BLOG

駐車場の泡消火設備の放射量はなぜ試験で決められるようになったのか|PFOS等の規制を受けた規則改正と告示の試験条件を解説

駐車場の泡消火設備の放射量はなぜ試験で決められるのかを解説する記事のアイキャッチ画像。天井にフォームヘッドが並ぶ地下駐車場の写真

駐車場の泡消火設備の放射量は、消防法施行規則第18条で、泡消火薬剤の種別ごとに床面積1平方メートル当たりの数量が定められています。
令和8年3月6日、この規則に、性能を試験で確かめた設備なら別の割合でよいとするただし書が加わりました。
背景には、PFOS等を含む泡消火薬剤への規制があり、消防庁は次長通知(消防予第59号)で改正の内容を示しています。
この記事では、改正の理由と告示第2号の試験条件、そして実務で確認する点を整理します。

泡消火設備の放射量が、試験で決められるようになったと聞きました。

性能を確かめた設備に限って、告示で定める割合が使えるようになりました。
まずは、改正のきっかけから見ていきましょう。

うちの駐車場の設備にも関係があるのでしょうか。

関係するかどうかは、設備の種類と設置場所で決まります。
その前に、なぜ改正されたのかを確認します。

この記事の結論
  • 消防予第59号は、駐車の用に供される部分の泡消火設備を、性能に応じた放射量にできるようにした規則改正の公布通知です。
  • 背景は、PFOS等を含む水成膜泡消火薬剤の主な設置先が駐車場で、他の薬剤への切り替えが必要になったことです。
  • 告示第2号は、鋼板製の火皿に水と燃料を入れた模型を、放射開始から1分30秒以内に消火する性能を求めています。
  • 放射量の下限値は床面積1平方メートル当たり3.7リットル毎分以上に限られ、試験と同一の泡水溶液を放射する場合だけ使えます。
  • 改正は公布の日から施行され経過措置はないため、まず泡消火薬剤の種別と設計放射量を設置図書で確認します。

▼

火災模型を用いた試験で性能を確かめ、試験と同じ泡水溶液を使い、図書と点検票の様式を改めて確認するという泡消火設備の放射量の決まり方を示した図解

駐車場の泡消火設備はなぜ放射量の基準が改められたのか

天井にフォームヘッドが並ぶ立体駐車場の断面と、右側に三つの薬剤ドラム缶と小さな緑の観葉植物が並ぶイラスト
通知は、改正の理由を「改正概要」に書いています。
まず、その原文を確認します。
(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 令和8年3月6日消防予第59号 消防庁次長)駐車場に設置される泡消火設備は、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(略)において製造及び輸入を原則禁止にする等の規制が課されているPFOS等を含有する泡消火薬剤(水成膜泡消火薬剤)の主な設置先となっており、必要な消火性能を確保しつつ、PFOS等を含有しない他の泡消火薬剤への切り替えを行っていく必要がある。
(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 令和8年3月6日消防予第59号 消防庁次長)本改正においては、「環境に配慮した消火設備の設置基準に関する検討結果報告書」(令和7年5月)を踏まえ、駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものとして、一定の性能を有するものにあっては、性能に応じた放射量とすることができるようにするため、消防法施行規則(略)について所要の規定の整備を行うとともに、その細目を新たに消防庁告示で規定することとする。
改正のきっかけは、PFOS等を含む泡消火薬剤の規制です。
通知によると、駐車場の泡消火設備は、PFOS等を含有する水成膜泡消火薬剤の主な設置先になっています。
この薬剤には、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律で、製造及び輸入を原則禁止にする等の規制が課されています。
そこで、必要な消火性能を確保しつつ、PFOS等を含まない他の薬剤へ切り替えていく必要があるとされました。
改正は、令和7年5月の検討結果報告書を踏まえたものだと、通知に書かれています。

