カラオケボックスやパチンコ店のように、いつも大きな音が鳴っている場所では、火災の警報音が埋もれてしまうおそれがあります。
国の規則は、他の警報音や騒音と明らかに区別して聞き取れるよう措置することだけを求め、デシベルの数字は決めていません。
鈴鹿市の審査基準は、暗騒音が65dB以上あるとき、6dB強い音にする措置と他の音を自動で止める措置を、「及び」で並べて書いています。
この書き方を国の規則からたどり、埼玉県央広域・津市・四日市市・大阪市・堺市と比べます。
うちはカラオケも入った店舗ビルで、警報が聞こえるか不安です。
大きな音がしている店は、基準が違うのでしょうか。
国の規則は、聞き取りにくい場所には明らかに区別して聞き取れる措置を求めています。
数字は規則に無く、消防本部ごとの基準が決めています。
本部ごとに決めているなら、地域で違いが出ますね。
はい、同じ6dBの話でも、措置の並べ方が違います。
まず鈴鹿市の書き方から見ていきましょう。
- 国の規則は、聞き取りにくい場所の警報音を「明らかに区別して聞き取ることができる」よう措置するとだけ書き、デシベルの数字は決めていない
- 鈴鹿市は、任意の場所で65dBを求め、暗騒音が65dB以上のときは、6dB強くする措置(ア)及び自動で他の音を止める措置(イ)、又はそれと同等の措置(ウ)を講じると書いている
- 津市・四日市市・大阪市・東大阪市・堺市は二つの措置を「いずれか」「若しくは」でつなぎ、鈴鹿市は「及び」、県央はカラオケ等の項で「次に掲げる措置」とだけ書く
- 手動で音を止める扱いは、鈴鹿市では同等措置の例、大阪市と東大阪市ではマニュアルの掲示が条件で、堺市はカラオケ店に市独自の措置を足している
- ヘッドホン個室とパチンコ店には、鈴鹿市と県央が同じ型の措置を書き、津市と四日市市にはパチンコ店の記載が見当たらない
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目次
国の規則は暗騒音のある場所の警報音をどう決めているのか

そのうち、イ(ロ)が聞き取りにくい場所の定めです。
地区音響装置を、ダンスホール、カラオケボックスその他これらに類するもので、室内又は室外の音響が聞き取りにくい場所に設ける場合にあつては、当該場所において他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるように措置されていること。
条文に、デシベルの数字は出てきません。
同じ号のイ(イ)には、装置の中心から1m離れた位置で90dB以上とありますが、これは装置そのものの性能の定めです。
後で見る基準の65dBは、部屋の任意の場所で測る値なので、別の物差しです。 受信機の主音響装置にも、第24条 第2号 ホ(ロ)に同じ趣旨の定めがあります。
ヘッドホンを客に使わせる個室は、第5号 イ(ハ)が別に、個室で警報音を確実に聞き取れる措置を求めています。
数字を決めているのは各消防本部の基準なので、設計ではまず管轄の本部の基準を確かめましょう。
規則に数字が無いなら、何を見て設計すればよいのでしょう。
管轄の消防本部の基準が、数字を決めています。
まず任意の場所で65dBという鈴鹿市の数字から見ていきましょう。
鈴鹿市は暗騒音が65dB以上あるときに何を求めているのか

暗騒音は、警報の音に着目したとき、それ以外で同時に出ているすべての音と定義されています。
省令第24条第5号イ(ロ)及び第5号の2イ(ロ)に規定する措置とは、任意の場所において65dB以上の音圧を確保することをいう。●ただし、暗騒音(略)が65dB以上ある場合は、次の(ア)及び(イ)又は(ウ)に掲げる措置を講じること。
(ア) 地区音響装置の音圧が、暗騒音よりも6dB以上強くなるよう確保する措置
(イ) 地区音響装置の作動と連動して、地区音響装置の音以外の音が自動的に停止する措置(略)
(ウ) (ア)又は(イ)と同等以上の効果のあるものとして規定する次のaからdまでに掲げる措置(略)
(ア)は、地区音響装置の音を暗騒音より6dB以上強くする措置です。
(イ)は、地区音響装置以外の音を自動的に停止する措置で、基準はこれをいわゆるカットリレーと呼んでいます。
カットリレーは、火災信号を受けたときに業務放送設備などへの電気を遮断して、非常放送を聞き取りやすくする遮断器(電源制御器)と説明されています。
(ウ)は、(ア)又は(イ)と同等以上の効果がある措置で、次のaからdが挙げられています。
- a:常時人がいる場所に受信機又は副受信機を置き、地区音響装置が鳴動したら、音を手動で停止できること
- b:地区音響装置の警報音に、聞き取りやすい音色を選ぶこと
- c:従業員がマイク放送と携帯用拡声器で、迅速な避難誘導を行うこと
- d:音以外の手段で、補完的に火災を知らせること
aからdを組み合わせる扱いには、行政指導を表す▲が付いています。
この項の図(第10-150図)は、カラオケボックスの例です。
暗騒音が平均88dBなので、警報音を暗騒音より6dB以上強くするよう、ベルを増設すると書かれています。
88dBに6dBを足すと94dBです。
設計では、暗騒音を実測して65dBを超えるかを確かめ、超えるなら(ア)から(ウ)のどれで確保するかを決めましょう。
暗騒音が高い店は、選ぶ措置が三つあるのですね。
はい、鈴鹿市は強くする・止める・補うの三つを並べています。
次は、その並べ方を他の本部と比べます。
鈴鹿市の「及び」は他の本部の「いずれか」と何が違うのか

