ガソリンを容器に詰め替えて販売する場面では、購入者の本人確認や使用目的の確認が消防法令ですでに義務づけられています。
しかし令和3年12月に大阪市北区で発生した多数の死傷者を伴うビル火災を踏まえ、この本人確認等の運用をあらためて徹底するよう求める通知が出されました。
併せて、購入者の言動に不審な点を感じたときの110番通報要領も、新たに整備されています。
通知が求める運用のポイントと、現場で見落としやすい点を整理します。
最近、うちのスタンドでも携行缶にガソリンを入れてほしいというお客さんが増えた気がするんですが、本人確認って今でも必要なんでしょうか。
必要です。本人確認・使用目的の確認・記録の作成は、すでに義務になっています。
令和4年には、この運用の徹底に加えて不審者への通報要領も新たに整備されました。
なぜ今になって、あらためて通知が出たんですか。
令和3年12月の大阪市北区のビル火災を受けて、110番通報要領が新たに整備されたからです。
その内容を順番に見ていきましょう。
- ガソリンを容器に詰め替えて販売するときの本人確認・使用目的の確認・記録の作成は、すでに規則で義務化されています(危険物の規制に関する規則第39条の3の2)
- 令和3年12月の大阪市北区ビル火災を踏まえ、令和4年7月に本人確認等の運用を再徹底する通知が出されました
- 対象は容器へのガソリン詰め替え販売を行うすべての給油取扱所で、セルフスタンドに限りません
- 購入者の言動に不審な点を感じたときは、110番通報要領に沿って警察へ通報します
- 消防隊による見回りや立入検査の機会にも、本人確認等の運用が確認されるようになります
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目次
ガソリンの容器詰替えで本人確認はなぜ改めて求められたのか

それでも令和4年に、あらためて「徹底」を求める通知が出されています。
令和3年12月17日、大阪市北区のビルで放火とされる火災が発生し、多数の死傷者が出ました。
この火災を受けて総務省消防庁と国土交通省は検討会を設け、今後の防火・避難対策を検討しました。
検討の対象にはガソリンの販売も含まれ、本人確認等の適正な運用と不審な購入者への通報要領の周知が課題として挙げられました。
その結果としてまとめられたのが、令和4年7月11日付けの消防危第158号です。
うちは何十年もこの業務をやってますけど、そんな大きな事件があったなんて知りませんでした。
大阪市北区のビル火災をきっかけに、ガソリン販売の窓口にも目が向けられるようになったんです。
次は、この通知が具体的に誰を対象にしているかを見ていきましょう。
本人確認の再徹底はどの事業者が対象になるのか

まず、義務の根拠になっている条文を確認しましょう。
根拠となる危険物の規制に関する規則第39条の3の2は、顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所(セルフスタンド)に限定していません。
フルサービスの給油取扱所でも、店員がガソリンを携行缶に詰め替えて販売すれば、同じ義務がかかります。
今回の消防危第158号は、この既存の義務を新設したものではなく、運用を改めて徹底するよう求めるものである点を押さえておきましょう。
つまり「新しい規制」ではなく「今ある義務の再確認」だと理解すれば、対応の的が絞れます。
うちはフルサービスの店舗なので、セルフスタンドの話だと思って読み飛ばしてました。
この規則は給油形態を問わずかかります。
詰め替え販売がある店舗はすべて対象です。
通知は本人確認の運用に何を求めているのか

1つは現場での確認の徹底、もう1つは不審な購入者への対応です。
1つ目は、これまでも義務だった本人確認・使用目的の確認・販売記録の作成を、現場で確実に行うことです。
その運用は今後、消防隊による見回りや立入検査の機会にも確認対象になります。
2つ目は、購入者の言動に不審な点があったときの110番通報要領を、従業員に教育しておくことです。
この通報要領は警察庁生活安全局にも確認済みのもので、消防と警察の両方から後押しされた実務手順といえます。
立入検査で確認されるのは、書類の有無だけじゃないんですか。
書類の有無だけでなく、実際に確認をしているかという運用そのものが見られます。
従業員教育の記録も残しておくと安心です。
実務で見落としやすいのはどこか

この通知が新設した部分と、あくまで「助言」である位置づけを整理します。
不審な購入者を見かけたときの連絡先は警察の110番であり、消防への通報とは目的も窓口も異なります。
この違いを従業員が理解していないと、いざというときにどこへ連絡すればよいか迷ってしまいます。
また、この通知自体は消防組織法第37条に基づく「助言」として出されたものであり、新しい罰則を定めたものではありません。
とはいえ、根拠になっている本人確認等の義務自体は規則で定められているため、「助言だから対応は任意」と読み違えないようにしましょう。
119番と110番、とっさのときに混同しそうで心配です。
だからこそ、従業員教育の場でこの違いを明確に伝えておくことが大切です。
次は、明日からの具体的な手順を確認しましょう。
不審な言動があったとき従業員は何をすればよいか

この項目をそのまま従業員教育の資料に使うこともできます。
まず、これまでどおり本人確認・使用目的の確認・販売記録の作成を、形だけでなく確実に行います。
次に、通報要領の6項目(発生事案・発生時刻・発生場所・目撃内容・不審者の情報・通報者の情報)を、従業員が見返せる場所に掲示しておきます。
特に氏名や住所の確認を拒否された場合のような「不審に感じた点」の具体例は、判断に迷いやすいので繰り返し共有しておくとよいでしょう。
消防隊の立入検査でこの運用が確認されることも想定し、教育を行った記録を残しておきましょう。
通報要領を紙に貼っておくだけでも、スタッフの安心感が違いそうです。
そのとおりです。いざというときに迷わず通報できる準備が、今回の通知のねらいです。
よくある質問もまとめておきます。
よくある質問
まとめ
本人確認は今までどおりでよくて、通報要領を新しく共有すればいいんですね。
これでスタッフにも自信を持って説明できます。
確認の徹底と通報の準備、この2点を押さえれば実務は回ります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「ガソリンの容器詰替え時等における本人確認等の再徹底について」(通知)(令和4年7月11日 消防危第158号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第39条の3の2
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第27条第3項第1号
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※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





