工場や倉庫の敷地を歩いていると、建物の外に赤い箱と背の低い消火栓が据えられているのを見かけます。
建物の中の屋内消火栓は毎年の点検で意識していても、外に置かれたこちらは誰の持ち物なのかあいまいなまま放置されがちです。
これは屋外消火栓設備といって、消防法施行令が建物の規模に応じて設置を義務づけている消火設備です。
しかも要るかどうかを延べ面積では判定しません。
うちの倉庫の外に赤い箱が置いてあるんですが、これも点検の対象なんでしょうか。
屋内消火栓の予備だと思っていました。
予備ではなく屋外消火栓設備という独立した消火設備です。
消防法施行令第19条が設置の基準を置いています。
独立した設備なら、うちの建物に要るかどうかはどこを見れば分かるんですか。
見るのは延べ面積ではなく1階と2階の床面積です。
その数え方から順に見ていきましょう。
- 屋外消火栓設備は建物の外から放水する消火設備で、根拠は消防法施行令第19条にある
- 設置義務の判定に使うのは延べ面積ではありません。地階を除く階数が1なら1階の、2以上なら1階と2階の床面積の合計で見る
- 基準の面積は耐火建築物が9,000平方メートル以上、準耐火建築物が6,000平方メートル以上、その他の建築物が3,000平方メートル以上
- 同じ敷地に近接して建つ棟は一の建築物とみなして合算されることがあります。ただし耐火建築物と準耐火建築物は除かれる
- 技術上の基準は水平距離40メートル以下・水源は設置個数に7立方メートルを乗じた量・放水量は350リットル毎分以上
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目次
屋外消火栓設備はどこに置く消火設備なのか

そのため条文も、階ごとではなく建築物の各部分からの距離で置き場所を決めています。
屋内消火栓のように階ごとに置くのではなく、建築物の各部分から一のホース接続口まで水平距離40メートル以下になるように敷地に配置します。
消防用ホースの長さも、そのホース接続口から水平距離40メートルの範囲内へ有効に放水できる長さと決められています。
そして第5号は、放水用器具を格納する箱を避難の際通路となる場所など操作が著しく阻害されるおそれのある箇所に設けてはならないと定めています。
箱の前に廃材やパレットを積み上げると、置き場所そのものが基準から外れていく点に注意してください。
建物の中の話ではなく、敷地の配置の話なんですね。
そのとおりです。
だから外構工事や資材置き場の見直しが、そのまま消防の話になります。
どの建物に設置義務が生じるのか

消防用設備等の多くは延べ面積で判定しますが、この設備だけは数え方が違います。
地階を除く階数が1の建物なら1階の床面積を、2以上の建物なら1階と2階の床面積の合計を見ます。
3階から上がどれだけ広くても、この判定の数字には入りません。
そのうえで、耐火建築物なら9,000平方メートル以上、準耐火建築物なら6,000平方メートル以上、その他の建築物なら3,000平方メートル以上が対象です。
燃えにくい造りほど基準の面積が大きくなる並びなので、建築確認の書類で自分の建物がどの造りに当たるのかを先に確かめてください。
平屋の大きな倉庫だと、1階の床面積がそのまま判定の数字になるということですか。
はい、地階を除く階数が1ならその一枚で見ます。
広い平屋ほど早く基準に届くと考えてください。
水源の量や放水の勢いはどこまで求められるのか

数字は令の第3項に並んでいます。
設置個数が2を超えるときは2として計算するので、水源の量は7立方メートルに2を掛けた14立方メートル以上が上限の考え方になります。
放水性能は0.25メガパスカル以上かつ350リットル毎分以上で、屋内消火栓の1号が130リットル毎分であるのと比べると水の量がまったく違います。
同項第6号は非常電源を附置することも求めており、停電した状態で動かないポンプは基準を満たしません。
消防法施行規則第22条第10号ハでは、ポンプの吐出量を設置個数に400リットル毎分を乗じた量以上とすることまで書かれています。
つまり水槽もポンプも、屋内消火栓とは別に用意しておく規模なんですね。
水量も圧力も桁が違います。
点検票の水源の欄が空欄のままになっていないか見ておきましょう。
同じ敷地に建物が並んでいるときはどう数えるのか

ところが令の第2項に、近接した棟をまとめて見るという規定が置かれています。
測るのは建築物相互の1階の外壁間の中心線からの水平距離で、1階は3メートル以下、2階は5メートル以下という二段構えです。
その距離の部分を持っていれば、別々の棟であっても第1項の判定では一の建築物として床面積を足します。
ここで見落としやすいのが括弧書きで、耐火建築物及び準耐火建築物は除かれるため、この合算に引き込まれるのはその他の建築物どうしの場合です。
明日は敷地の配置図を開いて、棟と棟の間の寸法が3メートルを切っている箇所に印を付けてみてください。
渡り廊下でつないでいなくても、近いというだけで足されるんですか。
条文が見ているのは外壁間の距離だけです。
増築で棟を足すときは、この寸法を先に確かめておくと安全です。
明日からなにを確認すればよいのか

細かな維持の基準は消防法施行規則第22条に置かれています。
放水用器具の箱は屋外消火栓からの歩行距離5メートル以内が原則で、外壁の見やすい箇所に設ける場合だけただし書きが働きます。
同条第3号は加圧送水装置の始動を明示する表示灯を赤色とし、箱の内部かその直近に設けることを求めているので、球切れのままになっていないかを見てください。
同条第4号は箱の表面にホース格納箱と表示し、屋外消火栓の直近の見やすい箇所に消火栓と表示した標識を設けることを定めています。
表示が色あせている箇所と、箱の前に物が置かれている箇所を写真に撮って、次の点検のときに施工業者と一緒に見直しましょう。
表示の文字まで決まっているとは思いませんでした。
省令が文字まで指定しています。
剥がれた表示は取り替えの対象になりますので早めに手配してください。
よくある質問
まとめ
外に置かれた赤い箱の意味が条文で分かりました。
さっそく敷地の配置図を持ち出して測ってみます。
その配置図の読み合わせから、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第19条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第11条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第22条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





