工場や倉庫の外まわりに置く屋外消火栓設備は、ポンプから屋外消火栓まで配管が長くなりがちです。
この配管をふだんから水で満たしておくか、空のままにしておくかで、ホースを伸ばしてから水が出るまでの早さが変わります。国の規則には充水の決まりがなく、各消防本部の基準が補っています。
この記事では、堺市消防局の審査基準が屋外消火栓設備の配管の充水・立上り管の太さ・ポンプの起動圧力をどう定めているかを、国の基準と市の運用に分けてたどります。屋外消火栓の節が屋内消火栓の節を借りている連鎖を番号つきの手順で示し、大阪市の運用基準とも比べます。
堺市の工場で屋外消火栓設備を計画しています。
配管は空のままでもよいですか?
堺市は補助用高架水槽などで配管に水を満たしておくことを求めています。
国の条文から順に見ていきましょう。
水槽の大きさや配管の太さも決まっているのですか?
はい、堺市は屋外消火栓用の数値を別に決めています。
大阪市とも比べます。
- 国の消防法施行規則第22条は、屋外消火栓設備の配管を屋内消火栓の規定に準じるとし、立上り管は管の呼びで50mm以上です。配管の充水の決まりは規則に見当たりません
- 堺市の審査基準は、屋外消火栓の配管の充水に屋内消火栓設備の項目を借りたうえで、補助高架水槽から主管までを呼び径50A以上、有効水量を0.5立方メートル以上としています
- 堺市は、屋外消火栓の立上り管を呼び径65A以上とし、屋内消火栓とポンプや配管を兼用するときは摩擦損失計算などで太さを決めるとしています
- 起動用水圧開閉装置の設定圧力は、屋内消火栓の規定を借りつつ、屋外消火栓では落差(H₁)+0.3MPaとするのが堺市の決まりです
- 大阪市は、ポンプから最遠のホース接続口まで50m以下かつ管の呼び65mmなら充水の措置を求めない点が堺市と違います。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準では屋外消火栓設備の配管と起動装置はどう決まっているのか

起動装置は、直接操作できるものであり、かつ、屋外消火栓箱の内部又はその直近の箇所に設けられた操作部(自動火災報知設備のP型発信機を含む。)から遠隔操作できるものであること。
配管の管径は、水力計算により算出された配管の呼び径とすること。
- 屋外消火栓設備は、2個同時に使ったときにノズルの先端で0.25MPa以上・350L/min以上の性能が要る(令第19条第3項第4号)
- 配管は屋内消火栓の規定に準じ、立上り管は管の呼びで50mm以上、管径は水力計算で決める(規則第22条第8号→第12条第1項第6号)
- 起動装置は、直接操作と屋外消火栓箱まわりからの遠隔操作ができればよく、配管をふだん水で満たしておく決まりは見当たらない
屋外消火栓設備の非常電源や配線が屋内消火栓の規定を借りる仕組みは屋外消火栓の準用の仕組みの記事で、高架水槽の落差の計算は高架水槽方式の記事で解説しています。
国の規則では、配管を水で満たす決まりはないのですね。
はい、そこで堺市は屋内消火栓の項目を借りて充水を求めています。
その連鎖を見ます。
堺市は屋外消火栓設備の配管の充水をどう決めているのか

