防災管理の消防計画は、防災管理者がひとりでまとめて1冊書けばよいと思われがちです。
ところが消防法は、まず建物の管理権原者を起点にして、その義務の中身を防災管理者に委ねる構造を取っています。
しかも同じビルの中に管理権原者が複数いれば、外部委託で同じ人を選んでいても計画は別々になります。
条文をたどると、消防計画は「誰の権原の範囲か」で本数が決まることが見えてきます。
外部の会社に防災管理者をお願いしていて、消防計画は1冊にまとめてもらえば十分だと思っていました。
そこが誤解されやすいところです。
消防計画は防災管理者1人分ではなく、管理権原者の数だけ必要になります。
同じ人にお願いしていても、権原者が別なら計画も別ということですか。
そのとおりです。
権原の数え方と統括との関係から順に見ていきましょう。
- 消防計画は管理権原の及ぶ範囲について作成するのが原則です
- 管理権原者が複数いる防火対象物では個々の管理権原者単位で防災管理者を定め計画を作成させます
- 外部委託で同一の防災管理者を選んでいても、計画は権原ごとに分かれます
- 統括防災管理者がいる建物では、各計画は統括が作る全体の計画に適合させる必要があります
- 同一敷地内で管理権原者が同一の者である防火対象物が複数あるときは、一の防火対象物とみなされ敷地単位で作成します
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目次
防災管理の消防計画はそもそも何を単位に作るのか

消防法は、まず建物の管理権原者を起点にして、その義務の中身を防災管理者に委ねる構造を取っています。
第36条第1項は、火災以外の災害に備える建築物について第8条から第8条の2の3までの規定を準用すると定めています。
このとき「防火管理者」は「防災管理者」に、「防火管理上」は「防災管理上」の語に置き換わります。
つまり防災管理の消防計画は防火管理の消防計画と同じ土台の上に建っており、独自の別ルールで動いているわけではありません。
この読み替えの構造を押さえておくと、この先の作成単位の話が理解しやすくなります。
防火管理と同じ条文を読み替えているだけなんですね。
そうです。
読み替えの中身を1つずつ確認していきましょう。
管理権原者が複数いる防火対象物ではどう分かれるか

このとき消防計画が1冊で足りるのか、権原者の数だけ必要なのかが最初の分かれ目です。
第8条第1項の主語は管理について権原を有する者で、この者が防災管理者を定め消防計画を作成させる義務を負います。
管理権原者が複数いる防火対象物では、個々の管理権原者ごとに防災管理者を定め、それぞれの権原の範囲について消防計画を作成させることになります。
これは外部委託により同一の防災管理者を選任した場合でも変わりません。同じ人が複数のテナントの防災管理者を兼ねていても、作成する消防計画は委託元の権原者ごとに分かれます。
自分のテナントの計画が、他の権原者の計画と混ざっていないかをまず確認してください。
同じ人にお願いしているのに、計画は別々にする必要があるんですね。
はい。
権原ごとに1冊、というのが基本の数え方です。
統括防災管理者がいる建物では計画は何を満たす必要があるか

そこで一定規模の建物には、全体をまとめる統括防災管理者の制度が置かれています。
第8条の2第3項は、各権原者の防災管理者が作成する消防計画が、統括防災管理者が作成する防火対象物の全体についての消防計画に適合するものでなければならないと定めています。
つまり全体計画が先に決まり、個々の計画はそれと矛盾しない内容に合わせる、という上下関係があります。
訓練の実施方法や共用部分の管理といった項目は、特に全体計画とのすり合わせが必要になりやすい部分です。
自分の権原分の計画を作るときは、統括防災管理者が定めた全体計画を先に確認してから内容を詰めてください。
全体の計画が先にあって、うちの計画はそれに合わせる形なんですね。
そのとおりです。
まず全体計画を見せてもらうところから始めてください。
同一敷地内に複数の建物があるとき計画はどう数えるか

ここは管理権原者が同じかどうかで答えが変わります。
施行令第2条は、同一敷地内に管理権原者が同一の者である防火対象物が二以上あるときは、法第8条第1項の適用についてそれらを一の防火対象物とみなすと定めています。
第36条を通じて防災管理側にも同じ考え方が及ぶため、条件がそろえば消防計画は棟ごとではなく敷地単位で作成することになります。
逆に言えば、同じ敷地にあっても管理権原者が棟ごとに違えば合算されず、権原者ごとに別々の計画が必要という結論に戻ります。
「同じ敷地だから1冊でよい」と決めつける前に、まず登記や契約で棟ごとの管理権原者が同じかどうかを確認してください。
敷地が同じというだけでは、まとめてよいかどうか決まらないんですね。
はい。
決め手は権原者が同じかどうかです。
消防計画の作成単位を明日からどう確認すればよいか

条文は作成と届出の手順もあわせて定めています。
規則第51条の8第1項は、防災管理者が管理について権原を有する者の指示を受けて消防計画を作成し、別記様式第一号の2の届出書で届け出ると定め、変更するときも同様としています。
まず自分の建物に管理権原者が何人いるかを洗い出し、統括防災管理者の選任義務があるかどうかを確認してください。
統括がいる建物では、自分の権原分の計画を作る前に全体計画の内容を確認し、矛盾がないかをすり合わせます。
最後に、外部委託先が権原ごとに別々の計画を作っているかを、委託契約の内容とあわせて確認しておくと安心です。
まずは自分の建物の権原者の数から数えてみます。
それが一番の近道です。
数えたら統括の有無も忘れずに確認してください。
よくある質問
まとめ
権原の数え方と統括との関係がつながって見えました。
まず自分の建物の権原者を数えてみます。
権原者の数、統括の有無、そして敷地の合算。
この3つを押さえれば作成単位で迷うことはなくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第36条
- 消防法第8条
- 消防法第8条の2
- 消防法施行令第2条
- 消防法施行規則第51条の8
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





