屋外消火栓設備のポンプは、配管内の水圧の低下を感じ取る起動用水圧開閉装置で自動的に動き出します。
国の条文と告示は、その装置の容量や設定圧力が著しく変動しないことまでを定めていますが、設定圧力の数値は書いていません。
数値を決めているのは各消防本部の基準で、鈴鹿市は屋内消火栓の表を借りて「H1+0.3メガパスカル」と書き、四日市市・津市・大阪市・堺市では書き方が分かれます。
国から各消防本部へ起動圧力がどう渡されるかを、条文と基準の文面で順にたどります。
屋外消火栓のポンプは、どの圧力で動き出すように決められているのでしょうか。
起動用水圧開閉器の設定圧力の話です。
国と各消防本部で、書いてある範囲が違います。
鈴鹿市の基準だけ見れば足りるのでしょうか。
同じ三重県でも四日市市と津市は書き方が違います。
六つの消防本部を並べて確かめましょう。
- 国の条文と告示は、起動用水圧開閉器の設定圧力の数値を定めておらず、告示は「著しく変動しないもの」と書くだけ
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は、屋内消火栓の項を借りたうえで、屋外消火栓の設定圧力をH1+0.3メガパスカルとする
- 四日市市は屋内消火栓の表の数値を0.3メガパスカルに読み替え、津市は最低起動圧力値を0.25メガパスカルに読み替える
- 大阪市は屋内消火栓の項を準用するとだけ書き、堺市の検査要領には設定圧力の数値が見当たらない
- 数値の理由や読み替えの範囲は文面から読み取れない部分があるため、設計の前に管轄の消防本部へ確認する
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目次
屋外消火栓の起動圧力は国の条文のどこまで決まっているのか

ところが、ポンプを何メガパスカルで動かし始めるかという設定は、条文をたどっても数字が出てきません。
屋外消火栓設備は、すべての屋外消火栓(設置個数が二を超えるときは、二個の屋外消火栓とする。)を同時に使用した場合に、それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・二五メガパスカル以上で、かつ、放水量が三百五十リットル毎分以上の性能のものとすること。
加圧送水装置の起動用水圧開閉装置は、起動用圧力タンクの容量を百リットル以上とすること、などを定めるもので、起動用水圧開閉器の設定圧力は、著しく変動しないものであること。
屋外消火栓の性能は、令第19条第3項第4号が0.25メガパスカル以上と決めています。
屋内消火栓は、令第11条第3項で1号消火栓が0.17メガパスカル、2号消火栓が0.25メガパスカル、広範囲型2号消火栓が0.17メガパスカルです。
規則第22条第10号ホは、屋外消火栓設備の起動装置について、直接操作できることと、屋外消火栓箱の内部か直近の操作部から遠隔操作できることを求めています。
| 消火栓の種類 | ノズル先端の放水圧力 | 放水量 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 屋内消火栓 1号 | 0.17メガパスカル以上 | 130リットル毎分以上 | 令第11条第3項第1号 |
| 屋内消火栓 2号 | 0.25メガパスカル以上 | 60リットル毎分以上 | 令第11条第3項第2号イ |
| 屋内消火栓 広範囲型2号 | 0.17メガパスカル以上 | 80リットル毎分以上 | 令第11条第3項第2号ロ |
| 屋外消火栓 | 0.25メガパスカル以上 | 350リットル毎分以上 | 令第19条第3項第4号 |
- 令第19条第3項第4号:ノズル先端の性能(0.25メガパスカル以上・350リットル毎分以上)
- 規則第22条第10号:加圧送水装置は規則第12条第1項第7号の一部の規定の例によるほか、第10号ホで起動装置を定める
- 規則第12条第1項第7号ニ:加圧送水装置の構造と性能は、消防庁長官の定める基準に適合すること
- 加圧送水装置の基準(告示)第6 5:起動用水圧開閉装置はタンクの容量などを定め、設定圧力の数値は示さない
国の条文には、起動する圧力の数字はないのですね。
はい、告示は設定圧力が著しく変動しないことまでです。
数字は消防本部の基準で確かめます。
鈴鹿市は屋内消火栓の表をどう読み替えて屋外消火栓の設定圧力にするのか

