粉末消火設備には、守る場所を複数の区域に分け、一の選択弁ごとに消火剤を放射する組み立てがあります。
国の規則は、貯蔵する消火剤の量を最大の量以上と決めていますが、貯蔵容器を何個に分けるかまでは書いていません。
鴻巣市を所管する埼玉県央広域消防本部の審査基準は、区域が相接して4以上あるときの容器の分け方まで決めています。
その分け方と1個にできる場合・消火剤の量を読み、鈴鹿市・四日市市・津市・堺市・大阪市の書き方と比べます。
鴻巣市の駐車場で、粉末消火設備の更新が話に出ています。
業者さんから、貯蔵容器の数を見直したいと言われました。
国の規則は消火剤の量を決めていますが、容器の数は書いていません。
そこを埼玉県央広域の審査基準が補っています。
補うというのは、国の規則と違うことを求めるのでしょうか。
規則の第3号に「かかわらず」と書いて、容器の分け方を決めています。
量は容器ごとの最大で数える形なので、順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第21条第3項第3号は、区域が二以上あるとき消火剤の量を最大の量以上と決めているが、貯蔵容器を何個にするかは書いていない
- 埼玉県央広域の審査基準は、放射区域が相接して4以上あるとき、規則の第3号にかかわらず貯蔵容器等を2個以上設置し、受け持つ区域の辺が互いに接しない組み合わせにする(▲)
- 各容器からの配管は別系統にし、区域が直列なら1個おき、並列なら対角線上の区域を同じ容器に受け持たせる
- 隣接する3放射区域ごとに防火上有効な間仕切り等で区画されていれば、貯蔵容器等は1個にできる
- 2個にしたときの消火剤の量は、それぞれの容器が受け持つ区域の量のうち最大となる量以上。鈴鹿市・四日市市・津市・堺市・大阪市は、分ける条件や量の書き方が違う
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目次
国の規則は粉末消火設備の貯蔵容器の数をどう決めているのか

区域が複数あるときの量の決め方は、第3号に書かれています。
全域放出方式又は局所放出方式の粉末消火設備において、同一の防火対象物又はその部分に防護区画又は防護対象物が二以上存する場合には、それぞれの防護区画又は防護対象物について前二号の規定の例により計算した量のうち最大の量以上の量とすること。
同じ防火対象物やその部分に、防護区画か防護対象物が二以上あるときは、それぞれ計算した量のうち最大の量以上を貯蔵します。
ここで規則が決めているのは量だけで、容器を何個に分けるかは第3号に書かれていません。
規則第21条には、県央広域の基準が使う「放射区域」という言葉も出てきません。
見積りを受け取ったら、まず区域の数と並び方、容器の数を図面で示してもらってください。
規則を読むだけでは、容器の数は決まらないのですね。
はい、量の決め方はあっても個数は規則に見当たりません。
次は鴻巣市の基準を見ましょう。
鴻巣市は放射区域が相接して4以上あるとき貯蔵容器をどう分けるのか

その規定は、国の規則第21条第3項第3号に「かかわらず」と書いて始まります。
省令第21条第3項第3号の規定にかかわらず、放射区域(一の選択弁により消火剤が放射される区域をいう。以下この項において同じ。)が相接して4以上ある場合は、貯蔵容器等を2個以上設置するものとし、貯蔵容器等が受け持つこととなる各放射区域の辺が相互に接することとならないように組み合わせること。この場合、各容器からの配管は別系統とし、放射区域が直列に並ぶ場合は1個おきの放射区域を、また、放射区域が並列に並ぶ場合は、対角線上の放射区域をそれぞれ受け持つように組み合わせること。▲
放射区域とは、一の選択弁で消火剤を放射する区域のことで、県央広域は基準の中でこの言葉を定義しています。
その区域が相接して4以上あるときは、貯蔵容器等を2個以上置き、各容器が受け持つ区域の辺が互いに接しないように組み合わせます。
配管は容器ごとに別系統にし、区域が一列に並ぶなら1個おき、図のように2行に並ぶなら対角線上の区域を同じ容器に受け持たせます。
この規定には▲が付いていて、県央広域の凡例では行政指導の基準を示します。
設計図では、区域の番号と各容器の受け持ちを色分けして示してもらうと、消防署との協議で確かめやすくなります。
4つの区域が隣り合っているなら、容器は2個になるのですね。
はい、基準は2個以上としています。
ただし、間仕切りで区画する場合は1個にできます。
貯蔵容器を1個にできるのはどんな区画のときか

分ける条件の例外にあたる規定なので、続けて読みます。
放射区域が相接して複数ある場合で隣接する3放射区域ごとに防火上有効な間仕切り等で区画されている場合は、貯蔵容器等を1個とすることができる。
放射区域が相接して複数あっても、隣接する3放射区域ごとに防火上有効な間仕切り等で区画されていれば、貯蔵容器等は1個にできます。
この規定には記号が付いていません。
「防火上有効な間仕切り等」の材料や構造までは、県央広域の本文に書かれていません。
区域を仕切るつもりなら、間仕切りの位置と構造を図に描き、所轄の消防署に防火上有効と認められるかを先に確かめてください。
間仕切りで区画できるなら、容器を減らせるということですか。
はい、条件は3区域ごとの区画です。
その間仕切りが認められるかは、先に消防署で確かめましょう。
貯蔵容器を2個にしたときの消火剤の量はどう決まるのか

