一般取扱所には規則で細かな特例が用意されていますが、自分の設備がどの特例に当てはまるのか、どこまでを一つの施設として囲むのかは条文を読んだだけでは決まりません。
印刷工場の溶剤回収装置は別の施設になるのか。
1棟の建物に一般取扱所を2つ置けるのか。
ディーゼル発電設備は「ボイラー等」に入るのか。
機器が複数あるとき空地はそれぞれに必要なのか。
実際の照会と平成元年の執務資料をもとに解説します。
印刷工場の排ガスから溶剤を回収する装置を付けたんやけど、これは溶剤を作ってるようなもんやし危険物製造所になるんちゃうの?
なりません。
蒸気を回収して液化させる取扱いは危険物の製造には該当しないとされ、回収装置を含めて一の一般取扱所として規制してさしつかえないという回答です。
ほんなら空地の話もええよな。
ボイラーが2台あるんやけど、1台ずつ3メートルの空地を取るのはさすがに無理やで。
機器ごとは不要です。
複数の機器を1つの設備として、その周囲に幅3メートル以上の空地を保有することをもって足りるとされています。この記事でまとめて解説します!
- 印刷工場の溶剤回収装置は、印刷工場に係る一環した危険物の取扱いに該当するため回収装置を含め一の一般取扱所として規制してさしつかえない
- 有機溶剤の蒸気を回収して液化させる危険物の取扱いは危険物の製造には該当しない
- 1棟の建築物の中に、基準に適合した一般取扱所を複数設置することができる
- 吹付塗装作業工程と連続する工程がある場合、連続する工程を含めて一般取扱所として差し支えないが、洗浄作業を行う一般取扱所は吹付塗装の特例には該当しない
- ボイラーやバーナーその他これらに類する装置に、ディーゼル発電設備は含まれる
- 危険物を取り扱う機器が複数ある場合、複数の機器を1つの設備として周囲に幅3メートル以上の空地を保有すれば足りる
▼
目次
溶剤回収装置を含めて一の一般取扱所として規制する

危険物一般取扱所として規制される印刷工場があり、その印刷工程において発生する有機溶剤を含む排ガスの処理施設として溶剤回収装置が設置されることがあります。この回収装置において回収される危険物が1日に指定数量以上となる場合、当該回収装置をどう規制すべきかという疑義が生じたとして照会がありました。示された選択肢は次のとおりです。
- 排ガス回収工程を、印刷に係る一連の工程として不可分のものとみなして、印刷工場および溶剤回収装置全体を一の一般取扱所として規制する
- 印刷に係る一連の工程として不可分のものではないとみなして、危険物製造所として規制する(回収装置全体を一の製造所とするか、デカンター以降の部分のみを一の製造所とするか)
あわせて、蒸気を回収して液化させる取扱いは製造に該当しないことも念のため申し添えられています。
ここが実務上いちばん大きな分かれ目です。もし製造所とされれば保安距離や保有空地の要求が一段重くなります。回収は元の工程の裏返しであって、新たに危険物を作り出しているわけではないという整理により、一般取扱所として扱えることが確認されています。
1棟の建築物に一般取扱所を複数設置できる

平成元年の執務資料では、1棟の建築物の中に危険物の規制に関する政令第19条第2項に規定する位置・構造・設備の技術上の基準に適合した一般取扱所を複数設置することができるか、という問いが立てられています。
1棟の建物なら施設は1つ、という思い込みを外す回答です。それぞれが基準に適合していれば棟の数と施設の数は一致しないという整理です。
ただし前提として、各一般取扱所が政令第19条第2項の基準に適合するよう区画されていることが必要です。区画すれば数量を分割できるという話ではなく、特例の適用要件をそれぞれが満たしていることが条件になります。
あわせて、配管による灯油の供給施設については、昭和44年11月26日付け消防予第269号「配管による灯油の供給施設に関する運用基準について」に基づき一般取扱所として許可しているが、施行日以降も従来どおり運用して差し支えないか、という問いにも差し支えないと回答されています。
吹付塗装は連続工程を含められるが洗浄作業は別扱い

