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病院や学校を増築すると耐火建築物の基準は今のままでよいのか|建築基準法施行令第137条の4が定める緩和の範囲を解説

病院や学校を増築すると耐火建築物の基準は今のままでよいのかのアイキャッチ

古い病院や学校の建物を増築するとき、今の耐火建築物の基準をどこまで満たせばよいのか迷ったことはありませんか。
建築基準法が施行される前や、その後の改正前に建てられた建物は、現在の基準に合っていない部分があっても違反にはなりません。
ただし増築や改築をきっかけに、既存部分まで現在の基準に合わせなければならなくなる場合があります。
この記事では、既存の特殊建築物を増築するときに緩和される範囲と、実務での確認ポイントを解説します。

前に建てた病院の増築を考えているのですが、今の基準まで全部直す必要があるのか心配です。

増築や改築の範囲によっては、既存部分は今の基準まで合わせなくてよい緩和がありますよ。

それなら少し安心しました。
どんな条件なら緩和が使えるんでしょうか。

はい。
建築基準法第86条の7と施行令第137条の4に、その範囲が定められていますよ。

この記事の結論
  • 建築基準法第86条の7により、既存の建築物を増築・改築するとき、政令で定める範囲内であれば法第27条など一部の規定を適用しなくてよい緩和があります。
  • 耐火建築物等にしなければならない特殊建築物では、施行令第137条の4が緩和の範囲を具体的に定めています。
  • 緩和が使えるのは、増築・改築に係る部分を火熱遮断壁等で区画する場合か、対象床面積の合計が50平方メートル以下の場合のいずれかです。
  • 劇場の客席や病院の病室、学校の教室など主たる用途に供する部分の増築には、床面積による緩和は使えません。
  • 大規模の修繕や模様替については、施行令第137条の12第7項により、法第27条の適用上はすべて緩和の対象になります。

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増改築と既存不適格の緩和の手順を示す図解

病院や学校を増築すると既存部分も耐火建築物にしなければならないのか

耐火建築物の基準を満たす病院と工事中の増築部分のイラスト
特殊建築物には、火災のときに人が安全に避難できるよう、耐火建築物などにしなければならない用途があります。
古い建物を増築するときにも、この基準がそのまま及ぶのか気になるところです。
建築基準法第八十六条の七第一項(抜粋) 第三条第二項の規定により第二十条、第二十一条、(略)第二十七条、(略)の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合においては、第三条第三項の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。
増築や改築が一定の範囲内であれば、既存部分に耐火建築物化の義務は及びません。
この規定は建築基準法第86条の7第1項に定められており、法第27条など多数の規定が対象に含まれています。
建築確認を受けた当時は合法だった建物でも、その後の改正で今の基準に合わなくなったものを既存不適格建築物といいます。
既存不適格のままでは増築ができないと誤解されがちですが、範囲内であれば増築自体は可能です。
どこまでの範囲が緩和されるのかは、次の章で見ていきます。

うちの病院も古い建物なので、増築したら全部今の基準に直さないといけないと思っていました。

増築の範囲によっては、既存部分まで今の基準に合わせなくてよい場合がありますよ。

どんな用途のどんな増築が緩和の対象になるのか

法令集と建物のイラストで示す既存不適格の例外規定
緩和の範囲は、対象になる規定ごとに施行令で個別に定められています。
耐火建築物等にしなければならない特殊建築物の場合は、次の条文が対象になります。
建築基準法施行令第百三十七条の四(抜粋) 法第三条第二項の規定により法第二十七条の規定の適用を受けない特殊建築物についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、増築及び改築については、次の各号のいずれか(劇場の客席、病院の病室、学校の教室その他の当該特殊建築物の主たる用途に供する部分に係る増築にあつては、第一号)に該当する増築又は改築に係る部分とする。(略)
対象は法第27条の耐火建築物化義務を受けていない既存の特殊建築物です。
劇場・病院・旅館・学校など、施行令第137条の4が扱うのはこうした用途の建物です。
増築だけでなく改築(建て替えに近い工事)も対象に含まれます。
条文は「次の各号のいずれかに該当する部分」という言い方で、2つのルートを示しています。
どちらのルートに当たるかは、増築する部分の位置と広さで決まります。

うちは病院なので、この規定の対象になるということですね。

はい。
劇場や学校なども同じように法第27条の対象になる用途です。

増築する部分だけ基準を満たせばよいのはどんな場合か

火熱遮断壁等で区画された建物と小さな増築部分のイラスト
施行令第137条の4が示す2つのルートのうち、まず基本となる考え方を見てみましょう。
どちらも増築する部分を既存部分から区切ることが前提になっています。
建築基準法施行令第百三十七条の四第一号(抜粋) 増築又は改築に係る部分が火熱遮断壁等で区画されるものであり、かつ、その部分が法第二十七条第一項から第三項までに規定する基準に相当するものとして国土交通大臣が定める基準に適合すること。 同条第二号 工事の着手が基準時以後である増築又は改築に係る部分の対象床面積の合計が五十平方メートルを超えないものであること。
増築部分を火熱遮断壁等で区画するか、増築部分の床面積を50平方メートル以下にするかのいずれかで緩和が使えます。
一号のルートは、増築部分を火熱遮断壁等で区画し、その部分自体を耐火建築物の基準に相当する構造にする方法です。
二号のルートは、工事に着手した時点(基準時)以後の増築・改築部分の床面積を合計50平方メートル以下に抑える方法です。
二号は床面積さえ小さければ火熱遮断壁を設けなくてよい、手続き上の負担が軽い方法といえます。
ただしこの二号のルートには、次の章で説明する重要な例外があります。

