タンクや倉庫の運営を、外部の会社にまるごと任せることがあります。
そのとき消防法上の管理者は誰になるのか、危険物取扱者は誰が選任するのか。
昭和39年の回答は、契約と法律上の地位の関係をはっきりと整理しています。
この記事では危険物施設の管理を委託した場合の扱いを消防庁の質疑応答に沿って解説します。
運営を委託しても、届出を出すまで管理者は変わらないのでしょうか。
そうではありません。
回答は契約の発効に伴つて、自動的に管理者たる地位を承継するという見解を正しいとしました。
危険物取扱者は、どちらが選任することになるのでしょうか。
現実の管理権がある側です。
現実の管理権が受託者又は請負人にある場合は当該受託者又は請負人が行なうべきとされました。
この記事でまとめて解説します!
- 業務一切を委託し受託者が事実上施設を管理することとなった場合は契約の発効に伴つて自動的に管理者たる地位を承継する
- 届出行為によって市町村長等が責任者を認定するという考え方は採られていない
- 危険物取扱者の選任は現実の管理権が受託者又は請負人にある場合は当該受託者又は請負人が行なう
- 所有者が選任する場合において選任される者は必ずしも当該受託者又は請負人に属する者である必要はない
- 2以上の屋外タンク貯蔵所のうち一部だけを委託することはできないことはないが、適当でない
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目次
委託すれば契約の発効に伴って自動的に管理者の地位を承継する

昭和39年4月20日付け自消丙予発32号は、神奈川県からの三つの照会にまとめて答えたものです。
一つめが、管理者たる地位はいつ移るのかという問いでした。
一つめの考え方が受託者又は請負人は、当該契約の発効に伴つて、自動的に消防法第3章に定める「管理者」たる地位を承継したものと解すべきかというものです。
二つめが私法上の契約の内容如何にかかわらず、所有者からの管理権移譲又は委託等の届出行為によつて、市町村長等が当該責任者を認定することとなるのかというものでした。
採られたのは一つめ、つまり契約の発効に伴って自動的に承継するという考え方です。
届出をして市町村長等が認定するのを待つ、という仕組みではありません。
つまり契約を結んだ時点で、消防法上の責任も動いていることになります。
契約と同時に移ります。
契約の発効で、地位が移るのですね。
自動的に承継すると整理されました。
契約の開始日を、保安の記録にも残してください。
危険物取扱者の選任は現実の管理権がある側が行う

二つめの問いは、危険物取扱者の選任についてです。
照会は、所有者が管理権の移譲を留保した場合に、受託者側の有資格者を選任できるかと尋ねました。
判断の基準は現実の管理権がどちらにあるかです。
契約書の文言よりも、実際に誰がその施設を動かしているかで決まります。
なお、ここでいう危険物取扱主任者は、現在の危険物保安監督者にあたる役割です。
現実の管理権で決まります。
選任は、実際に動かしている側が行うのですね。
現実の管理権で判断されます。
契約書の文言と実態を、そろえておきましょう。
所有者が選任する場合は受託者に属する者でなくてよい

同じ回答には、なお書きが付けられています。
所有者の側が選任する場合の、選任される人の所属についてです。
所有者が選任するのであれば、選ばれる人は自社の社員でも、受託者の社員でもよいということになります。
所属を条件にはしていません。
実務では、現場に常駐しているのが受託者の従業員であることが多いため、この点は運用の幅につながります。
ただし前提として、現実の管理権が所有者にあることが必要です。
所属は問われません。
所属は問われないのですね。
自社でも受託者でも構いません。
選任した人の常駐の状況を、確認しておいてください。
一部のタンクだけを委託することは適当でない

三つめの問いは、委託の範囲についてです。
同じ敷地の中に複数の屋外タンク貯蔵所がある場合が想定されています。
禁止はされていませんが、勧められてもいません。
背景にあるのは、照会が前提に置いた政令第11条第2号ただし書の規定の適用を受けて設置したという点です。
ただし書の適用を受けたタンク群は、互いに関係づけられた一体のものとして許可されています。
その一部だけ管理者が違うという状態は、保安の一貫性を欠くことになります。
分けるのは望ましくありません。
一部だけを委託するのは、勧められないのですね。
適当でないとされています。
委託の範囲は、施設の単位で決めてください。
標識や掲示板をタンクに直接表示することは認められない

施設の表示についての回答も見ておきます。
昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、富山県からの照会に答えたものです。
照会は、標識又は掲示板が幅0.3メートル以上長さ0.6メートル以上の板とされていることをふまえ、屋外タンク貯蔵所等に板を取りつけることの困難なものについて板を用いずタンク側板に同規則で直接表示することは差し支えないかと尋ねました。
そのうえで、別の道が示されています。
一基ごとに板を立てられない場合は、タンク群ごとに一括して表示する方法があるということです。
タンクそのものに書くのではなく、独立した板を立てるという形は変わりません。
板を立てて示します。
標識をタンクに直接書くのは認められないのですね。
板を用いる前提です。
掲示の方法を、現地で確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
- 業務一切を委託し受託者又は請負人が事実上施設を管理することとなった場合の扱いが示された
- 当該契約の発効に伴って自動的に消防法第3章に定める管理者たる地位を承継したものと解される
- 届出行為によって市町村長等が責任者を認定するという考え方は採られていない
- 危険物取扱者の選任は現実の管理権が受託者又は請負人にある場合は当該受託者又は請負人が行なう
- それ以外の場合は所有者が行なうべきである
- 所有者が選任する場合において選任される者は必ずしも受託者又は請負人に属する者である必要はない
- 2以上の屋外タンク貯蔵所のうち一部だけの管理及び使用を委託することはできないことはないが適当でない
- 標識又は掲示板をタンクに直接表示することは認められずタンク群ごとに一括して表示する方法がある
契約を結んだ時点で、責任も動いているのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
運営委託にともなう保安体制の整理も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第3章 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第17条・第18条 e-Gov法令検索
- 管理権の委託、請負い等について(昭和39年4月20日付け自消丙予発32号 予防課長から神奈川県企画調査部長あて回答)
- 屋外タンク貯蔵所の標識または掲示板の標示方法について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から富山県総務部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




