古い木造アパートや店舗付き住宅の外壁は、モルタルの下に鉄の網(ラス)が入っていることがよくあります。
この鉄網に電気が漏れると網が熱を持ち、壁の中から火が出るおそれがあるため、条件に当たる建物には漏電火災警報器が必要です。
ただし大阪市消防局の運用基準は、漏電火災警報器を設置しないことができる場合を特例として書いています。
その中には、建築基準法の準耐火建築物の定義や、消火器具の節の長屋の特例を借りる項目があります。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、堺市・東大阪市の書き方と比べます。
大阪市で、木造モルタル2階建ての共同住宅を管理しています。
点検で漏電火災警報器の話が出たのですが、うちの建物にも必ず要るのでしょうか。
まず国の基準で、鉄網入りの壁と用途・面積に当たるかを確かめます。
当たる場合でも、大阪市の運用基準には設置しないことができる特例があります。
特例に当たれば、付けなくてよいのですね。
ただし壁の中の配線の状態や建物の構造で決まります。
根拠を順にたどっていきましょう。
- 国の基準(消防法施行令第22条第1項)は、下地などが準不燃材料でない鉄網入りの壁・床・天井がある建物のうち、用途と延べ面積などで漏電火災警報器を求めています
- 大阪市の運用基準は、令第32条を適用して漏電火災警報器を設置しないことができる場合を特例基準に書いています
- 鉄網入りの壁等に電気配線がなく今後もされるおそれがない場合と、鉄網入りの壁等が一部だけで地絡電流が流れるおそれがない場合が挙がっています
- 準耐火建築物(建築基準法第2条第9号の3ロ)で、配線を金属管等で施工しC種・D種接地したものも挙がっています
- 長屋は消火器具の節の特例(第4.6)に合えば住戸ごとに別の防火対象物とみなせます。堺市の審査基準には特例の項目がなく、東大阪市の公開資料には漏電火災警報器の基準がありません
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目次
国の基準で漏電火災警報器が必要になるのはどんな建物か

漏電火災警報器の設置対象は、消防法施行令第22条第1項が決めています。
一 別表第一(十七)項に掲げる建築物
二 別表第一(五)項及び(九)項に掲げる建築物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの
三 別表第一(一)項から(四)項まで、(六)項、(十二)項及び(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの
冒頭の共同住宅は(5)項ロなので、第2号により延べ面積150平方メートル以上が目安になります。
なぜこの壁が問題になるのかは、堺市の審査基準の概要がわかりやすく書いています。
この記事では、条件に当たった建物で設置しないことができる場合に絞って読みます。
うちは共同住宅で延べ面積が200平方メートルくらいなので、国の基準には当たりそうです。
はい、そこで大阪市の特例基準の出番です。
どこからどこへつながっているのか、先に全体を見ておきましょう。
- 消防法施行令第22条第1項が、鉄網入りの壁等がある建物に漏電火災警報器を求める
- 同令第32条が、消防長または消防署長が認めるときは基準によらなくてよいとする
- 大阪市の運用基準 第3節 第5 特例基準の柱書が、令第32条の規定を適用しと定める
- 第5 1の(1)〜(3)が、設置しないことができる場合を3つ挙げる
- (3)は「準耐火建築物」を建築基準法第2条第9号の3ロから、接地工事の種類を電気設備の技術基準から借りる
- 第5 2は、消火器具の基準(第4.6)の長屋の条件を借りて、住戸ごとに令第22条を当てはめる
鉄網入りの壁に配線がなければ漏電火災警報器はいらないのか

1 次のいずれかに該当するものについては、漏電火災警報器を設置しないことができる。
(1) 令第22条第1項に規定する鉄網入りの壁、床又は天井(以下「鉄網入りの壁等」という。)に現に電気配線がなされておらず、かつ、当該建築物における業態からみて、鉄網入りの壁等に電気配線がなされるおそれがないと認められるもの
(2) 鉄網入りの壁等が建築物の一部分にしか存しない建築物で、地絡電流が流れるおそれがないと認められるもの
令第32条は、消防長や消防署長が火災の危険などから判断して、基準によらなくてよいと認めるときの規定です。
「今」と「これから」の両方がそろっていることが条件なので、テナントが入れ替わって配線を足しそうな建物は当たりにくいと読めます。
(2)は、鉄網入りの壁等が建物の一部分にしかなく、漏れた電流(地絡電流)が流れるおそれがないと認められる建物です。
どちらも数字の基準はなく、「認められるもの」なので、壁の仕様と配線ルートを図面で示して所轄の消防署と協議する項目です。
外壁の一部だけがモルタルで、配線もそこを通っていないなら、(2)に当たるかもしれないのですね。
はい、どの壁に鉄網があり、配線がどこを通るかを図面で示すのが出発点です。
次は、建物の構造で外れる場合です。
準耐火建築物で配線を金属管に入れればいらないのか

イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの
主要構造部を準耐火構造とした「イ」は、(3)の文言には入っていません。
そのうえで、鉄網入りの壁等の中の配線が金属管・金属線ぴ・金属ダクトなどの金属体で覆われ、その金属体がC種接地工事かD種接地工事で接地されていることが条件です。
C種・D種接地工事は、運用基準が「電気設備技術基準省令等」として挙げる電気の技術基準の言葉なので、電気工事の施工図や竣工図で確かめます。
| (3)の条件 | 確かめる書類の例 |
|---|---|
| 建築基準法第2条第9号の3ロの準耐火建築物 | 確認済証・検査済証、設計図書の構造の欄 |
| 鉄網入りの壁等の配線が金属管等で施工 | 電気設備の施工図(配線の工事方法) |
| 金属管等がC種かD種の接地工事で接地 | 電気設備の竣工図・試験成績書 |
建物の構造だけでなく、電気工事の方法まで書類で示すのですね。
はい、建築と電気の両方の図面がそろって初めて検討できます。
次は、長屋や同じ敷地の複数の棟の扱いです。
長屋や同じ敷地の複数の棟はどう扱うのか

(1) 所有権原又は管理権原は住戸ごとに分かれていること
(2) 同一棟内に階段、廊下等の共用部分を有しないものであること
(3) 各住戸は直接道路に面しており、避難上支障がないものであること
5つの条件と、ほかの設備も同じ借り方をしていることは大阪市の長屋の記事で読み解いています。
住戸ごとに見れば、1つの住戸の延べ面積は小さくなるので、令第22条第1項の面積に届かなくなることがあります。 もう1つ、特例基準ではありませんが、同じ敷地の複数の棟に何個付けるかを第3 2が決めています。
この項目には◆が付いています。大阪市の運用基準の凡例では、◆は行政手続法上の行政指導に当たる事項を示す印です。
長屋なら住戸ごと、同じ敷地の棟なら引込線ごと、と考え方が分かれるのですね。
はい、長屋の5条件と引込線の財産区分をそれぞれ確かめます。
最後に、堺市と東大阪市を見ます。
堺市や東大阪市でも同じ扱いなのか

細目は1 契約電流容量の算定から5 変流器の設置位置及び操作電源の分岐例までで、特例適用基準の項目はありません。
同じ敷地の複数の棟については、5の設置例が2つの場合を図で示しています。
第14-3図は、連接引込線が電気事業者の財産なので、棟ごとに変流器と受信機を設ける例です。
どちらの図にも、条件によっては当該地域の電気事業者と協議するという注記があります。
3市を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 大阪市(運用基準 第2章 第3節) | 堺市(審査基準 第14) | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 設置しないことができる特例 | 第5 特例基準(令第32条を適用) | 項目なし | 公開資料に基準なし |
| 鉄網入りの壁等に配線がない | 1(1)で設置しないことができる | なし | ― |
| 鉄網入りの壁等が一部だけ | 1(2)で設置しないことができる | なし | ― |
| 準耐火建築物+金属管等+接地 | 1(3)(建築基準法第2条第9号の3ロ) | なし | ― |
| 長屋 | 消火器具 第4.6を借りて住戸ごとに判定 | なし | ― |
| 同じ敷地の複数の棟 | 管理権原が同じ・引込線を共用・需要家財産なら1個で足りる(◆) | 引込口配線が需要家財産なら1つの変流器の例、電気事業者の財産なら棟ごとの例を図で示す | ― |
| 契約電流容量の算定 | 第2に算定式あり | Ⅱ 1に算定式あり | ― |
堺市や東大阪市で同じ相談をするときは、漏電火災警報器を付ける前提で所轄の消防署と相談するのが確実です。
大阪市の特例は、ほかの市でもそのまま使えるわけではないのですね。
はい、建物がどの市にあるかで読む基準が変わります。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず図面で鉄網入りの壁の場所と配線のルートを確かめて、特例のどれに当たりそうかを整理します。
建物が大阪市か堺市かも、最初に確かめておきます!
同じ木造モルタルでも、市によって使える特例が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第3節 漏電火災警報器 第3 設置場所及び設置方法 2・第5 特例基準、第1章 第1節 消火器具 第4 特例基準 6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第14 漏電火災警報器 Ⅰ 概要 1、Ⅱ 細目 5 (1)ア・イ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第22条、第32条
- 建築基準法 第2条第9号の3
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





