店舗と事務所とホテルが入った複合用途ビルでは、消防法施行令第9条により用途ごとに設備の要否を判定します。
そのとき迷うのが、どの用途にも属さない機械室・駐車場・廊下・玄関ロビーといった共用部分の床面積です。
鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、共用部分の割り振り方と、そこに付ける設備の決め方を図と計算例で示しています。
この記事では埼玉県央広域の決まりを、鈴鹿市・堺市・津市・四日市市の書き方と比べます。
鴻巣市でテナントビルを管理していて、地下に駐車場と機械室があります。
この面積をどのテナントの用途に入れるのか、よく分かりません。
共用部分は、各用途の床面積の割合で按分して足し込みます。
埼玉県央広域の審査基準に計算例があるので、順に見ましょう。
按分した結果で、設備が要るかどうかが変わることもあるのですか。
変わります。
地下の駐車場も各用途に割り振ると、用途ごとの面積は小さくなるからです。
- 複合用途ビルの機械室や駐車場などの共用部分は、埼玉県央広域では各用途の床面積の割合で按分し、それぞれの用途の床面積に足し込みます
- 按分の母数は、各階の廊下・階段は各階の用途、機械室・電気室と玄関・ロビーは共用する用途で取ります
- 共用部分そのものには、床面積の合計が大きい用途に付ける設備を付け、令第9条を使わない設備は建物全体で判断します
- 用途ごとに構造が違う建物は、令第9条により用途ごとに令第11条第2項の倍読みを当てはめます
- 鈴鹿市は同じ決まりを書き、堺市は按分と構造の決まりを書いていますが、津市と四日市市は按分の一般則だけです
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目次
複合用途ビルの機械室の床面積はどの用途に数えるのか

ところが機械室のように二つ以上の用途が一緒に使う部分は、どの用途の面積にも当てはまりません。
別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、この節(第十二条第一項第三号及び第十号から第十二号まで、第二十一条第一項第三号、第七号、第十号及び第十四号、第二十一条の二第一項第五号、第二十二条第一項第六号及び第七号、第二十四条第二項第二号並びに第三項第二号及び第三号、第二十五条第一項第五号並びに第二十六条を除く。)の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす。
1 用途の按分
用途の按分は、第3-1図の例により算出すること。
3 共用される部分がある場合の取り扱い
共用される部分がある場合、当該共用される部分については、それぞれの用途で按分し、消防用設備等の設置を要する部分を求めること。(第3-3図参照)
第3-1図は、(15)項の事務所1,000㎡と(4)項の店舗600㎡が機械室100㎡を共用する例です。
機械室を1,000対600の割合(0.625と0.375)で分け、事務所は1,062.5㎡、店舗は637.5㎡として判定します。
按分した面積で設備の基準面積に届くかどうかが決まるので、共用部分を足し忘れると判定がずれます。
埼玉県央広域でこの扱いを確かめるときは、次の順にたどります。
- 消防法施行令第9条が、(16)項の各用途の部分を一の防火対象物とみなす
- 埼玉県央広域の審査基準 第2章 第1 ⑵が、共用部分の按分の母数を3つに分ける
- 同じ審査基準 第3章 第6 1・3が、按分のしかたと共用部分に付ける設備を決める
- 按分した面積を、令第11条や令第28条など設備ごとの基準面積に当てはめる
うちのビルの機械室も、テナントの面積の割合で割ればいいのですね。
そうです。
まず竣工図の面積表で、用途ごとの専有面積と共用部分を分けて拾いましょう。
廊下と機械室と玄関ロビーで按分のしかたは変わるのか

埼玉県央広域は、従属的な部分かどうかを判定する「みなし従属」の項で、その分け方を3つ書いています。
⑵ みなし従属
(略)また、共用される部分の床面積の按分は、次によること。
ア 各階の廊下、階段、エレベーターシャフト、ダクトスペース等の部分は、各階の用途の床面積に応じて按分すること。
イ 防火対象物の広範に共用される機械室、電気室等は、共用される用途の床面積に応じて按分すること。
ウ 防火対象物の玄関、ロビー等は、共用される用途の床面積に応じて按分すること。
廊下や階段・エレベーターシャフト・ダクトスペースはその階に入っている用途の面積で割り、建物全体の割合は使いません。
機械室・電気室や玄関・ロビーは、それを共用している用途の面積で割ります。
第1-3図は、(15)項2,800㎡と(4)項200㎡が機械室200㎡を共用する例で、機械室を93%と7%で分け、(4)項は214㎡になります。
延べ面積の90%以上が(15)項で(4)項が300㎡未満なので、(4)項の部分は従属的な部分として(15)項の建物と扱われます。
按分は設備の判定だけでなく、そもそも複合用途に当たるかどうかの判定にも使われるので、面積表は種類ごとに分けておきましょう。
1階のロビーをホテルと店舗だけが使っているなら、事務所の面積は母数に入れないのですね。
ウの書き方からはそう読めます。
どの用途が実際に使うロビーかを図面に書き込んで相談しましょう。
共用部分そのものにはどの用途の設備を付けるのか