薬剤を替えるだけでは、消火性能が落ちないか心配です。

通知は、必要な消火性能を確保しながら切り替えるとしています。
次は、対象になる設備を確認します。

どの泡消火設備が新しい放射量の対象になるのか

二列に停められた自動車と、その間を通る広い車路があり、駐車区画と車路の天井に丸いフォームヘッドが並ぶ駐車階のイラスト
新しい放射量の考え方には、対象の限定があります。
規則の条文で、どの部分が対象かを確認します。
消防法施行規則第十八条第一項第二号ハ フォームヘッドの放射量は、(略)泡水溶液を放射することができるように設けること。ただし、駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものとして消防庁長官が定める性能を有するものについては、当該泡消火設備に設けるフォームヘッドの同表中欄に掲げる泡消火薬剤に係る放射量を、同表下欄に掲げる数量の割合で計算した量によらず、消防庁長官が定める数量の割合で計算した量を放射することができるように設けることをもつて足りる。
(消防法施行規則の一部を改正する省令等の運用について 令和8年3月6日消防予第83号 消防庁予防課長)消防法施行令(略)第13条及び規則第18条に規定する「駐車の用に供される部分」には、主として自動車を駐車する部分のほか、駐車場内の車路も含まれるものであること。
新しい割合が使えるのは、駐車の用に供される部分の泡消火設備です。
条文のただし書は、駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備を対象として書かれています。
この部分には、駐車する場所のほか、駐車場内の車路も含まれると、消防予第83号は述べています。
条文の表が定める従来の割合は、床面積1平方メートル当たりで、たん白泡消火薬剤が6.5、合成界面活性剤泡消火薬剤が8.0、水成膜泡消火薬剤が3.7リットル毎分です。
道路の用に供される部分や自動車の修理若しくは整備の用に供される部分は、ただし書に挙げられていないため、表の割合が適用される部分です。

うちは、駐車場の車路にも泡のヘッドがあります。

車路も駐車の用に供される部分に含まれます。
ただし、性能を確かめた設備に限る点が次の焦点です。

告示第2号は試験で何を求めているのか

鋼板の浅い長方形の火皿が床に置かれて小さな炎が上がり、その真上の枠に取り付けたフォームヘッドから白い泡が出て、右に大きなストップウォッチが立つ試験装置のイラスト
告示第2号は、性能を確かめる試験の方法を定めています。
試験は、ヘッド・泡放射・火災模型・消火の4つの条件で組み立てられています。
(駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものの性能等を定める件 令和8年消防庁告示第2号)規則第十八条第一項第二号ハただし書の消防庁長官が定める性能は、次の第一号から第三号までに掲げる試験方法により第四号の基準に適合する性能とする。
(駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものの性能等を定める件 令和8年消防庁告示第2号)三 火災模型 別図第一に示すように配置した縦一・〇メートル、横二・〇メートル、深さ〇・二メートルの長方形の鋼板製燃焼火皿に水を六十リットル入れ、その上に自動車用ガソリン又はノルマルヘプタンを六十リットル入れた火災模型とすること。
(駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものの性能等を定める件 令和8年消防庁告示第2号)四 消火 前号に示す模型に点火して予燃焼時間一分を経過した後、放射を開始して一分三十秒以内に消火すること。
試験は、設計の下限の条件で消火できるかを見るものです。
第一号は、フォームヘッドを別図第一の配置で、取付け高さの上限の高さに設置するとしています。
第二号は、泡水溶液の濃度を下限濃度、放射圧力を最低圧力(設計圧力の下限値)、放射量を設計上の下限値とするとしています。
火災模型は、縦1.0メートル・横2.0メートル・深さ0.2メートルの鋼板製燃焼火皿に、水60リットルと自動車用ガソリン又はノルマルヘプタン60リットルを入れたものです。
予燃焼1分ののち放射を開始し、1分30秒以内に消火できることが基準です。

設計の一番きびしい条件で試すのですね。

濃度も圧力も放射量も下限で試します。
その下限値が、次の割合に関わってきます。

試験と違う泡水溶液に替えても同じ放射量で済むのか

左に泡消火薬剤のタンクと混合装置と配管があり、右の小さな台の上に同じ形の透明なビーカーが二つ並ぶイラスト
放射量の割合には、試験と結びついた条件があります。
告示第2号の第三を確認します。
(駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものの性能等を定める件 令和8年消防庁告示第2号)第三 放射する泡水溶液の数量の割合 規則第十八条第一項第二号ハただし書の消防庁長官が定める数量の割合は、第二に定める試験方法により必要とされる消火性能を有することが確認された泡消火設備の設計上の泡水溶液の一平方メートル当たりの放射量の下限値以上とすること(第二に定める試験方法により当該泡消火設備が必要とされる消火性能を有することを確認した試験において使用した泡水溶液と同一のものを放射する場合に限る。)。
(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 令和8年3月6日消防予第59号 消防庁次長)動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令(略)において、内燃機関を原動力に用いるものに加えて、電動機(モーター)を原動力に用いるもの(内燃機関及び電動機を併せて用いるものを含む。)が規定されたことを踏まえ、動力消防ポンプ設備の点検の基準及び点検票について規定の整備を行う。
この割合の特例は、試験で使った泡水溶液と同一のものを放射する場合に限られます。
告示第2号の第三は、放射する割合を、試験で消火性能が確認された設備の設計上の放射量の下限値以上と定めています。
その下限値は、床面積1平方メートル当たり3.7リットル毎分以上に限られ、これは条文の表にある水成膜泡消火薬剤の数値と同じです。
別の泡水溶液に替える場合の扱いまでは、通知や告示から読み取れないため、所轄消防署に確認します。
同じ通知では、動力消防ポンプ設備の点検の基準も改められ、電動機について確認する項目が新設されています。

