移動タンク貯蔵所には、標準の形に収まらない要望が持ち込まれます。
冬に固まる油を温めたい。積み込む前にタンクの中の残ガスを追い出したい。
バキューム式の産業廃棄物処理車を移動タンク貯蔵所として扱いたい。
昭和52年に出た3つの回答は、どれも条件付きで道を開いています。
動植物油類が冬に凝固して取り出せません。タンクの中に蒸気の加熱配管を入れたいのですが。
認められています。ただし加熱配管そのものに水圧試験を行うよう、なお書きで指導が付いています。
バキューム式の廃棄物処理車も移動タンク貯蔵所として許可できますか。
引火点で線が引かれています。その値を超える危険物に限り取り扱うのであれば、認めてさしつかえないという整理です。
この記事の結論
- タンク内に蒸気による加熱配管を設けることは、政令第23条を適用してさしつかえないとされています
- 加熱配管には、政令第9条第21号イの水圧試験の例により水圧試験を行うよう指導されたいとされています
- 残ガス排出装置は、政令第27条第6項第4号ホに基づく規則第40条の7第3号の措置に必要なものと認められます
- その設備を設ける場所は、ローリ積み場の一部として規制することが適当とされています
- バキューム方式の産業廃棄物処理車は、引火点70度以上の危険物に限り取り扱い政令第15条に適合する場合に認められます
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目次
タンク内に蒸気の加熱配管を設けられるか

冬期に外気が下がると凝固し、移動タンクから取り出す際に困難を生じるため、タンク内に蒸気による加熱配管を取り付けたいという申し出でした。
その他の構造設備については政令基準にすべて適合し、加熱配管は危険物を取り出す時に限り、工場等の蒸気供給設備から蒸気を供給して加熱するものとされています。
答 さしつかえない。
なお、加熱配管は、危険物の規制に関する政令第9条第21号イの水圧試験の例により水圧試験を行うよう指導されたい。
なお、加熱配管は、危険物の規制に関する政令第9条第21号イの水圧試験の例により水圧試験を行うよう指導されたい。
本体ではなく後付けの配管に対して、製造所の配管と同じ水準の試験を求める形です。
タンクの中を通る配管ですから、そこが漏れれば危険物と蒸気が混ざります。
加熱の必要性は認めつつ、その配管自体の健全性は別に確認する、という組み立てです。
残ガス排出装置はどう位置づけられるか

タンク内の残ガスを排風機で吸入し、排気管から大気へ放出する装置を設けたいという内容でした。
積込時における爆発事故防止の一環として、積込み前にタンク内の残ガスを強制放出するものです。
答 設問の設備は、危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号ホの規定に基づく危険物の規制に関する規則第40条の7第3号に規定する措置に必要なものと認められる。
既存の規定で読める設備でした。
特例を持ち出すまでもなく、もともとある規定が求める措置に必要な設備として位置づけられるという整理です。
制度の外に出るのではなく、制度の内側で説明がつく場合はそうする、という判断が読めます。
残ガス排出設備はどこに置くか

なお、当該設備を設ける場所は、移動タンク貯蔵所へ危険物を注入するための危険物を取り扱う場所(ローリ積み場)の一部として規制することが適当であるので念のため申し添える。
装置だけを別の施設として切り出すのではなく、既存のローリ積み場の範囲に取り込むという扱いです。
設備を追加するときに、その場所が新たな規制区分を生むのかどうかは実務で迷う点です。ここでは一体として見る答えが示されました。
バキューム式の産業廃棄物処理車は認められるか

プッシュ式ドレンスイーパーと呼ばれる、バキューム方式により吸排出を行うタンク車です。
積載タンク容量は3,000リットルで、危険物貯蔵・取扱い施設より第三石油類を収集し、油処理工場へ搬送します。
答1 (1)及び(2)
設問の産業廃棄物処理車が、引火点70℃以上の危険物に限り取り扱うもので、かつ、危険物の規制に関する政令第15条の規定に適合するものである場合は、その設置を認めてさしつかえない。
設問の産業廃棄物処理車が、引火点70℃以上の危険物に限り取り扱うもので、かつ、危険物の規制に関する政令第15条の規定に適合するものである場合は、その設置を認めてさしつかえない。
条件は2つで、引火点70度以上の危険物に限ることと、政令第15条の規定に適合することです。
吸引という方式そのものが否定されたのではなく、扱う危険物の性状で線が引かれました。
重油スラッジや廃油であれば引火点は高く、この線に収まる想定です。
小分け用のホースリール付は認められるか

