屋外タンク貯蔵所の防油堤は、どこに、どれだけの広さで設ければよいのでしょうか。
保有空地の中に入れてよいのか、タンクとの間隔は何メートルか、いくつまでタンクを入れられるのか。
昭和37年の回答は、この四つの問いにまとめて答え、具体的な数値も示しています。
この記事では防油堤の位置と面積の考え方を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
防油堤は保有空地の中に設けてはいけないのではないでしょうか。
逆です。
空地の幅はタンクを起点とするため防油堤内の空地も同号の空地に含まれると解されています。
一つの防油堤に、タンクは何基まで入れられるのでしょうか。
個数ではなく量で示されています。
貯蔵量の合計を30,000キロリットル程度を制限とするとされました。
この記事でまとめて解説します!
- 空地の幅の算定はタンクを起点とするため防油堤内の空地も政令第11条第2号の空地に含まれる
- ただし消火活動上必要最少限度の空地は、防油堤外に保有することが望ましい
- 防油堤とタンクとの間隔はあふれ出た危険物が防油堤の外に出ないような距離とする
- 1の防油堤内に2以上のタンクを設ける場合の貯蔵量の合計は30,000キロリットル程度を制限とする
- 防油堤は一般には堤内の面積の狭い方が有効である
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目次
防油堤内の空地も保有空地に含まれる

昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、福島県からの四つの照会にまとめて答えたものです。
一つめは、防油堤と保有空地の関係でした。
保有空地は何も置いてはならない場所なので、防油堤も置けないのではないか、という発想です。
しかし回答は逆の整理を示しました。
空地の幅はタンクを起点として測ります。
そのため、タンクと防油堤の間にある部分も空地として数えられるという考え方です。
ただし但し書として、消火活動上必要最少限度の空地は、防油堤外に保有することが望ましいとされています。
全部を堤の中で数え切ってしまうのは望ましくないということです。
起点はタンクです。
空地の起点はタンクなのですね。
防油堤内の空地も含まれます。
図面で、空地の測り方を確かめてください。
タンクとの間隔はあふれた危険物が外に出ない距離とする

二つめは、防油堤とタンクの間隔についてです。
照会は防油堤と屋外貯蔵タンクとの最低及び最大間隔は、何メートルが適当であるかと数値を求めました。
数値は示されませんでしたが、考え方が示されました。
想定されているのは沸騰等によりタンク上部から危険物があふれ出た場合です。
タンクの底から漏れる場合ではなく、上からあふれる場合を基準に置いています。
高いタンクほど、あふれた液体は遠くまで飛びます。そのためタンクの高さに応じてそれぞれ異なるのです。
近すぎれば堤を越えてしまいます。
高さで距離が決まります。
間隔は、あふれた分が外に出ない距離で考えるのですね。
数値ではなく考え方が示されました。
タンクの高さと容量から、想定を立ててください。
1の防油堤内の貯蔵量の合計は30,000キロリットル程度を制限とする

三つめは、一つの防油堤に入れられるタンクの数です。
照会は1の防油堤内には、屋外貯蔵タンクを最大何個まで設置することができるかと尋ねました。
問われたのは個数でしたが、答えられたのは量でした。
合計貯蔵量で30,000キロリットル程度という線が引かれています。
そのうえで、量が収まっていても個数が多すぎるのはよくない、と付け加えられました。
理由として挙げられているのは消防活動上及び延焼防止上の見地です。
タンクが密集すれば、一つが燃えたときに次へ移りやすく、消火活動も難しくなります。
量と数の両方です。
個数ではなく、量で線が引かれているのですね。
合計の貯蔵量で見ます。
いまの防油堤内の合計量を、計算しておきましょう。
防油堤は一般には堤内の面積の狭い方が有効である

四つめは、防油堤の広さそのものです。
照会は防油堤は、屋外貯蔵タンクの高さ又は容積に比較して、広いのと狭いのとではどちらが有効であるかと尋ねました。
条件が二つ前置きされています。
一つめが総理府令第22条の規定に適合すること、二つめが2の要件に合致すること、つまりあふれた危険物が外に出ない距離であることです。
その二つを満たしたうえでなら、狭い方が有効とされました。
広ければ広いほどよいというものではありません。
面積が広がれば、漏れた危険物が薄く広く広がって表面積が大きくなり、火災になったときに燃える面が増えます。
広ければよくありません。
狭いほうが有効とされることもあるのですね。
条件を満たしたうえでの話です。
広さは、目的に照らして決めてください。
保安距離はタンクの外側から相手の外壁までで測る

あわせて、距離の測り方についての回答も見ておきます。
昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、栃木県小山市消防長からの照会にも答えています。
屋外タンク貯蔵所の設置申請に対し、消防側が別の位置まで下げるよう指導したものの、申請人が申請位置に固執している、という状況でした。
図面では、タンクから敷地境界線まで4.5メートル、そこから住居までさらに5メートルという配置が示されています。
測るのは両者の外壁又はこれに相当する工作物の外側相互間です。
敷地境界線までの距離ではありません。
したがって、境界線までが4.5メートルであっても、そこから住居まで5.5メートル以上あれば合計10メートルとなり、基準に適合することになります。
外側どうしで測ります。
距離はタンクの外側から測るのですね。
相手の外壁までで見ます。
実測した数値を、配置図に書き込んでおきましょう。
よくある質問
まとめ
- 空地の幅の算定は政令第11条第2号の規定上はタンクを起点とする
- そのため防油堤内の空地も同号の空地に含まれるものと解される
- ただし消火活動上必要最少限度の空地は防油堤外に保有することが望ましい
- 防油堤とタンクとの間隔は沸騰等によりあふれ出た危険物が防油堤の外に出ないような距離とする
- 1の防油堤内に2以上の屋外タンクを設ける場合は貯蔵量の合計を30,000キロリットル程度の制限とする
- その量以下であっても消防活動上及び延焼防止上の見地から設置個数が過大となるのは好ましくない
- 防油堤は総理府令第22条に適合しあふれ出た危険物が外に出ない要件を満たす限り堤内の面積の狭い方が有効である
- 保安距離は両者の外壁又はこれに相当する工作物の外側相互間の距離をいう
広く作れば安心、というものでもないのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
防油堤の計画や既設タンクの配置の見直しも、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第11条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第22条 e-Gov法令検索
- 防油堤の位置および面積について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から福島県民生部長あて回答)
- 保安距離の起算点について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から栃木県小山市消防長あて回答)
- 防油堤と保有空地の位置は(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から福岡県民生部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




