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火災のとき消火する義務があるのは誰か|応急消火義務者の範囲と協力者への災害補償

商店街で消火器を持って店から出てくる人

消防法第25条第1項は、火災が発生したときに一定の人へ消火や延焼の防止や人命の救助を行うことを求めています。
これを応急消火義務といい、その対象は消防法施行規則第47条で定められています。
では同じ建物の別のテナントで火が出たとき、自分にも義務があるのかまでは条文からは読み取りにくいところです。
この記事では応急消火義務者の範囲と協力した人への補償を消防庁の質疑応答に沿って整理します。

同じビルの下の階で火が出たら、うちも消さなあかん義務があるんか。

あります。
用途が違っても同一棟に居住し又は勤務する者は応急消火義務者に該当するとされています。

ほな手伝うて怪我したらどうなるんや。自己責任か。

補償の仕組みがあります。
消防作業に従事した者については消防法第36条の2の規定により公務災害補償の対象となりえます。この記事でまとめて解説します!

この記事の結論
  • 共同住宅であると複合用途対象物であるとを問わず同一棟に居住し又は勤務する者は応急消火義務者に該当する
  • 学校の児童や生徒等は消防法施行規則第47条第3号に掲げる居住者又は勤務者には含まれない
  • 規則第47条第3号にいう場屋とはその態様の如何にかかわらず火災の発生した棟を意味する
  • 消防作業に従事して災害を受けた場合は消防法第36条の2に基づく災害補償の対象となりうる

同一棟に居住し又は勤務する者は応急消火義務者にあたる

各階に人がいる建物の断面と1階の火のイラスト

昭和39年8月11日付け自消丙予発第83号は、応急消火義務者の範囲についての照会です。
一つめの設例は鉄筋コンクリート造4階建で1階が食堂、2階が映画館、3階と4階が事務所という複合用途対象物の1階食堂から出火した場合でした。上階の勤務者は応急消火義務者か、それとも消火協力者とみるべきかが問われています。

二つめの設例は住宅に間借り程度の状態で何世帯も居住し共同住宅化している建物です。
Aの住いから出火した場合に、他のBやDの居住者は応急消火義務者にあたるのかが問われました。

回答は火災が発生した場屋が共同住宅であると複合用途対象物であるとを問わず、同一棟に居住し又は勤務する者は消防法施行規則第47条第3号に掲げる者に該当し、したがって消防法第25条第1項の規定により消火若しくは延焼の防止又は人命の救助を行なわなければならないです。
用途が違っても同じ棟なら対象です

自分の店舗や事務所から出火したわけではなくても、同じ棟にいる以上は義務の対象になるという整理です。
テナントビルや共同住宅では、棟全体で考える必要があります。

場屋とは火災の発生した棟そのものを意味する

並んで建つ2棟のうち一方から火が出ているイラスト

では棟の範囲はどう考えるのでしょうか。
昭和38年5月4日付け自消丙予発第18号では消防法施行規則第47条第3号にいう火災が発生した場屋とは、その態様の如何にかかわらず火災の発生した棟を意味するものと解すべきかと問われました。

照会ではさらに具体的に、共同住宅又は貸ビル等で1棟に多数の世帯又は事業所が入居している場合、同一世帯又は事業所に属する部分のみを一の場屋と解する余地はないかとも尋ねられています。

回答はお見込みのとおりです。
場屋は棟を単位として捉えるものであり、自分の世帯や事業所の部分だけを切り出して考えることはできないという整理になります。

広い敷地内に別の棟が建っている場合は話が変わります。
別棟なら場屋が異なります

学校の児童や生徒は居住者又は勤務者には含まれない

校舎の前を歩く子どもたちに赤い禁止の斜線が引かれたイラスト

同じ照会では学校についても問われています。
学校の児童や生徒等は消防法施行規則第47条第3号に掲げる居住者又は勤務者には含まれないと解してよいかという問いでした。

回答はお見込みのとおりです。
児童や生徒は学校に通ってはいますが、居住者にも勤務者にもあたらないという整理になります。

ただし補償の面では別の扱いが示されています。
照会ではそれらの者が当該学校の消防計画に基づいて消火活動に従事し災害を受けた場合にも、消防法第36条の2に基づく災害補償の対象となるものと解してよいかとも問われ、こちらもお見込みのとおりとされました。

そのうえで回答には注意書きが添えられています。
少なくとも小中学校の生徒を消火活動に従事させるような消防計画は適当でないとされています。
子どもに消火をさせてはいけません

現場附近に在る者の意味は第25条と第29条で異なる

現場に集まる人々と要請する消防吏員のイラスト

消防法第25条第2項と第29条第5項には、いずれも現場附近に在る者という同じ言葉が使われています。
これが同一内容を意味しているかが問われました。

回答は同一内容を意味していると解すべきでないです。
第25条第2項の現場附近に在る者とは同条第1項に定める応急消火義務者以外の現場附近に在る者を意味します。
これに対し第29条第5項は現場附近に在る者で消防吏員又は消防団員から従事要請を受けた者が対象と解されます。

