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旅館やホテルの階段の防火戸は夜間も閉めておくのか|火災予防条例が定める防火設備の管理を解説

旅館やホテルの階段の防火戸は夜間も閉めておくのかという記事のアイキャッチ

防火戸やシャッターは火災のときに閉まってはじめて役に立ちます。
ところが台車や段ボールが置かれていて閉まらなかった、という指摘は立入検査でよく出ます。
消防法の条文には防火設備をふだんどう管理するかまでは書かれていませんが、市町村の火災予防条例にはその条がきちんと置かれています。
旅館やホテルの階段だけ夜の決まりがある理由まで、条文をそのまま開いて確かめておきます

うちのホテルは階段の防火戸を夜だけ閉めるように言われました。
そんな決まりがどこかにあるのでしょうか。

火災予防条例に防火設備の管理という条があります。
旅館やホテルの階段の戸だけ夜間の決まりが別に置かれています。

防火設備というのは廊下の防火戸のことですか。

防火戸のほかにシャッターや風道に設ける戸も入ります。
まずは誰がなにを求められているのかから押さえてください。

この記事の結論
  • 防火設備の管理は消防法ではなく市町村の火災予防条例に置かれています
  • 東京都火災予防条例では第55条の2がその条にあたります
  • 義務を負うのは令別表第一に掲げる防火対象物の関係者です
  • 閉鎖や作動の支障となる施設を設け又は物件を置かないことが正面から求められています
  • 旅館やホテルや宿泊所や病院の階段の戸は夜間時に閉鎖状態を保ちます

防火戸やシャッターの管理として機能を保つことと物を置かないことと燃える物を寄せないことと風道の戸を点検することを示した図解

防火設備の管理とは誰がなにをすることなのか

左に事務所ビル中央に壁ぎわで閉じた戸のある通路右に点検表を持つ人が並んでいる
消防法を最後まで読んでも防火設備をどう管理するかまでは出てきません。
それでも建物の側には日ごろの管理が求められます。
消防法第8条第1項 (略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、(略)当該防火対象物について消防計画の作成、(略)避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
法律は枠だけを置いて中身を書いていません
避難や防火のための構造と設備をどう維持するのかという具体は、市町村の火災予防条例が受け持っています。
東京都火災予防条例では第六章の避難及び防火の管理等という章に防火設備の管理という条が置かれています。
柱書には火災が発生したとき延焼を防止し、又は避難上の安全若しくは有効な消防活動を確保するため、という目的がはっきり示されています。
つまり防火設備は付いていればよいのではなく、閉まる状態を保つところまでが管理の中身だということです。
東京都火災予防条例第五十五条の二第一項 令別表第一に掲げる防火対象物の関係者は、火災が発生したとき延焼を防止し、又は避難上の安全若しくは有効な消防活動を確保するため、防火設備を次に定めるところにより、管理しなければならない

設備を入れて終わりではないということですね。

そのとおりです。
ふだんの状態を保つところまでが条例の求めになります。

どの建物のどの防火設備が対象になるのか

左に壁にはめ込んだ戸中央にシャッターの箱が付いた開口部右に点検口のある風道が並んでいる
条文は建物の用途で線を引いていません。
自分の建物は外れると考えないほうが安全です。
消防法第2条第4項 関係者とは、防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者をいう
対象は令別表第一に掲げる防火対象物の全部です
用途や規模で絞っていないので、事務所ビルでも倉庫でも同じようにかかります。
義務を負うのは関係者で、消防法第2条第4項により所有者と管理者と占有者が含まれます。
ビルのオーナーだけの話にはできませんし、テナントだけの話にもできないという読み方になります。
防火設備の側も広く、条文には防火区画の防火設備と風道に設ける防火設備が名指しで出てきますから、廊下の戸だけを見て終わりにせず天井裏まで数えておいてください。

用途に関係なくかかるのですね。

まずは自分の建物にどの戸があるかを数えてください。

管理として具体的になにを守らなければならないのか

左は戸が壁に沿って閉じた通路右は積んだ箱と台車が出入口をふさいでおり禁止マークが付いている
条文は柱書のあとに号を分けて書いています。
どれも工事ではなくふだんの置き方の話です。
東京都火災予防条例第五十五条の二第一項 (略)
一 防火設備は、常時閉鎖又は作動できるようその機能を有効に保持し、かつ、閉鎖又は作動に支障となる施設を設け、又は物件を置かないこと
一の二 防火設備は、火災により生じる圧力、外気の気流等の影響により閉鎖又は作動に支障を生じないようにすること。
二 防火区画の防火設備(遮熱力のあるものを除く。)に近接して、延焼の媒介となる可燃性物件を置かないこと
三 風道に設ける防火設備は、容易に点検できる構造とし、その機能を有効に保持すること。
いずれも置き方と手入れの話です
第一号は常時閉鎖又は作動できるよう機能を有効に保持し、閉鎖や作動の支障となる施設を設けたり物件を置いたりしないことです。
第一号の2は、火災により生じる圧力や外気の気流等の影響で閉まらなくならないようにすることを求めています。
第二号は防火区画の防火設備に近接して延焼の媒介となる可燃性物件を置かないことで、閉まりはしても燃え移ってしまう置き方を止めるものです。
第三号は風道に設ける防火設備を容易に点検できる構造とし機能を保つことなので、点検口をふさぐ造作を足したときは元に戻す必要があります。

