特定共同住宅等の制度は通常の消防用設備等に代えて必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等を設置できる仕組みです。
基本の考え方が分かっても、実際の建物にあてはめると住戸の形や区画の作り方で迷う場面が出てきます。
メゾネット型住戸のスプリンクラー、階段室型の連結送水管、乾式壁を使ってよいかといった相談は特に多いところです。
この記事では40号省令の適用をめぐる細かい判断を消防庁の通知に沿って整理します。
メゾネット型住戸で上の階だけスプリンクラーの義務がかかるんやけど、下の階は要らんのやろ。
そこが逆です。
平成18年5月30日付け消防予第188号に関する質疑で、下階を含めて住戸全体に設置する必要があるとされています。
ほな住戸の区画に乾式壁使うんはあかんのか。堅牢な構造って書いてあるやろ。
使えます。
ただし施工方法の明確化と周知、現場責任者の選任と指導監督、自主検査等による確認と記録の保存という施工管理体制が前提です。この記事でまとめて解説します!
- メゾネット型住戸の上階のみにスプリンクラー設備の設置義務が生ずる場合でも下階を含めて当該住戸全体にスプリンクラー設備を設置する必要がある
- メゾネット型住戸が存する階段室型特定共同住宅等の共同住宅用連結送水管の放水口は階数3以内ごとかつ各部分から歩行距離50メートル以下となるよう当該住戸の主たる出入口が面する階段室等に設ける
- 令別表第一の(5)項ロの用途が存する(16)項の防火対象物は令第8条に規定する区画により(5)項ロに供する部分を区画した場合は40号省令を適用できる
- 住戸等の区画に用いる乾式壁は適切な施工管理体制が整備されている場合は使用が認められる
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目次
メゾネット型住戸は上階だけの義務でも住戸全体に設置する

メゾネット型住戸は一つの住戸が上下二層にまたがる形式です。
このため階数で決まる設置義務が住戸の途中でかかるという状況が生じます。問われたのは、メゾネット型住戸の上階のみにスプリンクラー設備の設置義務が生ずる場合でも、下階を含めて当該住戸全体にスプリンクラー設備を設置する必要があるかという点でした。
住戸全体に設置する必要があります。
上階だけに設けて下階を空けておくという運用は認められないという整理です。
一つの住戸の中で内部階段によって上下がつながっている以上、下階で発生した火災の煙や熱は上階へ回ります。
住戸を一体のものとして守るという考え方から、義務が生じた住戸は全体を対象にすることになります。
階段室型の連結送水管の放水口は階数3以内ごとで歩行距離50メートル以下

同じ質疑の二つめは連結送水管の放水口の位置についてです。
メゾネット型住戸が存する階段室型特定共同住宅等に共同住宅用連結送水管の放水口を設置する場合は、階数3以内ごとに、かつ、当該特定共同住宅等の各部分から歩行距離50メートル以下となるように当該住戸の主たる出入口が面する階段室等に設けることとしてよいか、という問いです。
階数3以内ごとに設ければ足ります。
メゾネット型住戸では階と住戸の数が一致しないため、住戸の主たる出入口が面する階段室等という基準で位置を決めることになります。
階段室型は各住戸が階段室に直接面する形式で、消防隊はその階段室を使って進入します。
放水口を階数3以内ごとに置いたうえで、実際に歩く距離が50メートルを超えないことを確かめる、という二段構えの確認になります。
令第8条の区画で分ければ複合用途でも40号省令を適用できる

次は用途が混ざる建物についての問いです。
令別表第一の(5)項ロの用途が存する(16)項に掲げる防火対象物について、令第8条に規定する区画により(5)項ロに供する部分を区画した場合は、40号省令を適用できると解してよいかという照会です。
区画すれば共同住宅の部分に適用できます。
令第8条の区画は、区画された部分をそれぞれ別の防火対象物とみなす規定です。共同住宅の部分を独立させることで、その部分について40号省令の枠組みに乗せられることになります。
1階が店舗で上階が住戸というような建物でも、令第8条の区画が確保されていれば住戸部分は特定共同住宅等として扱える可能性があります。
区画が成立しているかどうかが分かれ目になるため、設計段階での確認が欠かせません。
独立した用途に供される部分の区画は告示の基準に適合させる

消防予第188号通知の第1の第4号では独立した用途に供される部分は住戸とみなして40号省令を適用しても差し支えない旨が示されています。
これを受けて150平方メートル以内ごとの防火区画の構造はどのようにすべきかという照会が出されました。
住戸を区画するのと同じ基準になります。
住戸とみなして扱う以上、その区画も住戸等を区画する場合と同じ水準が求められるという整理です。
面積で区切ればよいという話ではなく、床や壁の構造そのものが告示の基準を満たしているかまで確認する必要があります。
乾式壁は施工管理体制が整っていれば認められる

消防予第188号通知の第2の第2号では、特定共同住宅等の住戸等の区画に用いる床又は壁は堅牢かつ容易に変更できない構造を有することとされています。
そこで乾式壁の使用は認められるかという照会が出されました。
体制が整っていれば使用できます。
- 乾式壁の施工方法 住戸等と住戸等との間の防火区画を形成する壁のうち乾式のものの施工方法が、当該乾式壁の製造者により作成された施工仕様書等により明確にされており、かつ、その施工実施者に周知されていること
- 施工現場における指導・監督等 現場責任者に当該乾式壁の施工に関し十分な技能を有する者(製造者の実施する技術研修を修了した者等)が選任されており、かつ、当該現場責任者により施工実施者に対して現場での指導・監督等が行われていること
- 施工状況の確認等 乾式壁の施工の適正な実施について、自主検査等により確認が行われ、かつ、その結果が保存されていること
あわせてその他として、施工管理体制の整備状況については当該特定共同住宅等の施工全般に係る責任者の作成する施工管理規程等により確認すること、乾式の壁と床、はり等の躯体との接合部の耐火処理については、特に徹底した施工管理を行うこととされています。
壁そのものの性能だけでなく躯体との取り合い部分と施工体制の記録までが確認の対象になる点が要点です。
よくある質問
まとめ
- メゾネット型住戸の上階のみにスプリンクラー設備の設置義務が生ずる場合でも下階を含めて当該住戸全体に設置する必要がある
- メゾネット型住戸が存する階段室型特定共同住宅等の共同住宅用連結送水管の放水口は階数3以内ごとに設ける
- その放水口は各部分から歩行距離50メートル以下となるよう当該住戸の主たる出入口が面する階段室等に設ける
- 令別表第一の(5)項ロの用途が存する(16)項の防火対象物は令第8条の区画により(5)項ロに供する部分を区画した場合は40号省令を適用できる
- 独立した用途に供される部分と住戸等及び共用部分を区画する床又は壁は位置・構造告示第3第3号に規定する基準に適合する構造とする必要がある
- 住戸等の区画に用いる乾式壁は施工方法の明確化と周知・現場責任者による指導監督・自主検査等による確認と結果の保存という施工管理体制が整備されていれば使用が認められる
- 乾式の壁と床やはり等の躯体との接合部の耐火処理については特に徹底した施工管理を行うこととされている
乾式壁も体制さえ組めば通るんやな。材料より段取りっちゅうことか。
特定共同住宅等は住戸を一つの単位として守る制度です。
だから住戸をまたぐ設備は住戸全体に及び、住戸を仕切る壁には構造と施工の両面から水準が求められます。
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第8条・別表第一 e-Gov法令検索
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号) e-Gov法令検索
- 特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件(平成17年消防庁告示第2号)
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令等の運用について(平成18年5月30日付け消防予第188号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の特定共同住宅等に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