a 補助高架水槽から主管までの配管は、呼び径50A 以上のものとすること。
b 補助高架水槽の有効水量は、0.5 ㎥以上とすること。なお、当該水槽の水位が低下した場合に呼び径25A 以上の配管により自動的に給水できる装置を設けた場合には、当該有効水量を0.2 ㎥以上とすることができる。
(ア) 補助用高架水槽による場合は、次によること。
d 他の消防用設備等と兼用する場合の容量は、それぞれの設備の規定水量のうち最大以上の量とすることができる。
e 補助用高架水槽と接続する配管には、可とう管継手、止水弁及び逆止弁を設けること。
(イ) 補助加圧装置による場合は、次によること。
a 他の消防用設備等と兼用しないものであること。
- 国の規則第22条第8号は、屋外消火栓の配管を屋内消火栓の規定(第12条第1項第6号)に準じるとするが、充水の決まりは置いていない
- 堺市の屋外消火栓 3(2)ア★は、配管内の充水について屋内消火栓のⅡ 3(2)ア(ア)から、aとcを除いた項目と(イ)を借りる
- 借りる先の柱書は、ポンプ方式の配管内を、速やかな放水と腐食防止のために常時充水しておくとしている
- 借りる(ア)のd・eで、兼用するときの水槽の容量(各設備の規定水量の最大以上)と、可とう管継手・止水弁・逆止弁が決まる(bは機器の項目)
- 借りなかったa(屋内では呼び径40A以上など)とc(屋内では0.5立方メートル以上など)の代わりに、屋外消火栓では呼び径50A以上・有効水量0.5立方メートル以上(25A以上の自動給水なら0.2立方メートル以上)とする
- 補助用高架水槽の代わりに補助加圧装置で充水するときは、借りる(イ)のa〜g(他の設備と兼用しない、吐出量はおおむね20L/min以下など)による
なお、堺市は連結送水管の補助用高架水槽にも同じ50A以上・0.5立方メートル以上を置いています。連結送水管の充水は東大阪市の連結送水管の乾式の記事で3市を比べています。
屋内消火栓の項目を借りつつ、数字だけ屋外用に差し替えているのですね。
はい、aとcだけを除いて借りるのがポイントです。
次は配管の太さと起動の圧力です。
堺市で屋外消火栓設備の立上り管と起動の圧力はどう決まっているのか

なお、第2 屋内消火栓設備Ⅱ.4.(2).アに示す起動用水圧開閉装置の設定圧力は、落差(H₁)+0.3MPa とすること。★
ア 最高位又は最遠部の消火栓の開閉弁の位置から起動用水圧開閉器までの落差(H₁)による圧力に次の数値を加えた値
イ 補助用高架水槽の位置から起動用水圧開閉器までの落差(H₂)による圧力に0.05MPaを加えた値
- 国の規則第22条第10号ホは、起動装置を直接操作と屋外消火栓箱まわりからの遠隔操作ができるものとする
- 堺市の屋外消火栓 4は、それに加えて屋内消火栓のⅡ 4を準用する
- 準用先のⅡ 4(2)は、起動用水圧開閉器がアとイのいずれか大きい方の圧力に下がるまでに起動するよう調整するとしている
- アの値(屋内では1号消火栓で落差H₁+0.2MPaなど)を、屋外消火栓では落差(H₁)+0.3MPaとする(★)
| 消火栓の種類 | アの値(落差H₁による圧力に加える値) | 根拠 |
|---|---|---|
| 屋内の1号消火栓 | 0.2MPa | 屋内消火栓 Ⅱ 4(2)ア(ア) |
| 易操作性1号消火栓・広範囲型2号消火栓 | H₀+0.2MPa | 屋内消火栓 Ⅱ 4(2)ア(イ) |
| 屋内の2号消火栓 | H₀+0.3MPa | 屋内消火栓 Ⅱ 4(2)ア(ウ) |
| 屋外消火栓 | 落差(H₁)+0.3MPa | 屋外消火栓 4 なお書(★) |
また、準用先が「ア又はイのいずれか大きい方」と書いているので、補助用高架水槽を使う場合はイ(落差H₂+0.05MPa)との比較も準用の範囲に入ると読めます。屋外消火栓の節には明記がないため、具体的な設定値は計画の段階で消防局に確認してください。
屋外消火栓は、屋内の1号消火栓より高い圧力で起動させるのですね。
はい、堺市は落差に0.3MPaを加えた値としています。
次は大阪市を見ます。
大阪市は屋外消火栓設備の配管の充水と管径をどう決めているのか

