マンションの一室を、グループホームなどの福祉施設に使う例が増えています。
その部分は消防法令で「住戸利用施設」と呼ばれ、国の省令では、屋内消火栓設備を共同住宅用の設備に置き換えられる範囲が限られています。
大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、10階以下で地盤面から31m以下の階なら、住戸利用施設に屋内消火栓設備を設置しないことができる特例を置いています。
この記事では、国の省令と大阪市の運用を分けて読み、31mという線がどこから来るのかを順にたどります。
東大阪市・堺市の公開資料とも比べます。
大阪市にある8階建てのマンションの管理組合です。
1階の住戸を、障害のある方のグループホームに貸す話が出ています。
住戸がグループホームになると、その部分は住戸利用施設になります。
屋内消火栓設備の扱いが変わることがあります。
屋内消火栓を新しく付けないといけないのですか。
大阪市には、条件を満たせば設置しないことができる特例があります。
国の決まりから順番に見ていきましょう。
- 国の40号省令は、住戸利用施設の屋内消火栓設備を共同住宅用スプリンクラー設備に置き換えられる範囲を、11階以上の階などに限っています
- そのため、10階以下の階にある住戸利用施設では、屋内消火栓設備が必要なまま残ることがあります
- 大阪市の運用基準は、開放型と2方向避難・開放型のマンションで、10階以下かつ地盤面から31m以下の階なら設置しないことができるとしています
- 31mの線は、大阪市火災予防条例第40条第1項のスプリンクラー設備の階と、運用基準の読み替えから来ています
- それ以外の型のマンションでは、屋内消火栓設備が必要な部分のすべての住戸等に共同住宅用スプリンクラー設備などを設けることが条件です
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目次
国の基準では住戸利用施設の屋内消火栓はどう扱われるのか

マンションのうち、位置や構造が消防庁長官の定める基準に合うものは「特定共同住宅等」と呼ばれます。
特定共同住宅等では、平成17年総務省令第40号(以下「40号省令」)により、屋内消火栓設備などを共同住宅用の設備に置き換えることができます。
グループホームなどの部分は、40号省令で次のように定義されています。
(6)項ロ・ハは、40号省令第2条第1号で、有料老人ホーム・福祉ホーム・認知症の高齢者のグループホーム・障害者のグループホーム(共同生活援助)に限られています。
各独立部分の床面積が100㎡以下であることも、特定共同住宅等の条件です。
40号省令第3条は、住戸利用施設以外の部分を第1項で、住戸利用施設を第2項で、別々の表にしています。
屋内消火栓設備が必要かどうかは、消防法施行令第11条の延べ面積や階の床面積で決まります。
大阪市では、火災予防条例第39条第1項第2号で、地階を除く階数が5以上の建物にも求められます(5階以上の部分が小さいものなどを除く)。
国の省令の流れを、順番に並べます。
- 建物の規模や階により、施行令第11条や大阪市火災予防条例で屋内消火栓設備が必要になることがあります
- 40号省令第3条第2項の表で、住戸利用施設の屋内消火栓設備は共同住宅用スプリンクラー設備に置き換えられます
- ただし表の屋内消火栓設備は、「次項第二号イに掲げる階及び部分に設置するものに限る」とされています
- 第3項第2号イは、11階以上の階・10階以下の特定住戸利用施設・面積の大きい住戸利用施設の階です
- それ以外の階、たとえば10階以下の階にある小規模な住戸利用施設の屋内消火栓設備は、置き換えの対象になりません
同じ建物の中でも、住戸利用施設の部分だけ扱いが違うわけです。
住戸利用施設と特定住戸利用施設の違いは共同住宅に高齢者施設が入る場合の記事で取り上げています。
同じマンションの中で、グループホームの部分だけ屋内消火栓が残るのですね。
国の省令の表を読むと、そうなる場合があります。
大阪市は、ここに特例を置いています。
大阪市の特例は住戸利用施設の屋内消火栓をどこまで外すのか

