滑り棒と避難ロープは、2階の窓などから地上へ降りるための避難器具です。
国の基準では2階に設けられる器具の一つですが、四日市市の審査基準は設けてよい建物をさらに絞り込んでいます。
条件は「2階以下」「降着面まで5m以下」「収容人員20人以下」の三つで、いずれも四日市市の行政指導を示す下線が引かれています。
この記事では四日市市の条件を国の表と重ねて読み、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市・大阪市・東大阪市・堺市の基準と比べます。
四日市市で2階が客席の小さな飲食店を計画していて、避難器具は避難ロープで済ませたいと考えています。
国の表では2階なら使えるはずですよね。
国の表ではそうですが、四日市市は収容人員などで使える建物を絞っています。
先に条件を確かめましょう。
隣の鈴鹿市や津市にも同じ絞り込みがあるのでしょうか。
今回比べた7つの消防本部の公開基準では、建物を絞っているのは四日市市だけでした。
順番に見ていきましょう。
- 国の政令第25条第2項の表で滑り棒と避難ロープが入っているのは2階の欄だけで、(6)項の行には入っていません
- 四日市市は、設置する階数が2以下・取付け位置から降着面まで5m以下・その階の収容人員20人以下のすべてに当てはまる建物に限っています
- 三つの条件には下線があり、四日市市の総則では下線部は行政指導で、関係者に義務を課すものではないとされています
- 国の表の人数と重ねると、20人以下で使えるのは10人から避難器具が要る2階に限られます
- ほかの6本部は取付け方や認定品・照明を書き足していますが、使える建物の絞り込みは見当たりません
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目次
滑り棒と避難ロープは国の基準でどの階に使えるのか

滑り棒と避難ロープがどの欄に入っているかを、e-Govの現行条文で確かめます。
前項各号に掲げる階には、次の表において同項各号の防火対象物の区分に従いそれぞれの階に適応するものとされる避難器具のいずれかを、(略)設置すること。
地階の欄にも、3階より上の欄にも入っていません。
下の表は、表の行ごとに2階の欄を抜き出したものです。
| 表の行(令第25条第1項) | 主な対象 | 2階の欄の滑り棒・避難ロープ |
|---|---|---|
| 第1号 | (6)項(病院・福祉施設・幼稚園など) | 入っていない |
| 第2号・第3号 | (5)項(旅館・共同住宅など)、(1)項〜(4)項・(7)項〜(11)項 | 入っている |
| 第4号 | (12)項・(15)項(工場・事務所など) | 2階の欄なし(3階以上が対象) |
| 第5号 | 直通階段が一つしかない階(2階は(2)項・(3)項などに限る) | 入っている |
この記事では、四日市市がこの2階の欄にどんな条件を重ねているかを見ます。
病院や福祉施設の2階では、そもそも国の表で使えないのですね。
そうです、(6)項の行には入っていません。
まず自分の建物が表のどの行に当たるかを確かめてください。
四日市市は滑り棒と避難ロープにどんな条件を付けているのか

国の告示などによるほかの基準として、設置できる防火対象物を三つの条件で絞っています。
滑り棒及び避難ロープを設置できる防火対象物は次のすべてに該当するものであること。
(1)設置する階数は2以下で、かつ、取付け位置から地盤面その他降着面までが5m以下であること。
(2)設置を必要とする階の収容人員は20人以下であること。
(1)と(2)の文には下線が引かれていることを、PDFのページ画像で確かめました。
四日市市の総則は、下線の部分を本市の行政指導とし、関係者に義務を課すものではなく任意の協力で実現するものだと書いています。
国の規則第27条第1項第8号イは、滑り棒と避難ロープの長さを取付け位置から降着面までの長さとしています。
四日市市の(1)は、その取付け位置から降着面までを5m以下としているので、天井の高い1階の上の2階では図面で測っておく必要があります。
下線の部分は、義務ではなく指導なのですね。
義務ではありませんが、審査の場で指導として示される条件です。
満たせない計画なら早めに相談しましょう。
収容人員20人以下の条件で滑り棒や避難ロープを使える階はどこか

国の表で避難器具が必要になる人数と重ねると、使える場面が見えてきます。
二 別表第一(五)項に掲げる防火対象物の二階以上の階又は地階で、収容人員が三十人(下階に同表(一)項から(四)項まで、(九)項、(十二)項イ、(十三)項イ、(十四)項又は(十五)項に掲げる防火対象物が存するものにあつては、十人)以上のもの
三 別表第一(一)項から(四)項まで及び(七)項から(十一)項までに掲げる防火対象物の二階以上の階(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の二階を除く。)又は地階で、収容人員が五十人以上のもの
第5号(直通階段が一つしかない階)も、2階では収容人員10人から避難器具が要ります。
下の表は、2階の欄に滑り棒と避難ロープが入っている行と、四日市市の20人以下を重ねたものです。
| 国の表の行 | 2階で避難器具が要る人数 | 20人以下と重なる範囲 |
|---|---|---|
| 第2号((5)項) | 30人以上(下階に(1)項〜(4)項・(9)項などがあれば10人以上) | 下階の条件で10人以上20人以下になる階 |
| 第3号((1)項〜(4)項・(7)項〜(11)項) | 50人以上 | 重ならない |
| 第5号((2)項・(3)項などで直通階段が一つの2階) | 10人以上 | 10人以上20人以下の階 |
つまり店舗や学校などの2階で第3号により避難器具が要る場合、四日市市の指導の上では滑り棒と避難ロープを選べない形になります。
一方、下階に飲食店などがある旅館・共同住宅の2階や、直通階段が一つしかない飲食店の2階で、収容人員が10人から20人の場合は、条件に収まる余地があります。
人数は収容人員の算定方法で決まるので、用途ごとの算定を先に済ませてください。
うちの飲食店は2階の収容人員が18人で階段が一つなので、条件に収まりそうです。
人数は収まりますが、5mの高さも合わせて測っておきましょう。
(1)の条件も満たして初めて設置できます。
ほかの消防本部は滑り棒と避難ロープに何を書き足しているのか