泡の設備だけ見ておけばよいのでしょうか。

同じ通知で、動力消防ポンプ設備の点検の基準も改められています。
最後に、確認することを整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

空のチェック欄が付いたクリップボードと、中央に積まれた青い報告書のバインダーと、右に制御盤の付いた床置きのポンプ装置が並ぶイラスト
通知が示しているのは、規則と告示の改正の内容です。
建物の関係者は、自分の設備の条件を確かめることから始めます。
(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 令和8年3月6日消防予第59号 消防庁次長)消防用設備等試験結果報告書の様式を定める件(略)に定める泡消火設備及び特定駐車場用泡消火設備の試験結果報告書の様式について規定の整備を行う。
(消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について 令和8年3月6日消防予第59号 消防庁次長)公布の日から施行することとしたこと(略)。
まず、自分の駐車場の泡消火設備が対象かどうかを確かめます。
設置図書で、駐車の用に供される部分に設けた設備か、使っている泡消火薬剤の種別と設計放射量は何かを見ます。
新しい割合を使う設備なら、告示第2号の試験で消火性能が確認されているか、試験と同じ泡水溶液かを確かめます。
点検票と試験結果報告書は、泡消火設備と特定駐車場用泡消火設備の様式が改められたため、新しい様式を使っているかを業者に確かめます。
改正は公布の日から施行され、経過措置はありません。判断に迷うときは、所轄消防署に確認します。

まず設置図書で薬剤の種別を見ておきます。

種別と設計放射量が分かれば、話が早くなります。
試験との関係は、業者にも確かめておきましょう。

よくある質問

Q駐車場の泡消火設備は、すべて新しい放射量に変えなければならないのですか?
Aただし書は、性能を有するものについて告示で定める割合で足りるとする規定です。変更を義務づける記載は、通知にも条文にもありません。
Q道路の用に供される部分や修理整備の部分にも使えますか?
Aただし書は、駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備について定めています。それ以外の部分の扱いは、所轄消防署に確認してください。
Q放射量の下限値は、いくつまで下げられますか?
A告示は、下限値を床面積1平方メートル当たり3.7リットル毎分以上に限ると定めています。実際の設計値は、試験で消火性能が確認された設備ごとの値になります。
Q性能は、どうやって確認するのですか?
A消防予第83号は、事業者による自社試験結果のほか、第三者機関が行う認証により確認することが想定されるとしています。

まとめ

✔消防予第59号は、駐車場の泡消火設備の放射量の考え方を改めた規則改正の公布通知
✔背景は、PFOS等を含む水成膜泡消火薬剤から他の薬剤への切り替え
✔対象は、駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備(車路を含む)
✔試験は、火皿の模型火災を放射開始から1分30秒以内に消火
✔放射量の下限値は3.7リットル毎分以上で、試験と同一の泡水溶液に限る
✔公布の日から施行で、経過措置はなし
✔まずは薬剤の種別と設計放射量を設置図書で確認する

まずは薬剤の種別を確認します!

駐車場の消防用設備は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について(令和8年3月6日 消防予第59号 消防庁次長)
  • 消防法施行規則の一部を改正する省令等の運用について(通知)(令和8年3月6日 消防予第83号 消防庁予防課長)
  • 駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち、当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものの性能等を定める件(令和8年消防庁告示第2号)
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第1項第2号ハ

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
駐車場の泡消火設備の放射量はなぜ試験で決められるのかを解説する記事のアイキャッチ画像。天井にフォームヘッドが並ぶ地下駐車場の写真
駐車場の泡消火設備の放射量は、消防法施行規則第18条で、泡消火薬剤の種別ごとに床面積1平方メートル当たりの数量が定められています。 令和8年3月6日、この規則に、性能を試験で確かめた設備なら別の割合でよいとするただし書が...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →