BLOG

増築する部分だけ防火区画の基準を満たせばよいのはなぜか|建築基準法施行令第137条の6の4が定める緩和の範囲を解説

増築部分に足場が組まれた建物の外観

建物を増築するとき、既存部分まで最新の防火区画の基準に合わせなければならないと思っていませんか。
建築基準法施行令第137条の6の4は、増築や改築をする部分だけが一定の要件を満たせば、既存部分の防火区画をやり直さなくてよいという緩和を定めています。
ただし、この緩和はどんな増築でも使える単純な話ではなく、区画の方法や床面積の割合など、いくつかの条件が付いています。
この記事では、緩和の対象・要件・見落としやすい点までを条文に沿って解説します。

今度、建物の一部を増築する予定です。
既存の部分まで今の基準で防火区画をやり直さないといけないんでしょうか。

増築する部分だけが一定の要件を満たせば、既存部分の防火区画までやり直す必要はありません。
建築基準法施行令第137条の6の4という緩和の規定があります。

それは助かります。
でも、どんな増築でも使える緩和なんでしょうか。

いいえ、区画の方法や増築部分の床面積の割合など、いくつかの条件を満たす必要があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 増築や改築をする部分だけが要件を満たせば、既存部分の防火区画をやり直す必要はありません(建築基準法施行令第137条の6の4)。
  • 対象となる技術的基準は施行令第112条(防火区画)と第114条(界壁及び間仕切壁)です。
  • 緩和を受けるには、増築部分を火熱遮断壁等で区画するか、増築部分の床面積を基準時における延べ面積の20分の1以内に収める必要があります。
  • 施行令第112条第11項から第13項までの竪穴区画の基準の一部は、そもそもこの緩和の対象から除かれています。
  • 竪穴区画の特定の基準に適合しない建物は、床面積の割合による要件しか使えません。

▼

増築した部分だけ防火区画の基準を満たせばよい仕組みを示す図解

増築する部分だけ基準を満たせばよいのはなぜ許されるのか

既存部分と増築部分に分かれた建物のイラスト
既存不適格建築物が増築や改築をするとき、建物全体を現行基準に合わせ直すのは負担が大きすぎます。
そこで建築基準法は、増築する部分だけを対象にした緩和の仕組みを用意しています。
建築基準法第八十六条の七第一項(抜粋) 第三条第二項の規定により(略)第三十六条(同条の防火壁及び防火区画の設置及び構造に関する技術的基準のうち政令で定めるもの(次項において「防火壁等に関する技術的基準」という。)に係る部分に限る。)(略)の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合においては、第三条第三項の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。
増築する部分だけの話で完結します。
既存不適格建築物であっても、増築や改築をきっかけに建物全体を現行基準へ合わせ直す必要はなく、増築する部分について一定の要件を満たせば足ります。
これは建築基準法第86条の7が定める緩和の考え方で、防火区画に限らず採光や構造強度など複数の規定に共通する枠組みです。
今回はそのうち、防火壁・防火区画に関する技術的基準(第36条)の部分を見ていきます。

増築する部分だけでいいんですね。
それなら現実的です。

はい、ただし条件を満たさないと使えない緩和です。
次に対象と要件を見ていきましょう。

どんな増築や改築がこの緩和の対象になるのか

単純な建物と別棟が付いた建物を比較するイラスト
緩和の対象になる技術的基準と、建物の区分をまず確認しておきましょう。
区分によって、次の章で説明する要件の組み合わせが変わります。
建築基準法施行令第百三十七条の六の四第一項(抜粋) 法第八十六条の七第一項の政令で定める防火壁及び防火区画の設置及び構造に関する技術的基準は、第百十二条及び第百十四条に規定する技術的基準(第百十二条第十一項から第十三項までに規定する竪穴部分の技術的基準のうち、当該竪穴部分が第百二十条又は第百二十一条の規定による直通階段に該当する場合に適用されることとなるものを除く。)とする。 同条第二項(柱書・抜粋) 法第三条第二項の規定により法第三十六条の規定の適用を受けない建築物についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、増築及び改築については、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める要件に該当する増築又は改築に係る部分とする。
基準になるのは2つの条文です。
施行令第112条(防火区画)と第114条(界壁及び間仕切壁)の技術的基準が対象になりますが、竪穴区画のうち直通階段に関わる一部の基準はあらかじめ除かれています。
そのうえで、緩和を受けられる建物は2つの区分に分かれ、区分に応じて満たすべき要件が変わります。
自分の建物がどちらの区分に当たるかを、まず確認する必要があります。

