大阪市内で飲食店の厨房をつくるとき、こんろやフライヤーの上の天がい(フード)に自動消火装置を付けることがあります。
ところが厨房が広く、天がいが大きかったり、いくつも並んでいたりすると、装置が1台で足りるのかが分からなくなります。
大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、この点を天がいの「辺の長さ」で比べるという考え方で整理しています。
台数が足りないときの連動や、天がいが複数あるときの5メートルの線も書かれています。
この記事では、国の基準と大阪市の基準を分けて読み、読む順番をたどったうえで、堺市・東大阪市の基準と比べます。
大阪市で、天がいが大きい厨房の工事を予定しています。
自動消火装置は1台で足りるのでしょうか?
大阪市では、天がいの面積ではなく辺の長さで装置の能力と比べます。
まず国の基準から確かめましょう。
面積が足りていても、だめな場合があるのですね。
はい、国の基準と大阪市の取扱いを分けて読むと整理できます。
順にたどっていきましょう。
- 国の省令は厨房設備の天がいに火炎伝送防止装置として自動消火装置を求めていますが、装置の大きさや台数の決め方までは書いていません
- 大阪市では、消防長告示第44号が天がいの水平投影面積に応じた公称防護面積を求め、運用基準が面積でなく方形の辺の長さで比べるとしています
- 1台の公称防護面積が足りないときは、同一型式の装置を複数、相互に連動させて設ければ足ります
- 天がいが複数あれば天がいと同じ数の装置が必要で、共用ダクトで天がい間が5メートル以下なら風上側の作動で風下側も起動させます
- 堺市も同一型式の組合せと連動を定めていますが、連動の線は「5m未満」で相互連動など、書き方が違う点があります
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目次
国の基準では厨房の天がいにどんな消火装置が求められるのか

装置をどの大きさで何台付けるかという数え方は、第11条第7号には書かれていません。大阪市では、これを火災予防条例・消防長告示・運用基準の順に具体化しています。
国の省令には、装置の大きさの決め方は書かれていないのですね。
はい、数え方は大阪市の告示と運用基準で読みます。
次の見出しで順にたどります。
大阪市で天がいの大きさに見合う自動消火装置はどう選ぶのか

イ 被防護面積(防護すべき天がいの水平投影面積をいう。)に応じた公称防護面積を有するものとすること
エ 被防護長さ(防護すべき排気ダクトの長さをいい、天がいから5メートルまでの部分をいう。)に応じた公称防護長さを有するものとすること
これを受けて、運用基準の第3 1(2)イは、比べ方を次のように具体化しています(印の無い項目で、凡例上は法令基準とその解釈の扱いです)。
- 条例第3条の4第1項第2号アで、その天がいに火炎伝走防止装置(自動消火装置)を付けると決まる
- 告示第44号第17条第2号イで、天がいの水平投影面積(被防護面積)に応じた公称防護面積の装置を選ぶ
- 告示の別図1で、公称防護面積は縦×横の長さで示されると確かめる
- 運用基準 第3 1(2)イで、天がいの縦と横の両方が、装置の縦と横以内に収まるかで比べる
- 収まらなければ、同一型式の装置を複数、相互に連動させて天がい全体を守る
| 比べるもの | 縦×横 | 一般的な面積 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 天がい(被防護面積) | 1.0m×1.5m | 1.5㎡ | — |
| 消火装置(公称防護面積) | 1.3m×1.3m | 1.69㎡ | 長辺1.5mが1.3mを超えるので防護できない |
面積が大きい装置でも、天がいの長い辺に届かなければだめなのですね。
はい、縦と横の両方が収まることが条件です。
天がいの寸法は、図面で縦と横を分けて確かめましょう。
大阪市で1台で足りないときは装置をどう組み合わせるのか

もう1つ、1つの天がいに排気口が複数ある形について、1(2)アが特例を置いています。
- 1つの天がいに排気口が複数あり、ダクトが分かれている形かを確かめる
- 1台のフード・ダクト用消火装置の公称防護面積が、天がいの被防護面積以上かを確かめる(1(2)イの辺の長さで比べる)
- その装置の公称防護長さでは届かないダクト部分のうち、天がいから5メートル以内の部分を拾い出す
- その部分は、ダクト用簡易自動消火装置を相互に連動させて守れば足りる
天がい全体を守れる装置なら、届かないダクトだけ別の装置で補えるのですね。
はい、ただし補う装置は相互に連動させます。
連動の配線も工事の範囲に入れておきましょう。
大阪市で天がいが複数あるときダクトの5メートルはどう数えるのか

同じ厨房に天がいがいくつもある場合は、第3 6(2)が台数と連動を決めています。
| 天がいの並び(風上→風下) | 天がい間のダクトの長さ | 大阪市の運用基準 第3 6(2)の扱い |
|---|---|---|
| AとB | 5m以下 | Aの消火装置の作動と連動してBの消火装置を起動させる |
| BとC | 5mを超える | CはBと連動して起動しなくてもよい |
あわせて、燃料を止める装置と守衛室等への知らせの単位は、第4 4(◆印=大阪市の行政指導基準)が原則として天がいごとの消火装置ごととし、消火装置を付けた厨房が建物に複数あるときは厨房ごとにできるとしています。
天がいの数だけ装置が要るうえに、近ければ連動も必要なのですね。
はい、共用ダクトで5メートル以下なら風上から風下へ連動です。
ダクトの経路図で天がい間の長さを測っておきましょう。
堺市や東大阪市では天がいの防護面積の扱いは違うのか

堺市消防局の「消防同意・消防用設備等審査基準」は、第25 フード等用簡易自動消火装置で、天がいの面積や連動を書いています。まず用語の定義です。
(ア) レンジ又はフライヤーが調理台等と接続されていて、調理台等を包含するフードが設置されている場合にあっては、レンジ又はフライヤーの被防護面積から周囲50cmの水平投影部分に含まれる範囲を天蓋の被防護面積とする。
(イ) 前(ア)の天蓋の被防護面積外にダクトの吸込口がある場合は、その吸込口の周囲50cmの部分を含めた面積を天蓋の被防護面積とする。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 公称防護面積の表し方 | 方形の辺の長さ(m×m)で比べる(運用基準 第3 1(2)イ) | 「短辺(m)×長辺(m)」で表示された範囲(用語の意義(10)) |
| 天がいの被防護面積 | 天がいの水平投影面積(告示第44号第17条第2号イ) | 水平投影面積が原則。調理台を覆うフードはレンジ等の周囲50cmの範囲にできる(Ⅱ2(1)エ) |
| 1台で足りないとき | 同一型式を複数、相互に連動(第3 1(2)イ) | 同一型式を組み合わせ、相互に連動(Ⅱ3(2)★) |
| 守るダクトの長さ | 天がいから5m。風上側は対象外(告示エ・第3 1(4)ア) | 天蓋の水平部分5m。排気方向の反対側は対象外にできる(Ⅱ2(1)オ(ア)) |
| 複数の天がいの連動 | 天がい間のダクト5m以下は風上側の作動で風下側を起動(第3 6(2)) | 天蓋間の距離5m未満は相互に連動(Ⅱ3(3)★) |
東大阪市消防局が公開している運用基準のPDF(消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・非常コンセント・連結送水管)には、厨房の自動消火装置の大きさや連動の記載は見当たりませんでした。東大阪市の火災予防条例と所轄の消防署で確かめてください。
大阪市と堺市で、5メートルの線の書き方が少し違うのですね。
はい、大阪市は5メートル以下、堺市は5m未満です。
境目の配置になるときは、事前に相談しておきましょう。
よくある質問
まとめ
天がいの縦と横の寸法を、装置の公称防護面積と1辺ずつ比べます。
天がい間のダクトの長さも測っておきます!
大阪市では、辺の長さで比べ、足りなければ同一型式を連動させるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第11章 火炎伝走防止装置 第3 消火装置 1(2)ア・イ(図11-2〜図11-4)・(3)・(4)ア(図11-5)・6(2)(図11-6)、第4 燃料供給の連動停止等 4 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第3条の4第1項第2号ア、火炎伝走防止用消火装置の構造、材質、性能及び設置の基準(昭和59年大阪市(消)告示第44号)第17条第2号・別図1(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第25 フード等用簡易自動消火装置 Ⅰ 2 用語の意義、Ⅱ 2 (1)エ・オ、Ⅱ 3 (2)・(3) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令 第11条第7号・第8号
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の厨房の装置の選定は、メーカーの性能評定の内容と所轄の消防署にご確認ください。





