ホテルの客室や病院の病室、老人ホームの居室のように、人が眠る部屋の自動火災報知設備にはどの感知器を付けるのでしょうか。
国の消防法施行規則は、地階・無窓階・11階以上の部分には煙感知器などを求めていますが、窓のある地上の階なら熱感知器を選ぶこともできます。
四日市市消防本部の審査基準は、ホテルや入院できる病院、入所型の福祉施設などの寝る部屋に煙感知器を設けるよう求めています。
同じ三重県の鈴鹿市はホテルと旅館だけに書き、ほかの本部は感知器を選ぶ表の中で扱うだけと、書き方が分かれます。
四日市市で小さなビジネスホテルの改装を計画していて、客室の感知器で迷っています。
窓のある地上の階なので、国の決まりでは熱感知器でもよいと聞きました。
四日市市の審査基準は、就寝施設として使う居室には煙感知器を設けるよう求めています。
国の決まりより一歩踏み込んだ指導なので、根拠を順にたどってみましょう。
ほかの市でも同じように煙感知器にするのですか。
鈴鹿市は(5)項イのホテルや旅館だけに書いていて、埼玉県央広域や津市には同じ項目がありません。
国の規則から順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第23条第5項第6号は、ホテルや病院などの地階・無窓階・11階以上に煙感知器などを求めている
- 窓のある地上の階の寝る部屋は、国の規則では使用場所に適応する感知器でよく、熱感知器も選べる
- 四日市市はホテル・入院できる病院・入所や宿泊のある福祉施設の就寝施設の居室に煙感知器を設けるよう指導している
- 鈴鹿市は同じ指導を(5)項イのホテルや旅館に限って書いている
- 埼玉県央広域・津市・大阪市・東大阪市・堺市は感知器を選ぶ表で就寝施設に煙感知器だけを適応としている
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目次
国の決まりでは寝る部屋にどの感知器を付けるのか

第5項は煙感知器などを付けなければならない場所、第6項はそれ以外の場所の決まりです。
5 令第二十一条第一項(第十二号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分のうち、第一号及び第三号に掲げる場所にあつては煙感知器を、(略)第六号に掲げる場所にあつては煙感知器、熱煙複合式スポット型感知器又は炎感知器を設けなければならない。
(略)
六 前各号に掲げる場所以外の地階、無窓階及び十一階以上の部分(令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十五)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物又はその部分に限る。)
6 (略)
三 前項又は前二号に掲げる場所以外の場所(廊下、便所その他これらに類する場所を除く。) その使用場所に適応する感知器
ホテルや旅館((5)項イ)や病院・福祉施設((6)項)では、地階・無窓階・11階以上の部分に煙感知器・熱煙複合式スポット型感知器・炎感知器のどれかを付けることになっています。
それ以外の階の部屋は第6項第3号に当たり、「その使用場所に適応する感知器」でよいとされています。
つまり、窓のある2階や3階の客室や病室なら、国の規則のうえでは差動式スポット型などの熱感知器を選ぶこともできます。
寝ている人は火災に気づくのが遅れやすいため、この部分を各消防本部がどう扱うかが今回の比べどころです。
窓のある普通の階なら、国の決まりでは熱感知器でもよいのですね。
はい、そこを各本部の審査基準がどう扱うかが分かれ目です。
次は四日市市の書き方です。
四日市市ではどの建物の寝る部屋に煙感知器を求めているのか

対象になる建物を、令別表第一の項でア〜エに分けて並べています。
(8)次に掲げる防火対象物の就寝施設として用いる居室は、省令第23条第5項第6号の規定にかかわらず、煙感知器を設けること。
ア 5項イ及び6項ロに掲げる防火対象物
イ 6項イ(1)から(3)までに掲げる防火対象物
ウ 6項ハ(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)に掲げる防火対象物
エ 16項イ(前アからウまでに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)に掲げる防火対象物。
アはホテルや旅館((5)項イ)と、特別養護老人ホームや障害者支援施設など避難が難しい人が入る施設((6)項ロ)です。
イは(6)項イの(1)から(3)までで、病院と、入院させる施設のある診療所、入所施設のある助産所が入ります。
入院させる施設の無い診療所((6)項イ(4))は挙げられていません。
ウは(6)項ハのうち利用者を入居させたり宿泊させたりする施設に限られ、エはこれらの用途を含む複合用途の建物です。
この(8)は全文に下線が引かれていて、四日市市の基準では下線=本市の行政指導を表します。
法令の義務ではありませんが、関係者に趣旨を説明して協力を求める指導として、設計の段階から煙感知器で計画しておくのが無難です。
病院でも、入院する設備の無い診療所は対象外なのですね。
はい、イは(6)項イ(1)から(3)までなので、入院させる施設の無い診療所は入っていません。
次は、同じ三重県の鈴鹿市と比べます。
鈴鹿市はホテルや旅館の寝る部屋だけに煙感知器を求めているのか