ただし中身は取付け方や器具の適合で、使える建物を絞る条件は見当たりませんでした。
⑾ 避難ロープ(省令第27条第1項第8号及び避難器具細目告示第3第6号関係)
(略)
カ 避難ロープは、避難器具の基準に適合するもの又は認定品とする。●
鈴鹿市の●は、法令の基準に行政指導を加えた項目を示す記号です。
大阪市の◆は、大阪市の行政指導を示す記号です。
滑り棒を取付部の開口部の下端から1.5m以上の高さから設けることや、降下空間を半径0.5mの円柱形とすることは、国の告示第2号に書かれた数字で、どの本部も同じです。
| 消防本部 | 使える建物の絞り込み | 書き足している主な内容 |
|---|---|---|
| 四日市市 | 2階以下・5m以下・20人以下(下線=行政指導) | 病院や保育園などの避難器具は努めて滑り台(下線) |
| 鈴鹿市 | なし | 開口部の下端が1.2mを超えステップ等を設けるときは床面からステップ上端まで0.3m以下(無印)/避難ロープは基準適合品か認定品(●) |
| 埼玉県央広域 | なし | 規則と告示の内容を項目ごとに書き下し、滑り棒は告示に適合するものとする |
| 津市 | なし | 認定品か告示第1号に適合するもの/避難ロープは簡単な操作で取り付けと展張ができる場所に設ける |
| 大阪市 | なし | 転落のおそれのある取付部に高さ110cm以上の手すり等・屋内の避難通路の区画(◆)/避難ロープと滑り棒は条件を満たす電池式照明でもよい(◆) |
| 東大阪市 | なし | 開口部・操作面積・降下空間を表5にまとめ、滑り棒は上部と下部を取付け具で固定できるもの |
| 堺市 | なし | 開口部・操作面積・降下空間・架空電線との間隔を図表で示す |
ほかの市なら、収容人員が多い2階でも避難ロープを選べるのですか。
国の表の2階の欄に入っていれば選べますが、大阪市は使用者を考えて選ぶよう◆で書いています。
使う人が実際に降りられるかを基準に選んでください。
四日市市で滑り棒や避難ロープを選ぶ前に何を確かめるのか

図面の段階で、次の順に確かめておくと手戻りが減ります。
病院、幼稚園、保育園、社会福祉施設その他避難が困難な者が利用する防火対象物に設置する避難器具は、努めて滑り台とすること。ただし、避難が困難な者の状況に応じて、救助袋とすることができる。
病院や保育園などでは、四日市市は避難器具そのものを努めて滑り台とするよう求めていて、この文にも下線があります。
これらの多くは(6)項で、国の表でももともと滑り棒と避難ロープは入っていません。
手順は次のとおりです。
- 建物の用途から、政令第25条第1項のどの号に当たるかを確かめる((6)項なら滑り棒と避難ロープは使えない)
- 避難器具が要る階の収容人員を算定し、20人以下に収まるかを確かめる
- 取付け位置から地盤面などの降着面までの高さを断面図で測り、5m以下かを確かめる
- 条件に収まらないときは、緩降機や避難はしごなど2階の欄のほかの器具と比べる
- 指導に沿えない事情があるときは、計画の段階で四日市市消防本部に相談する
高さは2階の床ではなく、取付け位置から測るのですね。
そうです、窓の位置しだいで5mを超えることもあります。
断面図に寸法を書き込んでから相談すると話が早いです。
よくある質問
まとめ
断面図で高さと2階の人数を確かめてから、四日市市消防本部に相談します!
条件に収まらないときの代わりの器具も一緒に比べておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第25条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第27条第1項第8号(e-Gov法令検索)
- 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)第三 五・六
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」総則 1・3 総則のPDF
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第15 避難器具 2・6 避難設備のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第15 5⑽⑾ 第4章 第15(1)のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第4章 第15 避難器具 ⑽⑾ 第15のPDF
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-16 避難器具 1⑹ 5-16のPDF
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3章 第1節 第2・第3 1・5・6・第7 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 運用基準「避難器具」⑹ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」避難器具 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。人数の表は記事の説明用に国の表と四日市市の条件を重ねたもので、実際の判断は所轄の消防本部が行います。





