高さのある機械式立体駐車場では、消火剤を放射する前に、火災を早く見つけ、防護区画を確実に形づくる必要があります。
一般的な駐車場と同じ感覚で感知器や扉を考えると、出火場所の特定や消火確認が難しくなるおそれがあります。
津市の審査基準には、概ね31mを超える高層立体駐車場等について、感知器・区画・点検口の具体的な考え方が示されています。
国の共通基準と消防本部ごとの指導を分けて、設計図書と点検で確かめる項目を整理します。
タワー式の駐車場は、普通の機械式駐車場より確認することが多いのでしょうか。
高さと構造を図面で把握し、感知・閉鎖・確認を一続きで見ます。
31mを超えるかどうかだけで、全国一律に決まるのですか。
いいえ。
31mは津市の基準の目安なので、所轄の運用を必ず確認します。
- 高層の機械式立体駐車場は、火災を早く捉え、消火剤を閉じ込める設計を一体で確認します。
- 消防法施行規則第19条の基準に加え、所轄消防本部の審査基準を設計条件として照合します。
- 津市では概ね31m超で、異なる系統のうち1系統を煙感知器とする考え方を示しています。
- 複数の昇降装置は、装置ごとの防火区画と隣接区画へ避難できる扉を確認します。
- 点検・工事で人が入るときは、閉止弁の閉止と手動状態の維持を先に行います。
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目次
高層立体駐車場ではなぜ感知と区画形成を一緒に考えるのか

不活性ガス消火設備は、火を見つけた後に消火剤を防護区画へ放射して消火する設備です。高層の機械式立体駐車場では、上下に車室が並び、出火位置を見つけにくいうえ、消火剤が十分に作用する空間を保つことも課題になります。
消防庁は、立体駐車場のモデルで二酸化炭素が放射開始から約10秒で防護区画に充満することを示しています。放射後に避難を始める余裕は見込めないため、検知・閉鎖・警報の順序を設備単体ではなく全体で確認することが重要です。
なお、津市の審査基準でいう「高層立体駐車場等」は、高さが概ね31mを超える機械式立体駐車場等です。この数値は国の一律の設置基準ではなく、同市の技術上の指導です。計画地では所轄消防本部に事前協議し、適用される基準を確認してください。
火を見つける装置だけ点検しても、十分ではないのですね。
感知後に区画が保てるかまで、図面と連動試験で確かめます。
感知器はどの高さと組合せで確認するのか

消防法施行規則第19条は、不活性ガス消火設備の全域放出方式について、設置場所、開口部、起動装置、警報装置などの技術基準を定めています。高層の機械式立体駐車場に固有の感知器配置は、建物の構造に応じて所轄の審査基準で具体化されることがあります。
津市の基準では、高層立体駐車場等に設ける感知器について、系統の異なる2以上の感知器のうち1系統を煙感知器とし、差動式分布型感知器と同じ高さに設けるとしています。最上部は天井又は天井に近い位置とされ、R型受信機又はアナログ式受信機がある場合は、出火位置を特定しやすい感知器とする考え方です。
同資料の系統図例では、煙感知器を車室の車の側面側に設け、最下端の煙感知器は車の乗入れ面から10m以上の位置に置く例が示されています。これは非火災報を抑えるための例示なので、既設設備の改修や点検では、図面・受信機の表示・現場の高さ関係を照合します。
煙感知器は、ただ上の方に付いていればよいのでしょうか。
いいえ。
系統と高さを、所轄基準と設計図書で一緒に見ます。
複数の昇降装置では防護区画をどう分けるのか

ガス系消火設備では、消火剤が放射される範囲を防護区画として考えます。開口部や搬送用の経路が残れば、消火剤の保持や隣接する部分の安全に影響します。車を搬送する設備と扉を含めて、放射時にどこまで閉鎖されるかを図面でたどることが先決です。
津市の基準は、高層立体駐車場等に複数の昇降装置等がある場合、昇降装置等ごとに防火区画を形成し、隣接する防火区画に避難できる扉等を設ける考え方を示しています。ここでも、基準の適用は地域の運用に従う必要があります。
全国共通の論点としては、消防庁の消防予第281号が、法令の規定外の場所へ不活性ガス消火設備を設けるとき、建築構造、空間形状、人員、避難経路を踏まえて、避難安全性と消火の確実性を個別に検討・評価するよう示している点です。区画の境界だけを図上で決めず、実際の扉・シャッター・搬送装置との連動まで確認しましょう。
複数の装置を一つの大きな空間として扱ってはいけないのですね。
装置ごとの境界と避難経路を、現場で確認することが大切です。
点検口と点検時の安全措置は何を確認するのか

高層立体駐車場では、出火場所の特定や鎮火確認を外部から行えることが安全な初動につながります。津市の基準は、有効な位置に点検口等を設け、点検口は60cm角以上の防火戸とし、おおむね高さ15m未満ごとに設ける考え方を示しています。
ただし、点検口を開けて防護区画へ入れば、消火剤への曝露という別の危険が生まれます。消防庁は二酸化炭素消火設備について、工事・点検・整備等で防護区画に立ち入る場合、閉止弁を閉止し、自動手動切替え装置を手動状態に維持する必要があると周知しています。
これは放射後の入室手順ではなく、立入前に誤放出を防ぐための措置です。点検口の位置確認と、閉止弁・切替え装置の操作手順を同じ作業計画に入れることが欠かせません。
点検口があるから、すぐ中に入って確認してよいわけではないのですね。
入る前に誤放出防止を済ませ、責任者と手順を共有します。
設計と点検で迷わないための実務手順

まず、駐車装置の高さ、昇降装置の数、車の出入口、点検口、感知器の系統、受信機の種類を図面に並べます。次に、火災信号からシャッター等の閉鎖、警報、起動までの連動関係を、設計図書と試験記録で確認します。
そのうえで、31mのような地域基準の目安が該当するかを所轄消防本部へ確認します。国の法令が設備の共通基準を定め、消防本部の審査基準が構造に応じた具体化を示す場面があるためです。
工事・点検で防護区画へ入る作業は、閉止弁の状態、自動手動切替え装置、作業責任者、復旧確認を作業前に記録します。「感知器の試験だけ」「扉の試験だけ」と分けず、設備が放射するまでの連動と人の立入り管理を一つの確認表で管理しましょう。
図面と点検記録を一緒に見れば、抜けを減らせそうです。
所轄基準も含めて、設備全体の連動を確認してください。
よくある質問
まとめ
高い駐車場ほど、図面と現場をつないで確認します。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
監修:㈱防災屋
参考・出典
- 総務省消防庁 二酸化炭素消火設備に係る安全対策
- 総務省消防庁 消防予第281号 消防用設備等に係る執務資料の送付について
- e-Gov法令検索 消防法施行規則 第19条
- 津市消防本部 消防同意事務審査基準 5-6 不活性ガス消火設備(現行公表資料)
※本記事は一般的な確認の考え方を整理したものです。高層立体駐車場の設計・改修・点検では、消防法令、所轄消防本部の審査基準、個別の設備仕様を確認してください。






