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火薬類にも該当する危険物はなぜ基準の一部が適用されないのか|塩素酸塩類や硫黄と鉄粉が受ける規則第七十二条の特例を解説

火薬類にもなる危険物は基準の一部が適用外になることを示すアイキャッチ画像

危険物の規制に関する規則には、危険物としての顔と火薬類としての顔を併せ持つ物質だけのための特例が用意されています。
塩素酸塩類や硫黄、鉄粉、マグネシウムなど、燃焼や爆発の性質を持つ品目がその対象になります。
対象になると、製造所や屋内貯蔵所の建築構造や消火設備の基準の一部が適用されなくなりますが、除外されない基準も残っています。
この記事では規則第七十二条が定める特例の対象と、適用されなくなる基準・されない基準を解説します

うちは花火の原料になる薬品を保管しているのですが、危険物としての基準がどこまで必要なのか分かりません。

それは火薬類にも該当する危険物かもしれません。
規則第七十二条という特例を見てみましょう。

危険物と火薬類の両方の規制がかかると、基準も二重に厳しくなるのでしょうか。

逆に、重なる部分は危険物側の基準が外れます
どこが外れてどこが残るかを順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 塩素酸塩類や硫黄、鉄粉、マグネシウム、硝酸エステル類などのうち火薬類にも該当するものだけが対象です
  • 対象になると政令第九条・第十条の建築構造の基準の一部が適用されません
  • 消火設備は第五種すら設置義務が外れます
  • 保安距離や標識・掲示板など除外リストに入っていない基準はそのまま適用されます
  • 「当分の間」という言い回しでも制定以来ずっと維持されている実務上恒久の特例です

火薬類にも該当する危険物は建築構造と消火設備の基準の一部が適用されず標識は継続することを示した図解

火薬類にも該当する危険物にはなぜ別枠の基準があるのか

危険物を保管する倉庫と隣に並ぶ盛り土に囲まれた火薬類貯蔵の建物

危険物の規制に関する規則には、危険物と火薬類の両方の顔を持つ物質のためだけの一条があります。
それが規則第七十二条です。

危険物の規制に関する規則第七十二条第一項 令第四十一条の規定により、総務省令で定める危険物は、第一類の危険物のうち塩素酸塩類、過塩素酸塩類若しくは硝酸塩類又はこれらのいずれかを含有するもの、第二類の危険物のうち硫黄、鉄粉、金属粉若しくはマグネシウム又はこれらのいずれかを含有するもの及び第五類の危険物のうち硝酸エステル類、ニトロ化合物若しくは金属のアジ化物又はこれらのいずれかを含有するもののうち火薬類に該当するものをいう。

危険物と火薬類の両方の許可が必要になる物質だけの特例です
危険物の規制に関する政令第四十一条は、この特例を総務省令(規則)に委任しています。
対象は塩素酸塩類・硫黄・鉄粉・マグネシウム・硝酸エステル類など、燃焼や爆発の性質を持つ品目に限られ、しかも火薬類取締法上の火薬類として別途の許可を受けているものだけが該当します。
危険物としての規制と火薬類としての規制が重なる場面を、法令がどう整理しているかを次から見ていきます。

危険物と火薬類、両方の許可が要るということですね。

はい。
ただし重なる基準は危険物側が外れます

どの危険物が規則第七十二条の対象になるのか

袋や結晶状の薬品と金属粉のドラム缶とカートリッジ状の容器が並ぶ三つの品目群

対象になる危険物は、政令第四十一条が三つの類にわたって列挙しています。
まず政令の側から確認します。

危険物の規制に関する政令第四十一条 第一類の危険物、第二類の危険物及び第五類の危険物のうち総務省令で定めるものについては、第九条第一項第二号、第四号から第七号まで、第九号、第二十号及び第二十一号(これらの規定を第十九条第一項において準用する場合を含む。)、第十条第一項第一号、第四号から第七号まで及び第十二号、第二十条第一項第三号並びに第二十七条第五項第三号に定める基準に関して、総務省令で特例を定めることができる。

対象は三つの類にまたがる品目群です
第一類は塩素酸塩類・過塩素酸塩類・硝酸塩類、第二類は硫黄・鉄粉・金属粉・マグネシウム、第五類は硝酸エステル類・ニトロ化合物・金属のアジ化物、いずれもそれ自体または含有するものが対象になります。
花火や火工品の原料になりやすい品目が並んでいるのが特徴で、火薬類取締法上の火薬類に当たらなければこの特例の対象外です。
同じ塩素酸塩類でも、火薬類の許可を受けていない在庫は通常どおり危険物の基準がそのまま適用されます。

うちの倉庫にある塩素酸塩類も対象になるか調べてみます。

火薬類の許可を受けているかどうかがポイントです。

具体的にどの基準が適用されなくなるのか

倉庫の塀と壁の一部と換気口が透けて禁止マークが付いた建物の図

規則第七十二条第二項が、実際に適用されなくなる基準を列挙しています。
建築構造から消火設備、運搬容器まで幅広く並びます。

危険物の規制に関する規則第七十二条第二項 前項の危険物については、令第九条第一項(令第十九条第一項において準用する場合を含む。)第二号、第四号から第七号まで、第九号、第二十号及び第二十一号、令第十条第一項第一号、第四号から第七号まで及び第十二号、令第二十条第一項第三号並びに令第二十七条第五項第三号の規定並びに第三十六条、第三十八条、第三十九条の三、第四十一条及び第四十三条の規定は、当分の間適用しない

