前の記事で、ポンプを回すためのガソリンエンジンを荷台に積む案が否定されたことを取り上げました。
では力が足りない問題そのものは、どう解けばよいのか。
2年後、同じ課題に別の答えが出ています。
この記事では、認められた3件と否定された2件を並べます。
エンジンが駄目なら、注入先の建物の電源からモーターを回すのはどうでしょうか。
それは認められました。ただし回答は前段と後段に分かれていて、後段のほうに大事な限定が入っています。
タンクの構造をいじる話はどうでしょう。清掃口を後ろに付けたいのですが。
そこは否定されています。本体の構造に手を入れる案は、付属設備を足す案より通りにくいという傾向が見えます。
この記事の結論
- 外部電源から受電してモーター・ポンプを回す方式は、火災予防上安全な構造で適切に積載し固定されている場合に認められます
- ただしその設置は、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し又は取り扱う場合に限り認められます
- ワンタッチ式のホースカップリングは、2件の照会でいずれもさしつかえないとされています
- タンク後部鏡板にマンホールを設置することは、認めるべきではないとされています
- 底弁間を樋状部材で連結する構造への改良は、その設置を認めることは適当でないとされています
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目次
外部電源でモーター・ポンプを回せるか

県下の農村地帯で高所にある園芸用ハウス等の暖房用燃料貯蔵タンクに燃料を注入する際、自動車用バッテリーを動力源としたポンプでは注入が困難でした。
そこで能力の大きなモーターを使い、電源は園芸ハウス等にすでに配電されている電源を利用するという案です。
モーター・スイッチ等は安全増防爆構造とし、隔壁を設けた部分にモーター・ポンプを固定積載します。
答 前段 設問のモーター及びポンプが、火災予防上安全な構造のものであり、かつ、適切に積載し、固定されている場合は、認めてさしつかえない。
条件は2つで、火災予防上安全な構造であることと、適切に積載し固定されていることです。
荷台に燃料と着火源を同時に持ち込むエンジン方式に対し、こちらは動力源を車の外に置いています。その違いが結論を分けたと読めます。
引火点40度以上に限られる

照会側は「この場合に油種(引火点等の危険性)を考慮する必要はないか」とも尋ねていました。
答 後段 設問のモーター及びポンプの設置は、移動タンク貯蔵所において引火点が40℃以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限り認められるものである。
照会は暖房用燃料を想定していましたが、回答は引火点40度以上という線を明示しました。
装置が安全な構造であることと、扱う危険物の性状は別の話だという整理です。
前段だけを読んで「認められた」と受け取ると、適用範囲を誤ることになります。
ワンタッチ式のホースカップリング

昭和55年4月11日付け消防危第53号 移動タンク貯蔵所の吐出口に給油ホースの結合金具として、ワンタッチ式カツプリング(MS型ホースカツプリング)の使用を認めて差し支えないか。
答 さしつかえない。
昭和56年4月2日付け消防危第42号 同じくホースカツプリング(T-80型ホースカツプリング)の使用を認めてよろしいか。
答 さしつかえない。
答 さしつかえない。
昭和56年4月2日付け消防危第42号 同じくホースカツプリング(T-80型ホースカツプリング)の使用を認めてよろしいか。
答 さしつかえない。
後者の照会には図面が添えられ、ノズルとロックアームがアルミニウム青銅、シャフトとスプリングがステンレス鋼、本体がアルミニウム合金鋳物という材質が示されています。
外径77ミリメートル、内径65ミリメートル、長さ160ミリメートルといった寸法も併記されていました。
後部鏡板にマンホールを設けられるか

容量10,000リットル(第1室と第2室が3,000リットル、第3室が4,000リットル)のタンクで、後部3室の鏡板にマンホールを設置したいという内容でした。
理由は清掃口です。バキューム方式で廃油を積載するものの、ストレーナーが目づまりを生じた時に直接積載するため、内部にスラッジが蓄積するというものです。
答 設問の場合は、認めるべきではない。
理由は短く、記されていません。
照会の使用頻度の欄には「スラッジが蓄積する期間が一定せず不明である」と書かれていました。
マンホールは通常タンクの上部に設けるもので、後部の鏡板は走行中の衝突で最も力を受ける面です。そこに開口部を設けることが問題視されたと読めます。
底弁配管を樋状部材に改良できるか

