夏場の長距離輸送で、渋滞や牽引車の故障により炎天下に長時間停車する。
タンクの中身が沸点を超えてしまう。この心配は現実の問題です。
冷やすための専用エンジンを積むという案は認められるのか。
回答は否定でしたが、代わりの措置が3つ示されました。
沸点が31.9度の危険物なんです。夏に止まると危ないので、冷却装置専用のエンジンを積みたいのですが。
エンジンは適当でないとされました。ただし回答はそこで終わらず、代わりに講ずべき措置をアからウまで挙げています。
別の話ですが、移動タンクから直接ポンプで水と混ぜる工程は認められますか。
それも否定されています。いったん固定のタンクに入れてから混ぜる形なら認められるので、順序が結論を分けます。
この記事の結論
- 冷却装置専用のエンジンを備えた移動タンク貯蔵所を認めることは適当でないとされています
- 代わりに、温度上昇に伴うタンク内圧の上昇に対して安全な圧力タンクとすることが示されました
- タンクの回りに断熱材を着装して低温を保持する保冷装置を設けることも示されています
- 貯蔵する危険物の量は、当該タンクの内容積の90パーセント以下の量とすることとされています
- 危険物の取扱い工程の一部に移動タンク貯蔵所が組み入れられる形態は、認めるべきでないとされています
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目次
冷却装置専用のエンジンは認められるか

交通渋滞その他牽引車のエンジントラブル等により、移動タンク貯蔵所を炎天下に長時間停車させなければならない事態が想定され、その際タンク室内の危険物の温度が沸点(31.9度)以上になる恐れがあるというものでした。
そこでフロン12を冷媒とし、各タンク室毎に設けた蛇管内を通じて冷却する装置の専用エンジンを積載したいという申し出です。
エンジンは牽引車にボルト固定し、排気筒には火炎防止装置を取り付けるとされていました。
答 認めることは適当でない。
照会側は、扱う危険物の性質から政令第27条第6項第4号ハの規定の適用はないと考えられること、冷媒のフロン12と危険物が混合しても爆発性・発火性等の化学反応はおこらず危険物自体を薄めるだけであることまで説明していました。
それでもエンジンを積むという形自体が退けられています。
前の記事で見たガソリンエンジンの否定と同じ結論です。
代わりに示された3つの措置

温度上昇という課題そのものへの手当てが3つ示されました。
なお、設問の移動タンク貯蔵所については、次により措置することが適当である。
ア 当該移動貯蔵タンクは、温度上昇に伴うタンク内圧の上昇に対して安全な圧力タンクとすること
イ 当該移動貯蔵タンクに保冷装置(タンクの回りに断熱材を着装することにより低温を保持する装置)を設けること
ウ 添付された資料から判断すれば、当該移動貯蔵タンクに貯蔵する危険物の量は当該タンクの内容積の90%以下の量とすること
ア 当該移動貯蔵タンクは、温度上昇に伴うタンク内圧の上昇に対して安全な圧力タンクとすること
イ 当該移動貯蔵タンクに保冷装置(タンクの回りに断熱材を着装することにより低温を保持する装置)を設けること
ウ 添付された資料から判断すれば、当該移動貯蔵タンクに貯蔵する危険物の量は当該タンクの内容積の90%以下の量とすること
内容積の90パーセント以下にします。
アは圧力が上がっても壊れないタンクにすること、イは温度が上がりにくくすること、ウは膨張しても逃げ場が残るように余裕を持たせることです。
冷やす装置を足すのではなく、温度が上がっても事故にならない構造にするという発想の転換が示されています。
地下タンクに入れてから混合する場合

いずれの行程も1日1回、午前9時より午後5時までで、作業行程終了後は軟水で配管・装置を洗滌するとされています。
3つの形態が示されました。
1 移動タンク貯蔵所からエチルアルコールを地下貯蔵タンクに貯蔵したのち、ポンプ設備を使用して配管中で水を混合する場合
ア ポンプ設備を一般取扱所として規制し、地下貯蔵タンクを政令第9条第20号に規定するタンクとして取り扱う
イ 地下貯蔵タンクを地下タンク貯蔵所として規制し、ポンプ設備はその附属設備として取り扱う
答 設問1について アによられたい。
ア ポンプ設備を一般取扱所として規制し、地下貯蔵タンクを政令第9条第20号に規定するタンクとして取り扱う
イ 地下貯蔵タンクを地下タンク貯蔵所として規制し、ポンプ設備はその附属設備として取り扱う
答 設問1について アによられたい。
地下貯蔵タンクを地下タンク貯蔵所として扱うのではなく、ポンプ設備を一般取扱所として規制したうえで、地下貯蔵タンクは政令第9条第20号のタンクとして取り扱うという整理です。
希釈という取扱い行為が中心にある設備なので、貯蔵ではなく取扱いの側から捉えるという考え方が読めます。
攪拌タンクはどのタンクに該当するか