うちは竪穴区画にも関係する建物なんですが。
要件は変わるんでしょうか。

竪穴区画の基準に適合しているかどうかで、使える要件の組み合わせが変わります。
次の章で詳しく説明します。

緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

建物の間に立つ防火壁と床面積の割合を示すゲージのイラスト
前号に掲げる建物以外の一般的な建物であれば、次の2つのルートのいずれかで緩和を受けられます。
どちらのルートを選ぶかは、増築の規模や設計の方針で決めることになります。
建築基準法施行令第百三十七条の六の四第二項第一号(抜粋) 次号に掲げる建築物以外の建築物 次のイ又はロのいずれかに該当するものであること。イ 増築又は改築に係る部分が火熱遮断壁等で区画されるものであり、かつ、前項に規定する技術的基準に相当する建築物の部分に関する基準として国土交通大臣が定めるものに適合するものであること。ロ 増築又は改築に係る部分の対象床面積の合計が基準時における延べ面積の二十分の一を超えず、かつ、当該増築又は改築が当該増築又は改築に係る部分以外の部分における延焼の危険性を増大させないものであること。
要件は大きく2つのルートに分かれます。
1つは、増築する部分を火熱遮断壁等で区画し、国土交通大臣が定める基準にも適合させるルートです。
もう1つは、増築する部分の床面積の合計を基準時における延べ面積の20分の1以内に収め、かつ延焼の危険性を増大させないルートです。
一般的な建物であれば、このどちらかを選んで満たせば緩和を受けられます。

床面積を抑えれば壁を作らなくてもいいんですね。
うちの増築ならそちらの方が現実的かもしれません。

延べ面積の20分の1という上限があるので、事前に基準時の延べ面積を確認しておくと話が早いです。
次は見落としやすい落とし穴を紹介します。

実務で見落としやすいのはどこか

竪穴部分の螺旋階段に付いた禁止マークのイラスト
前の章で見た2つのルートには、竪穴区画に関わる建物だけの落とし穴があります。
条文の号2が定める例外を見落とすと、選べるはずのルートを誤解してしまいます。
建築基準法施行令第百三十七条の六の四第二項第二号(抜粋) 第百十二条第十一項から第十三項までに規定する竪穴部分の技術的基準(特定竪穴基準を除く。)に適合しない建築物 前号ロに該当するものであること。
2つの見落としに注意してください。
1つ目は、施行令第112条第11項から第13項までが定める竪穴区画の基準のうち、直通階段に関わる部分はそもそもこの緩和の対象から除かれていることです。
2つ目は、この基準に適合しない建物は、火熱遮断壁等で区画するルートを選べず、床面積の割合によるルートしか選べないことです。
「壁で区画すれば済む」と思い込んで確認を省くと、この分岐を見落としがちです。

うちの建物、竪穴区画の基準に適合しているか正直分かりません。
どうやって確認すればいいんでしょうか。

設計図書や過去の検査記録を確認すれば分かりますが、判断に迷う場合は専門家に相談するのが確実です。
最後に実務での確認手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

確認事項のチェックリストとメジャーのイラスト
増築や改築を計画する際は、次の点を順番に確認してください。
判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
  • 増築・改築する部分の範囲と、既存部分との境界を明確にする
  • 建物の竪穴部分が竪穴区画の基準に適合しているかを設計図書で確認する
  • 火熱遮断壁等で区画するルートと、床面積の割合で収めるルートのどちらを使うか決める
  • 床面積のルートを使う場合は、基準時における延べ面積を正確に算定する
  • 判断に迷う場合は、特定行政庁または建築士に事前に相談する
計画の早い段階で確認しておくことが大切です。
増築の設計が固まってから条件を満たさないと分かると、設計変更の手戻りが発生します。

手順が分かれば、うちの増築でもどちらのルートを選べばいいか判断できそうです。
ありがとうございます。

計画の早い段階で確認しておけば、設計変更の手戻りも防げます。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q増築する部分の床面積が20分の1を超えたらどうなりますか?
A床面積のルートは使えなくなります。この場合は、増築する部分を火熱遮断壁等で区画し、国土交通大臣が定める基準にも適合させるルートを検討することになります。
Q火熱遮断壁等とはどんな壁のことですか?
A増築部分と既存部分を、火熱を有効に遮断できる構造で区画する壁や床のことです。具体的な仕様は国土交通大臣が定める基準に従う必要があります。
Qこの緩和は増築や改築以外にも使えますか?
A施行令第137条の6の4が定める範囲は増築及び改築に限られています。大規模の修繕や大規模の模様替については、施行令第137条の12など別の条文が範囲を定めています。
Q竪穴区画の基準に適合しているかどうかは誰が判断するのですか?
A最終的には特定行政庁の判断になりますが、設計段階では建築士が設計図書や検査記録をもとに確認します。判断に迷う場合は早めに相談することをおすすめします。

まとめ

✔増築や改築をする部分だけが要件を満たせば、既存部分の防火区画をやり直す必要はありません。
✔対象となる技術的基準は施行令第112条(防火区画)と第114条(界壁及び間仕切壁)です。
✔竪穴区画のうち直通階段に関わる一部の基準は、そもそもこの緩和の対象から除かれています。
✔緩和を受けるには、火熱遮断壁等で区画するルートか、床面積の割合で収めるルートのどちらかを満たす必要があります。
✔床面積のルートでは、増築部分の対象床面積の合計が基準時における延べ面積の20分の1を超えないことが条件です。
✔竪穴区画の基準に適合しない建物は、床面積の割合によるルートしか選べません。
✔判断に迷う場合は、早めに特定行政庁や建築士に相談することが大切です。

増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!

増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第36条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第112条・第114条・第137条の6の4

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
増築部分に足場が組まれた建物の外観
建物を増築するとき、既存部分まで最新の防火区画の基準に合わせなければならないと思っていませんか。 建築基準法施行令第137条の6の4は、増築や改築をする部分だけが一定の要件を満たせば、既存部分の防火区画をやり直さなくてよ...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →