ビルの電気室では、消防用設備の電源を、照明や空調などの一般の電気と同じ変圧器から取ることがあります。
国の規則は、非常電源専用受電設備が「他の電気回路の開閉器又は遮断器によって遮断されないこと」と書くだけで、遮断器の大きさの数字は決めていません。
津市・四日市市・堺市・大阪市の基準は、共用する変圧器の二次側の遮断器の合計を、変圧器二次側の定格電流の2.14倍以下と書いています。
この数字を国の規則からたどり、数字を書かない鈴鹿市・埼玉県央広域の基準と原文のとおりに並べます。
うちのビルは、消防用の電気も一般の電気も同じ変圧器から取っています。
一般側の遮断器が落ちたとき、消防用まで止まらないか心配です。
国の規則は、他の電気回路の遮断器で遮断されないことを求めています。
ただ、遮断器の大きさの数字は規則に書かれていません。
数字は、消防本部ごとに決めているのですか。
はい、津市・四日市市・堺市・大阪市は2.14倍と書いています。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、数字を書かない形です。
- 国の規則は、非常電源専用受電設備が「他の電気回路の開閉器又は遮断器によって遮断されないこと」と書くだけで、遮断器の定格電流の数字は決めていない
- 津市・四日市市・堺市・大阪市は、共用する変圧器の二次側の配線用遮断器の定格電流の合計を、変圧器二次側の定格電流の2.14倍以下と書いている
- 2.14倍は、四日市市・堺市・大阪市が括弧書きで示す「不等率1.5/需要率0.7」と合う数字で、津市の基準は理由を書いていない
- 津市は専用の変圧器や専用の受電用遮断器にも1.5倍以下を書き、四日市市と堺市は専用には倍数を書かず、先に遮断することだけを求めている
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は倍数を書かず、保護協調の定義と図の注で、一般負荷の事故は一般負荷の遮断器で切る形を求めている
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目次
国の規則は非常電源と他の電気回路の関係をどう決めているのか

そのうち(ロ)が、他の電気回路との関係の定めです。
他の電気回路の開閉器又は遮断器によつて遮断されないこと。
遮断器の定格電流や、変圧器との倍数は条文に出てきません。
第4号は屋内消火栓設備の定めですが、他の設備も、この号の規定を借りて非常電源を決めています。
借りる側の条文は、次のとおりです。
- スプリンクラー設備:第14条 第1項 第6号の2が、第12条第1項第4号の規定の例により設けると書く
- 屋外消火栓設備:第22条 第6号が、同じく「例により」と書く
- 排煙設備:第30条 第8号が、同じく「例により」と書く
- 連結送水管:第31条 第7号が、容量を2時間以上とするほか「例により」と書く
- 自動火災報知設備:第24条 第4号ハが、非常電源専用受電設備は第12条第1項第4号イ及びホの「例による」と書く
- 非常コンセント設備:第31条の2 第8号が、同じく「準じて」設けると書く
電気室の設計や改修では、まず管轄の本部の基準の非常電源の章で、結線の項を開きましょう。
規則に数字が無いなら、何を見て遮断器を選べばよいのでしょう。
管轄の消防本部の基準を見ます。
まず津市の結線図から見ていきましょう。
津市は共用変圧器の二次側の遮断器に何を求めているのか

共用変圧器の場合が、第24-5図dとeです。
(注2) 共用変圧器の二次側に設ける配線用遮断器(略)は、次のすべてに適合すること。
① 一の配線用遮断器の定格電流は、変圧器二次側定格電流以下とすること。
② 配線用遮断器の定格電流の合計は、変圧器二次側定格電流の2.14倍以下とすること。
③ 配線用遮断器は、受電用遮断器(略)及び共用変圧器の一次側に設ける遮断器(略)より先に遮断する性能を有すること。
④ 配線用遮断器の遮断容量は、非常電源の専用区画等からの引き出し口又は当該配線用遮断器の二次側で短絡が生じた場合においても、その短絡電流を有効に遮断するものであること。
一つは変圧器二次側の定格電流以下、合計は2.14倍以下、高圧側の遮断器より先に遮断、短絡電流を切れる遮断容量、の四つです。
仮に二次側の定格電流が100Aの変圧器なら、遮断器は一つにつき100A以下、合計は214A以下という計算になります。
この計算例は、津市の条件を当てはめた説明用の数字で、実際の設計値ではありません。 一般負荷の主遮断器を二次側に置く第24-5図eでは、数字の置き方が変わります。
津市の注3は、主遮断器の定格電流を変圧器二次側定格電流の1.5倍以下とし、消防用の遮断器の定格電流の合計を2.14倍以下とすると書いています。
同じ例なら、主遮断器は150A以下、消防用の遮断器の合計は214A以下です。 図の前の文は、保護協調を確認したうえで図の例により設けると書き、図の例と同等以上と認められる性能なら図によらなくてよいとしています。
認定キュービクルは、この結線に適合するものとして扱うとも書いています。
低圧で受電する場合は第24-6図が別にあり、電流制限器の定格電流を配線用遮断器の合計以上とする定めがあります。
設計では、変圧器二次側の定格電流を先に確かめて、上限の電流を計算しましょう。
つまり、共用の変圧器は、遮断器の合計に上限があるということですね。
はい、津市は二次側定格電流の2.14倍以下です。
次は、この数字の意味を見ましょう。
2.14倍は何から出てきた数字なのか