法令文の通常の読み方では、「及び」でつないだ(ア)と(イ)を一組とし、それか(ウ)、という形です。
つまり、6dB強くする措置と自動停止の措置の両方を講じるか、代わりに(ウ)を講じる書き方に読めます。
ところが(ウ)の説明は「(ア)又は(イ)と同等以上の効果のあるもの」で、どちらか一方と同等という書き方です。 このため、(ア)と(イ)の両方が必要なのか、一方でよいのかは、文だけでは読み切れません。
他の本部は、次のように書いています。
| 本部(箇所) | 65dBの扱い | 暗騒音が65dB以上のときの措置のつなぎ方 | 音を止める措置 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市(第4章 第10 7⑴ウ) | 任意の場所で65dB以上(●) | (ア)6dB強く 及び (イ)自動停止、又は(ウ)同等 | 本文は自動停止。手動は(ウ)の例 |
| 埼玉県央広域(第4章 第10 8⑴ウ(イ)) | 任意の場所で65dB以上(●) | 「次に掲げる措置又はこれと同等以上」(a6dB強く、b自動停止)。「いずれか」の語はない | 本文は自動停止。手動はエの例(▲) |
| 津市(5-11 7⑷) | 任意の場所で65dB以上(記号なし) | 「ア若しくはイ」又は同等以上(ア6dB強く、イ自動停止) | 自動停止のみ。手動の記載なし |
| 四日市市(第10 5(10)) | 任意の場所で65dB以上 | 「ア若しくはイいずれか」又は同等以上(ア6dB強く、イ自動停止) | 自動停止のみ。「自動的」に下線 |
| 大阪市(第2章 第1節 第3 6(2)) | 任意の場所で65デシベル以上(◆) | 「いずれか」又は同等以上 | 自動停止又は低減、手動停止又は低減(手動はマニュアル掲示に限る) |
| 東大阪市(Ⅱ 1⑵エ) | 任意の場所で65デシベル以上(▲) | 「いずれか」又は同等以上 | 自動停止、又は手動停止(マニュアル掲示に限る) |
| 堺市(第12 Ⅱ 6(7)イ) | 任意の場所で65dB以上(印なし) | 「いずれか」(◆) | 自動停止、又は手動停止(◆) |
堺市の◆は、国の通知を参考にした指導基準、大阪市の◆は市独自の行政指導基準で、同じ記号でも意味が違います。
つなぎ方は、鈴鹿市が「及び」、県央が書き分け、他の五本部が「いずれか」「若しくは」です。
鈴鹿市で設計するなら、(ア)と(イ)の両方を前提に図面を描くか、管轄の消防本部に読み方を確かめましょう。
鈴鹿市だけ「及び」で書いている、ということですか。
他の本部は「いずれか」や「若しくは」でつないでいます。
読み方は消防本部に確かめましょう。
ヘッドホン個室やパチンコ店にも同じ考え方を当てているのか