1 充水措置
配管には、屋内消火栓設備の基準(第5.1)に準じて充水のための措置を講じるものとする。ただし、加圧送水装置から最遠のホース接続口までの配管長さが50メートル以下で、かつ、当該配管径が管の呼びで65ミリメートルのものにあっては、この限りでない。
2 管径
主配管の管径はその受け持つ流水量に応じ、次による。
(2) (1)の補助高架水槽の下流側直近又は補助ポンプの吐出側直近には、止水弁及び逆止弁を設けること
- 大阪市の屋外消火栓 第4◆は、配管を規則第22条第8号・第12号によるほか、屋内消火栓の第5を、3.(1)の管径表だけ除いて準用する
- 充水は屋内消火栓の第5.1に準じるとし、自動給水装置付きのおおむね0.1〜0.2立方メートル以上(兼用は0.2立方メートル以上)の補助高架水槽か補助ポンプ等で常時充水する
- ただし、ポンプから最遠のホース接続口まで50m以下で、管の呼び65mmのものは充水の措置を求めない(屋外消火栓の節のただし書)
- 除いた3.(1)の代わりに、屋外消火栓の節の管径表を使う。準用する第5の3.(2)は、補助高架水槽に接続する配管を管の呼びで40mm以上とする
| その管の受け持つ流水量(L/min) | 管の呼び(mm) |
|---|---|
| 350以上 | 65以上 |
| 700以上 | 100以上 |
大阪市の屋外消火栓設備のポンプや水源を別の棟と共用する条件は、堺市の屋外消火栓のポンプ共用の記事で堺市と比べています。
大阪市は、短くて太い配管なら水を満たさなくてよいのですね。
はい、50m以下かつ65mmなら充水の措置は不要です。
最後に2市を並べます。
堺市と大阪市を比べると屋外消火栓設備の配管は何が違うのか

| 項目 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|
| 充水の書き方 | 屋内消火栓のⅡ 3(2)ア(ア)(a・cを除く)と(イ)を準用(★) | 屋内消火栓の第5.1に準じる(◆) |
| 充水しなくてよい場合 | 屋外消火栓の節にただし書は見当たらない | 最遠のホース接続口まで50m以下かつ管の呼び65mm |
| 補助高架水槽の有効水量 | 0.5立方メートル以上(25A以上の自動給水なら0.2立方メートル以上) | おおむね0.1〜0.2立方メートル以上(兼用は0.2立方メートル以上・自動給水装置付き) |
| 水槽から主管・接続配管 | 呼び径50A以上 | 管の呼び40mm以上(屋内消火栓の第5.3.(2)を準用) |
| 立上り管・主配管の太さ | 立上り管は呼び径65A以上(屋内消火栓と兼用なら計算) | 主配管は流水量350L/min以上で65mm以上・700L/min以上で100mm以上 |
| 起動用水圧開閉装置の設定 | 落差(H₁)+0.3MPa(屋内消火栓のⅡ 4を準用) | 屋内消火栓の第4.5を準用(屋外用の数値は置いていない) |
- ポンプ方式かどうかと、屋内消火栓設備とポンプや配管を兼用するかを確かめる
- 補助用高架水槽で充水するなら、水槽から主管まで呼び径50A以上・有効水量0.5立方メートル以上(自動給水なら0.2立方メートル以上)とし、可とう管継手・止水弁・逆止弁を付ける
- 補助加圧装置で充水するなら、屋内消火栓のⅡ 3(2)ア(イ)の条件(他の設備と兼用しないなど)に合わせる
- 立上り管を呼び径65A以上とし、屋内消火栓と兼用するなら吐出量を足して摩擦損失計算で太さを決める
- 起動用水圧開閉装置の設定圧力を落差(H₁)+0.3MPaを基本に決め、補助用高架水槽の落差との関係も含めて消防局と協議する
堺市では、配管が短くても充水を考えておく必要がありそうですね。
はい、大阪市のような短い配管のただし書は堺市の節に見当たりません。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず充水の方式と立上り管の太さを図面で確かめます。
そのうえで消防局に協議します!
堺市は補助高架水槽の大きさと起動の圧力が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例/第10 屋外消火栓設備 Ⅱ 細目 3(2)ア・イ、4/第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 3(2)ア、4(2) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第1章 第11節 屋外消火栓設備 第3 5・第4 配管/第1章 第2節 屋内消火栓設備 第4 5・第5 1・3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 消防法施行令 第19条、消防法施行規則 第12条第1項第6号、第22条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。堺市が屋外消火栓の起動圧力を0.3MPaとした理由と、補助用高架水槽の落差(イ)との比較の具体的な扱いは、この記事では断定していません。





