地下街や駅の地下通路に、建物の地階をつなげる計画では、その地階が「地下街と一体」として扱われるかどうかが問題になります。
国の消防法施行令第9条の2は、地下街と一体を成す地階を消防長又は消防署長が指定すると定めるだけで、どんな地階が一体になるかの数字は書いていません。
この記事では、豊中市消防局の「消防用設備等の設置に関する運用基準」第1部 第2章 第3節 第2「特定防火対象物の地階と地下街とが一体をなす場合の判定基準」を読み、大阪府内のほかの市の資料とも比べます。
豊中市で、地階が地下通路につながる店舗ビルを計画しています。
地階も地下街と同じ基準になるのでしょうか?
豊中市の運用基準は、5つの条件をすべて満たさない限りは地下街と一体とする、という書き方をしています。
まず条件を確かめましょう。
満たせば一体ではない、という読み方なのですね。
はい、そのとおりです。
開口部は合計4㎡以下が基本で、地下道を挟む場合などに緩和があります。
- 消防法施行令第9条の2は、地下街と一体を成す地階として消防長又は消防署長が指定した地階を、スプリンクラー設備・自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・非常警報設備の4つの規定で地下街の部分とみなします
- 豊中市の運用基準は、5つの条件をすべて満たす場合を除きの限り、地階を地下街と一体とする判定基準を定めています
- 5つの条件は、耐火構造・接続部分の開口部合計4㎡以下・特定防火設備・ほかの接続部分の区画・階段か排煙設備です
- 地下道等を介してつながり、その長さが20m以上(吹抜けや地上への階段が2以上あれば10m以上)なら、開口部の面積・防火戸・階段の条件が緩みます
- 一体とされた地階に別の建物の地階が地下連絡路でつながると、長さ6m以上などの基準に合わない限りその地階も一体に含まれます
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目次
豊中市の運用基準は地下街と一体の地階をどう決めているのか

令第9条の2の規定に基づき消防長等が指定する地階と地下街とが一体をなす場合の判定基準を、次のとおり定める。
1 地階と地下街とが一体をなす場合の判定基準
特定防火対象物の地階が地下街と接続している場合の令第9条の2の規定の適用については、次のすべてに該当する場合を除き、当該地階部分を地下街と一体をなすものとする。
| 番号 | 条件 | 要点 |
|---|---|---|
| (1) | 構造 | 地階と地下街の主要構造部が耐火構造 |
| (2) | 接続部分の開口部 | 開口部の合計面積が4㎡以下(ア〜ウに当たれば面積の上限なし) |
| (3) | 開口部の防火設備 | 自動閉鎖装置付き又は煙感知器連動で閉まる特定防火設備(地下道等を介すなら防火戸で可) |
| (4) | ほかの接続部分 | 開口部以外の接続部分は耐火構造の床又は壁で区画 |
| (5) | 階段か排煙 | すべての階段が建築基準法施行令第123条に適合(又は防煙上同等以上)、又は地階に有効な排煙設備 |
豊中市には、準地下街の判定基準もありましたよね。
はい、準地下街はすぐ後の第3で、この記事の地下街との一体判定とは別の節です。
準地下街は豊中市の準地下街の記事で解説しています。
国の消防法施行令第9条の2は何を決めているのか

| みなされる規定 | 設備 | 地下街の基準(現行の条文) |
|---|---|---|
| 第12条第1項第6号 | スプリンクラー設備 | 延べ面積1,000㎡以上の地下街 |
| 第21条第1項第3号 | 自動火災報知設備 | 延べ面積300㎡以上の地下街 |
| 第21条の2第1項第1号 | ガス漏れ火災警報設備 | 延べ面積1,000㎡以上の地下街 |
| 第24条第3項第1号 | 非常警報設備 | 地下街には非常ベル及び放送設備(又は自動式サイレン及び放送設備) |
国の政令には、4㎡のような数字は出てこないのですね。
はい、だから管轄の消防本部の判定基準が大切になります。
次は、5つの条件を順番に読みます。
一体にならない5つの条件はどう読めばよいのか

| 号 | 内容 | 距離など |
|---|---|---|
| ア | 天井・壁・床の下地と仕上げが不燃材料の地下道・歩行者専用連絡通路・広場など(地下道等)を介して接続 | 地下道等の長さ20m以上 |
| イ | アの構造の地下道等に、排煙上有効な大きさの吹抜け又は地上へ直接通じる2以上の階段がある | 地下道等の長さ10m以上 |
| ウ | 接続部分にスプリンクラー設備又はドレンチャー設備が延焼防止上有効に設けられている | ― |
- (1)で、地階と地下街の主要構造部が耐火構造かを確かめる
- (2)で、接続部分の開口部の合計が4㎡以下かを見る。4㎡を超えても、ア(20m以上)・イ(10m以上)・ウ(スプリンクラー等)のどれかなら面積の上限はかからない
- (3)で、開口部の防火設備を見る。原則は特定防火設備だが、(2)ア又はイの地下道等の開口部は防火戸で差し支えない
- (4)で、開口部以外の接続部分が耐火構造の床又は壁で区画されているかを見る
- (5)で、すべての階段が建築基準法施行令第123条に適合するか(又は防煙上同等以上か)、地階に有効な排煙設備があるかを見る。(2)ア・イの地下道等を介するときや、接続部分のある階に令第12条の例によるスプリンクラー設備があるときは、この条件はかからない
- (1)〜(5)がすべて満たされて初めて、地下街と一体としない扱いになる
(2)のアとイが、(3)と(5)でも使われているのですね。
はい、地下道等を介するかどうかが分かれ目になります。
次は、その地下道等の扱いを見ます。
地下道を介してつながると何が変わるのか

| 条件 | 直接つながる場合 | ア・イの地下道等を介する場合 |
|---|---|---|
| (2)開口部の面積 | 合計4㎡以下 | 上限なし(ア=長さ20m以上、イ=吹抜け又は2以上の階段があれば10m以上) |
| (3)開口部の防火設備 | 特定防火設備(自動閉鎖装置付き又は煙感知器連動) | 地下道等の開口部は防火戸で可 |
| (5)階段か排煙 | すべての階段が令第123条に適合、又は有効な排煙設備 | かからない |
地下道の長さを測るときは、どこからどこまでですか?
地階の部分から、いちばん近い地下街の店舗部分等までの歩行距離です。
図面で歩行経路を引いて確かめましょう。
一体の地階にさらに別の建物がつながるとどうなるのか

前1の判定基準により、地下街と一体をなすものとみなされる特定防火対象物の地階と他の防火対象物の地階が地下連絡路等で接続している場合の令第9条の2の規定の適用については、当該接続部分が、次に定める基準に適合する場合を除き、当該地階を地下街と一体をなす地階に含むものとする。
| 号 | 地下連絡路の基準(要旨) |
|---|---|
| ア | 接続される建築物(地下連絡路が接続する階の部分)の主要構造部が耐火構造 |
| イ | 通行又は運搬の用途だけに使い、可燃物品等を置かない |
| ウ | 地下連絡路は耐火構造で、天井・壁・床の仕上げと下地は不燃材料 |
| エ | 長さ(両端の防火戸の間隔)6m以上、幅員6m未満(双方の接続部に閉鎖型ヘッドのスプリンクラー設備又はドレンチャー設備があれば除く) |
| オ | 両端の出入口以外は、開口部のない耐火構造の床又は壁で区画 |
| カ | 出入口の開口部の面積は4㎡以下 |
| キ | 出入口に自動閉鎖装置付き又は煙感知器連動の特定防火設備 |
| ク | 機械排煙設備(手動又は煙感知器連動の起動装置・非常電源つき)。閉鎖型ヘッドのスプリンクラー設備があれば除く |
| 市 | 令第9条の2の判定基準 |
|---|---|
| 豊中市 | 運用基準 第1部 第2章 第3節 第2に、この記事の5つの条件と地下連絡路・洞道の基準 |
| 大阪市 | 公開されている運用基準に、同じ判定基準の節は見当たらない |
| 堺市 | 審査基準に地下街の床面積の数え方はあるが、令第9条の2の判定基準の節は見当たらない |
| 東大阪市 | 公開されている運用基準に、同じ判定基準の節は見当たらない |
| 吹田市 | 質疑応答集に、地下街との一体判定の問は見当たらない |
| 八尾市 | 消防用設備等の審査基準が公開されておらず、比べられない |
ほかの市で計画するときは、どうすればよいですか?
公開資料に基準が無い市では、図面を持って管轄の消防本部に早めに相談するのが確実です。
豊中市の基準は、そのときの論点整理に使えます。
よくある質問
まとめ
地下通路との接続部分の開口部と防火設備を図面で拾い出して、豊中市消防局に事前に相談します!
一体かどうかで、スプリンクラー設備や自動火災報知設備の要否が変わることがあります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」第1部 第2章 第3節 第2 特定防火対象物の地階と地下街とが一体をなす場合の判定基準 1・2 https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局 消防同意・消防用設備等審査基準 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」 https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 消防法施行令 第9条の2・第12条・第21条・第21条の2・第24条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※本記事は公表されている法令および豊中市・大阪市・堺市・東大阪市・吹田市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。条件の読む順番、緩和の理由の読み方、各市の対比は、資料を読んだうえでの整理であり、各市が明記しているものではありません。「見当たらない」とした項目は、各市の公開資料を確認した範囲でのものです。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。個別の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。






