4%) | おおむね等しい→複合用途 | おおむね等しい→複合用途 | おおむね等しい→複合用途 |
| 216㎡ | 16㎡(約7〜8%) | 店舗が大きい→単体の店舗 | おおむね等しい→複合用途 | 店舗が大きい→単体の店舗 |
| 230㎡ | 30㎡(約13〜15%) | 店舗が大きい→単体の店舗 | 店舗が大きい→単体の店舗 | 店舗が大きい→単体の店舗 |
逆に小さな建物では、面積で決める県央広域のほうが幅が広くなります。
たとえば店舗60㎡・住宅52㎡なら差は8㎡で県央広域ではおおむね等しく、割合では約13〜15%なので鈴鹿市と四日市市の目安を超えます。
津市は店舗などが住宅より小さいか「おおむね等しい場合」に複合用途とし、堺市も「おおむね等しい場合」は複合用途としていますが、どちらも数字は書いていません。
数字を書いていない本部では、差がわずかな計画は図面の段階で所轄に確かめておくのが確実です。
同じ216㎡でも、鴻巣市と鈴鹿市で答えが逆になるのですね。
目安の決め方が面積と割合で違うからです。
境目の近くは、計算の根拠を図面に書き添えておきましょう。
二つ以上の用途と住宅が入るビルで住宅の面積はどこに足すのか

このとき住宅の床面積をどう扱うかで、県央広域・鈴鹿市・堺市の書き方がはっきり分かれます。
イ 政令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも大きい場合は、当該防火対象物は政令別表対象物又は複合用途防火対象物に該当するものであること。
この場合、2以上の政令別表対象物の用途に供される場合、一般住宅の用途に供される部分は、当該政令別表対象物の用途に供される部分の床面積に応じ按分するものとする。
イ 一般住宅用途部分を政令別表対象物の用途部分面積に応じて按分し、それぞれの用途の床面積に算入する取り扱いとはしない。したがって、政令第9条の規定の適用を受ける消防用設備等の設置の基準面積の算定については、一般住宅用途部分の床面積は算入しない。
県央広域の第3-4図は、(5)項ロ800㎡・(15)項100㎡・一般住宅100㎡の5階建てを例にしています。
住宅100㎡を800対100の割合で分け、(5)項ロに89㎡、(15)項に11㎡を足して、889㎡と111㎡で判定します。
同じ建物を鈴鹿市の書き方に当てると、住宅の100㎡はどちらにも足さず、政令第9条で用途ごとに判定する設備は800㎡と100㎡で見ることになります。
堺市は、別表の用途が二つ以上あるときは一般住宅も独立した一つの用途として扱い、別表の用途と一般住宅の複合用途防火対象物とすると書いています。
さらに堺市は★(市独自)の印を付けて、住宅を含めた用途で主たる用途が延べ面積の90%以上・ほかの用途の合計が300㎡未満なら、従属の扱いで単体の用途になり得る例を示しています。
| 県央広域 | 鈴鹿市 | 堺市 | |
|---|---|---|---|
| 住宅の面積 | 各用途に按分して足す | 按分しない・政令第9条の基準面積に算入しない | 一般住宅を独立した一つの用途として扱う |
| 第3-4図の建物((5)項ロ800㎡・(15)項100㎡・住宅100㎡) | (5)項ロ889㎡・(15)項111㎡ | (5)項ロ800㎡・(15)項100㎡ | (5)項ロ・(15)項・一般住宅の複合用途(記事内の当てはめ) |
| 根拠の箇所 | 第2章 第1 8イ・第3章 第6 5 | 第3章 第3 5⑵イ | 第2 1(5)イ(★の例示を含む) |
住宅の100㎡を足すか足さないかで、判定に使う面積が変わるのですね。
基準の面積の境目に近い建物では、結論が逆になることもあります。
どちらの数え方かを先に確かめてから計算しましょう。
住宅の部分にはどの消防用設備等を付けるのか