借りたうえで、設定圧力の数値だけを屋外用に書き直しています。
起動装置は、省令第22条第10号ホの規定によるほか、第2屋内消火栓設備第7を準用する。この場合の起動用水圧開閉装置の設定圧力は、「H1+0.3MPa」とする。
起動用水圧開閉装置は、加圧送水装置告示第6第5号の規定によるほか、設定圧力は、配管内の圧力が⑴又は⑵のいずれか大きい方の圧力値に低下するまでに起動するように調整する。⑴は最高位等の消火栓弁から起動用水圧開閉器までの落差(H1)による圧力に、消火栓の種類ごとの数値を加えた場合、⑵は補助用高架水槽の位置からの落差(H2)による圧力に0.05MPaを加えた場合。
屋内消火栓の表は、鈴鹿市の第2-53図に消火栓の種類ごとの数値として載っています。
屋外消火栓の設定圧力は、その表を借りる文の次に、H1+0.3メガパスカルと書かれています。
| 消火栓 | 設定圧力の数値(鈴鹿市) | 位置 |
|---|---|---|
| 屋内 1号 | H1+0.2メガパスカル | 第2 7⑴(第2-53図) |
| 屋内 易操作性1号 | H0+H1+0.2メガパスカル | 同上 |
| 屋内 2号 | H0+H1+0.3メガパスカル | 同上 |
| 屋内 広範囲型2号 | H0+H1+0.2メガパスカル | 同上 |
| 屋外 | H1+0.3メガパスカル | 第8 8 |
屋内消火栓の1号が0.2、屋外が0.3と、屋外のほうが0.1大きい点が目につきます。
国の最低放水圧力も、屋内1号の0.17に対して屋外は0.25と大きいのですが、基準はこの関係に触れておらず、理由までは書かれていません。
補助用高架水槽側の0.05メガパスカルについても、屋外のなお書きは触れていません。 だから、屋外消火栓のポンプの起動圧力を計算するときは、屋内消火栓の項でH1の意味を確かめ、屋外は0.3を足すことを計算書に残しておきましょう。
H1は屋内消火栓の項で決まっているのですね。
そのとおりです。
屋外ではH1+0.3とだけ書かれています。
四日市市と津市は屋外消火栓の起動圧力をどう書き換えているのか

ただし、読み替える言葉と、屋内消火栓の側の書き方が、鈴鹿市とは違います。
屋内消火栓設備の基準5を準用すること。ただし、5(1)ア中の数値は0.3MPaと読み替えるものとする。
5-2屋内消火栓設備6に準ずること。ただし、⑵イの最低起動圧力値は、0.25MPaと読み替える。
5-2 6⑵イ:起動用圧力タンクの起動設定圧力は、ノズルにおける放水圧力が最も低くなると予想される部分において、消火栓の種類ごとの圧力となる前に起動する値とする(1号・易操作性1号は0.17、2号は0.25、広範囲型2号は0.17MPa)。
津市の屋内消火栓の表は、ノズルにおける放水圧力が最も低くなる部分で、その圧力になる前に起動する値、という書き方です。
屋外の0.25は、令第19条第3項第4号の最低放水圧力と同じ数字で、屋内の2号の0.25とも同じです。
四日市市は、屋内消火栓の5(1)アの表の数値を0.3メガパスカルに読み替えるとだけ書き、H0を足す行をどう読むかまでは文面から分かりません。
| 消防本部 | 屋内消火栓の側の書き方 | 屋外消火栓の読み替え | 位置 |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 落差による圧力に消火栓の種類ごとの数値を加える | 設定圧力を「H1+0.3メガパスカル」とする | 第8 8 |
| 埼玉県央広域 | 鈴鹿市と同じ表(第2の8) | 設定圧力を「H1+0.3メガパスカル」とする | 第8 8 |
| 四日市市 | 落差による圧力に表の数値を加える(5(1)ア) | 5(1)ア中の数値を0.3メガパスカルと読み替える | 第8 5 |
| 津市 | ノズルの放水圧力が表の圧力になる前に起動(6⑵イ) | 最低起動圧力値を0.25メガパスカルと読み替える | 5-9 6 |
同じ屋外消火栓でも、市によって数字の意味が違うのですか。
はい、津市はノズルの放水圧力で書いています。
鈴鹿市は落差に数値を足す書き方です。
大阪市と堺市は屋外消火栓の起動圧力の数値を書いているのか