除外されるのは建物の構造と一部の設備です
製造所側では空地の保有、地階の禁止、壁や屋根を不燃材料や耐火構造にする規定、床の傾斜や貯留設備、タンクと配管の基準(政令第九条第一項の各号)が対象になります。
屋内貯蔵所側でも位置・軒高・床面積・壁や屋根の構造・換気設備(政令第十条第一項の各号)が同じように除外されます。
さらに消火設備は第五種すら設置義務が外れ、電気設備向けの消火設備や自動火災報知設備の設置基準、運搬容器の材質・構造の規定(規則第三十六条・第三十八条・第四十一条・第四十三条)も適用されません

建物の構造基準がここまで変わるとは思いませんでした。

消火設備も第五種すら不要になります。

実務で見落としやすいのはどこか

標識と掲示板が立つ倉庫と壁に取り付けられた警報ベルの図

除外されるのは列挙された号だけで、条文の全部ではありません。
残る基準を見落とすと、標識や保安距離の不備につながります。

危険物の規制に関する政令第九条第一項第一号(抜粋) 製造所の位置は、次に掲げる建築物等から当該製造所の外壁又はこれに相当する工作物の外側までの間に、それぞれ当該建築物等について定める距離を保つこと(略)。

除外されるのは列挙された号だけで全部ではありません
規則第七十二条第二項の除外リストは政令第九条第一項第二号から始まり、周辺の住居や学校からの保安距離を定める第一号は含まれていません
標識・掲示板の設置(第三号)や網入りガラス(第八号)、静電気除去や避雷設備なども除外リストの外なので、そのまま適用されます
「当分の間適用しない」という言い回しから期限付きの措置と誤解しやすいですが、この規定は制定以来ずっと維持されており、実務上は恒久的な特例として扱われています。
危険物としての許可が不要になるわけではなく、除外されるのは建築構造と一部の設備基準に限られる点にも注意が必要です。

では標識も外していいということですか。

いいえ、標識と保安距離は対象外のまま残ります。

明日からなにを確認すればよいのか

クリップボードを持つ作業服姿の担当者とデスクの上の書類

最後に、確認の手順を整理します。
危険物側と火薬類側の両方の窓口を意識することが大切です。

危険物の規制に関する政令第九条第一項第三号 製造所には、総務省令で定めるところにより、見やすい箇所に製造所である旨を表示した標識及び防火に関し必要な事項を掲示した掲示板を設けること。

確認すべきことは三つです
まず在庫の品目が政令第四十一条・規則第七十二条第一項の三類の品目に当てはまり、かつ火薬類取締法上の火薬類として許可を受けているかを確かめます。
該当するなら、除外される基準と除外されない基準(標識・掲示板・保安距離など)を切り分けて設備投資の計画を立てます。
最後に、危険物側の許可申請と並行して火薬類取締法側の許可の手続きも進め、個別の設計は所轄消防署と火薬類の担当窓口の両方に確認します。

危険物と火薬類、両方の窓口に確認してみます。

その進め方で手戻りなく設計できます。

よくある質問

Q規則第七十二条の特例はどんな危険物にでも使えますか?
Aいいえ。対象は政令第四十一条が列挙する第一類・第二類・第五類の特定品目のうち、火薬類取締法上の火薬類に該当するものに限られます。単に成分が近いだけの危険物には使えません。
Q「当分の間適用しない」は近く廃止される予定がありますか?
A条文上は経過的な言い回しですが、制定当初から現在まで見直しなく維持されています。将来の改正までは実務上有効な特例として扱って差し支えありません。
Q保安距離や標識の設置義務もこの特例で不要になりますか?
Aなりません。規則第七十二条第二項が除外するのは政令第九条第一項第二号以降の一部の号で、保安距離を定める第一号や標識・掲示板を定める第三号は除外リストに含まれていません。
Q危険物としての許可自体が不要になりますか?
A不要にはなりません。除外されるのは建築構造や設備の一部の技術基準だけで、製造所等としての許可や指定数量の管理は通常どおり必要です。

まとめ

対象は第一類の塩素酸塩類等・第二類の硫黄や鉄粉等・第五類の硝酸エステル類等のうち火薬類に該当するものだけです
根拠は危険物の規制に関する政令第四十一条規則第七十二条です
除外されるのは建築構造・タンクや配管・消火設備・警報設備・運搬容器の一部の基準です
消火設備は第五種の設置義務すら外れます
保安距離(第一号)や標識・掲示板(第三号)は除外リストに含まれず引き続き必要です
「当分の間」でも実務上は恒久的な特例として扱われています
危険物の許可自体は不要にならず、火薬類取締法側の許可も別途必要です

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

対象品目と火薬類の許可、両方確認して進めます!

基準は品目ごとに異なります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第九条・第十条・第二十条・第二十七条・第四十一条
  • 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第七十二条・第三十六条・第三十八条・第三十九条の三・第四十一条・第四十三条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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