高発泡の泡消火設備は、天井から一気に泡を満たす仕組みなので、止め方や漏れの扱いまで細かく決まりがあります。
駐車場に設ける水噴霧消火設備も、区画境界堤の単位や起動装置の連動先で判断に迷う場面があります。
昭和51年と昭和55年に消防庁がまとめた質疑応答は、こうした線引きを具体的に示しました。
この線引きを知っておくと、設計図面や点検報告書のどこを確認すればよいかがはっきりします。
泡消火設備の点検報告書に、停止装置や区画境界堤のことまで細かく書いてあって驚きました。
どこまでが決まりなのでしょうか。
泡消火設備や水噴霧消火設備は現場ごとに事情が違う部分が多いので、基準にも個別の判断が入るところがあります。
どこまでが現場の判断で、どこからが決まりなのか、境目がよく分かりません。
そこを昭和51年・55年の質疑応答が具体的に整理しています。
順番に見ていきましょう。
- 高発泡用泡放出口の泡停止装置は加圧送水装置の作動を停止する装置をいい、操作部は手動起動装置の操作部の直近に設けます
- 防護区画から外部に漏れる泡水溶液の量は、泡の種別や開口部の位置・高さに応じて個別に流水速度を定めて計算することとされています
- 防護対象物が相互に隣接し延焼のおそれがある場合は、その範囲内を一の防護対象物として泡放出口を設けます
- 駐車場の区画境界堤は、必ずしも駐車する車両ごとに設ける必要はないとされています
- 駐車場の水噴霧消火設備の自動式起動装置は、自動火災報知設備に接続しないセンサーとの連動でも差し支えないとされています
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目次
高発泡の泡はどうやって止めればよいのか

この「止める」が何を指すのか、現場では判断に迷う場面があります。
水だけ流し続ける設備や、泡を区画外へ逃がす専用のダンパーを別に設ける必要はなく、規則第18条第4項第11号が求めているのは加圧送水装置そのものを止める操作だけです。
その操作部は手動で起動する装置の操作部の直近に設けるよう指導されており、火災時にひとつの場所で起動と停止の両方を扱えるようにする考え方です。
点検では停止用の操作部が起動用の操作部から離れて設置されていないかを確認してください。
離れて設置されている場合は、設計時の指導内容を確認したうえで改修を検討する材料になります。
水だけ出し続ける設備にする必要はないのですね。
操作部がどこにあるかを見ればよいと分かりました。
そのとおりです。
起動装置と停止装置が同じ場所にまとまっているか、点検のときに確認してみてください。
防護区画から漏れた泡水溶液はどう補うのか

この「漏れる量」をどう計算するかが実務の論点でした。
この規定は当時「第2項第3号イ」とされていましたが、現行の規則第18条第1項第3号イ(全域放出方式の高発泡用泡放出口)に位置が移っています。
示された算定式をそのまま使ってよいかという問いに対し、消防庁の回答は泡の種別・開口部の位置・高さ等の条件によって異なるため、防火対象物の実態に応じて開口部を通過する泡の流水速度を定めて計算するよう求めています。
つまり一律の係数で済ませず、現場ごとに条件を踏まえて計算する必要があるということです。
設計図書に漏れ量の算定根拠が示されているかを確認し、根拠が無ければ設計者に算定方法を確認してください。
計算式を一つ覚えれば済むと思っていました。
条件ごとに計算し直すのですね。
はい、そのとおりです。
設計図書に算定根拠が書かれているか、点検の前に確認しておくと安心です。
隣接する建物はどこまで一体として扱うのか

ただし建物同士が近いと、1棟ずつ分けて考えられない場合があります。
規則第18条第1項第3号ロ(イ)は、防護対象物が相互に隣接し延焼のおそれがある場合、その範囲内の防護対象物を一の防護対象物として泡放出口を設けることとしています。
この「延焼のおそれのある場合」は建築基準法第2条第6号の延焼のおそれのある部分と同じ意味で判断してよいという回答です。
隣接する建物が同一敷地内にあるか、道路や空地を挟んでいるかによって延焼のおそれのある部分の範囲は変わります。
敷地図で延焼のおそれのある部分の範囲を確認し、その範囲にかかる建物がまとめて1つの防護対象物として設計されているかを点検で確かめてください。
建築基準法の用語がこんなところにも出てくるのですね。
敷地図を見比べる必要がありそうです。
そのとおりです。
延焼のおそれのある部分の図面が手元にあるか、確認しておきましょう。
駐車場の区画境界堤は車両ごとに設けるのか

この区画境界堤をどの単位で設けるかが疑問になりました。
規則第17条第5項第2号は、車両が駐車する場所に車路に接する部分を除き高さ10センチメートル以上の区画境界堤を設けることとしていますが、この「場所」は複数の車両をまとめて囲む単位でも差し支えないという回答です。
放射区域の単位についても同じ質疑で、車両1台ごとに分ける必要はないと整理されています。
駐車マスの数だけ細かく堤を立てる必要はなく、建物の構造や駐車レイアウトに応じてまとめて区画できます。
図面で区画境界堤の範囲と駐車マスの対応を確認し、想定より細かく、あるいは粗く区切られていないかを見ておいてください。
車1台ずつ堤で囲むものだと思っていました。
まとめて区画できるのですね。
はい、そのとおりです。
駐車マスと堤の対応を図面で見比べておくと点検がしやすくなります。
駐車場の起動装置は自火報と連動しなくてよいのか

では駐車場に設ける場合も同じ連動先が必須なのでしょうか。
指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う場所の水噴霧消火設備には規則第16条第3項第3号ホが自動火災報知設備等との連動を求めていますが、道路・駐車の用に供される部分を定めた規則第17条第6項はこの号を準用する規定から除いています。
そのため駐車場の水噴霧消火設備では、自動火災報知設備に接続しないセンサーの作動と連動して加圧送水装置や一斉開放弁を起動する設備でも差し支えないとされています。
同じ水噴霧消火設備でも、設置される部分によって起動装置に求められる連動先が異なるということです。
点検では起動用のセンサーがどの系統に接続されているかを設計図書で確認し、指定可燃物を扱う部分と駐車場の部分とで基準を混同しないようにしてください。
水噴霧消火設備ならどこでも同じ決まりだと思っていました。
置かれる部分で基準が変わるのですね。
そのとおりです。
センサーの接続先を設計図書で確認しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
同じ水噴霧消火設備でも、置かれる場所によって基準が変わることが分かって安心しました。
迷ったときは事前の相談が近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第6号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第16条第3項・第17条第5項・第6項・第18条第1項・第4項
- 水噴霧消火設備等に関する疑義について(昭和51年2月10日消防安第21号)
- 駐車の用に供する部分の水噴霧消火設備に関する疑義について(昭和55年3月12日消防予第37号〔4〕)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