読み替えがない場合に、何が決まって何が決まらないのかを見ておきます。
起動装置は、屋内消火栓設備の基準(第4.5)を準用する。
起動装置は、第2 屋内消火栓設備 Ⅰ.3に準じたものであること。
同Ⅱ 1(2):ノズル先端の放水圧力が0.25MPa以上0.6MPa以下で、放水量が350ℓ/min以上であること。
大阪市の屋内消火栓の項(第4の5⑴)は、1号の場合が0.2、易操作性1号と広範囲型2号がH0+0.2、2号がH0+0.3メガパスカルと、消火栓の種類ごとに書かれています。
屋外消火栓が準用でどの行に当たるのかは、文面だけでは決まりません。
堺市の検査要領は外観検査と性能検査の書き方で、起動用水圧開閉装置の設定圧力の数値は出てきません。放水検査で、ノズル先端の放水圧力と放水量を確かめる形です。
| 消防本部 | 屋外消火栓の起動装置の書き方 | 設定圧力の数値 | 位置 |
|---|---|---|---|
| 大阪市 | 屋内消火栓設備の基準を準用する | 屋外消火栓の行は表にない | 屋外 第3 5/屋内 第4 5⑴ |
| 堺市 | 屋内消火栓設備の検査要領に準じる | 数値は見当たらない(放水検査は0.25以上0.6以下) | 第10 Ⅰ 3/Ⅱ 1 |
数字が書いていない市では、どうすればよいのでしょうか。
文面から決まらない部分は、消防本部に確かめるのが近道です。
計算の根拠を持って相談しましょう。
鈴鹿市の屋外消火栓の項は屋内消火栓のどこを借りているのか

借りる先を一覧にすると、屋外の項で自分で書いている部分が見えてきます。
| 屋外消火栓の項(第8) | 借りる先(同じ基準の屋内消火栓設備の項) | 屋外で足している点 |
|---|---|---|
| 2⑴ ポンプの設置場所・機器・放水圧力の措置 | 屋内の2⑴・⑵・⑷ | 他設備とのポンプ兼用や同一敷地の複数棟の吐出量を書く |
| 2⑵ 高架水槽 | 屋内の2の2⑴・⑵・⑷ | ⑴ウを準用 |
| 3 水源 | 屋内の3 | 設置個数が2を超える場合の14㎥以上 |
| 4 配管・継手・バルブ類・充水 | 屋内の4⑴〜⑷(⑷はア(ア)(ウ)を除く) | 立上り管65A以上・補助用高架水槽0.5㎥以上 |
| 5 摩擦損失計算 | 屋内の5 | 摩擦損失計算告示によるほか |
| 8 起動装置 | 屋内の7 | 設定圧力を「H1+0.3メガパスカル」とする |
| 9 表示及び警報 | 屋内の9 | ― |
| 10 貯水槽等の耐震措置 | 屋内の10 | ― |
| 11⑵ 常用電源回路の配線 | 屋内の11⑵ | 非常電源回路などの配線は別に書く |
起動圧力のほかにも、立上り管の呼び径や補助用高架水槽の容量などを、屋外の項が足す形で書いています。 だから、屋外消火栓設備の計画書を作るときは、屋外の項と屋内消火栓の項を二つ並べて読み、屋外で足している点を計算書に反映しましょう。
つまり、屋外の項だけ読んでも足りないのですね。
そのとおりです。
屋内消火栓の項を借りている所を、順に開いて確かめましょう。
よくある質問
まとめ
起動圧力の書き方を、設計の最初に消防本部へ確かめます!
迷う点は、早めに消防本部へ確かめましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第11条・第19条(e-Gov法令検索・現行条文)
- 消防法施行規則 第12条・第22条(e-Gov法令検索・現行条文)
- 加圧送水装置の基準(平成9年消防庁告示第8号・消防庁)
- 鈴鹿市消防本部 消防用設備等に関する審査基準 第4章 第2 屋内消火栓設備・第8 屋外消火栓設備
- 埼玉県央広域消防本部 消防用設備等に関する審査基準 第2 屋内消火栓設備・第8 屋外消火栓設備
- 四日市市消防本部 消防用設備等の審査基準 屋内消火栓設備・第8 屋外消火栓設備
- 津市消防本部 消防用設備等の審査基準 5-2 屋内消火栓設備・5-9 屋外消火栓設備
- 大阪市消防局 消防用設備等の審査基準 屋内消火栓設備・屋外消火栓設備
- 堺市消防局 消防用設備等の検査要領 第2 屋内消火栓設備・第10 屋外消火栓設備
※本記事は、条文・告示と各消防本部が公表している審査基準の文面に基づく一般的な解説です。設定圧力の数値の理由や、四日市市の読み替えの範囲、大阪市で屋外消火栓がどの行に当たるかは確認できていません。「見当たらない」「書かれていない」としたものは、今回調べた範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。