国の規則の第3号と同じく、最大の量が物差しです。
前(ア)により貯蔵容器等を2個設置することとなる場合の消火剤の量は、それぞれの貯蔵容器等が受け持つ放射区域の量のうち最大となる量以上とすること。
2個に分けたときは、容器ごとに、その容器が受け持つ放射区域の量のうち最大となる量以上を貯蔵します。
規則の「最大の量」を、容器ごとに当てはめた形です。
「放射区域の量」の計算方法は、この項には書かれていません。
規則第21条第3項第1号と第2号に計算の方法があるので、各区域の計算量と容器ごとの貯蔵量を一覧にしてもらってください。 ここまでを、規則から基準へたどる順に並べると次のとおりです。
- 規則第21条第3項第3号は、区域が二以上あるとき消火剤の量を最大の量以上とする(容器の個数は書かない)
- 県央広域の基準 ウ(ア)は、「第3号の規定にかかわらず」、区域が相接して4以上あれば貯蔵容器等を2個以上にする
- (イ)は、隣接する3放射区域ごとに防火上有効な間仕切り等で区画すれば1個にできるとする
- (ウ)は、2個にしたときの量を容器ごとに受け持つ区域の最大の量以上とする
容器を2個にしたら、消火剤の量も2倍になるのですか。
各容器は受け持つ区域の最大に合わせます。
全体で何倍になるかは、区域の大きさ次第です。
鈴鹿市や四日市市や津市や堺市や大阪市では書き方がどう違うのか

国の規則には載っていない部分なので、まず鈴鹿市の本文を見て、そのあと表で並べます。
(ア) 放射区域(一の選択弁により消火剤が放射される区域をいう。以下この項において同じ。)が相接して4以上ある場合
a 省令第21条第3項第3号の規定にかかわらず、貯蔵容器等を2個以上設置し、貯蔵容器等が受け持つ各放射区域の辺が相互に接しないように組み合わせる。
b・c(略)
d 放射区域が並列に並ぶ場合は、対角線上の放射区域をそれぞれ受け持つように組み合わせる。▲
(イ) 放射区域が相接して複数ある場合において、隣接する3放射区域ごとに防火上有効な間仕切り等で区画する場合
貯蔵容器等を1個として差し支えない。
鈴鹿市は、4以上の場合を同じ言葉の定義で書き、aからdまで同じ順に容器の分け方を並べています(本文は省略しました)。
▲が付くのはdの並列の組み合わせだけで、県央広域は(ア)の段落の最後に▲を付けている点が違います。
四日市市は固定式の粉末消火設備の項に同じ内容を書き、アとイの全文に下線(行政指導)を引いています。消火剤の量は、この箇所には見当たりませんでした。
津市は「放射区画」という言葉で、車両が駐車する部分に前面の車路を加えた床面積100㎡以上を一放射区画とし、2以上が相接すれば粉末貯蔵容器を2ユニット設置するとしています。
堺市は県央広域とほぼ同じ文に加えて、1個にした場合の量と、隣接する2区域が3m以上ラップする場合の例外まで書いています。
大阪市は令第32条又は条例第47条を適用する特例として、自動車の修理や駐車の部分について、容器の数に加えて床面積1㎡あたり3キログラムと放射区域の面積50㎡以上まで定めています。
| 消防本部 | 2個以上に分ける条件 | 1個にできる場合 | 消火剤の量・区域の大きさ |
|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市) | 放射区域が相接して4以上(▲) | 隣接する3放射区域ごとに防火上有効な間仕切り等で区画 | 2個の場合は受け持つ区域の量のうち最大以上。1個の場合の量は書かれていない |
| 鈴鹿市 | 同じ(並列の組み合わせだけ▲) | 同じ | 2個の場合は同じ。1個の場合の量は書かれていない |
| 四日市市 | 同じ(下線) | 隣接する3放射区域ごと(下線) | この箇所には量の定めが見当たらない |
| 津市 | 2以上の放射区画が相接する場合は2ユニット | 定めが見当たらない | 最も大きい放射区画の床面積1㎡につき5.72キログラム。放射区画は床面積100㎡以上の部分 |
| 堺市 | 放射区域が相接して4以上 | 隣接する3放射区域以下ごとに防火上有効な間仕切等で区画 | 2個の場合は受け持つ区域の最大。1個の場合は隣接する2区域のうち最大(2区域のみで3m以上ラップなら最大の区域の量) |
| 大阪市 | 放射区域が相接して4以上(駐車・修理の部分の特例) | 隣接する放射区域ごとに不燃材料で防火上有効に区画 | 2個の場合は床面積が最大の区域×3キログラム/㎡、1個の場合は隣接する2区域の床面積の合計が最大のもの×3.6キログラム/㎡。放射区域の面積は50㎡以上 |
つまり、容器を分ける考え方は同じでも、数字や条件は市ごとに違うのですね。
はい、津市は2以上で分け、大阪市は面積の下限まで定めています。
他市の施設を扱うときは、その市の基準で確かめてください。
よくある質問
まとめ
設計図で、放射区域と容器の受け持ちを確かめてもらいます!
区域の並びと間仕切りの図を持って、消防署との協議に臨みましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第18条第4号、消防法施行規則 第21条第3項(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第7 粉末消火設備 2⑵ ウ(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第7 粉末消火設備 2⑵ エ(鈴鹿市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第7 粉末消火設備 1 固定式の粉末消火設備(2)(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-8 粉末消火設備 3 自動車車庫等の放射区域等(津市消防本部)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」粉末消火設備 3 局所放出方式(3)(堺市消防局)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」粉末消火設備 2(1)〜(3)(大阪市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準等と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」「定めがない」としたものは各本部の公表資料を確認した範囲の結果です。東大阪市・行田市・羽生市は今回の比較に含めていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