従来の各底弁間を配管で連結する構造を、タンク下部に樋状部材を取り付ける構造に改良するというものでした。
照会には材質と板厚が示され、樋状部材の材質および板厚は移動タンク貯蔵所の技術上の基準に関する指針の第5に示すタンクの材質、板厚の基準を満足するとされています。
底弁は緊急閉止弁を兼ねる構造とし、操作方法まで詳細に記されていました。
答 添付された資料から判断すれば、その設置を認めることは、適当でない。
「添付された資料から判断すれば」という前置きが付いています。
構造そのものを未来永劫否定したというより、示された資料ではその安全性を認めるに足りない、という書きぶりです。
前の項目とあわせて、タンク本体の構造に手を入れる案は、付属設備を足す案より通りにくい傾向が見てとれます。
よくある質問
Q. 外部電源方式ならどんな危険物でも扱えますか?
扱えません。回答の後段で、モーターおよびポンプの設置は移動タンク貯蔵所において引火点が40度以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合に限り認められるものであるとされています。前段の「認めてさしつかえない」だけを読むと適用範囲を誤ります。
Q. モーターやスイッチにはどのような構造が求められますか?
照会では、モーター・スイッチ等は安全増防爆構造とするものであることが申し添えられていました。回答は「火災予防上安全な構造のもの」としており、あわせて適切に積載し固定されていることを条件としています。
Q. なぜ後部鏡板のマンホールが問題になるのですか?
回答は「設問の場合は、認めるべきではない」とだけ示しており、理由は記されていません。照会された事案では、清掃口としての使用頻度について「スラッジが蓄積する期間が一定せず不明である」とされていました。
Q. 樋状部材の構造は今後も認められないのですか?
回答は「添付された資料から判断すれば、その設置を認めることは、適当でない」という書きぶりです。示された資料に基づく判断であることが明示されており、構造そのものを一律に否定したとは読めません。
まとめ
- 外部電源から受電してモーター・ポンプを駆動しタンクへ燃料を注入する方式は、火災予防上安全な構造で適切に積載し固定されている場合に認めてさしつかえないとされています
- ただしその設置は、引火点が40度以上の危険物を貯蔵し又は取り扱う場合に限り認められます
- 前段の可否と後段の限定は別の話であり、両方を読む必要があります
- ワンタッチ式のホースカップリングは、MS型とT-80型の2件についていずれもさしつかえないとされています
- 廃油を移送する移動タンク貯蔵所のタンク後部鏡板にマンホールを設置することは、認めるべきではないとされています
- 底弁間を配管で連結する構造をタンク下部の樋状部材に改良することは、添付された資料から判断すれば適当でないとされています
- 付属設備を足す案は条件付きで通り、タンク本体の構造に手を入れる案は否定されるという対比が見てとれます
エンジンは駄目でも外部電源なら通る。動力源をどこに置くかで結論が変わるんですね。
否定された案があっても、別の組み立てなら通ることがあります。㈱防災屋でも代替案の検討からご相談を承っています。
参考・出典
- 積載式移動タンク貯蔵所のポンプ動力源について(昭和53年4月22日 消防危第62号 危険物規制課長から鹿児島県あて回答)〔昭和53年12月12日 消防危第167号〕
- 移動タンク貯蔵所の給油ホースの結合金具について(昭和55年4月11日 消防危第53号 危険物規制課長から福岡県あて回答)
- 移動タンク貯蔵所の結合金具について(昭和56年4月2日 消防危第42号 消防庁危険物規制課長から福岡県あて回答)〔昭和56年11月17日 消防危第152号「5」〕
- 危険物規制上の疑義について(昭和55年12月26日 消防危第155号 消防庁危険物規制課長から兵庫県あて回答)〔昭和56年3月9日 消防危第21号「5」〕
- 危険物移動タンク貯蔵所、底弁配管部分の改良について(昭和55年12月26日 消防危第156号 消防庁危険物規制課長から栃木県あて回答)〔昭和56年3月9日 消防危第21号「6」〕
- 移動タンク貯蔵所の位置、構造及び設備の技術上の基準に関する指針(昭和48年3月12日 消防予第45号)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




