消防用設備の工事の前に出す届出といえば、甲種消防設備士が出す「着工届」がよく知られています。
ところが、誘導灯や非常放送、連結送水管のように着工届がかからない設備もあります。
堺市では、こうした設備の工事にも工事設計書の届出を求める定めが、火災予防条例に置かれています。
期限は施行規則で工事に着手する日の10日前までです。
この記事では、国の基準と堺市の条例を分けて読み、どの設備が対象になるかを順にたどって、大阪市・東大阪市と比べます。
堺市のテナントビルで、誘導灯と非常放送のスピーカーを増やす改修をします。
着工届のいらない設備なら、工事前の届出はいらないのですか?
堺市火災予防条例の第91条は、着工届の対象を除いた消防用設備等の工事に、工事設計書の届出を求めています。
誘導灯も非常放送も、この除外には入っていません。
いつまでに、どこへ出せばよいのですか?
施行規則で、工事に着手する日の10日前までに様式第23号で届け出ると決められています。
順にたどっていきましょう。
- 国の着工届(消防法第17条の14)は、甲種消防設備士が行う消防法施行令第36条の2第1項の設備の工事が対象です
- 堺市火災予防条例第91条第1項は、消火器・簡易消火用具・誘導標識と、令第36条の2第1項の設備を除いた消防用設備等の設置工事に、工事設計書の届出を求めています
- このため、誘導灯・非常放送などの非常警報設備・連結送水管・排煙設備・非常コンセント設備などの工事は、着工届ではなく工事設計書の届出の対象になります
- 期限は施行規則第13条で工事に着手する日の10日前まで、様式第23号に設計に関する図書を添えます
- 大阪市(第61条の2・10日前まで)と東大阪市(第72条・7日前まで)にも同じ趣旨の届出があり、非常警報器具を除くかどうかと届出先が違います
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目次
国の基準では消防用設備の工事の前にどんな届出がいるのか

消防用設備等の種類は、消防法施行令第7条で決められています。消火設備・警報設備・避難設備のほか、消防用水と消火活動上必要な施設があります。
屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備・消防機関へ通報する火災報知設備・金属製避難はしご(固定式)・救助袋・緩降機など、甲種消防設備士でなければ工事ができない設備です。
逆にいうと、誘導灯・非常放送・連結送水管・排煙設備・非常コンセント設備などは、この一覧に入っていません。これらの工事は、消防法第17条の14の着工届の対象にはなりません。
着工届の全般は、着工届の10日前ルールの記事で解説しています。
着工届がいらない設備は、工事が終わってからの設置届だけということですか?
国の着工届の対象にはなりません。
ただ堺市では、条例で工事前の届出を上乗せしています。
堺市では工事設計書の届出はどの設備の工事にかかるのか

- 消防法施行令第7条が、消防用設備等の種類をすべて並べている(消火器から無線通信補助設備まで)
- 堺市火災予防条例第91条第1項が、そこから消火器・簡易消火用具・誘導標識を除いている
- 同じかっこ書が、令第36条の2第1項の設備(甲種消防設備士の工事で着工届がかかる設備)も除いている
- 残った設備の設置に係る工事をしようとする者が、あらかじめ工事設計書を届け出る
| 令第7条の区分 | 堺市第91条の届出の対象 | 対象から除かれるもの |
|---|---|---|
| 消火設備 | 動力消防ポンプ設備 | 消火器・簡易消火用具、屋内消火栓設備などの令第36条の2第1項の設備 |
| 警報設備 | 非常警報設備(非常ベル・自動式サイレン・放送設備)、漏電火災警報器 | 自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・消防機関へ通報する火災報知設備 |
| 避難設備 | 誘導灯、すべり台・避難橋など令第36条の2第1項にない避難器具 | 誘導標識、金属製避難はしご(固定式)・救助袋・緩降機 |
| 消防用水 | 防火水槽など | ― |
| 消火活動上必要な施設 | 排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備・無線通信補助設備 | ― |
また、令第36条の2第1項は、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備などについて電源・水源・配管の部分を甲種消防設備士の工事から外しています。
こうした部分だけの工事が第91条の届出にかかるかどうかは、条文の文言だけでは読み切れません。該当する工事をするときは、所轄の消防署に確かめてください。
誘導標識は除かれていて、誘導灯は除かれていないのですね。
はい、条文が除いているのは誘導標識だけです。
電気でつく誘導灯の工事は、届出の対象に残ります。
堺市の工事設計書はいつまでに何を添えて出すのか

