防火地域や準防火地域内にある建築物の屋根には、飛び火による火災の発生を防ぐための性能が建築基準法第62条によって義務づけられています。
古くからある建物の中には、建てた当時は適法でも、区域の指定や基準の見直しによってこの規定に適合しなくなったものが少なくありません。
こうした「既存不適格建築物」が増築や改築をしようとすると、原則としては屋根も含めて建物全体を現行基準に合わせる必要が生じます。
けれども一定の要件を満たせば、建築基準法施行令第137条の11の2により、この負担が一部緩和されます。
うちの建物は防火地域にあって、屋根が今の基準には合っていないんです。
増築するなら、屋根も全部やり直さないといけませんか。
いいえ、要件を満たせば屋根全体まで直さなくても増築できます。
建築基準法施行令第137条の11の2という緩和の規定があるんです。
緩和があるんですね、少し安心しました。
どんな建物のどんな増築が対象になるんでしょうか。
対象になるのは、屋根の性能基準に適合していない建物の増築や改築です。
この記事で、対象と要件を順番に確認していきましょう。
- 屋根の性能基準に適合しない既存不適格建築物も、要件を満たせば増築や改築ができます(建築基準法第86条の7第1項)。
- 対象となるのは、法第3条第2項により現行の第62条の規定の適用を受けない建築物です(施行令第137条の11の2)。
- 木造建築物は、外壁及び軒裏が防火構造のものに限って対象になります。
- 増改築に係る部分の床面積の合計は、50平方メートルを超えず、かつ基準時の延べ面積を超えないことが必要です。
- 同一敷地内に増改築する建築物が複数あるときは、それぞれの床面積を合算して判定します。
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目次
なぜ防火地域や準防火地域の屋根には基準が求められるのか

建築基準法第62条は、この区域内の建物の屋根に、飛び火による火災の発生を防止する性能を求めています。
区域の指定や第62条の技術的基準そのものが見直されると、建てたときは適合していた屋根が、その後の基準に適合しなくなることがあります。
これが建築基準法第3条第2項が定める「既存不適格建築物」で、違反建築物ではなく、そのまま使い続けること自体は認められています。
問題になるのは増築や改築をするときで、原則としては工事にあわせて屋根も含む建物全体を現行の第62条の基準に適合させなければなりません。
この負担を一定の範囲で軽くするのが、建築基準法第86条の7と施行令第137条の11の2の緩和規定です。
区域の指定や基準の見直しで、古い屋根が合わなくなることがあるんですね。
自分の建物がそうなのか、どうやって分かりますか。
建築確認を取った当時の図面と、今の第62条の基準を照らし合わせれば分かります。
迷ったら特定行政庁や設計士に確認するのが確実です。
どんな建物のどんな増築が緩和の対象になるのか

対象になる建物と工事の範囲は、法律と政令の両方で決められています。
建築基準法第86条の7第1項は、第3条第2項により第62条など複数の規定の適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合に、その規定を適用しないと定めています。
このうち屋根に関する増築・改築の範囲を具体的に定めているのが、次の章で見る施行令第137条の11の2です。
この条項には木造建築物に関する限定があり、外壁及び軒裏が防火構造のものに限って対象になります。防火構造を持たない木造建築物は、この緩和の対象外です。
木造だとどれでも対象になるわけではないんですね。
具体的にはどんな要件を満たせばいいんでしょうか。
要件は床面積の上限と、他部分への影響の2点です。
次の章で順番に見ていきましょう。
緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

要件は床面積の上限に関するものと、他の部分への影響に関するものの2つです。
1つ目は、増築・改築に係る部分の対象床面積の合計が50平方メートルを超えず、かつ基準時における当該建築物の延べ面積の合計も超えないことです。
この床面積は工事の着手が基準時以後である増築・改築部分をすべて合計して判定し、同一敷地内に増改築する建築物が複数あるときは、それらの部分の床面積も合算します。
2つ目は、その増築・改築が、増改築部分以外の屋根における延焼の危険性を増大させないものであることです。
この2つをどちらも満たす部分だけが、現行の第62条の適用を受けずに増築・改築できます。
50平方メートルという決まった数字なんですね。
他の緩和規定でよく見る面積の割合とは違うんでしょうか。
はい、違います。
次の章でその違いと見落としやすい点を説明します。
実務で見落としやすいのはどこか

条項ごとに要件の作り方が異なるため、混同すると計画が狂うおそれがあります。
防火地域・準防火地域以外の屋根の緩和(施行令第137条の2の3)は、対象床面積の合計が基準時の延べ面積の20分の1を超えないかという割合で判定します。
これに対して防火地域・準防火地域の屋根関係(第137条の11の2)は、割合ではなく50平方メートルという決まった数値と、基準時の延べ面積そのものという2つの絶対値で判定します。
さらにこの規定には、同一敷地内に増改築する建築物が複数ある場合は床面積を合算するという定めがあり、建物が1棟だけの前提で試算すると数字を見誤ります。
「20分の1だから大丈夫」と他の137条系の感覚で判断すると、実際の上限を取り違えるおそれがあります。
割合ではなく決まった面積で判定するとは知りませんでした。
敷地内に建物が複数あるときは特に注意しないといけませんね。
はい、複数棟の合算は特に見落としやすい点です。
最後に実務での確認手順をまとめます。
増築や改築を計画するときは何を確認すればよいか

判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
- 自分の建物が防火地域・準防火地域内にあるかを確認する
- 自分の建物が法第3条第2項の適用を受ける既存不適格に当たるかを確認する
- 木造建築物の場合は、外壁及び軒裏が防火構造のものかどうかを確認する
- 同一敷地内に増改築する建築物が複数あるときは、それぞれの床面積を合算して試算する
- 合算した床面積が50平方メートルと基準時の延べ面積のどちらも超えないかを確認する
- その増築・改築が他の部分の屋根の延焼の危険性を増大させないかをあわせて確認する
設計が固まってから要件を満たさないと分かると、計画の手戻りが発生します。
床面積の合算を先に試算しておけば、無理な計画を避けられそうです。
次はよくある質問も見てみます。
はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。
よくある質問
まとめ
増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!
建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第62条・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の2の3・第137条の11の2
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





