被災した市町村が他の自治体に応援を頼んだとき、頼まれた側は断ってもよいのかと気になる方は多いと思います。
実は災害対策基本法は、都道府県知事等は正当な理由がない限り、市町村長等からの応援の求めを拒んではならないと定めています。
さらに都道府県どうしの応援を国が調整する規定も用意されています。
東日本大震災で応援の調整に法制度がなかった反省から、平成24年の法改正で拡充・新設されたものです。
被災した市町村が応援を頼んでも、断られることはあるのですか。
実は都道府県は正当な理由がない限り断れないと法律に書かれています。
市町村どうしの応援でも、同じように断れないのでしょうか。
ここに大事な違いがあります。
順番に見ていきましょう。
- 市町村長等が都道府県知事等に応援を求めたり災害応急対策の実施を要請したりしたとき、都道府県知事等は正当な理由がない限り拒めません(法第68条第1項)。
- 通知は、これまで応急措置に限られていた応援の対象業務を災害応急対策一般に拡大し、市町村から都道府県への要請では応急措置以外にも応諾義務を課したと説明しています。
- 市町村どうし(第67条第1項)と都道府県どうし(第74条第1項)の応援で拒めないのは、応急措置のための応援です。
- 通知は都道府県による調整規定の拡充と、国による調整規定の新設を説明しています(現行の内閣総理大臣による応援の求めは第74条の3)。
- 応援に従事する者は、応援を求めた側や受ける側の指揮の下で行動すると条文が定めています(第67条第2項、第72条第3項など)。
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目次
東日本大震災の応援は、なぜ調整の仕組みが求められたのか

災害の規模が大きいと、被災した自治体だけでは人手が足りません。
まずは通知が示す、規定の見直しの背景を確認します。
東日本大震災の際は、応援の調整を国が行う法制度が、一部を除きありませんでした。
自治体間の応援は、臨時に構築したスキームに基づいて調整されたと通知は述べています。
この教訓を踏まえ、被災した自治体への人的支援を強化するために、都道府県による調整規定の拡充と国による調整規定の新設が行われました。
次は、応援を求められた側が断れるのかを見ていきます。
東日本大震災のときは、国が調整する法制度がなかったのですね。
通知は臨時に構築したスキームで調整したと説明しています。
市町村から都道府県への要請に、応じる義務はどこまであるのか

被災した市町村は、都道府県に応援を求めることができます。
第68条第1項の内容を確認します。
都道府県知事等は、正当な理由がない限り、市町村長等からの応援の求めや災害応急対策の実施の要請を拒めません。
通知は、応急措置以外の災害応急対策にも応諾義務を課したと説明しています。
通知が拡大の例に挙げるのは、消防や水防、救助といった応急措置だけでなく、避難所運営支援、巡回健康相談、施設の修繕のような業務です。
次は、都道府県や国がどのように調整に関わるのかを見ていきます。
避難所の運営支援でも、都道府県は断れないのですか。
通知は避難所運営支援を災害応急対策の例に挙げています。
正当な理由がなければ断れません。
都道府県と国は、応援の調整にどこまで関われるのか

調整に関わるのは、被災した市町村だけではありません。
第72条第2項と、国による調整を定める第74条の3第3項を確認します。
都道府県知事は、県内の市町村どうしの応援が円滑に進むよう、市町村長に応援を求めることができます。
応急措置については、応援すべきことを指示できる規定もあります(第72条第1項)。
県の求めだけでは円滑に進まないと認めるときは、他の都道府県知事に応援を求め(第74条の2)、さらに内閣総理大臣を通じた調整(第74条の3)へと進みます。
緊急を要し要求を待ついとまがないと認められるときは、内閣総理大臣は要求を待たずに他の都道府県知事へ応援を求めることができます。
次は、市町村どうしや都道府県どうしの応援では断れないのかを見ていきます。
国が調整に入るのは、いつなのですか。
県の求めだけでは円滑に進まないと認められるときです。
緊急時は待たずに求めることもできます。
市町村どうしや都道府県どうしの応援にも、断れない義務はあるのか

応援の求めを断れるかどうかは、だれがだれに求めたかで変わります。
第67条の内容を確認します。
市町村どうしの応援で拒めないと定められているのは、応急措置を実施するための応援です。
都道府県どうしの応援を定める第74条第1項も、同じ形で応急措置のための応援に限って拒めないとしています。
通知が対象を拡大したと説明するのは、市町村から都道府県への応援の要求又は要請(第68条第1項)の場面です。
応援に従事する者は応援を求めた市町村長等の指揮の下に行動する(第67条第2項)ので、受け入れ側の指揮系統を意識しておく必要があります。
次は、これらを踏まえて明日から確認すべきことを整理します。
隣の市から頼まれたら、何でも断れないのですか。
拒めないと定められているのは応急措置のための応援です。
消防や水防、救助がその代表です。
応援を頼む側も受ける側も、明日から何を確認しておけばよいのか

応援の仕組みは、平常時の備えがあってはじめて機能します。
通知が示す平素の備えの強化を確認します。
応援を頼む場合も受ける場合も、地域防災計画などで相互応援がどう想定されているかを知ることが第一歩です。
自治体は、応援を求める相手と連絡の手順、応援者を受け入れる窓口と指揮を執る人を平常時から決めておくことが考えられます。
避難所などに使われる施設の管理者や事業者は、地域防災計画での自施設の位置づけを自治体に確認し、消防計画との整合も見直しておくと安心です。
条番号は改正で動くことがあるため、条文は現在の災害対策基本法で引き直して確認します。
うちの施設が地域防災計画でどう位置づけられているか、確認してみます。
地域防災計画での位置づけが第一歩です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
地域防災計画での位置づけ、さっそく確認してみます!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 災害対策基本法の一部を改正する法律について(平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第62条、第67条、第68条、第72条、第74条、第74条の2、第74条の3
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





