保有空地も防油堤の内側も、何も置いてはならない場所です。
では緑化のために草を植えることは。従業員のためにコートを設けることは。
昭和49年から52年にかけての回答は、同じ「空地」でも結論を分けています。
この記事では保有空地と防油堤内の使い方を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
工場立地法で緑地を確保せなあかんねん。防油堤の中に草を植えてもええか。
認められています。
しかも困難な工場に限らず消防活動上支障のない常緑草であればよいとされました。
ほな空いてる保有空地にテニスコート作るんもええやろ。
そちらは通りません。
ネットを使用後に取りはずす条件を付けても認められないと回答されています。この記事でまとめて解説します!
- 防油堤内の緑化は危険物施設に危害を与えないもので、かつ、消防活動上支障のない常緑草であれば認めてさしつかえない
- それは緑地面積の確保に困難な工場に限ることなく認められる
- 保有空地にバレーコートやテニスコートを設けることは認められない
- 既設タンクの保有空地に抵触する位置への防液堤の設置も認められない
- 百貨店は政令第9条第1号ロに規定する多数の人を収容する施設には該当しない
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目次
防油堤内の緑化は常緑草であれば認められる

昭和49年9月12日付け消防予第111号は、兵庫県からの照会に答えたものです。
工場立地法にもとづく緑化の推進と、危険物施設の基準がぶつかった場面です。
示された案は次の三つです。
(2)は上記の場合に限ることなく、危険物施設に危害を与えないもので、かつ、消防活動上支障のない常緑草(ホワイトクローバー)であれば、認めてさしつかえない
(3)は認めることはできないです。
選ばれたのは、条件のゆるい(2)でした。
緑地面積の確保に困難な工場という限定を付けずに認めています。
草を植えることそのものは、危害を与えず消防活動の支障にならなければよいという整理です。
限定なしで通りました。
保有空地にコートを設けることは認められない

同じ空地でも、結論が逆になった照会があります。
昭和51年7月12日付け消防危第23-11号は、香川県からの照会に答えたものです。
照会側は二つの案を示しました。
(1)はこの条件であれば周囲の状況から消火活動上支障がないと思料されるので政令第23条を適用してその使用を認めてよい、(2)は保有空地内であるので認められないです。
ネットを使うたびに取りはずすという条件を付けても、通りませんでした。
草を植えることは認められ、コートは認められない。
使う場になると別です。
保有空地に抵触する防液堤の設置も認められない

相手が防災のための設備であっても、答えは変わりませんでした。
昭和52年9月9日付け消防危第136号は、各都道府県の消防主管部長あてに出されたものです。
高圧ガスの防液堤は、それ自体が漏れを防ぐための設備です。
それでも、既設タンクの保有空地に食い込むことは認められませんでした。
保有空地は消火活動のために空けておく場所であり、他の目的の設備で埋めることはできないという整理です。
目的を問わず不可です。
百貨店は保安距離の対象となる施設には該当しない

ここからは保安距離の話です。
昭和51年9月22日付け消防危第56号は、栃木県からの照会に答えたものです。
19,000平方メートルの4階建という規模でも、該当しないとされました。
政令第9条第1号ロが挙げる施設は、自治省令すなわち現在の総務省令で定められたものに限られるためです。
人が多く集まる建物であればすべて対象になる、という読み方はされていません。
省令で定めた施設です。
隣接事業所の管理人住宅にただし書は適用できない

もう一つ、距離についての回答を見ておきます。
昭和52年3月17日付け消防危第39号は、愛媛県からの照会に答えたものです。
図面では、A事業所の屋外タンク貯蔵所から敷地境界線まで50メートル、そこからB事業所の工場(製粉工場)を挟んで管理人住宅までさらに75メートル、敷地内距離は70メートルという配置が示されていました。
管理人住宅には普通の住宅と同程度という注記が付いています。
敷地内距離のただし書は、自治省令で定める事情がある場合に適用されます。
隣接する事業所の中にある管理人住宅というだけでは、その事情にあたらないという判断です。
事情の中身次第です。
よくある質問
まとめ
- 防油堤内の緑化は危険物施設に危害を与えず消防活動上支障のない常緑草であれば認めてさしつかえない
- それは緑地面積の確保に困難な工場に限ることなく認められる
- 防油堤外の保有空地にバレーコートやテニスコートを設置して使用することは認められない
- ネットを使用後にその都度取りはずすという条件を付けても認められない
- 隣接する既設屋外タンク貯蔵所の保有空地に抵触する防液堤の設置も認められない
- 百貨店は政令第9条第1号ロに規定する自治省令で定める施設には該当しない
- 隣接事業所に管理人住宅が存する場合に敷地内距離のただし書を適用することは認められない
草はええけど、人が使う場にしたらあかんのやな。
そのとおりです。
敷地の使い方や保安距離の確認も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第11条・第23条 e-Gov法令検索
- 工場立地法(昭和34年法律第24号) e-Gov法令検索
- 危険物屋外タンク防油堤内の緑化について(昭和49年9月12日付け消防予第111号 兵庫県あて回答)
- 屋外タンク貯蔵所の保有空地の利用について(昭和51年7月12日付け消防危第23-11号 香川県あて回答)
- 百貨店との保安距離について(昭和51年9月22日付け消防危第56号 栃木県あて回答)
- 敷地内距離に関するただし書の適用について(昭和52年3月17日付け消防危第39号 危険物規制課長から愛媛県あて回答)
- 既設屋外タンク貯蔵所の保有空地について(昭和52年9月9日付け消防危第136号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




