地震のときの動きを火災の消防計画と同じ調子で書いていませんか。
火災は建物の中の一箇所から始まり、消防隊もすぐに駆け付けてくれます。
ところが地震は同時多発で広域に起き、外からの支援が発生直後には期待できません。
この記事では自衛消防活動が火災と地震でどこまで変わるのかを整理します。
自衛消防の動きは火災も地震も同じでよいと思っていました。
やることは消火と通報と避難誘導ですよね。
項目の名前は似ています。
ただ地震では前提が変わるので、同じ手順のままでは動けません。
前提というのは何のことでしょうか。
消防隊がすぐ来ることと、救急隊が運んでくれることです。
地震ではその両方が当てになりません。
- 地震は防災管理の消防計画で備える災害として政令に名指しされています
- 火災は建物の中の局所で起きますが地震は広域で同時多発します
- 活動は長期化し消防機関等の支援を得にくいことが前提になります
- 救急隊による救出や救護も期待できないものとして書きます
- 能力を超える場面では活動の優先度を決めておく必要があります
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目次
地震のときの活動を火災と分けて考えるのはなぜか

消防法施行令第45条第1号は、防災管理の対象になる災害として地震を挙げています。
並んでいるのは通報連絡と避難誘導と救出と救護で、火災のときの初期消火に当たる項目がここには入っていません。
代わりに、倒れた物の下から人を出す救出と、その場で手当てをする救護が加わっています。
つまり法令の側が、地震のときの動きは火災のときの動きと同じではないという前提で号を立てているということです。
自分の消防計画を開いて、この号に当たる部分が火災の手順の使い回しになっていないかを見てください。
言われてみると地震の章は火災の章を写しただけでした。
とても多い形です。
まず救出と救護が抜けていないかを見ると差が分かります。
災害そのものは火災とどこが違うのか

消防庁が公表しているガイドラインが、両者を並べて対比しています。
火災は建物の中の局所で始まりますが、地震は近隣でも同時に被害が出て、そこから出火や類焼が広がる可能性があります。
だから消防署からの駆け付けが発生直後には期待できないものとして挙げられています。
さらに自衛消防隊員は自分の家族も被災している可能性があり、火災のときのように全員がそろう前提が置けません。
ライフラインも停電と断水とガスと通信障害と交通障害が並んでおり、電話も移動もできない状態から始まると考えることになります。
隊員自身が被災するところまでは考えていませんでした。
そこが火災といちばん違う点です。
名簿どおりに人がそろわない前提で編成を考えます。
自衛消防組織の動きはどこが変わるのか

同じガイドラインが、対応の違いを項目ごとに並べています。
活動時間は消防車の到着までではなく地震の規模によって長期化し、その間は自分たちだけで持ちこたえることになります。
被災場所の確認も、自動火災報知設備が知らせてくれる火災と違って時間を要すると書かれています。
来場者への対応も原則避難ではなく、まず避難させてよいのかどうかを判断するところから始まります。
そして負傷者は救急隊による救出と救護が期待できないため、自分たちで運び手当てをする段取りまで決めておくことになります。
つまり避難させるかどうかから決めるということですね。
はい。
外へ出すほうが危ない場面があるので、判断する人を先に決めておきます。
実務で見落としやすいのはどこか

ガイドラインは応急活動の流れの中で、能力を超えたときの考え方まで示しています。
同時多発で活動能力を超えることがあらかじめ織り込まれており、そのときは優先度を判断すると書かれています。
判断のよりどころとして挙がっているのが人命安全の確保と二次災害の防止という二つの目標です。
見落としやすいのは連絡手段のほうで、防災センターとの連絡が困難になると示されているのに、館内電話だけを頼りにした連絡系統のままになっている計画が少なくありません。
携帯用拡声器や書き置きの掲示など、電気と回線に頼らない伝え方を一つ決めて計画に書いておいてください。
連絡は内線でつながる前提で書いてありました。
停電したら何も伝わりません。
そこは訓練で必ず詰まる箇所です。
代わりの手段を書いておくだけで動きが変わります。
明日からなにを確かめればよいのか

消防計画は作って終わりではなく、そこに書いた業務を実際に行うところまでが責務とされています。
明日からの手順は三つです。まず消防計画の地震の章を開き、救出と救護が自分たちの仕事として書かれているかを見ます。
次に、来場者を避難させるかどうかを誰が判断するのかが決まっているかを確かめます。
そして防災センターと連絡が取れないときの代わりの伝え方が書かれているかを見てください。
足りない部分が見つかったら、次の避難訓練でその場面をあえて作り、動けるかどうかを検証してから計画に書き足すと確実です。
次の訓練で連絡が取れない場面を作ってみます。
それがいちばん早い確かめ方です。
できなかったことをそのまま計画の直し先にしてください。
よくある質問
まとめ
火災と同じつもりで書いていたところが丸ごと見直しになりそうです。
まずは連絡手段から手を付けます。
そこが要になります。
地震を想定した消防計画の見直しでお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第36条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第46条・第48条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊2
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