火熱遮断壁を作らなくても、小さい増築なら緩和されるということですか。

そうですね。
ただし増築する部分の用途によっては、この小さい増築のルートが使えないことがあります。

劇場の客席や病院の病室を増築するときはなぜ緩和が使えないことがあるのか

劇場の客席病院の病室学校の教室に火熱遮断壁等のルートだけが使えることを示すイラスト
50平方メートル以下という緩和は便利ですが、すべての増築に使えるわけではありません。
条文の柱書には、あらかじめ除外されている用途が書かれています。
建築基準法施行令第百三十七条の四(柱書・抜粋) (前略)次の各号のいずれか(劇場の客席、病院の病室、学校の教室その他の当該特殊建築物の主たる用途に供する部分に係る増築にあつては、第一号)に該当する増築又は改築に係る部分とする。
劇場の客席や病院の病室、学校の教室など主たる用途に供する部分の増築には、火熱遮断壁等で区画する一号のルートしか使えません。
条文の括弧書きにより、これらの部分は50平方メートル以下という二号の緩和から明確に除外されています。
これは、火災のときに避難や消火活動が難しい主たる用途の部分ほど、簡易な緩和を認めない趣旨と考えられます。
倉庫や事務室など主たる用途以外の部分の増築であれば、二号の50平方メートル以下のルートも使えます。
増築する部分がどちらに当たるのかは、設計段階で必ず確認しておく必要があります。

病室を増やす工事だと、小さくても緩和が使えないことがあるんですね。

はい。
その場合は火熱遮断壁等で区画する方法を検討することになります。

増改築や大規模な修繕を計画するときは何を確認すればよいか

維持保全のチェックリストと注意を示す建物のイラスト
最後に、実際に増改築や修繕を計画するときの確認の流れをまとめます。
増築と、大規模な修繕・模様替では扱いが異なる点にも注意が必要です。
建築基準法施行令第百三十七条の十二第七項(抜粋) 法第三条第二項の規定により(略)法第二十七条(略)の規定の適用を受けない建築物についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、大規模の修繕又は大規模の模様替については、当該建築物における全ての大規模の修繕又は大規模の模様替とする。
増築や改築は範囲が限られますが、大規模な修繕や模様替であれば法第27条の適用上すべてが緩和の対象になります。
これは施行令第137条の12第7項に定められており、増築を伴わない改修工事に限った特例です。
まずは工事が増築・改築なのか、大規模な修繕・模様替なのかを設計段階で切り分けることが確認の第一歩です。
増築であれば火熱遮断壁等で区画するか、主たる用途以外の部分を50平方メートル以下に抑えるかを検討します。
判断に迷う場合は、特定行政庁や指定確認検査機関、専門の設計者に早めに相談することをおすすめします。

増築なのか修繕なのかで、扱いが違うというのは知りませんでした。

はい。
工事の内容を整理したうえで、専門家に確認するのが安心です。

よくある質問

Q既存不適格建築物は増築自体が禁止されているのですか?
A増築そのものが禁止されているわけではありません。建築基準法第86条の7と施行令第137条の4が定める範囲内であれば、既存部分に耐火建築物化の義務を及ぼさずに増築できます。
Q火熱遮断壁等とはどのような壁ですか?
A増築する部分と既存部分を、火災のときの熱や火炎の伝わりを遮る性能で区画する壁のことです。区画された部分自体は法第27条に相当する基準に適合させる必要があります。
Q50平方メートル以下という緩和はどの部分にも使えますか?
A使えません。劇場の客席や病院の病室、学校の教室など主たる用途に供する部分の増築には、施行令第137条の4の柱書により床面積による緩和は適用されず、火熱遮断壁等で区画する方法に限られます。
Q大規模な修繕や模様替も増築と同じ基準になりますか?
Aいいえ。施行令第137条の12第7項により、法第27条の適用上は大規模の修繕・模様替はすべて緩和の対象になり、増築のような床面積や区画の条件はありません。

まとめ

✔建築基準法第86条の7により、既存の建築物を増築・改築するときは政令で定める範囲内で一部の規定が適用されない緩和があります。
✔耐火建築物化の義務がある特殊建築物では、施行令第137条の4が緩和の範囲を定めています。
✔緩和が使えるのは、増築部分を火熱遮断壁等で区画する場合と、床面積の合計が50平方メートル以下の場合の2通りです。
✔劇場の客席や病院の病室、学校の教室など主たる用途に供する部分は、床面積による緩和の対象から除外されています。
✔主たる用途以外の部分であれば、50平方メートル以下の増築に限り火熱遮断壁を設けずに緩和を受けられます。
✔大規模な修繕や模様替は、増築とは異なる基準で緩和の範囲が決まります。
✔施行令第137条の12第7項により、法第27条の適用上は大規模の修繕・模様替はすべて緩和の対象になります。

うちの建物も増築のときは、まず条文の範囲を確認するようにします!

増改築や既存不適格のご相談でしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第27条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の4・第137条の12第7項

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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