県央広域と鈴鹿市はどちらも政令第9条の取り扱いの節で、住宅の部分の設備を決めています。
5 一般住宅の取り扱い
第2章第1政令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱い8により、一般住宅の用途に供される部分を2以上の政令別表第1⑴項から⒂項までに掲げる防火対象物(以下この項において「政令別表対象物」という。)の用途に供される部分の床面積に応じて按分した場合は、床面積の大なる政令別表対象物に設置される消防用設備等を設置すること。(第3-4図参照)
ただし、政令第9条の規定の適用のないもの、又は当該政令別表対象物の用途、位置、構造若しくは設備の状況から判断し、火災の発生若しくは延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最小限度に止めることができると認められるものは、これによらないことができる。
第3-4図の例なら、住宅の部分には原則として(5)項ロに設置される消防用設備等を付けると書いています。
ただし書きの後半は、政令第32条とほぼ同じ言い回しで、個別に認められれば別の扱いにできるという意味です。
鈴鹿市は第3章 第3の5で、建物を一つの別表対象物と判定したときは住宅の部分にもその別表対象物の設備を付けるとしています。
複合用途と判定したときは、住宅の部分にも「政令第9条の規定の適用のない消防用設備等」を付け、住宅の部分に限って政令第32条で避難設備(政令第7条第4項の避難器具・誘導灯・誘導標識)を免除できるとしています。
政令第9条のかっこ書きが除いているのは、自動火災報知設備の一部の号や避難器具・誘導灯などで、これらは建物全体で判定する設備なので、鈴鹿市は住宅の部分にも付けるとしていると読めます。 もう一つ、県央広域と鈴鹿市は、住宅の部分だけが避難階以外の階にあり直通階段が一つの建物について、特定一階段等防火対象物の規定の一部を適用しないと書いています。
県央広域は政令第21条第1項第7号、施行規則第23条第4項第7号ヘのかっこ書き、第27条第1項第1号を挙げ、鈴鹿市はこれに施行規則第24条第1項第2号ハを加えています。
住宅の部分にも寄宿舎と同じ設備を付けるとなると、工事の範囲が広がりますね。
最初にどの用途の設備が住宅に及ぶかを決めると見積もりがぶれません。
免除を考えるときは政令第32条の相談として所轄に持ち込みます。
津市で店舗が50平方メートル以下でも一般住宅にならないのはどんな建物か

そのうえで、50㎡以下でも一般住宅として扱わない用途をかっこ書きで挙げています。
⑴ 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が50㎡以下の場合は、一般住宅の用途に供される部分の床面積の如何にかかわらず当該防火対象物(令別表第1(2)項ニ、(5)項イ若しくは(6)項イ(1)から(3)まで若しくはロに掲げる用途に供する部分が存する防火対象物若しくは(6)項ハの用途に供する部分が存する防火対象物((6)項ハに掲げる用途に供する部分において、利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)を除く。)は、一般住宅に該当するものであること。(略)
たとえば店舗40㎡・住宅30㎡の建物は、県央広域・鈴鹿市・四日市市・堺市の書き方では店舗のほうが大きいので別表対象物ですが、津市の書き方では一般住宅になります。
一方で津市は、(2)項ニ、(5)項イ、(6)項イ(1)〜(3)・ロ、入居や宿泊のある(6)項ハが入る建物を、この扱いから外しています。
ほかの4本部の一般住宅の項にはこの除外は書かれていないので、旅館・民泊や福祉施設が入る計画は、その用途の取扱いも含めて所轄に確かめてください。
| 県央広域 | 鈴鹿市 | 四日市市 | 津市 | 堺市 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般住宅になる条件 | 住宅より小さく50㎡以下 | 住宅より小さく50㎡以下 | 住宅より小さく50㎡以下 | 住宅の広さを問わず50㎡以下((5)項イ等を除く) | 住宅より小さく50㎡以下 |
| おおむね等しいの目安 | 差10㎡以内 | 差10%以内 | 5%以内の違い | 数字なし | 数字なし |
| 二つ以上の用途と住宅 | 住宅を按分 | 按分しない・算入しない | 記述なし | 記述なし | 一般住宅も独立した用途(★) |
| 住宅の部分の設備 | 床面積の大きい用途の設備 | 単体なら同じ用途・複合なら第9条の適用のない設備 | 記述なし | 記述なし | 記述なし |
- 住宅の部分と、店舗・事務所など別表の用途の部分の床面積を、共用の廊下や階段の按分も含めて出す
- 建物の所在地の消防本部が「おおむね等しい」をどう決めているかを確かめ、境目に近ければ計算を図面に書き添える
- 別表の用途が二つ以上あるなら、住宅の面積を按分するのか、基準面積から外すのかを確かめる
- 住宅の部分にどの用途の設備が及ぶかを決め、免除を考えるなら政令第32条の相談として事前に持ち込む
津市は50㎡で先に切るので、小さな店舗付き住宅の判断が早いのですね。
ただし宿泊や福祉の用途が入ると、その扱いは使えません。
用途の中身を先に固めてから相談しましょう。
よくある質問
まとめ
店舗と住宅の面積を出したら、埼玉県央広域消防本部に数え方を確かめてから設計を進めます!
共用の階段や廊下の按分も、計算の表にして図面に添えると話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第7条第4項・第9条・第32条・別表第一(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 政令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱い 8 第2章 第1のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第6 政令第9条の取り扱い 5 第3章 第6のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 8・第3章 第3 5 第2章 第1のPDF・第3章 第3のPDF
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第1章 第2 用途の判定及び収容人員の算定((16)項の欄) 審査基準のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-1 令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 2・3 1-1のPDF
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 1(5) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日消防予第41号・消防安第41号。埼玉県央広域の基準が出典として挙げる通知)
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。表の当てはめは記事の説明用に作った例で、実際の判定は所轄の消防本部が行います。