その第8 特例基準の2が、住戸利用施設の屋内消火栓設備の特例です。
運用基準の凡例では、印のない項目は法令基準(消防庁の通知等で示された法令解釈基準を含む)とされ、◆の行政指導基準と区別されています。
この特例2には◆が付いていません。
特例2を使うための条件を、原文の順に分けます。
- マンションの型が2方向避難・開放型か開放型であること(主たる出入口が外気に開いた廊下や階段に面する型です)
- 令別表第1(16)項イの複合用途の建物であること
- 対象は住戸利用施設で、特定住戸利用施設は除かれます
- その階が10階以下で、地盤面からの高さが31m以下であること
- 満たせば、その階の住戸利用施設に屋内消火栓設備を設置しないことができます
こちらは10階以下にあれば第3項第2号イ(イ)に入るため、国の省令の側で共同住宅用スプリンクラー設備の設置場所になっています。
型ごとに、国の表と大阪市の特例の関係をまとめます。
| マンションの型 | 住戸利用施設以外の屋内消火栓(国の第1項の表) | 住戸利用施設の屋内消火栓(国の第2項の表) | 大阪市の特例 |
|---|---|---|---|
| 2方向避難・開放型 | 限定なしで置き換え | 第3項第2号イの階・部分に限り置き換え | 特例2(10階以下・31m以下で不要) |
| 開放型 | 限定なしで置き換え | 第3項第2号イの階・部分に限り置き換え | 特例2(10階以下・31m以下で不要) |
| 2方向避難型 | 第3項第2号イの階・部分に限り置き換え(10階以下の建物は(ロ)(ハ)に限る) | 第3項第2号イの階・部分に限り置き換え | 特例3 |
| その他の特定共同住宅等 | 第3項第2号イの階・部分に限り置き換え(10階以下の建物は(ロ)(ハ)に限る) | 第3項第2号イの階・部分に限り置き換え | 特例3 |
うちのマンションは廊下が外に開いているので、開放型かもしれません。
型は消防庁の告示の基準で決まります。
竣工時の設計図書や消防署の検査の記録で確かめるのが確実です。
31メートルの線はどこから来るのか

大阪市火災予防条例のスプリンクラー設備の規定から来ています。
大阪市では、11階未満でも地盤面から31mを超える階にスプリンクラー設備が求められます。
運用基準の第7節は、この条例の階を40号省令の読み方に組み込んでいます。
読み替えの流れを、順番に並べます。
- 条例第40条第1項第7号が、11階未満で地盤面から31mを超える階にスプリンクラー設備を求めます
- 運用基準 第2 3が、40号省令の「11階以上の階」にこの条例の階を含めて読みます
- 別表8-7-2も、住戸利用施設の屋内消火栓設備を置き換えられる階に条例第40条第1項の階を加えています
- すると31mを超える階は、住戸利用施設も含めて、共同住宅用スプリンクラー設備を設ける側に入ると読めます
- 残るのは10階以下で31m以下の階で、特例2はちょうどこの階の住戸利用施設を対象にしています
つまり大阪市では、31mを超える階は条例でスプリンクラー設備の側、31m以下の階は特例2で屋内消火栓設備が不要と、2つの規定が同じ線で分担していると読めます。
条例のスプリンクラー設備の号の一覧は大阪市でグループホームが入る共同住宅の非常電源の記事で、31mの階の考え方は堺市の31メートルの階のスプリンクラーの記事で取り上げています。
31mは、スプリンクラーの条例と同じ線なのですね。
はい、31mを超える階は条例でスプリンクラー設備の側に入ります。
そのため特例は31m以下の階に絞られていると読めます。
開放型以外のマンションでは屋内消火栓をどう外すのか

