防災管理者を選んだものの、その人が組織の中でどんな立場にいれば足りるのかまで確認している管理権原者は多くありません。
実は消防法施行令は、防災管理者について資格だけでなく組織内での「地位」まで条件にしています。
講習を修了した人を形式上選んだだけでは、条文の要件を満たさないことがあります。
この記事では消防法・同施行令・同施行規則の条文だけを根拠に、防災管理者に求められる地位とはなにかを整理します。
講習さえ修了していれば、誰を防災管理者にしてもいいんですよね?
いいえ、それだけでは足りません。
組織の中での地位も条文の要件になっています。
資格を持っているだけでは駄目ということですか。
はい、条文が求める地位と権限を今日は整理していきましょう。
- 防災管理者は「防災管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的又は監督的な地位」にある者でなければならない
- この要件は消防法施行令第四十七条が定めるもので、資格要件とは別建てである
- 指揮命令系統は「管理権原者→防災管理者→防災管理業務従事者」の三層で、全従業員へ指示できる権限が必要
- 管理的又は監督的地位にある者がいないと消防長等が認める建物には総務省令が定める例外要件がある
- 地位や権限が伴わない選任は条文の要件を満たさないおそれがある
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目次
防災管理者にはなぜ地位と権限が求められるのか

消防法施行令は、防災管理者になる者について組織内での立場そのものを条件にしています。
消防法第三十六条第一項は、火災以外の災害(地震等)による被害の軽減のため政令で定める建築物、すなわち防災管理対象物について、防火管理者に関する第八条の規定を読み替えて準用しています。
その結果、指揮命令系統は管理権原者から防災管理者へ、防災管理者から防災管理業務従事者(従業員)へという三層構造になります。
資格だけを満たした人を名目上選んでも、この系統の中で実際に指示できる地位になければ、条文が求める要件を満たしたことにはなりません。
資格と地位、両方そろってはじめて要件を満たすんですね。
その通りです。
第四十七条はこの両方を同時に求めています。
管理的又は監督的地位とは具体的に何を指すのか

実際に何ができる立場を指すのかは、指揮命令系統から読み取ることができます。
資格要件(施行令第四十七条第一項各号)は、講習の修了や実務経験など知識・経験の有無を確認するものです。
一方の地位要件は、その人が管理権原者からどこまで権限を委ねられているかを確認するものであり、資格要件とは別の軸で判断されます。
名目だけの役職名を与えても、実際に指示や報告のやり取りができる体制になっていなければ、この要件を満たしているとは言えません。
肩書きさえあれば地位を満たしたことになるんでしょうか。
いいえ、実際に指示できる権限が伴っているかで判断されます。
地位がなくても防災管理者になれる場合はあるのか

このような場合に備えて、施行規則には例外規定が置かれています。
この特例は共同住宅などを念頭に置いたもので、管理的又は監督的地位にある者が本社や別の勤務地にいて、その建物に常駐していないケースを想定しています。
ただし特例が使えるのは、消防長又は消防署長が個別に「適切に遂行することができない」と認めた場合に限られます。
自己判断で地位要件を省略できるわけではなく、所轄消防署への確認が前提になります。
本社勤務の管理職しかいない建物でも防災管理者を置けるんですね。
ただし消防長又は消防署長の認定が前提になる点は忘れないでください。
資格要件を満たすだけでは足りないのはなぜか

ここを取り違えると、選任そのものが条文の要件を満たさなくなります。
たとえば、資格だけを持つ担当者を形だけ選任し、実際の判断や指示は別の管理職が行っているような体制は、条文が求める「管理的又は監督的地位」を満たしていない可能性があります。
防災管理者が本来の業務(消防計画の作成・訓練の実施・設備の点検確認等)を進めるには、従業員へ直接指示できる権限が組織上明確になっている必要があります。
選任にあたっては、資格の有無だけでなく、その人が実際にどの範囲まで指示できる立場かを確認することが欠かせません。
資格を持つ人を形だけ選んでおけば安心、というわけではないんですね。
はい、指示できる権限が伴っているかを必ず確認してください。
防災管理者を選任する前に何を確認すればよいか

所轄の消防署ごとに運用の細部が異なるため、最初の確認を省略しないことが大切です。
まず候補者が組織図の中でどの位置にいて、実際に従業員へ指示できる立場かを確認します。
管理的又は監督的地位にある者が建物に常駐していない場合は、施行規則第五十一条の六の特例に該当するか所轄消防署へ確認します。
資格を証する書面(講習修了証の写し等)とあわせて、候補者の権限を裏付ける社内の辞令・組織図なども準備しておくと、選任後の届出や立入検査への対応がスムーズになります。
組織図で立場を確認するところから始めればいいんですね。
はい、資格と地位の両方をあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
防災管理者の地位、資格だけでは足りないことがよく分かりました。
防災管理者の選任でお困りの際は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第三十六条(火災以外の災害に係る消防法令の準用)
- 消防法第八条第一項〜第三項(防火管理者の選任・届出・選任命令)
- 消防法施行令第四十七条(防災管理者の資格)
- 消防法施行規則第五十一条の六(防災管理上必要な業務を適切に遂行することができない場合における防災管理者の資格)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