置き方の話だと思えば毎日でも見られますね。

戸の下と壁ぎわを空けておくのが基本になります。

旅館やホテルの階段はなぜ夜間だけ別の決まりがあるのか

左に受付台と鍵の棚中央に踊り場のある階段右に閉じた戸が並んでいる
同じ条の第2項には用途を絞った決まりが置かれています。
人を泊める建物と病院だけの話です。
東京都火災予防条例第五十五条の二第二項 旅館、ホテル、宿泊所又は病院の階段に設ける防火設備は、夜間時に閉鎖又は作動状態を保持しなければならない。ただし、火災時の煙により自動的に閉鎖又は作動するものにあつては、この限りでない。
人が寝ている建物だけが別扱いです
旅館とホテルと宿泊所と病院の階段に設ける防火設備は、夜間時に閉鎖又は作動状態を保持しなければならないと書かれています。
階段は上の階へ煙が上がっていく道になるので、人が寝ている時間帯は閉じた状態を先に作っておくという書き方です。
ただし書があり、火災時の煙により自動的に閉鎖又は作動するものはこの限りでないとされています。
つまり煙で自動的に閉まる仕組みを備えた戸は除かれ、それ以外の戸が夜間時の対象になるという読み方になります。

夜だけ閉めるよう言われた意味がやっとわかりました。

煙で閉まる仕組みがあるかどうかで扱いが変わります。
戸ごとにどちらなのかを控えておいてください。

明日からなにを確認すればよいのか

左に台帳を開いた台中央に点検表を持つ人右に自動で閉まる装置の付いた戸と掲示板が並んでいる
順番を決めておけば工具を使わずに一巡できます。
戸の場所を書き出すところから始めます。
東京都火災予防条例第五十三条の二 何人も、令別表第一に掲げる防火対象物において、みだりに次に掲げる行為をしてはならない
一 避難施設に、火災の予防又は避難に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと。
二 防火設備の閉鎖又は作動に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと。(略)
止めるのは人ではなく置き場です
まず平面図に防火戸とシャッターと風道に設ける戸の位置を書き出し、常時閉鎖なのか煙で閉まるものなのかを戸ごとに書き添えます。
次に現場を回って、戸の下と壁ぎわに台車や段ボールが置かれていないか、シャッターの下に什器が入り込んでいないかを見ます。
物が置かれていた場所には棚や区画線を作って置き場を先に移し、貼り紙をするだけで終わらせないようにします。
上の第53条の2は何人もと書いてあり従業員も納品業者も等しく縛られますから、最後に消防計画の自主検査表へ防火設備の欄を足して毎月見る形にしておいてください。

置き場を先に作るという発想はありませんでした。

貼り紙だけでは物が戻ってきてしまいます。
置き場を決めるところまでやると続きます。

よくある質問

Q防火戸を開けたままにしておく金具を付けてもよいですか?
A条文は閉鎖又は作動の支障となる施設を設けないことを求めていますので、閉まらなくする金具はこれに当たるという読み方になります。煙で自動的に閉まる仕組みと組み合わせている戸は扱いが変わりますから、所轄消防署にご確認ください。
Q夜間時とは何時から何時までを指しますか?
A条文に時刻は書かれていません。建物ごとの営業や勤務の実態から判断することになりますので、自分の建物で夜間時をいつからいつまでとするのかを消防計画に書いて所轄消防署と共有しておくのが安全です。
Qシャッターの下に台車を置くのは少しの間ならよいですか?
A条文は時間の長さで区切っていません。閉鎖又は作動の支障となる物件を置かないことを求めていますので、短い時間であっても置かない運用にしておくほうが確実です。
Qこの決まりは全国どこでも同じ内容ですか?
A同じとは限りません。火災予防条例は市町村ごとに定めるものなので、条番号も表現も自治体によって異なります。この記事で引いたのは東京都火災予防条例ですので、必ず自分の建物がある市町村の条例を確かめてください。

まとめ

防火設備の管理は市町村の火災予防条例に置かれています
東京都火災予防条例では第55条の2がその条にあたります
対象は令別表第一に掲げる防火対象物の関係者で用途も規模も絞られていません
閉鎖や作動の支障となる施設や物件を置かないことが第一号に書かれています
防火区画の戸に近接して延焼の媒介となる可燃性物件を置きません
風道に設ける防火設備は容易に点検できる構造にしておきます
旅館やホテルや宿泊所や病院の階段の戸は夜間時に閉鎖状態を保ちます

今夜のうちに防火戸の前を全部見て回ります。
これなら明日の朝礼でも共有できそうです。

その結果を自主検査表に残せば形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第4項・第8条第1項
  • 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第53条の2・第55条の2
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)
  • 東京都例規集データベース

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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