客室と客室の間の壁が、天井のところで止まっていることがあります。
天井を外して見ると、部屋と部屋が天井裏でひとつながりになっていた、という話は珍しくありません。
建築基準法施行令は、この壁を防火上主要な間仕切壁と呼んで、小屋裏か天井裏まで達しさせることを求めています。
この記事では対象になる建物と壁の条件から明日確かめる場所までを整理します。
客室の壁が天井で終わっているのは問題だと言われました。
その壁は防火上主要な間仕切壁と呼ばれるものです。
建築基準法施行令が小屋裏か天井裏まで達しさせることを求めています。
天井の上のことなので普段はまったく見えていません。
見えないところだからこそ条文が位置まで決めています。
点検口から確かめられる場所なので順に見ていきましょう。
- 学校や病院やホテルなどの部屋を仕切る壁は小屋裏か天井裏まで達しさせます。(建築基準法施行令第114条第2項)
- 対象になる用途は学校・病院・診療所・児童福祉施設等・ホテル・旅館・下宿・寄宿舎・マーケットです。(同項)
- 壁そのものは準耐火構造にすることが求められます。(同項)
- 管が壁を貫くときは、すきまをモルタルその他の不燃材料で埋めなければなりません。(同条第5項・令第112条第20項)
- 自動スプリンクラー設備等設置部分と強化天井の階は、この立ち上げから除かれます。(令第112条第4項)
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目次
部屋を仕切る壁が天井裏まで求められるのはなぜか

ところが天井の上には配線や配管を通すための空間があり、そこが仕切られていなければ隣の部屋とつながったままになります。
条文が使っているのは達しさせるという言葉で、壁の材料だけでなくどこまで立ち上げるかまで指定しています。
天井までしかない壁は、天井の上の空間を通って隣へ回り込む道をそのまま残します。
仕切る目的で建てた壁が、天井裏では仕切りになっていないという状態が起こるわけです。
自分の建物で客室や病室の境の壁がどこまで立ち上がっているか、まずは点検口のある場所から確かめてください。
壁の材料の話だと思っていましたが高さの話でもあるのですね。
条文は構造と高さの両方を書いています。
どちらが欠けても求められた壁にはなりません。
どの建物のどの壁が対象になるのか

条文は用途を列挙していて、その用途に供する部分だけが対象になります。
令第114条第2項が挙げているのは学校・病院・診療所・児童福祉施設等・ホテル・旅館・下宿・寄宿舎・マーケットで、いずれもその用途に供する部分が対象です。
このうち児童福祉施設等は令第19条第1項に定義があり、老人福祉施設や有料老人ホームまで含む広い範囲になります。
診療所は患者の収容施設を有しないものが除かれているので、ベッドのない診療所は外れます。
自分の建物がどれに当たるかは登記の名称ではなく実際の使われ方で決まるので、テナントが入れ替わったときは見直してください。
共同住宅は挙げられていないのですね。
長屋と共同住宅は同じ条の第1項にある各戸の界壁で別に書かれています。
求められる立ち上げは同じ考え方です。
壁にはなにを満たすことが求められるのか

壁そのものの構造と、その壁をどこまで立ち上げるかという位置になります。
構造の側は法第2条第7号の2の準耐火構造で、大臣が定めた構造方法か大臣の認定を受けたものに限られます。
位置の側は小屋裏または天井裏に達しさせることで、屋根の下地まで届いていれば小屋裏、上階の床の下まで届いていれば天井裏に達したことになります。
さらに令第114条第5項は、給水管や配電管が貫通するときは令第112条第20項を、換気や暖房や冷房の風道が貫通するときは同条第21項を準用すると定めています。
つまり壁を立ち上げただけでは足りず、貫通部の処理まで終えて初めて求められた状態になります。
壁を立てたら終わりではなく穴の始末まで含むのですね。
管のすきまは不燃材料で埋めることと書かれています。
あとから配線を通したところが空いたままになりやすい箇所です。
実務で見落としやすいのはどこか

除かれる条件は令第114条第2項が引いている令第112条第4項に書かれています。
自動スプリンクラー設備等設置部分は、200平方メートルという区画の条件と自動式の消火設備の両方がそろって初めて当てはまります。
消防法の側でスプリンクラー設備を設けたからといって、建築基準法の側の立ち上げが自動的に不要になるわけではありません。
もうひとつの除かれ方が強化天井で、こちらは階の天井の全部が強化天井であるか、区画された部分の天井が強化天井であることが条件になっています。
そして見落としが最も多いのがあとから開けた穴で、通信線の増設や空調の入れ替えで貫通させたところが埋め戻されていない例が目立ちます。
スプリンクラーを入れたから大丈夫だと思い込むところでした。
条文は区画とセットで書いています。
設備だけを見て判断しないでください。
明日からなにを確認すればよいのか

建物の所有者や管理者には、定期に調査させて特定行政庁へ報告する義務が置かれている場合があります。
まず確認申請の図面で、どの壁が防火上主要な間仕切壁として描かれているかを拾い出してください。
つぎに天井点検口のある部屋で、その壁が天井の上まで続いているか、管の周りにすきまが残っていないかを見ます。
内装工事や間取りの変更で壁を抜いた履歴があれば、そのときの図面と現在の壁の位置がずれていないかを建築士に確認してもらいましょう。
建築基準法第12条第1項の報告の対象になっている建物なら、その定期の調査の機会にあわせて見てもらうのが現実的です。
点検口のある部屋から順に見ていけばよいのですね。
写真を撮って日付とともに残しておくと次の調査が早く進みます。
直した記録も同じ場所にまとめてください。
よくある質問
まとめ
今週の点検で天井裏を見てもらうよう手配します。
図面を用意しておくと現場での確認が早く終わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第7号の2・第12条第1項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第19条第1項・第112条第4項・第20項・第21項・第114条第1項・第2項・第5項
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