危険物の規制に関する規則第28条の54は、特例の対象となる一般取扱所の種類を号ごとに定めています。この適用について2つの問いがあります。
まず、吹付塗装作業工程と連続する工程が存在し、危険物を取り扱うのは吹付塗装作業工程のみである場合、連続する工程を含めて政令第19条第2項第1号に定める一般取扱所として差し支えないか、という問いです。
危険物を取り扱っているのは吹付塗装の工程だけですが、その前後の搬送や乾燥の工程が連続してつながっている場合、まとめて吹付塗装作業等の一般取扱所として扱えるという整理です。工程を無理に切り分ける必要はありません。
一方で、危険物により機械部品等の洗浄作業を行う一般取扱所は、規則第28条の54第1号に定める一般取扱所に該当するか、という問いには異なる回答が示されています。
洗浄作業は第1号の吹付塗装作業等ではなく、第3号に定める洗浄作業の一般取扱所として整理されます。同じように危険物で表面を処理する作業でも、号が違えば適用される特例の内容も変わります。自分の設備がどの号に当たるかを最初に確定させることが重要です。
ディーゼル発電設備はボイラー等に含まれる

危険物の規制に関する規則第28条の55は、ボイラー等で危険物を消費する一般取扱所の特例を定めています。この「ボイラー、バーナーその他これらに類する装置」に、ディーゼル発電設備は含まれるか、という問いです。
ボイラーやバーナーは燃料を燃やして熱を得る装置ですが、ディーゼル発電設備は燃料を燃やして動力と電気を得る装置です。用途は違いますが、危険物を燃焼させて消費するという点で同類と扱われます。
非常用発電設備を設ける建物は多く、この確認は実務でよく効きます。
外壁の緩和は認められないが複数機器は1つの設備として数える

規則第28条の55第2項第2号には、建築物の一般取扱所の用に供する部分は壁・柱・床・はり及び屋根を耐火構造とすると規定されています。そこで、空地があり延焼のおそれのある建築物が存しない場合、基準の特例により当該外壁を不燃材料で造ることができるか、という問いが立てられました。
周囲に空地があり延焼のおそれがない状況でも、耐火構造という要求を不燃材料に置き換えることはできません。外部への延焼防止だけでなく施設自体の倒壊防止も含む要求だからです。
もうひとつ、危険物を取り扱う機器が複数存する場合の空地について、機器ごとに空地を必要とするのか、という問いがあります。
ボイラーが2台並んでいる場合、それぞれの周囲に3メートルを確保する必要はなく、2台をまとめた外周に3メートルあればよいという整理です。
前項の外壁が認められなかったのと対照的ですが、空地は消火活動と延焼防止の空間なので外周で確保できれば目的を満たすという違いがあります。
よくある質問
まとめ
- 印刷工場の溶剤回収装置は、回収装置を含め一の一般取扱所として規制してさしつかえない
- 有機溶剤の蒸気を回収して液化させる危険物の取扱いは危険物の製造には該当しない
- 1棟の建築物の中に基準に適合した一般取扱所を複数設置することができる
- 吹付塗装作業工程と連続する工程は含めて一般取扱所として差し支えないが、洗浄作業は規則第28条の54第1号には該当せず第3号で整理される
- ディーゼル発電設備はボイラーやバーナーその他これらに類する装置に含まれる
- 外壁を耐火構造から不燃材料に緩めることは認められないが、複数機器は1つの設備として周囲に幅3メートル以上の空地があれば足りる
空地は外周でええけど、外壁の構造は緩めてもらえへんのやな。
そのとおりです。
空地は空間として確保できれば目的を満たしますが、耐火構造は施設自体の倒壊防止も含む要求なので置き換えられません。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第19条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の54から第28条の60まで e-Gov法令検索
- 「配管による灯油の供給施設に関する運用基準について」(昭和44年11月26日付け消防予第269号 消防庁予防課長通達)
- 溶剤回収装置の規制について(昭和59年6月8日付け消防危第54号 危険物規制課長から京都府あて回答)
- 「危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について」(平成元年7月4日付け消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)問21から問27まで
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)一般取扱所の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