ただし、対象として挙げている建物の範囲が四日市市より狭くなっています。
イ 省令第23条第5項第6号の規定の適用を受ける防火対象物
建基法第2条第4号に規定する居室以外の部分(天井裏、収納庫等)にも煙感知器、熱煙複合式スポット型感知器又は炎感知器を設置する(省令第23条第4項第1号ニ及びホに掲げる場所を除く)。
ウ 多信号感知器又は複合式感知器以外の感知器
⑸項イに掲げる防火対象物のうち、就寝の用に供する居室は、省令第23条第5項第6号の規定にかかわらず、煙感知器を設けること。▲(第10-16図参照)
鈴鹿市の基準の▲は行政指導を表す記号で、例の図(第10-16図)でも無窓階でない階の客室に煙感知器を付けています。
一方で、病院や老人ホームなど(6)項の建物の寝る部屋について、鈴鹿市の基準に同じ一文はありません。
そのため、同じ三重県でも、四日市市では病院や老人ホームの寝る部屋も煙感知器の指導の対象になり、鈴鹿市では書かれていないという違いが出ます。
なお、鈴鹿市と埼玉県央広域は、第6号が当たる地階・無窓階・11階以上では、天井裏や収納庫など居室以外の部分にも煙感知器などを付けると書いています。
鈴鹿市の病院なら、窓のある階の病室は熱感知器でもよいのですか。
鈴鹿市の審査基準には病室について同じ一文がありません。
ただし感知器を選ぶ表にも就寝施設の行があるので、次で見てみます。
ほかの本部は感知器を選ぶ表で寝る部屋をどう扱うのか

大阪市消防局の運用基準は、この表を使う場面を次のように書いています。
イ 規則第23条第5項又は第6項第2号若しくは第3号に掲げる場所のうち、別表2-1-2の環境状態の項に掲げる場所で、非火災報又は感知の遅れが発生するおそれがあるときは、規則第23条第5項各号に掲げる場所にあっては同表中の適応する煙感知器又は炎感知器を、規則第23条第6項第2号又は第3号に掲げる場所にあっては同表中の適応する熱感知器、煙感知器又は炎感知器を設置すること。
表を載せている6つの本部の表を画像で確かめると、どれにも「就寝施設として使用する場所」の行があり、熱感知器と炎感知器の欄は空欄で、煙感知器の欄だけに○が付いています。
具体例はおおむね「ホテルの客室、宿泊室(大阪市・鈴鹿市は宿直室)、仮眠室等」で、堺市だけは病室や福祉施設の寝室まで書き足しています。
ただし表を使うのは「非火災報又は感知の遅れが発生するおそれがあるとき」で、四日市市や鈴鹿市のように寝る部屋なら必ず煙感知器と書いた一文ではありません。
○*(○※)の印は、そこに煙感知器を付けるなら感知器の回路に蓄積機能を持たせることを表しています。
| 消防本部 | 寝る部屋についての独自の一文 | 選ぶ表の「就寝施設」の行 |
|---|---|---|
| 四日市市 | (5)項イ・(6)項ロ・(6)項イ(1)〜(3)・入居や宿泊のある(6)項ハ・これらを含む(16)項イの就寝施設の居室は煙感知器(下線=行政指導) | 表は載せず消防予第240号通知によるとする |
| 鈴鹿市 | (5)項イの就寝の用に供する居室は煙感知器(▲=行政指導) | 第10-2表:煙感知器だけ○ |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | なし | 第10-2表:煙感知器だけ○ |
| 津市 | なし | 第11-表2:煙感知器だけ○ |
| 大阪市 | なし | 別表2-1-2:煙感知器だけ○ |
| 東大阪市 | なし | 別表第2:煙感知器だけ○ |
| 堺市 | なし | 第12-2表:煙感知器だけ○(具体例に病室・福祉施設の寝室) |
表があるなら、どの市でも結局は煙感知器になりそうですね。
表を使うのは非火災報や感知の遅れのおそれがあるときなので、無条件ではありません。
最後に、設計の前に確かめることを整理します。
設計の前に何を確かめておけばよいのか

四日市市の基準は、選び方そのものは国の通知によるとしたうえで、(8)を上乗せしています。
(7)感知器の設置に係る選択基準については、「自動火災報知設備の感知器の設置に関する選択基準について」((略)消防予第240号。以下「240号通知」という。)によること。
まず、建物が令別表第一のどの項に当たるかを確かめます。(6)項イなら(1)から(4)のどれか、(6)項ハなら入居や宿泊があるかで、四日市市の対象に入るかどうかが変わります。
次に、客室・病室・居室のほか宿直室や仮眠室も含めて寝る部屋を一覧にし、それぞれの階が地階・無窓階・11階以上かを書き込みます。
四日市市の文言は「就寝施設として用いる居室」なので、職員の宿直室や仮眠室が入るかどうかは所轄の消防署で確かめます。
煙感知器を付ける部屋が決まったら、表の○*の印に合わせて蓄積機能の要否も確かめます。
明日やることは、図面の寝る部屋に印を付け、建物のある市の基準の列で感知器の種類を1つずつ決めることです。
つまり用途の項と寝る部屋の一覧を先に作れば、どの市でも話が早いのですね。
そうです、無窓階かどうかも一緒に書いておくと国の義務との境目が分かります。
建物のある市の基準と照らし合わせてみてください。
よくある質問
まとめ
まずは建物の寝る部屋を一覧にしてみます!
建物のある市の審査基準で感知器の種類を確かめましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 別表第一、消防法施行規則 第23条(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第10 自動火災報知設備(四日市市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第10 自動火災報知設備(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第10 自動火災報知設備(埼玉県央広域消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-11 自動火災報知設備(津市消防本部)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 自動火災報知設備(大阪市消防局)
- 東大阪市 自動火災報知設備の設置に係る運用基準 別表第2(東大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 自動火災報知設備(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準と消防法施行規則に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