パチンコ店やゲームセンターは、規則の条文に名前がありません。
パチンコ店、ゲームセンターその他の大音響装置を設ける場合の当該場所については、省令第24条第5号イ(ロ)を準用することとし、この場合の同号に規定する措置とは、任意の場所において65dB以上の音圧を確保することをいう。●ただし、暗騒音(店内BGM及びパチンコ台による音響等を含む。)が65dB以上ある場合は、次の(ア)及び(イ)又は(ウ)に掲げる措置を講じること。▲
鈴鹿市のエは、ヘッドホン個室について、個室の警報音をヘッドホン等から流れる最大音圧より6dB以上強くする措置などを並べています。
ヘッドホンの音量を機器の側で制限するか、利用者に周知徹底するかも、同等措置の例として書かれています。
各本部の扱いは、次のとおりです。
| 本部(箇所) | ヘッドホン個室 | パチンコ店・ゲームセンター |
|---|---|---|
| 鈴鹿市(第4章 第10 7⑴エ・オ・カ) | エ(●▲)で65dBと6dB強く。オは遮音性の高いヘッドホンで聞取りを確かめる | カ(▲)で第24条第5号イ(ロ)を準用 |
| 埼玉県央広域(第4章 第10 8⑴オ・カ・キ) | オ(●)で65dBと「いずれか」。カ(▲)は音圧の制限や周知を同等措置の例に | キ(▲)に独立した項がある |
| 津市(5-11 7⑸) | ⑸で65dBと「ア若しくはイ」 | 記載が見当たらない |
| 四日市市(第10 5(9)) | ヘッドフォンの使用を提供する営業形態を、聞き取りにくい場所に含める(下線) | 記載が見当たらない |
| 大阪市(第2章 第1節 第6 6) | 65デシベルと「いずれか」(◆)。警報音と暗騒音が把握できないときは各個室に音響装置など | 第3 5(1)で対象に挙げ、暗騒音の例に「パチンコ台による音響」 |
| 東大阪市(Ⅱ 4⑷ウ) | 65デシベルと「いずれか」(▲)。⑷イは各個室内に音響装置の増設等 | Ⅱ 1⑵ウ(ア)で対象に挙げる |
| 堺市(第12 Ⅱ 6(7)ウ) | 65dBと「いずれか」(◆)。個室ビデオ店は市独自の措置(★) | (7)ア(ア)で対象に挙げる(◆) |
ヘッドホンやゲーム機のある店は、本部の基準に独立した項があるかを、最初に確かめましょう。
ヘッドホンの個室やパチンコ店にも、同じ基準なのですか。
はい、鈴鹿市と県央は同じ型の措置を書いています。
津市と四日市市は、パチンコ店の記載が見当たりません。
音を止める方法は本部ごとにどこまで認められているのか

本部の書き方を、次の順に整理します。
- 鈴鹿市:本文の(イ)は自動停止(カットリレー)で、手動停止は(ウ)のaに、同等措置の例として書かれています(▲)
- 埼玉県央広域:ウ(イ)のbは自動停止で、手動停止はエ(ア)に同等措置の例として書かれています。ヘッドホン個室とパチンコ店の項は「自動的に停止若しくは低減し、又は…手動で停止又は低減」です
- 津市・四日市市:自動停止だけを書いています。四日市市は「自動的」に下線があり、手動停止を認める書き方はこの項にありません
- 大阪市・東大阪市:自動停止と手動停止のどちらも書き(大阪市の受信機の項は「停止又は低減」)、手動にはマニュアルの掲示を条件にしています
- 堺市:自動停止、又は手動停止(◆)に加えて、カラオケ店には音量の低減・消音、デッキの電源のカット、ベル等の増設の市独自の三つの措置(★)があります
大阪市は、低減を「警報音が暗騒音より6dB以上強くなるよう確保されているもの」と説明しています。
堺市の個室ビデオ店の項には、天井が抜けたブース状の個室で、音圧を上げない旨の標識を掲出させる措置も書かれています。 設計や改修の順序は、次のように整理できます。
- 営業時間中の暗騒音を実測し、65dBを超える場所があるかを確かめる
- 超える場所では、6dB強くする・自動で止める・同等措置のどれで確保するかを選ぶ
- 本部の文が「及び」か「いずれか」かを確かめ、迷うときは管轄の消防本部に読み方を聞く
- 手動で止める運用なら、常時人がいる場所の受信機とマニュアルの掲示を確かめる
- ヘッドホン個室・パチンコ店・カラオケ店は、本部の基準の独立した項を確かめる
音を止めるのは、手動でもよいのでしょうか。
本部によって条件が違います。
まず自分の本部の書き方を確かめましょう。
よくある質問
まとめ
暗騒音を測って、措置の書き方を本部に確かめます!
迷う点は、早めに消防署へ相談しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第24条(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第10 7(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第4章 第10 8(埼玉県央広域消防本部)
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-11 自動火災報知設備 7(津市消防本部)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第10 自動火災報知設備 5(四日市市消防本部)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第3・第6(大阪市消防局)
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 1・4(東大阪市消防局)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第12 自動火災報知設備 Ⅱ 6(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している基準と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。記号の意味は本部ごとに違い、鈴鹿市と県央は▲が行政指導・●が法令基準に行政指導を加えたもの、大阪市は◆が行政指導、東大阪市は▲と●、堺市は◆が国の通知を参考にした指導・★が市独自の指導です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





