冬場に住宅街を回る灯油の配送車は、移動タンク貯蔵所そのものです。
ホースを家庭のタンクに直接つないで注ぐことは認められるのか。
地下タンクから移動タンクへ汲み上げる場合はどう扱われるのか。
このあたりは認められた例と否定された例が並んでいます。
灯油の配送車から、家庭のタンクへ直接注ぎたいのですが認められるでしょうか。
認められています。
あわせてタンクの固定方法まで具体的に示されているので、そこも押さえてください。
ポンプの力が足りないので、荷台にエンジンを積むのはどうでしょうか。
そちらは火炎防止装置を付ける案でも否定されました。
灯油だから条文の適用がない、という理屈は通っていません。
- 灯油専用の積載式移動タンク貯蔵所から、緊結金具付給油管により家庭用等の燃料タンクへ直接注油することは認められています
- タンクの固定は直径14ミリメートル以上のU型ボルトで4か所以上をシャーシー、フレーム等へ固定する方法が示されています
- 安全装置のパッキンには、耐油性を有するコルク又は合成ゴムを使用してさしつかえないとされています
- 地下貯蔵タンクから移動貯蔵タンクへの充填は認められ、地下タンク貯蔵所とは別に一般取扱所として規制されます
- ポンプ専用のガソリンエンジンを荷台に備え付けることは、火炎防止装置を付けても認めるべきではないとされています
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目次
家庭の燃料タンクへ直接注油できるか

問われたのは2点でした。
なお、タンクの固定方法としては、直径14㎜以上のU型ボルトで4か所以上をシヤーシー、フレム等へ固定するものであること。
2 この移動タンクは、その設備の一部である電動機および緊結金具付給油管(20m)を使用して直接家庭用等の燃料タンク等に緊結のうえ注油させてもよろしいか。
答 1及び2さしつかえない。
給油管の長さは20メートルとされており、道路から住宅の裏手まで届く想定です。
固定方法の数値も具体的で、直径14ミリメートル以上のU型ボルトを4か所以上使うこととされています。
緊結して直接注げるのですね。
固定の方法まで示されています。
使っている車両の固定を、現物で確かめてください。
安全装置のパッキンに何を使えるか

従来は弁と弁座の当り面を金属すり合わせで仕上げ、当り面精度を上げることで気密を保っていました。
そこにパッキンを用いる製品が出てきたため、材質の可否が問われました。
耐油性を有するものに限られます。
照会で挙げられていたのはアクリルニトリルゴム製のパッキングでした。
合成ゴムであれば何でもよいのではなく、油に触れても劣化しない材質であることが条件になります。
パッキンの材質にも条件があるのですね。
耐油性のあるものに限られます。
部品を交換するときは、材質を確認してください。
地下貯蔵タンクから移動タンクへ充填できるか

容量50キロリットルの灯油の地下貯蔵タンクの注入口または汲上げ口に移動タンク貯蔵所の給油ホースを結合し、移動タンク貯蔵所に設置されているギヤーポンプにより灯油を充填するという内容です。
なお、灯油の温度が高い等可燃性蒸気が発生しやすい状態にある場合は、マンホールからの可燃性蒸気の放出防止について適当な措置をとることが望ましい。
答2(1) 引火点40℃以上の石油類については、さしつかえない。
(2) さしつかえない。(屋内(外)貯蔵タンクについても同様)
(3) ウによる。(地下タンク貯蔵所と別に一般取扱所として規制する)
灯油以外の石油類にも広げてよいかという問いには、引火点40度以上という線が引かれました。
規制の形については3つの案が示され、地下タンク貯蔵所と一体の設備として規制するのでも、地下貯蔵タンクを含め一般取扱所とするのでもなく、別に一般取扱所として規制するという答えです。
向きが変われば、別の施設として規制されるのですね。
一般取扱所になります。
作業の流れを、図で整理しておきましょう。
種類数量を変更するときの届出と明細書