届出先は、条例の本文で消防長又は消防署長とされています。
この届出の目的は、堺市の【解説及び運用】に次のように書かれています。
第91条には第2項もあり、厨房の排気ダクト等に設ける消火装置の工事も届出の対象です。
| 項目 | 第91条第1項 | 第91条第2項 |
|---|---|---|
| 対象の工事 | 消防用設備等(除外あり)の設置に係る工事 | 排気ダクト等に設ける火炎の伝送を防止できる消火装置の設置に係る工事 |
| 届出先 | 消防長又は消防署長 | 消防長又は消防署長 |
| 期限 | 工事に着手する日の10日前まで | 工事に着手する日の10日前まで |
| 様式 | 様式第23号+設計に関する図書 | 様式第24号+設計に関する図書 |
工事の日から逆算して、10日前には設計図をそろえておかないといけないのですね。
はい、起点は工事に着手する日です。
設計が固まる時期を工程表で確かめておきましょう。
大阪市と東大阪市の設計届出は堺市とどう違うのか

大阪市は第61条の2です。
1つ目は除外の範囲です。大阪市と東大阪市は非常警報器具も除いていますが、堺市の第91条第1項には非常警報器具が入っていません。
2つ目は期限です。堺市と大阪市は10日前まで、東大阪市は7日前までです。
3つ目は届出先です。堺市は消防長又は消防署長、大阪市は所轄消防署長を経て消防長、東大阪市は所轄消防署長です。
厨房の消火装置も3市とも対象ですが、どの消火装置が対象かは市ごとの厨房設備の条文(堺市第5条・大阪市第3条の4・東大阪市第3条の3)で決まるので、それぞれの条文を確かめてください。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 条例第91条・施行規則第13条 | 条例第61条の2・施行規則第9条の2 | 条例第72条・施行規則第12条 |
| 除くもの | 消火器・簡易消火用具・誘導標識・令第36条の2第1項の設備 | 消火器・簡易消火用具・非常警報器具・誘導標識・令第36条の2第1項の設備 | 消火器・簡易消火用具・非常警報器具・誘導標識・令第36条の2第1項の設備 |
| 届出先 | 消防長又は消防署長 | 所轄消防署長を経て消防長 | 所轄消防署長 |
| 期限 | 工事に着手する日の10日前まで | 工事に着手する日の10日前まで | 工事着手の日の7日前まで |
| 様式 | 様式第23号(厨房の消火装置は第24号) | 第16号様式 | 様式第19又は様式第19の2 |
| 厨房の消火装置 | 第5条第1項第2号ウの消火装置(第91条第2項) | 第3条の4第1項第2号アの自動消火装置 | 第3条の3第1項第2号エの自動消火装置 |
東大阪市だけ7日前なのですね。
うちは3市とも現場があるので、いちばん早い10日前で段取りします。
それが安全です。
いちばん厳しい10日前にそろえておけば、どの市でも間に合います。
工事を頼む側は何をいつまでに確かめればよいのか

実際の書類づくりは工事業者が行うことが多いですが、建物のオーナーや管理会社も、工程に10日前の届出が入っているかを確かめておくと安心です。
堺市で消防用設備の改修を頼むときは、次の順に確かめると漏れが少なくなります。
- 工事する設備が令第36条の2第1項の設備(着工届の対象)か、それ以外かを分ける
- 着工届の対象なら、甲種消防設備士が着手の10日前までに着工届を出す
- それ以外の設備(誘導灯・非常放送・連結送水管・排煙設備など)なら、第91条の工事設計書を着手の10日前までに様式第23号で出す
- 厨房の排気ダクト等に消火装置を付ける工事があれば、様式第24号の届出もあわせて確かめる
- 配管や電源の部分だけの工事、器具の交換だけの工事など、対象かどうか迷う工事は所轄の消防署に事前に確かめる
- 工事が終わったら、消防法第17条の3の2の設置届と検査の要否もあわせて確かめる
同じ堺市の条例の届出では、工事の現場事務所を置くときの届出もあります。堺市の現場事務所の届出の記事もあわせて確かめてください。
自動火災報知設備は着工届、誘導灯と非常放送は工事設計書と、設備ごとに分けて出すのですね。
はい、同じ改修工事でも設備ごとに届出の種類が変わることがあります。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
改修する設備を一覧にして、着工届と工事設計書のどちらかを振り分けます。
迷う工事は先に消防署へ相談します!
工事設計書の届出は、着工届がいらない設備でも工事前に出す書類です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市火災予防条例 第91条、堺市火災予防条例施行規則 第13条(堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第7章 雑則 所収) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第7章 雑則 第91条【解説及び運用】(同上)
- 大阪市火災予防条例 第3条の4・第61条・第61条の2、大阪市火災予防条例施行規則 第9条・第9条の2(大阪市例規データベース)
- 東大阪市火災予防条例 第3条の3・第72条、東大阪市火災予防条例施行規則 第12条(東大阪市例規集)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法 第17条の14、消防法施行令 第7条・第36条の2
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の工事の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