この違いから、第25条第1項の応急消火義務者であっても、消防隊が現場到着後附近におれば現場附近に在る者に該当するという結論が導かれます。
回答は両者の意味は同一ではなく、むしろ後者の方が内容的に広いと解しうると述べています。

作業の範囲も異なります。
第25条第2項の協力義務の対象は消火や延焼の防止や人命の救助という消防作業に限定されるのに対し、第29条第5項の協力義務の対象は上記の作業を含む消防作業一般であるとされました。

その他の消防作業として具体的に何を指すのかも問われ、消火活動の障害除去又は消防隊の誘導等が考えられると示されています。

消防作業に従事して災害を受けた場合は補償の対象となりうる

担架と救急箱と証明書の書類を並べたイラスト

昭和37年3月6日付け自消丙予発第16号は、痛ましい事案についての照会です。
火災の発生に際して通行人が消防隊到着前に火元家屋の荷物搬出作業中に焼死したという事案について、消防法第25条第2項の消防作業に従事した者の死亡として、同法第36条の2の規定により公務災害補償を行なって差し支えないかが問われました。

回答はお見込みのとおりです。
消防隊が到着する前であっても、消防作業に従事した者として補償の対象になりうるという整理です。

消防法第36条の2にいう消火若しくは延焼の防止又は人命の救助その他の消防作業という文言についても、第25条第2項と第29条第5項の両方にかかるものと解して差し支えないとされています。

ただし補償があるからといって、危険をおして活動してよいという話ではありません。
この事案でも、車庫に煙が充満し、扉が狭くて開かない中で亡くなっています。まず避難と119番通報を優先し、無理のない範囲で行動することが何より大切です。

よくある質問

Q. 同じビルの別のテナントで火が出た場合も義務がありますか?
あります。火災が発生した場屋が共同住宅であると複合用途対象物であるとを問わず、同一棟に居住し又は勤務する者は消防法施行規則第47条第3号に掲げる者に該当するとされています。
Q. 場屋とは自分の部屋や事業所の範囲のことですか?
違います。規則第47条第3号にいう場屋とは、その態様の如何にかかわらず火災の発生した棟を意味するものと解すべきとされ、同一世帯又は事業所に属する部分のみを一の場屋と解する余地はないとされています。
Q. 学校の生徒にも応急消火義務がありますか?
ありません。学校の児童や生徒等は消防法施行規則第47条第3号に掲げる居住者又は勤務者には含まれないとされています。なお少なくとも小中学校の生徒を消火活動に従事させるような消防計画は適当でないとされています。
Q. 消火を手伝って怪我をした場合は補償されますか?
対象となりうるとされています。消防隊到着前に火元家屋の荷物搬出作業中に死亡した通行人について、消防法第25条第2項の消防作業に従事した者の死亡として第36条の2の規定により公務災害補償を行なって差し支えないとされた事例があります。

まとめ

  • 共同住宅であると複合用途対象物であるとを問わず同一棟に居住し又は勤務する者は応急消火義務者に該当する
  • 該当する者は消防法第25条第1項により消火若しくは延焼の防止又は人命の救助を行なわなければならない
  • 規則第47条第3号にいう場屋とはその態様の如何にかかわらず火災の発生した棟を意味する
  • 学校の児童や生徒等は規則第47条第3号に掲げる居住者又は勤務者には含まれない
  • 少なくとも小中学校の生徒を消火活動に従事させるような消防計画は適当でないとされている
  • 消防法第25条第2項と第29条第5項の現場附近に在る者は同一内容を意味していると解すべきでない
  • 第25条第2項の協力義務は消防作業に限定され第29条第5項の協力義務は消防作業一般である
  • 消防作業に従事して災害を受けた場合は消防法第36条の2に基づく災害補償の対象となりうる

棟でひとまとめに見るんやな。うちのビルも他のテナントと一緒っちゅうことか。

そのとおりです。
ただし何より優先すべきは避難と119番通報です。棟全体での初期対応の手順づくりはご相談ください。

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第24条・第25条・第29条・第36条の2 e-Gov法令検索
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第47条 e-Gov法令検索
  • 消防法第25条と第29条にいう「現場附近に在る者」の意味について
  • 通行人が消防隊到着前荷物搬出中に死亡した場合について(昭和37年3月6日付け自消丙予発第16号 予防課長から鹿児島県総務部長あて回答)
  • 場屋の居住者または勤務者に、児童または生徒がはいるか(昭和38年5月4日付け自消丙予発第18号 予防課長から長崎県総務部長あて回答)
  • 消防法施行規則第47条にいう「応急消火義務者」について(昭和39年8月11日付け自消丙予発第83号 予防課長から福岡県民生部長あて回答)
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の消火の活動に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

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消防法第25条第1項は、火災が発生したときに一定の人へ消火や延焼の防止や人命の救助を行うことを求めています。 これを応急消火義務といい、その対象は消防法施行規則第47条で定められています。 では同じ建物の別のテナントで火...