答2 移動タンク貯蔵所構造設備明細書の危険物の欄の品名の項は、貯蔵する危険物の品名のみを記載するものである。なお、2以上の種類の危険物を貯蔵する場合は、備考欄に危険物の種類ごとに貯蔵する危険物の量およびタンク室を記載させること。
答3 既存の移動タンク貯蔵所において、許可されている危険物の種類又は数量を変更する場合の手続に関する質問であれば、消防法第11条の2に規定する届出を必要とする。
品名の項には品名だけを書き、種類ごとの量とタンク室は備考欄に回すという書き分けです。
様式の欄をどう埋めるかという細かい話ですが、複数品名を積む車では毎回問題になる箇所です。
申請書の書き方にも、決まりがあるのですね。
欄ごとの書き分けが示されています。
複数の品名を積む車は、記載の例を作っておきましょう。
ポンプ専用のガソリンエンジンは認められるか

海岸部等の高台にある危険物貯蔵タンク(指定数量未満)に灯油を注入する場合、自動車用バッテリーを動力源としたポンプでは注入が困難でした。
そこで積載車両の後部にガソリンエンジンを備え付け、これによりポンプを作動して注入したいという申し出です。
エンジンは車両の荷台にボルト固定し、エンジンの排気筒には火炎防止装置を取り付けるとされていました。
答 認めるべきではない。
照会側は、扱うのが灯油だから条文の適用がないという組み立てで臨みましたが、通りませんでした。
灯油を積む車であっても、ガソリンを燃料とするエンジンを荷台に載せること自体が別の危険を持ち込むという判断と読めます。
前の項目までが「さしつかえない」で並んでいるだけに、この短い否定が際立ちます。
火炎防止の装置を付ける案でも、認められなかったのですね。
持ち込む設備が新しい危険を作らないかを見られます。
設備を足す前に、相談してください。
よくある質問
まとめ
- 灯油専用の積載式移動タンク貯蔵所から、電動機および緊結金具付給油管により家庭用等の燃料タンクへ直接注油することはさしつかえないとされています
- タンクの固定方法は、直径14ミリメートル以上のU型ボルトで4か所以上をシャーシー、フレーム等へ固定するものとされています
- 安全装置のパッキンには、コルク又は合成ゴム(耐油性を有するものに限る)を使用してさしつかえないとされています
- 地下貯蔵タンクの注入口等に給油ホースを結合し、移動タンク貯蔵所のギヤーポンプで充填することはさしつかえないとされています
- 灯油以外では引火点40度以上の石油類が対象で、屋内タンクや屋外タンクについても同様です
- 充填をする場所は、地下タンク貯蔵所とは別に一般取扱所として規制されます
- 構造設備明細書の品名の項には品名のみを記載し、2以上の種類を貯蔵する場合は備考欄に種類ごとの量およびタンク室を記載させます
- ポンプ専用のガソリンエンジンを荷台に備え付けることは、火炎防止装置を取り付けても認めるべきではないとされています
灯油だから条文の適用がない、という理屈は通らないのですね。
すっきりしました。
持ち込む設備そのものが新しい危険を作らないかを見られます。
㈱防災屋でも計画段階からご相談を承っています。
参考・出典
- 移動タンク貯蔵所(灯油専用)について(昭和45年10月2日 消防予第198号 予防課長から愛知県総務部長あて回答)
- 移動タンク貯蔵所安全装置のパツキングの材質について(昭和46年1月5日 消防予第1号 予防課長から東京消防庁消防総監あて回答)
- 灯油を地下貯蔵タンクより移動貯蔵タンクに充填することの可否(昭和48年6月25日 消防予第98号 予防課長から北海道あて回答)
- 移動タンク貯蔵所の種類数量の変更について(昭和49年1月7日 消防危第10号 危険物規制課長から滋賀県あて回答)
- ポンプ専用のエンジンを備えた積載式移動タンク貯蔵所について(昭和51年10月23日 消防危第71号 危険物規制課長から宮城県あて回答)
- 移動タンク貯蔵所の設置許可申請に添付する図書について(昭和47年2月15日付け消防予第57号)
- 危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号ハ/消防法第11条の2
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




