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大阪市で長屋の一部を店舗にすると消防設備は一棟で判定されるのか|住戸ごとに判定できる5つの条件

大阪市の長屋で一戸を店舗にすると消防用設備等は一棟で判定されるのかを解説する記事のアイキャッチ

「長屋の一戸を店舗に変えただけなのに、棟全体で消防用設備等を判定すると言われた」という相談は少なくありません。
大阪市消防局の消防用設備等の設置に係る運用基準には、条件を満たせば住戸ごとに別の建物として判定できる特例があります。
ただし、その条件は消火器具の節にしか書かれておらず、屋内消火栓設備や自動火災報知設備の節は1行で参照しているだけです。
この記事では、大阪市の長屋の特例を参照の順にたどり、東大阪市と堺市の基準とも比べます。

大阪市内の長屋の一戸を借りて、小さな物販店を始める予定です。
お隣は普通の住宅なのに、棟全体で消防用設備等を考えると言われて困っています。

壁を共有する長屋は、国の基準では原則として一棟で判定します。
そのうえで大阪市の運用基準に住戸ごとに判定できる特例があるので、順に読んでいきましょう。

条件に当てはまれば、届出だけで自分の店の広さだけを見てもらえるのでしょうか。

いいえ、自動的に切り替わる仕組みではありません。
最後は消防長又は消防署長が認めるかどうかで決まります。

この記事の結論
  • 国の基準では、消防法施行令第8条が定める区画がなければ、長屋も一棟で消防用設備等を判定します
  • 大阪市の運用基準は、長屋の一部を店舗などに使う場合に住戸ごとに別の防火対象物とみなせる特例を定めています
  • 条件は消火器具の基準 第4 特例基準の6にあり、ほかの7つの節はそこを参照しています
  • 各住戸の界壁は開口部のない防火構造で、給水管や風道が貫通していないことが求められます
  • 東大阪市と堺市の公開基準を確認した範囲では、同じ趣旨の特例は見当たりません

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大阪市の長屋の特例を各設備の特例基準から消火器具の基準の特例へ進み消防法施行令第32条までたどる流れを示す図解

長屋の一部が店舗になると消防用設備等はなぜ一棟で判定されるのか

5戸が連なる2階建ての長屋で端の一戸だけが店舗になっているイラスト
まず、市の運用を見る前に国の基準を押さえます。
消防用設備等の基準は建物一棟を単位に当てはめるのが原則で、別々に判定できる場合は消防法施行令第8条が定めています。
消防法施行令第八条 防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
一 開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
(第二号は略)
区画がなければ一棟で見ます。
別の防火対象物とみなされるのは、開口部のない耐火構造の床や壁などで区画されている場合です。
長屋は隣の住戸と壁を共有する一棟の建物なので、この区画がなければ、棟全体を一つの防火対象物として消防用設備等を判定することになります。
住宅だけだった長屋の一戸を店舗や事務所に変えると、店舗部分の広さなどによっては、棟全体が消防法施行令別表第1の(16)項(複合用途防火対象物)として扱われることがあります。
(16)項になると、消防法施行令第9条により用途ごとに判定する設備と、自動火災報知設備の一部の規定や誘導灯のように棟全体で判定する設備に分かれます。
まずは図面で長屋全体の延べ面積と各住戸の使われ方を確かめ、棟全体がどの用途として扱われているのかを把握してください。

自分の店は30平方メートルほどしかありません。
それでも長屋全体で見られることがあるのですね。

はい、区画がなければ棟全体が一つの防火対象物です。
まずは長屋全体の延べ面積と各住戸の用途を確かめましょう。

大阪市の運用基準はどんな条件で住戸ごとの判定を認めているのか

5つの確認欄にチェックが入ったクリップボードと一戸の住戸のイラスト
ここからが大阪市の運用です。
大阪市の運用基準は、消火器具の節(第1章第1節)の「第4 特例基準」の6で、次のように定めています。
大阪市「消防用設備等の設置に係る運用基準」消火器具 第4 特例基準 6 長屋住宅のうち、その一部を令別表第1各項に掲げる用途(同表(2)項に掲げる用途に供する部分を除く。)として使用するものであって、次に適合する場合にあっては、住戸ごとにそれぞれ別の防火対象物とみなし令第10条及び条例第38条の規定を適用することができる。
(1) 所有権原又は管理権原は住戸ごとに分かれていること
(2) 同一棟内に階段、廊下等の共用部分を有しないものであること
(3) 各住戸は直接道路に面しており、避難上支障がないものであること
(4) 各住戸は開口部のない防火構造(建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「建基法」という。)第2条第8号に規定する防火構造をいう。)の界壁で区画されており、かつ、給水管、配水管及び換気、暖房又は冷房設備の風道が当該界壁を貫通していないものであること
(5) 令別表第1(16)項に掲げる防火対象物(延べ面積が1,000平方メートル未満のものに限る。)のうち、住宅の用途に供される部分の床面積の合計が、当該防火対象物の延べ面積の2分の1以上のものであること
条件は(1)から(5)までの5つです。
特例基準の柱書は「次のいずれかに該当するもの」と書いていますが、この6は「次に適合する場合」と書いており、5つすべてを満たすことが前提と読めます。
(1)から(3)までは、権原が住戸ごとに分かれていること、共用の階段や廊下がないこと、各住戸が直接道路に面していることを求めています。
(5)は規模の条件で、(16)項に当たる長屋のうち延べ面積が1,000平方メートル未満で、住宅部分が延べ面積の2分の1以上のものに限られます。
また、かっこ書きにより、令別表第1の(2)項に掲げる用途に使う部分は、ここでいう用途から除かれています。
自分の長屋が当てはまるかを見るときは、5つの条件を1つずつ図面と現地で確かめ、結果を書き出しておいてください。