昭和40年12月13日付けの自消丙予発第185号では、危険物の小分けを目的とするタンク車は移動タンク貯蔵所と認められないとされていました。
その後の政令改正により、第27条第6項第4号イでホースリール付ノズルを設置して少量危険物貯蔵タンクに小分けすることが認められると解釈されることから、改めて照会されたものです。
答2(1) さしつかえない。
(2) 給油ホースの長さは、最大何メートルまで可能か。→特に定めはないが、必要最小限度の長さにとどめるよう指導されたい。
(3) 吐出口はホースリール付ノズル以外に設けて良いか。→設問の吐出口が政令第15条第1項第9号の規定に適合するものであれば、さしつかえない。
(2) 給油ホースの長さは、最大何メートルまで可能か。→特に定めはないが、必要最小限度の長さにとどめるよう指導されたい。
(3) 吐出口はホースリール付ノズル以外に設けて良いか。→設問の吐出口が政令第15条第1項第9号の規定に適合するものであれば、さしつかえない。
ただし必要最小限度にとどめるよう指導することとされており、無制限ではありません。
吐出口についても、ホースリール付ノズル以外に設けること自体は否定されず、政令第15条第1項第9号に適合するかどうかで判断されます。
12年前の回答が、政令の改正によって結論を変えた例といえます。
よくある質問
Q. 加熱配管はいつ蒸気を通すのですか?
照会では、危険物を取り出す時に限り、工場等の蒸気供給設備から蒸気を供給し加熱するものとされています。走行中に常時加熱するものではなく、荷卸しの場面に限った使い方です。
Q. 加熱配管の水圧試験はどの基準によりますか?
危険物の規制に関する政令第9条第21号イの水圧試験の例により行うよう指導されたいとされています。製造所の配管について定められた試験の例によるという指示です。
Q. 給油ホースの長さに上限はありますか?
特に定めはないとされています。ただし必要最小限度の長さにとどめるよう指導されたいとされており、実際に必要な範囲を超える長さは想定されていません。
Q. 小分け用のタンク車は以前は認められなかったのですか?
昭和40年12月13日付け自消丙予発第185号では、危険物の小分けを目的とするタンク車は移動タンク貯蔵所と認められないと回答されていました。その後の政令改正により第27条第6項第4号イが設けられ、ホースリール付ノズルを設置して少量危険物貯蔵タンクに小分けすることが認められると解釈されるようになっています。
まとめ
- 冬期の凝固対策としてタンク内に蒸気による加熱配管を設けることは、政令第23条を適用してさしつかえないとされています
- 加熱配管は危険物を取り出す時に限り、工場等の蒸気供給設備から蒸気を供給して加熱するものです
- 加熱配管には、政令第9条第21号イの水圧試験の例により水圧試験を行うよう指導されたいとされています
- 残ガス排出装置は、政令第27条第6項第4号ホに基づく規則第40条の7第3号に規定する措置に必要なものと認められます
- その設備を設ける場所は、ローリ積み場の一部として規制することが適当とされています
- バキューム方式の産業廃棄物処理車は、引火点70度以上の危険物に限り取り扱い、かつ政令第15条の規定に適合する場合に設置が認められます
- 小分けを目的とするホースリール付移動タンク貯蔵所(灯油専用)は、政令改正を受けて認められるようになりました
- 給油ホースの長さに定めはないものの、必要最小限度にとどめるよう指導されたいとされています
特例を求めた照会に対して、既存の規定で読めると返す場合もあるんですね。
特例を出す前に、既存の条文で説明がつかないかを当たるのが先です。㈱防災屋でも根拠の整理からご相談を承っています。
参考・出典
- 加熱配管を設ける移動タンク貯蔵所について(昭和52年3月15日 消防危第37号 岡山県あて回答)
- 移動タンク貯蔵所のタンク内の残ガス排出設備の設置について(昭和52年3月22日 消防危第41号 長野県あて回答)
- 危険物移動タンク貯蔵所の許可に伴う疑義について(昭和52年3月31日 消防危第59号 危険物規制課長から福島県あて回答)
- 危険物の規制に関する政令第9条第21号イ・第15条・第15条第1項第9号・第23条・第27条第6項第4号イ・ホ/危険物の規制に関する規則第40条の7第3号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