- 対象は2方向避難型とその他の特定共同住宅等で、住戸利用施設の部分に限りません
- 場所は、40号省令第3条第3項第2号イや条例第40条第1項によるスプリンクラー設備の階ではない階です
- 屋内消火栓設備が必要となる部分のすべての住戸・共用室・管理人室に、共同住宅用スプリンクラー設備を設けます
- または、40号省令第3条第4項第1号ロにより、特定施設水道連結型スプリンクラー設備を設けます
- 水道連結型では、10階以下で31m以下の階の住戸利用施設を、施行令第12条第1項第1号の施設とみなして扱えます
大阪市の水道連結型スプリンクラー設備の範囲は大阪市の水道直結のスプリンクラーの記事で取り上げています。
同じ第7節の第5(共同住宅用スプリンクラー設備)にも、関係する項目が2つあります。
第5 7は、倉庫や機械室などの住戸等にだけ共同住宅用スプリンクラー設備を付けても、その階の屋内消火栓設備は原則として残るとしています。
特例3で外せるのは、住戸・共用室・管理人室のすべてに設けた場合です。
内廊下のマンションなら、全部の住戸にスプリンクラーを付けるのが条件なのですね。
はい、屋内消火栓設備が必要な部分のすべての住戸等が条件です。
一部の部屋だけでは外せません。
東大阪市や堺市では住戸利用施設の屋内消火栓はどう違うのか

屋内消火栓設備については、次の項目があります。
一方、住戸利用施設に絞って10階以下・31m以下の屋内消火栓設備を外す、大阪市の特例2と同じ形の項目は、今回確認した堺市の審査基準には見当たりませんでした。
東大阪市消防局の公開資料(消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6基準)には、屋内消火栓設備や特定共同住宅等の節がありません。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 住戸利用施設の屋内消火栓(開放型系) | 10階以下・31m以下の階は設置しないことができる(特例2) | 今回の資料に該当の節なし | 同じ形の項目は見当たらず |
| 開放型以外の型 | 全住戸等に共同住宅用スプリンクラー設備等を設ければ設置しないことができる(特例3) | 今回の資料に該当の節なし | 11階以上の2方向避難型で10階以下に設けた場合(13(4)◆) |
| 31mの読み替え | 条例第40条第1項の階を含める(第2 3・6(2)◆) | 今回の資料に該当の節なし | 条例第66条第1項第5号の階を含める(12(1)(2)) |
| 補助散水栓で覆う方法 | 第5 4 | 今回の資料に該当の節なし | 13(1)◆ |
東大阪市や堺市のマンションでは、住戸利用施設の屋内消火栓設備の扱いを所轄の消防署で確かめることになります。
大阪市のマンションでの確かめ方を整理します。
- グループホームなどの部分が住戸利用施設か、特定住戸利用施設かを確かめます
- マンションの型が開放型・2方向避難・開放型か、それ以外かを確かめます
- 住戸利用施設のある階が10階以下で、地盤面から31m以下かを確かめます
- 開放型系なら特例2、それ以外なら特例3のすべての住戸等への共同住宅用スプリンクラー設備を検討します
- 令第32条などによる特例なので、計画の段階で所轄の消防署に相談します
東大阪市や堺市のマンションなら、大阪市と同じとは限らないのですね。
はい、特例2は大阪市の運用基準の項目です。
ほかの市では、その市の消防署に確かめるのが確実です。
よくある質問
まとめ
まず、マンションの型とグループホームの階の高さを図面で確かめます。
特例が使えるか消防署に相談します!
型と高さが分かれば、消防署との協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第8章 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等 第7節 特定共同住宅等(第1 1、第2 3・6、第5 4・7、第8 特例基準 柱書・2・3、別表8-7-2) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第39条第1項第2号・第40条第1項第7号・第47条(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第2節 第1 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅴ 共同住宅用スプリンクラー設備 12・13 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第11条、第12条第1項第1号・第2項第3号の2、第32条
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条・第3条
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