なお、エチルアルコールと軟水を配管内で混合したのちの最初の受け入れタンク(攪拌タンク)は、危険物の規制に関する政令第9条第20号のタンクに該当するので念のため申し添える。
希釈した後の液も危険物であり、それを受けるタンクも製造所等に設けるタンクとして扱われます。
「最初の受け入れタンク」という限定が付いている点にも注意が要ります。
工程のどこまでが危険物施設として規制されるのかを見極める手がかりになる一文です。
移動タンクを混合工程に組み入れられるか

1つは予め水を入れてあるタンクに移動タンク貯蔵所からエチルアルコールを注入して混合する場合、もう1つは移動タンク貯蔵所および水タンクから同時にポンプ設備を使用して配管中において混合する場合です。
答 設問2及び3について
設問の形態のように、危険物の取扱い工程(混合・希釈)の一部に移動タンク貯蔵所が組み入れられ使用されることは、移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱い、とは解されないので、認めるべきでない。
設問の形態のように、危険物の取扱い工程(混合・希釈)の一部に移動タンク貯蔵所が組み入れられ使用されることは、移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱い、とは解されないので、認めるべきでない。
移動タンク貯蔵所が行える取扱いは、貯蔵に伴うものに限られるという整理です。
いったん固定のタンクに荷卸ししてから混合する設問1が認められ、移動タンクが工程の一部として動き続ける設問2と3が否定されました。
車を工程設備の一部として使わない、という線引きです。
よくある質問
Q. 冷媒と危険物が混ざっても危険はないと説明したのに認められないのですか?
照会では、冷媒のフロン12と危険物とが混合した場合でも爆発性・発火性等の化学反応はおこらず、危険物自体を薄めるだけであると説明されていました。それでも回答は「認めることは適当でない」としています。冷媒の性質ではなく、エンジンを積むという形自体が問題とされたと読めます。
Q. 保冷装置とはどのようなものですか?
回答の括弧書きで、タンクの回りに断熱材を着装することにより低温を保持する装置と定義されています。冷やす装置ではなく、温度が上がりにくくする装置です。
Q. なぜ内容積の90パーセント以下なのですか?
回答は「添付された資料から判断すれば」という前置きのうえでこの数値を示しています。温度が上がれば液が膨張するため、その逃げ場となる空間を確保する趣旨と読めます。アの圧力タンクとイの保冷装置とあわせて3つで一組の措置です。
Q. 移動タンクから直接混合する形はなぜ認められないのですか?
回答は、危険物の取扱い工程(混合・希釈)の一部に移動タンク貯蔵所が組み入れられ使用されることは、移動タンク貯蔵所の貯蔵に伴う取扱いとは解されないとしています。移動タンク貯蔵所が行える取扱いの範囲は、貯蔵に伴うものに限られるという整理です。
まとめ
- 冷却装置専用のエンジンを備えた移動タンク貯蔵所を認めることは適当でないとされています
- 代わりの措置として、温度上昇に伴うタンク内圧の上昇に対して安全な圧力タンクとすることが示されました
- タンクの回りに断熱材を着装することにより低温を保持する保冷装置を設けることも示されています
- 貯蔵する危険物の量は、当該タンクの内容積の90パーセント以下の量とすることとされています
- 冷やす装置を足すのではなく、温度が上がっても事故にならない構造にするという方向が示された形です
- 移動タンク貯蔵所から地下貯蔵タンクに貯蔵したのち配管中で水を混合する場合は、ポンプ設備を一般取扱所として規制し、地下貯蔵タンクを政令第9条第20号のタンクとして取り扱います
- 混合したのちの最初の受け入れタンク(攪拌タンク)も、同じく政令第9条第20号のタンクに該当します
- 危険物の取扱い工程の一部に移動タンク貯蔵所が組み入れられ使用されることは、貯蔵に伴う取扱いとは解されず認めるべきでないとされています
冷やす装置を足すんじゃなく、上がっても平気な構造にする。発想が違いますね。
装置を足す案が通らないときは、構造で解けないかを考えます。㈱防災屋でも代替案の組み立てからご相談を承っています。
参考・出典
- 冷却装置専用のエンジンを備えた移動タンク貯蔵所について(昭和56年5月27日 消防危第64号 消防庁危険物規制課長から熊本県あて回答)〔昭和56年11月17日 消防危第152号「10」〕
- 危険物施設の設置許可に関する運用上の疑義について(昭和56年7月3日 消防危第83号 危険物規制課長から大阪府あて回答)〔昭和56年11月17日 消防危第152号「15」〕
- 危険物の規制に関する政令第9条第20号・第27条第6項第4号イ・ハ
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