うちの長屋は裏側に共用の通路があります。
条件に当てはまるのかどうか、自分では判断がつきません。

共用部分の有無や道路への面し方は、図面と現地の両方で確かめる事項です。
判断に迷う点は所轄の消防署に図面を持って相談しましょう。

屋内消火栓設備や自動火災報知設備の特例はなぜ消火器具の節を開かないと読めないのか

開いた厚い基準書と7冊の薄い基準書を矢印でつなぐイラスト
長屋の特例は、消火器具だけの話ではありません。
たとえば自動火災報知設備の節(第2章第1節)の「第12 特例基準」の11は、次の1行だけです。
大阪市「消防用設備等の設置に係る運用基準」自動火災報知設備 第12 特例基準 11 消火器具の基準(第4.6)に適合するものについては、住戸ごとにそれぞれ別の防火対象物とみなし令第21条の規定を適用することができる。
条件は消火器具の節から借りています。
この1行には、長屋という言葉も5つの条件も出てきません。
「消火器具の基準(第4.6)」は消防法施行令第10条のことではなく、同じ運用基準の第1章第1節にある「第4 特例基準」の6を指しています。
読むときは、次の順番でたどります。
  1. 検討している設備の節で特例基準を開き、「消火器具の基準(第4.6)に適合するもの」という参照を見つける
  2. 参照先である消火器具の節の「第4 特例基準」の6を開き、(1)から(5)までの条件を読む
  3. 元の節に戻り、住戸ごとにみなしたうえでどの条文を適用すると書かれているかを確かめる
  4. 消火器具の節の特例基準の柱書にある令第32条(消防法施行令第32条)を読み、消防長又は消防署長の判断が前提であることを確かめる
同じ参照は、運用基準の次の場所に置かれています。
節参照が置かれている場所住戸ごとにみなして適用する規定
消火器具第4 特例基準の6(条件の本体)令第10条及び条例第38条
屋内消火栓設備第12 特例基準の16令第11条及び条例第39条
閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備第14 特例基準の16令第12条
自動火災報知設備第12 特例基準の11令第21条
漏電火災警報器第5 特例基準の2令第22条
非常警報設備(非常ベル又は自動式サイレン)第4 特例基準の2令第24条
避難器具第8 特例基準の7令第25条
誘導灯及び誘導標識第2 避難口誘導灯の5 特例(3)と、第3 通路誘導灯の4 特例(3)令第26条及び条例第45条
条件は共通でも、みなしたうえで適用する条文は設備ごとに違います。
住戸ごとに判定できるようになっても設備が不要になるとは限らず、その住戸の用途と面積で各条文を当てはめ直すことになります。
運用基準を手元に開くときは、検討する設備の節と消火器具の節を両方用意してください。

自動火災報知設備のページには1行しかなかったので、読み飛ばしていました。
条件は消火器具のページにあったのですね。

運用基準は、別の節の条件を借りる書き方がよく出てきます。
参照先を開いてから元の節に戻るのが読み方のコツです。

隣の住戸との壁に出入口や配管を通すとなぜ特例の条件から外れるのか

2戸の住戸の間に立つ開口部も配管もない界壁のイラスト
5つの条件のうち、建物の造りに関わるのが(4)です。
(4)が引いている建築基準法第2条第8号は、防火構造を次のように定めています。
建築基準法第二条第八号 防火構造 建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しつくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
界壁に穴があれば条件を外れます。
大阪市の(4)は、各住戸が開口部のない防火構造の界壁で区画されていることを求めています。
さらに、給水管、配水管、換気や冷暖房の風道が界壁を貫通していないことも条件です。
国の消防法施行令第8条第1号が開口部のない耐火構造の床又は壁を挙げているのに対し、大阪市の特例は防火構造の界壁を条件にしており、求めている構造が違います。
隣の住戸との壁に出入口を設けたり、設備の配管や風道を通したりすれば、(4)の文言に当てはまらなくなります。
特例が認められた後でも前提は変わりうるので、改修や設備工事の前に、界壁を貫通する工事が含まれていないかを確かめてください。

