大きな災害が起きて市町村の庁舎まで被災したとき、被害の報告が都道府県に届かなくなったらどうなるのかと不安に思う方は多いと思います。
実は平成24年の災害対策基本法の改正で、市町村が報告できなくなったときは、都道府県が情報収集に特に意を用いることが定められました。
あわせて、災害に関する情報の収集では地理空間情報や先端的な技術の活用に努めることも明記されています。
国の通知と条文で、その中身を確かめます。
市町村が被害を報告できなくなったとき、だれが状況を把握するのですか。
都道府県が報告を待たずに自ら情報を集めることが求められています。
「特に意を用いる」とは、具体的にどこまでのことでしょうか。
そこに通知の具体的な説明があります。
順番に見ていきましょう。
- 東日本大震災で市町村の庁舎等が被災し、被害の報告ができない事態が生じたことを踏まえ、市町村が報告できなくなったときは都道府県が災害に関する情報の収集に特に意を用いると定められました(法第53条第6項)。
- 通知は、「特に意を用いる」とは市町村からの報告を待たずに都道府県自らが主体的に情報を収集することで、職員の派遣やヘリコプター、各種通信手段の活用などあらゆる手段を尽くすことだと説明しています。
- 報告をできなくなったときかどうかは、市町村を管轄する都道府県が個々の災害の状況に照らして判断すると通知は述べています。
- 災害応急対策責任者は、情報の収集と伝達で地理空間情報と情報通信技術その他の先端的な技術の活用に努めなければならないと定められています(法第51条第2項)。
- 情報の共有の具体例として、通知は連絡手段や体制の確保、連絡調整のための職員の相互派遣などを挙げています(法第51条第3項)。
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目次
東日本大震災では、なぜ市町村の被害報告が途絶えたのか

災害の被害状況は、まず市町村から都道府県へ報告されるのが基本です。
その仕組みが働かなくなった経験が、法改正の出発点でした。
通知の説明と第53条第1項を確認します。
市町村の庁舎が被災し、被害の報告そのものができなくなったことが、改正の背景です。
通知は、東日本大震災で市町村の行政機能が著しく低下したことを挙げています。
そこで、市町村の防災を助け補完する立場の都道府県が、情報の収集に意を用いることが規定されました。
現在の第53条第1項は、市町村の報告先を都道府県とし、都道府県に報告ができない場合は内閣総理大臣と定めています。
次は、都道府県が具体的に何をするのかを見ていきます。
被害の報告は、市町村から都道府県へ出すのが基本なのですね。
通知は、その報告ができない事態を踏まえて、都道府県の役割を明記したと説明しています。
市町村が報告できなくなったとき、都道府県は何をしなければならないのか

市町村が報告できなくなったとき、都道府県はただ待っていてはいけません。
第53条第6項と、通知が示す「特に意を用いる」の意味を確認します。
都道府県は、市町村からの報告を待たずに、自ら情報を集めなければなりません。
条文は「特に意を用いなければならない」と、義務の形で定めています。
通知は、被災地への職員の派遣や、ヘリコプター等の機材と各種通信手段の活用を具体例として挙げています。
現在の第53条第7項には、都道府県が報告を行えなくなったときに指定行政機関の長が情報収集に特に意を用いる規定も並んでいます。
次は、災害情報の収集で活用が求められる技術を確認します。
市町村から連絡が来るまで、都道府県は待っていてはいけないのですね。
通知はあらゆる手段を尽くして情報収集を行うことをいうものだと説明しています。
地理空間情報や先端技術は、災害情報の収集でどう位置づけられたのか

災害の情報を集めるとき、地図の情報や新しい技術をどう使うのかも見直されました。
通知の説明と第51条を確認します。
地理空間情報の活用は、災害応急対策責任者の努力義務として法律に置かれました。
通知は、平成24年3月に閣議決定された新たな基本計画が、東日本大震災の課題を踏まえて防災分野での活用を位置付けたことに照らしたものだと説明しています。
対象の災害応急対策責任者には、国の機関、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関、公共的団体、防災上重要な施設の管理者まで含まれます。
現在の条文には、地理空間情報のほかに情報通信技術その他の先端的な技術の活用も並んでいます。
次は、災害に関する情報の共有の中身を確認します。
地理空間情報や先端技術の活用は、守らなければならない義務ですか。
条文は活用に努めなければならないと定め、通知も努力義務規定と説明しています。
災害に関する情報の共有とは、具体的にどんなことをするのか

情報を集めるだけでなく、関係機関どうしで共有することも定められています。
通知が挙げる具体的な手法と第51条第3項を確認します。
情報の共有は、災害応急対策責任者が相互に連携して行う努力義務です。
通知が挙げる手法の1つ目は、連絡する手段や体制を確保して緊密に連絡をとることです。
2つ目は、連絡調整のための職員を関係機関で相互に派遣することです。
3つ目は、本部長が関係機関の長等に協力を求める規定(第23条第7項、第23条の2第7項、第28条第3項、第28条の6)に基づいて、情報の提供や意見の表明を行うことです。
こうした手法の目的は、事態についての認識を一致させて迅速な意思決定を行うことにあります。
情報の共有といっても、具体的には何をすればよいのでしょうか。
通知は連絡手段の確保、職員の相互派遣などを具体的な手法として挙げています。
自治体や関係機関は、明日から何を確認しておけばよいのか

規定を知っているだけでは、いざというときに使えません。
通知が示す判断の主体を確認したうえで、平常時の確認事項を整理します。
「報告できなくなったとき」かどうかは、都道府県が判断します。
通知は、市町村を管轄する都道府県が個々の災害の状況に照らして判断すると述べています。
市町村の側は、庁舎が被災しても報告に使える通信手段と代替の連絡経路を、平常時から地域防災計画などで確認しておくと安心です。
都道府県の側は、市町村と連絡がつかない場合に職員を派遣する手順や、ヘリコプターと各種通信手段を使う手順を用意しておくことが実務の備えになります。
災害応急対策責任者に当たる事業者や団体も、情報の共有に使う連絡手段と連絡調整の担当を自治体と確認しておくと役立ちます。
条文は改正で動くことがあるため、現在の災害対策基本法で引き直して確認します。
自分の施設や団体が、災害応急対策責任者に当たるか確認してみます。
連絡手段と連絡調整の担当を決めておくことが第一歩です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
連絡手段と連絡調整の担当、さっそく確認してみます!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について(平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第23条、第23条の2、第28条、第28条の6、第51条、第53条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