その部屋にどの用途の基準で設備を付けるかを、埼玉県央広域は3のなお書きで決めています。
(略)なお、共用される部分の消防用設備等の設置については、床面積の合計が大となる防火対象物に設置される消防用設備等を設置すること。ただし、政令第9条の規定の適用のないものは、防火対象全体で判断すること。
(第3-3図)地階部分に、政令第28条第1項第3号は適用されないものとする。
第3-3図は、(5)項イのホテル8,000㎡・(4)項の店舗4,000㎡・(15)項の事務所4,000㎡の地下に、専用駐車場と機械室2,000㎡がある例です。
地下の2,000㎡を25%・50%・25%で割り振り、(4)項に500㎡、(5)項イに1,000㎡、(15)項に500㎡を足し込みます。
令第28条第1項第3号は(4)項などの地階で床面積1,000㎡以上に排煙設備を求めますが、(4)項の地階は500㎡と数えるので届きません。
ただし令第9条から除かれている自動火災報知設備の一部の号や誘導灯(令第26条)などは、建物全体で判断します。
地下に駐車場を持つビルは、設備ごとに令第9条が効くかどうかを先に確かめておきましょう。
地下の駐車場には、ホテルの基準の設備が付くことになりそうです。
この例では床面積の合計が一番大きい(5)項イの基準で考えると読めます。
実際の建物は面積表を添えて所轄の消防署に確かめましょう。
用途ごとに構造が違う建物はどう判定するのか

屋内消火栓設備の基準面積は構造によって2倍や3倍に読み替わるので、どの単位で構造を見るかが問題になります。
前項の規定の適用については、同項各号(第五号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分の延べ面積又は床面積の数値は、特定主要構造部(略)を耐火構造とし、かつ、壁及び天井(略)の室内に面する部分(略)の仕上げを難燃材料(略)でした防火対象物にあつては当該数値の三倍の数値(略)とし、特定主要構造部を耐火構造としたその他の防火対象物(略)にあつては当該数値の二倍の数値(略)とする。
用途ごとに建築構造が異なる場合、政令第9条の規定により用途ごとに取り扱うこととすること。(第3-2図参照)
(第3-2図)政令第11条第2項が適用され、屋内消火栓設備の設置義務はないものとする。
第3-2図は、耐火構造の(5)項イ700㎡と、その他の構造の(4)項200㎡が、令第8条の区画に当たらない壁で接している例です。
(5)項イの部分は耐火構造なので令第11条第2項で基準面積の700㎡が2倍以上に読み替わり、700㎡では届きません。
(4)項の部分は200㎡で700㎡に届かないので、どちらの用途にも屋内消火栓設備は要らない、という結論です。
鈴鹿市も同じ図を載せ、「令第8条の防火区画がされているかどうかは問わない」と書き添えています。
増築で構造の違う部分ができたときは、用途の境目と構造の境目が一致しているかを図面で確かめましょう。
同じホテルの中に木造の部分が混じっていたら、どうなるのでしょうか。
同じ用途の中で構造が混じる場合は、この例とは別の話になります。
堺市の例を次の章で見ましょう。
鈴鹿市や堺市など他の市ではどう扱っているのか

公開されている5本部の基準を並べると、次のとおりです。
(6) 用途ごとに建築構造が異なる場合、政令第11条第2項の規定は政令第9条の規定により用途ごとに取り扱う。◆①(第8-2図、第8-3図参照)
(第8-3図)①5項(イ)耐火構造(700㎡)②5項(イ)木造(150㎡)③4項 木造(200㎡)(略)よって、5項イ部分は、屋内消火栓設備の設置義務 有り
| 消防本部 | 共用部分の按分(廊下・機械室・ロビー) | 共用部分に付ける設備 | 用途ごとに構造が違うとき |
|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 3区分で按分(第2章 第1 ⑵)・計算例あり(第3章 第6 1・3) | 床面積の合計が大きい用途の設備(令第9条を使わない設備は全体) | 用途ごとに判定(第3章 第6 2) |
| 鈴鹿市 | 同じ3区分(第2章 第1 ⑵)・同じ計算例(第3章 第3 1・3) | 同じ | 用途ごとに判定・令第8条の区画の有無は問わない(第3章 第3 2) |
| 堺市 | 同じ3区分(第2 1(2)イ) | 記載は見当たらない | 用途ごとに令第11条第2項を当てる(第8 1(6)◆①)・同じ用途で構造が混じると耐火構造以外 |
| 津市 | 按分するという一般則のみ(1-1 1⑵) | 記載は見当たらない | 記載は見当たらない |
| 四日市市 | 2つの用途の床面積で按分する一般則のみ(第1章 (16)項 1(2)ア) | 記載は見当たらない | 記載は見当たらない |
埼玉県央広域と鈴鹿市は、按分の3区分・計算例・共用部分の設備・構造の扱いをほぼ同じ文で書き、いずれも行政指導を示す▲や●を付けていません。
堺市の第8-3図は、同じ(5)項イの中に耐火構造700㎡と木造150㎡が混じる例で、850㎡を耐火構造以外として屋内消火栓設備を要るとしています。
堺市の◆は、凡例で消防庁の通知等を参考に定めた指導基準を示す記号です。
津市と四日市市は、従属的な部分の判定の中で共用部分を按分すると書くだけで、母数の分け方や共用部分の設備は書いていません。
書いていない市でも按分の考え方は使われるので、面積表を添えて所轄の消防署に判定のしかたを確かめておきましょう。
鴻巣市や鈴鹿市なら、審査基準の計算例どおりに面積表を作れば話が早いですね。
そう読めます。
ほかの市では按分の母数を事前に相談してから計算しましょう。
よくある質問
まとめ
面積表を共用部分の種類ごとに分けて、按分の計算をやり直してみます!
按分した面積が分かれば、用途ごとの設備の判定もすっきりします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第9条・第11条・第26条・第28条(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 政令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱い ⑵ 第2章 第1のPDF/第3章 第3 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 6 第3章 第3のPDF/第3章 第6 政令第9条の取り扱い 第3章 第6のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 政令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱い 第2章 第1のPDF/第3章 第3 政令第9条の取り扱い 第3章 第3のPDF
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い・第8 建築物構造 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-1 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 1-1のPDF
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第1章 消防用設備等設置判定基準 第1章のPDF
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物での按分や設備の要否は、所轄の消防本部にご確認ください。





