大きなビルや地下街では、防火対象物点検と防災管理点検の両方が義務になることがあります。
それぞれの点検には、単独で合格したことを示す専用の証票が用意されています。
けれども条文をよく読むと、両方に合格した建物だけがもらえる、もう一段階別の表示があります。
複合表示の条件と、そこに潜む有効期限の落とし穴を順番に見ていきます。
うちの受付には防火対象物点検の証票が貼ってあります。
防災管理点検にも別の証票があるなら、また新しい表示が増えるんですか。
はい。両方の点検に合格した建物には、複合表示という別建ての表示が用意されています。
まずは対象になる条件から確認しましょう。
うちは複数のテナントが入っている複合ビルなので、少し不安です。
権原が分かれている建物には建物全体で満たすべき条件があります。
有効期限の数え方にも注意点があるので、順番に見ていきましょう。
- 防火対象物点検と防災管理点検、両方に合格した建物には消防法第36条第4項の複合表示を掲げられます
- 複合表示は単独の証票とは別に、別表第七の専用様式で作られます
- 出すためには施行規則第51条の18が定める四つの条件すべてに適合する必要があります
- 権原が分かれている建物は建物全体で両方の点検に適合していなければ対象になりません
- 有効期限は二つの点検のうち早い方の実施日から1年後までです
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目次
防火対象物点検と防災管理点検、両方に合格するとどんな表示が出せるのか

けれども両方が義務になる建物には、もう一段階別の表示が用意されています。
消防法第8条の2の2(防火対象物点検)と、第36条が読み替えて準用する第8条の2の2(防災管理点検)は、本来それぞれ別の証票を出す制度です。
第36条第4項は、この二つの点検を両方クリアした建物に限って、もう一枚の特別な表示を認める規定です。
出せる・出せないは任意の選択ではなく、両方の点検基準に適合しているという事実だけで決まります。
まずはこの複合表示が、単独の証票の上位互換ではなく別建ての制度だと理解しておきましょう。
複合表示は、防火対象物点検の証票の代わりになるものではないんですね。
はい、あくまで両方に合格した証として追加で出せる表示です。
次はその条件を見ていきましょう。
複合表示を出すためにはどんな条件が必要なのか

権原が分かれている建物では、さらに確認すべき範囲があります。
一号・二号は点検そのものを行っていること、三号・四号はそれぞれの点検基準への適合を求めており、防火対象物点検と防災管理点検のペアが二重に確認される仕組みです。
さらに消防法第36条第4項は、管理について権原が分かれている建物では、個別に認定を受けた部分を除く建物全体で両方の点検が行われていることを条件にしています。
一部のテナントだけ点検を終えていても、建物全体としての条件は満たせません。
まずは自分の建物の権原がひとつなのか、複数に分かれているのかを確認しましょう。
うちは複数のテナントが入っていますが、その場合はどうなりますか。
権原が分かれている建物では、建物全体で両方の点検が揃って初めて対象になります。
まずは管理権原の範囲を整理しましょう。
表示にはどんな様式でなにが書かれるのか

掲示する場所にもルールがあります。
記載されるのは、有効期限にあたる年月日、権原を有する者の氏名、点検を行った二人の点検資格者の氏名などです。
単独の証票が点検資格者一人の氏名を記すのに対し、複合表示は防火対象物点検資格者と防災管理点検資格者の両方の氏名を記す点が異なります。
見た目の様式が違うので、単独の証票と並べて掲示しても混同しにくくなっています。
次は、この有効期限の数え方に潜む見落としを確認しましょう。
証票の見た目が違うなら、見分けやすそうですね。
はい。
ただし有効期限の数え方には注意が必要です。次で説明します。
有効期限はどちらの点検を基準に計算されるのか

紛らわしい表示を付けることも禁止されています。
単独の証票は自分の点検日から1年後という単純な数え方ですが、複合表示は防火対象物点検と防災管理点検の両方の実施日を比べて早い方を採用します。
たとえば4月に防火対象物点検、10月に防災管理点検を終えた場合でも、有効期限は4月を基準にした翌年4月までとなり、10月を基準にするより短くなります。
また、この表示に似せた紛らわしい表示を付けることは禁止されており、違反すると消防長又は消防署長から除去や消印を命じられることがあります。
複合表示の有効期間を無駄にしないためには、二つの点検の実施時期をできるだけ近づけておくことが実務上のコツです。
点検の時期がずれていると、期限が短くなるんですね。
そのとおりです。
二つの点検を同じ時期にそろえることで、有効期間を無駄にせずに済みます。
複合表示を受けるにはどう進めればよいのか

順番を押さえておけば迷いません。
- 自分の建物が防火対象物点検・防災管理点検の両方の対象になるか、所轄の消防署に確認する
- 防火対象物点検資格者と防災管理点検資格者、それぞれに点検を依頼する
- 権原が分かれている建物では、テナントも含めた建物全体で点検を実施する
- 二つの点検の実施時期をできるだけ近づけ、有効期限が短くなりすぎないようにする
- 両方の基準に適合していれば、消防長又は消防署長へ報告したうえで複合表示を掲示する
途中でつまずきやすいのは、権原が分かれている建物で一部のテナントだけ点検を終えて満足してしまうケースです。
建物全体がそろって初めて複合表示の対象になることを、点検を依頼する前に関係者へ周知しておくと後戻りが減ります。
まずは所轄の消防署に、自分の建物が両方の点検の対象になるかどうかを確認するところから始めましょう。
流れが分かれば、あとは順番に進めるだけですね。
はい。
まずは所轄の消防署への確認から始めましょう。
よくある質問
まとめ
複合表示の条件と有効期限の数え方がよく分かりました。
まずは自分の建物が両方の点検の対象になるか確認します。
点検資格者選びや点検時期の調整でお困りの際は、㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第36条
- 消防法第8条の2の2
- 消防法施行規則第4条の2の4
- 消防法施行規則第4条の2の6
- 消防法施行規則第51条の12
- 消防法施行規則第51条の14
- 消防法施行規則第51条の18
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