隣の住戸も借りて、壁に出入口を作って広く使う案も考えていました。
それだと条件から外れてしまうのですね。

界壁に開口部を設ければ、(4)の条件を満たさなくなります。
工事の前に界壁を貫通する部分がないかを確かめてください。

東大阪市や堺市にも長屋を住戸ごとに判定する特例はあるのか

3つの市役所の建物が並ぶイラスト
大阪市の消火器具の節の特例基準は、柱書で「令第32条又は条例第47条の規定を適用し」と書いています。
その消防法施行令第32条を確かめたうえで、近隣の東大阪市と堺市が公開している基準と比べます。
消防法施行令第三十二条 この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
同じ特例は見当たりませんでした。
各市の公開資料で確認できた範囲を表にまとめます。
市長屋を住戸ごとに別の防火対象物とみなす特例長屋について確認できた記載
大阪市あり(消火器具 第4 特例基準の6。ほかの7つの節が参照)(1)から(5)までに適合する場合に、住戸ごとに別の防火対象物とみなして各条文を適用できる
東大阪市公開されている6つの運用基準には見当たらない自動火災報知設備の運用基準 9 特例基準(3)に、長屋式建築物などの警戒区域は500平方メートル以下であれば2の階以上とすることができるとある
堺市審査基準を検索した範囲では見当たらない第2章第1節 第2「政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い」に、一般住宅と政令別表防火対象物が長屋形態で連続する場合は床面積の合計とで用途を決定するとある
大阪市は条件つきで住戸ごとの判定を認めています。
堺市の審査基準は、用途を決める場面について、長屋形態で連続する住宅と店舗などの床面積を合計して決めると書いています。
東大阪市の記載は警戒区域の設定についてのもので、長屋を住戸ごとに別の防火対象物とみなす内容ではありません。
消防法施行令第32条は全国共通の規定ですが、大阪市の5つの条件をそのまま他の市に当てはめることはできません。
長屋がどの市にあるかで相談の出発点が変わるため、契約や工事の前に、管轄の消防署へ図面を持って相談してください。

つまり、大阪市の長屋で聞いた話を、堺市の長屋にそのまま当てはめてはいけないのですね。

はい、運用基準は市ごとに書き方も内容も違います。
建物ごとに管轄の消防署へ早めに相談するのが確実です。

よくある質問

Q住戸ごとに判定できれば、店舗にした住戸の消防用設備等は不要になりますか?
A不要になるとは限りません。特例の内容は、住戸ごとに別の防火対象物とみなしたうえで各条文を適用するというもので、その住戸の用途と面積で当てはめ直すことになります。
Q5つの条件に当てはまれば、自動的に住戸ごとの判定になりますか?
Aなりません。特例基準は消防法施行令第32条などの適用として書かれており、同条は消防長又は消防署長が認めるときに基準を適用しないという規定です。
Q長屋の一戸をカラオケボックスや遊技場にする場合もこの特例の対象ですか?
A特例の文言は、令別表第1の(2)項に掲げる用途に供する部分を除くとしています。(2)項にはキャバレー、遊技場、カラオケボックスなどが掲げられているため、計画している用途が当たるかどうかを所轄の消防署に確認してください。
Q大阪市の特例基準に出てくる条例第38条や条例第47条とは何ですか?
A運用基準でいう条例は大阪市火災予防条例のことです。条文の内容は運用基準には書かれていないため、大阪市の例規集で確認してください。

まとめ

✔壁を共有する長屋は、消防法施行令第8条が定める区画がなければ一棟で消防用設備等を判定します
✔大阪市の運用基準は、長屋の一部を店舗などに使う場合に住戸ごとに判定できる特例を定めています
✔条件は消火器具の節の第4 特例基準の6にある(1)から(5)までの5つです
✔屋内消火栓設備や自動火災報知設備など7つの節が、この条件を参照しています
✔界壁は開口部のない防火構造で、給水管や風道が貫通していないことが求められます
✔特例は消防長又は消防署長が認めるかどうかで決まり、自動的に適用されるものではありません
✔東大阪市と堺市の公開基準には同じ特例が見当たらず、市によって扱いが違います

条件がどこに書いてあるのかが分かって、すっきりしました。
長屋の図面を用意して、消防署に相談してみます!

長屋の用途変更は、契約や工事の前に相談するほど手戻りが減ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」(最近改正:令和8年6月1日)第1章第1節 消火器具 第4 特例基準 6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
  • 同 第1章第2節 屋内消火栓設備 第12 特例基準 16、第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第14 特例基準 16、第2章第1節 自動火災報知設備 第12 特例基準 11、第3節 漏電火災警報器 第5 特例基準 2、第5節 非常警報設備(非常ベル又は自動式サイレン)第4 特例基準 2、第3章第1節 避難器具 第8 特例基準 7、第2節 誘導灯及び誘導標識 第2 5(3)及び第3 4(3)
  • 東大阪市「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 9 特例基準(3) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
  • 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版・令和8年4月1日改正)第2章第1節 第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い 1(5)オ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
  • 消防法施行令第8条、第9条、第10条、第32条、別表第1
  • 建築基準法第2条第8号

※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。特例の適用は消防長又は消防署長の判断によるもので、個別の建物についての判断は所轄消防署にご確認ください。

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