四日市市・堺市・大阪市は、数字に括弧書きを添えています。
配線用遮断器の定格電流の合計は、変圧器二次側の定格電流に2.14(不等率1.5/需要率0.7)倍を乗じた値以下であること。(略)
1.5÷0.7を計算すると、約2.14になります。
大阪市は「需用率」の字で書き、堺市は四日市市と同じ「需要率」で書いています。
四日市市・堺市・大阪市は、式も添えていますが、意味の説明までは書いていません。 添えられた式は、次のとおりです。
- 不等率:各負荷の最大需要電力(堺市と大阪市は「の和」)を、総括したときの最大需要電力で割ったもの
- 需要率(大阪市は需用率):最大需要電力を、設備容量で割ったもの
同じ2.14倍でも、津市は数字だけで、他の三本部は根拠の式つきです。
津市で設計するなら、数字の出どころは津市消防本部に確かめましょう。
2.14倍には、根拠の式が付いている本部もあるのですね。
はい、四日市市・堺市・大阪市は不等率1.5/需要率0.7を添えています。
津市は数字だけなので、確かめておきましょう。
津市と他の本部は、ただし書きや専用の場合の書き方がどう違うのか

原文を次の表に並べます。
| 本部(箇所) | 共用変圧器の遮断器の合計 | 一つの遮断器 | ただし書きなど | 専用の場合 |
|---|---|---|---|---|
| 津市(5-24 2⑸ア・第24-5図) | 二次側定格電流の2.14倍以下 | 二次側定格電流以下 | 図の例と同等以上と認められる性能なら図によらない(図の前の文)。認定キュービクルは適合として扱う | 専用変圧器・専用の受電用遮断器は、1台なら1.5倍以下。複数なら一つは二次側定格電流以下、合計は1.5倍以下 |
| 四日市市(第27 2(1)ウ(ウ)(エ)) | 2.14(不等率1.5/需要率0.7)倍以下 | 二次側定格電流を超えない。直近上位に標準定格のものがあるときはその定格電流とできる | 過負荷を検出し一般負荷回路を遮断する装置を設けたときは、合計の上限によらない。認定キュービクルは適合として扱える | 先に遮断するものを設ける。倍数の記載は見当たらない |
| 堺市(第3 Ⅱ 2(2)ウ・エ) | 2.14(不等率1.5/需要率0.7)倍以下 | 四日市市と同じ | 四日市市と同じ。認定品は適合として扱える | 先に遮断するものを設ける。倍数の記載は見当たらない |
| 大阪市(第6章 第3 2(1)・図6-1) | 2.14倍以下(不等率1.5/需用率0.7) | 二次側の定格電流以下 | 図の注に、ただし書きは見当たらない | 図に倍数の記載は見当たらない |
四日市市と堺市は、過負荷を検出して一般負荷回路を遮断する装置を設ければ、合計の上限が外れるただし書きを置いています。
津市と大阪市には、このただし書きが見当たりません。
津市の「同等以上」は、図全体への一般的な逃げ道で、合計の上限だけに付いたただし書きではありません。 主遮断器を置く場合の書き方も、少し違います。
津市の注3は、消防用の遮断器の合計に2.14倍を当てています。
四日市市・堺市・大阪市は、一般負荷の主遮断器と消防用の遮断器の合計に2.14倍を当てる書き方です。
主遮断器を置く設計では、どの遮断器を足し合わせるのかを、必ず管轄の本部に確かめましょう。
ただし書きがあるかどうかで、設計の余地が変わるのですね。
はい、四日市市と堺市は過負荷を検出する装置の場合を置いています。
津市と大阪市は、その書き方が見当たりません。
鈴鹿市と埼玉県央広域は数字を書かずに何を求めているのか

代わりに、規則と同じ文を置いて、結線は別図に任せています。
供給方式及び給電電圧に応じ別図2に示す方法により結線され、他の電気回路の開閉器又は遮断器によって遮断されないこと。
別図2の注には、LBS(高圧交流負荷開閉器)又はCB(遮断器)は、一般負荷の過負荷及び短絡のとき、MCCBより先に遮断しないものと書かれています。
キュービクルの図の注には、一般負荷の過負荷及び短絡のときは、一般負荷のMCCBで遮断すると書かれています。
用語の項は、保護協調を「一般負荷の回路が事故を生じても非常電源の回路に影響を与えないように遮断器等を選定し、動作協調を図ること」と説明しています。 埼玉県央広域の基準も、同じ形です。
津市・四日市市・堺市も、保護協調という言葉と、先に遮断する条件を持っています。
津市などが遮断の順序に加えて定格電流の上限の数字を書き、鈴鹿市と埼玉県央広域は数字を書かない、というのが違いです。 設計や改修の順序は、次のように整理できます。
- 管轄の消防本部の基準の非常電源の章で、非常電源専用受電設備の結線の項を開く
- 共用変圧器か専用かを決め、基準の図のどれに当たるかを選ぶ
- 倍数があるときは、変圧器二次側の定格電流から上限の電流を計算する
- ただし書きや「同等以上」が使えるかと、認定キュービクルの扱いを確かめる
- 一般負荷の事故で、消防用の遮断器が先に遮断しないことを確かめる
数字が無い本部は、何を見て確かめればよいのでしょう。
図の注と、保護協調の定義を見ます。
迷う点は、管轄の消防本部に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
管轄の本部の結線の図を開いて、数字を確かめます!
迷う点は、早めに消防署へ相談しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第12条・第14条・第22条・第24条・第30条・第31条・第31条の2(e-Gov法令検索)
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-24 消防用設備等の非常電源(津市消防本部)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第27 非常電源(四日市市消防本部)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3 非常電源(堺市消防局)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第6章 非常電源(大阪市消防局)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第23 非常電源(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第4章 第23 非常電源(埼玉県央広域消防本部)
※本記事は各消防本部が公表している基準と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。東大阪市は、この項目の資料を手元で確認できなかったため扱っていません。仮の電流値は、基準の倍数を当てはめた説明用の数字です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





